番外編 ミラング共和国滅亡物語(117)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(25)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようとするミラング共和国。ミラング共和国でラフェラル王国で活動している商人達は、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税の撤廃を要求する。
ラフェラル王国の王族と貴族の多くは、その関税の撤廃に賛成するが、王族の一人であるリーガライドは反対する。そのせいで、冷や飯を食わされるのであった。リーガライドは―…。
リーガライドはそんななか、妹であるフィルスーナとともに傭兵隊「緑色の槍」のトップのアルスラードに会う。かつて、リーガライドは傭兵隊「緑色の槍」に所属したこともある。
その中で、三者の話し合いとなり、フィルスーナによって、クーデターを起こすことが決定されるのだった。計画へと移行する。
そのようなことを起こすことが都合が良いと思っているのは、ミラング共和国と繋がっている貴族達や第一王妃の勢力であった。そんななかで、シエルマスも活動をおこなっており、「緑色の槍」に派遣しているシエルマスのスパイから情報を得るのだったが、フィルスーナやアルスラードに気づかれており、スパイらは粛清されていくのだった。
その後、そのスパイが関係していたラフェラルアート(ラフェラル王国の首都)のスラム街にあるアマティック教の教会で、教会の主要な信者とシエルマスのスパイをすべてフィルスーナとラフェラル王国の裏の者達によって始末されるのだった。そのことにより、情報が遮断されることになる。
ラフェラル王国から情報が届かなくなったことに対して、シエルマスの西方担当首席がラウナンに報告し意見をもらおうとするが、その頃、ラフェラル王国ではリーガライドらのクーデターは成功するのだった。
それはどのような過程であったのだろうか?
ラフェラル王国におけるクーデター発生後、まず、宰相を中心とする貴族政力がフィルスーナとラフェラル王国の裏の者により、気絶された後、拘束される。さらに、ファングラーデはリーガライドによって捕まることになった。
第一王妃であるヒールの方は―…、クーデターを把握し、誰が起こしているのかを妄想という感じで突き止める。失敗した人間を処分しようとするが、その時、フィルスーナが現れ、ヒールが個人で雇っている裏の者で始末しようとするが失敗し、裏の者を失うという結果となった。その時のヒールの悲鳴によって、衛兵が駆けつけて、逃げたフィルスーナが狂気をはらんだ人間であることを言うのであった。
その後、ヒールは自らの執事長を軍部の拠点へと向かわせる。自らの指示をファングラーデ王の指示としてクーデター側を鎮圧するように、という命令を―…。だけど、軍事貴族もすでにクーデター側に捕らわれており、軍部もたたき上げが指揮するような状態となっており、ヒールの執事長は捕まるのであった。
フィルスーナは、再度、ヒールのもとへと向かい、少しの会話の後、ヒールを殺し、ラフェラル王国のクーデターは、リーガライド側が勝利することになるのだった。
………三十分後。
クーデター側の本部。
そこでは、勝利の歓喜で溢れ返っていた。
そう、五分前にクーデター側の勝利宣言と、同時に、ファングラーデ王からリーガライドへと王位が受け継がれることになった。
だが―…、その中で、リーガライドはあることを宣言するのだった。
―私は、ラフェラル王国の王へと就任するにはまだ早い。今のところは、私リーガライドとフィルスーナの王族の二名によって、王国を統治することを宣言する。そのことに対する不安もあるだろうが、王国が繁栄し、王国民がその繁栄を享受できるようにしよう。そのために、苦難の時があるだろうが、それは乗り越えられるものである。そのために、人々の力を借りたい。お願いいたします―
このような言葉を聞いた者達は、多くがリーガライドに対する不信感というものを抱いていた。
それは、これからラフェラル王国がどうなるのだろう。
リーガライドの支配下の中で、ラフェラル王国は衰退していくのではないか。
いや、根本は、自分達の生活がより良くなるのだろうか?
そのことが彼らにとっての一番の心配である。彼らにとって、自らが生きていくことができ、かつ、それ以上になることを望む。これを欲深いと呼ぶのは間違ったことであり、これに嫉妬するような輩は、何かしらのトップや支配権、権力を与えるべき存在ではない。むしろ、そういう奴らから権力を遠ざけさせないといけない。
善人が決して報われるとは限らない世の中ではあるが、それでも、馬鹿やって人の世を滅ぼす道へと進む気はない。その可能性が高いと思われる方向には―…。
さて、話を戻すと、リーガライドとフィルスーナの二人で支配をおこなうという選択をリーガライドはしたのだ。
これから、自分が危険な戦いに出る以上、自分の命を奪われてしまうかもしれない。そのようにならないように自分が思っている最大限の行動はしていくつもりであるが、それでも、万が一ということは十分に存在する。
特に、政権を獲得したばかりなのだから、ファングラーデを支持している残党とか、アマティック教の残党とかが、何をしてくるのか分かったものではないし、反乱を起こしてくる可能性は十分に存在する。
さらに、クーデターに成功してしまった以上、ミラング共和国との戦いを避けることはできなくなった。
その時は、ファングラーデの長男がミラング共和国の傀儡となって、リーガライドとフィルスーナから政権を奪いにやってくることは分かっている。
そうである以上、どちらかが倒れるまでの戦いとなるのだ。悲しいことに―…。
そうしなければ、ラフェラル王国に住んでいる者達の命を守ることができないからだ。
「おっ、帰ってきたぞ、新たな王が―…。」
と、クーデター側の兵士の一人が言うと、全員が歓呼をもって、リーガライドを迎える。
その祝福の言葉に対して、リーガライドは生真面目に訂正する。
「私は、まだ王になるわけではない。これから、ラフェラル王国を纏めるための行動と同時に、ミラング共和国が軍事介入をしてくることになるから、それに対する防衛もしないといけない。ミラング共和国との戦いが我々にとって重要なことだ。ミラング共和国から我が国を防衛することによって、我が国の繁栄のための第一歩が踏み出せるのだ。それに、お前らは知らないだろうが、私の妹は皆が思っているよりも、賢いからな。私よりも―…。」
と、リーガライドは言う。
さっきの自身の宣言で、フィルスーナは? という、フィルスーナの実力というものを知らない者たちによる不安の表情を見てきているため、ちゃんとフィルスーナが自分よりも賢いということを言っておく必要がある。
リーガライドが仮にミラング共和国との間の防衛戦で生き残ることができるのであれば、フィルスーナの力を借りないといけなくなるのは避けられない。フィルスーナの賢さというのを十分に知っており、彼女の力を借りることによって、ラフェラル王国は繁栄へと繋がっていくのだ。より可能性高い方を選ぶ。国を統治する者にとっては、必ず必要な選択肢なのだから―…。
愛国心なんて言葉で自分ではできないのに、凄い人物の感じになるように他者に強要し、自分はそこから得られる利益を貪ろうと思っている奴らのために、リーガライドはラフェラル王国を繁栄させようとしているわけではない。
だけど、必ずこのような輩は現れる。だからこそ、相手が何を思っているのかということを出来事だけではなく、その相手の気持ちを含めて見ていく必要が人間にはあるのだが、それができる人間が少ないがために、このように、今までの価値感を疑うこともせずに称えるのだ。
理解して欲しい。価値観なんてものは常に見直されるものであり、変化していくものであるのだから―…。
要は、リーガライドを崇めるのではなく、リーガライドの素のままの能力と同時に、自分の妹であるフィルスーナの能力というものを今までのラフェラル王国が存在している中で築き上げられた価値観で見ないで欲しい。
そういう価値観では分からないことが、この世にはたくさんあるし、そのことを理解した上で、見て欲しいのだ。
自分の中にある基準というものは必要であるが、そこに拘り過ぎないようにしないといけないことも重要なのである。
人生は単純化することもできるが、複雑化もできるのだ。この二つの共存していることを忘れてはならない。
「またまたぁ~。そんなご冗談を―…。どうしてフィルスーナ王女様は、口は悪くなってすいませんけど、かなりの変わり者ですし、とてもラフェラル王国の王族とは思えない。というか、庶民から生まれた、もしくはスラム街から生まれたと言われた方が信じられます。」
と、一人の兵士は言う。
この兵士の言っていることは、この場にいる者にとっては当たり前に思っていることである。
フィルスーナが変わり者であり、とても王族とは言えないと―…。
いや、もしかしたら、スラム街で生まれた子どもが、王族の子どもと勘違いされたのではないか、と考えた方が説明の筋が通るとさえ、思えてしまうのだ。
ラフェラル王国の価値基準から照らすと、そのように考えるのは至極当然のことであろう。価値観という神話は、簡単にそのようなシナリオを作り、確かめる作業を簡単に省くことができるのだ。他の基準を捨てることもできる理由を簡単に作ってくれるのだから―…。
さて、内容を戻すと、フィルスーナは変わり者であり、とても王族とは思えないので、ラフェラル王国の支配権を行使させるのには、かなり無理なのではないかと思われるからだ。
そんななか、フィルスーナが姿を現わす。
「あら、皆さま、こちらの方に―…。私の方も仕事を終えました。後は、第一王妃の首が市中に晒されることでしょう。彼女は、大きな過ちを犯し、ラフェラル王国をミラング共和国に渡そうとしていました。兄さまのこれからの支配のために、かなり邪魔な存在ですし、あの人は国を売ろうとした者です。それに、変な宗教を信仰してしまい、その教主の玩具になってしまっていました。残念ながら―…。後、私も支配者になる予定はなかったのですが―…。私はあの人と結婚して、穏やかな日々を過ごそうとしたのですが―…。兄さま…やってくれましたわね。」
と、フィルスーナは言う。
フィルスーナもまた、ラフェラル王国の王になる気も、支配者になる気もなかった。
というか、なりたいとすら思わなかった。
王という職務がかなり自由のなくなるものであることがわかっているし、自分に向かって、利益を得たいという俗物ばかりがやってくるので、かなり嫌なのだ。そういう奴らは、言葉だけで何となくフィルスーナには理解できてしまうのだから―…。
彼らのような自分の欲に正直で、自分以外の者たちの利益に興味がない者たちの達成したい欲望のほとんどがろくでもないことだ。王の力を頼ってくるということは、そういう可能性がかなり高いのである。
自分だけが得をする強い欲望でも、全体に幸福をもたらす結果になることはある。ならないこともあるので、しっかりと頭でっかちになってしまわない方が良い。
そういうような人々の相手をするのは、フィルスーナにとっては嫌なことであるし、そういう奴らに限って、しつこかったり、人脈を強くもっていたりする場合もあるのだ。人という生き物がどれだけ欲深いのかを無理矢理にでも理解させられてしまう。
現実には、欲望に上限などもなく、上限がないからこそ、活動のエネルギーとして、生き残ることができた原因の一つであるかもしれない。だが、それを過剰にしてしまうと、結局、自らの身を滅ぼしてしまうことになるのだが―…。
それを区別できる方法を人は発見することが完全にはできないので、結果として、そのことになったとしても気づかない場合が十分にあるというわけだ。
生きるとは、固定した概念のような理想の通りにはならないということだ。
フィルスーナは、怒りというものを感じていた。
自分は支配者になる気がないのに、リーガライドの宣言のせいで、支配者の一人にさせられてしまったのだ。共同支配体制の―…。
フィルスーナとしては、アルスラードと結婚して、傭兵隊の中で静かに暮らそうと考えているのだ。傭兵隊である以上、戦争に巻き込まれないという保障はないが、それでも、王宮なんかいるよりも、ましであると思っているし、アルスラードのことを愛しているのだから、それぐらいの苦難は乗り越えられると思っている。
だけど、共同支配者の一人にさせられてしまうと、フィルスーナの計画がパーとなるのである。
「仕方ないだろ。フィルスーナ、お前は俺よりも賢いのだから、王国の支配に関与して、繁栄に導いてもらわないと―…。それに、フィルスーナがいなければ、俺たちのクーデターが成功したとは思えないのだからな。敢えて言っておかないとな、私の妹は賢い。変な行動をしているように見えるが、国のためになっているのは確かだ。俺が保証する。ということで、頑張って、ラフェラル王国を繁栄させようではないか。アルスラードも喜ぶだろうなぁ~。」
と、リーガライドは言う。
リーガライドとしては、フィルスーナをそのままアルスラードと結婚させて、自由気ままに過ごさせる気はない。折角、統治者にとって必要な能力を持っているのだから、それを使わないという選択肢は存在しない。ということで、人々に宣言することで、フィルスーナを統治の側に加えることが公式にできるというわけだ。ラフェラル王国の庶民からの信頼はあるのだから―…。
計画をパーにされたフィルスーナは、勿論、周囲の目を向けることなく反発する。
「どうせ、王国の統治側に私を入れるのは、シスコンであの人と結婚したら、会えなくなるのが寂しいからでしょ!! そういうのを、王国のために必要とか言う理由に筋をしっかりとさせて、説明するなんて!!! 私は、王国の統治には関与するつもりもないのに!!! ここの兵士達からは、変人で上手く通して、抜けられやすくしたのに!!! こっちの計画がパーよ!!!」
と。
フィルスーナは、自身の計画をパーにされたリーガライドに、ふざけるな、という気持ちをぶつける。
その気持ちをぶつける気持ちが強すぎたために、うっかりと自分の計画がパーにされたことを自供してしまうのだった。
それを聞いた兵士たちは―…。
(……………そういう言い争いは、どこか別の場所でやってくれ……………。)
と、呆れかえるしかなかった。
その後、このリーガライドの行動が重要な意味をもたらすとは、この時、フィルスーナの中では予想することは可能であったが、自分の欲望のために覆い隠してしまっていたのである。
現実は、その覆い隠してしまったものをフィルスーナに突き付けることになるのだった。
それは、いずれ分かるので、今は、述べることではない。
そして、少しだけ時が進むことになる。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(118)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(26)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
8月になりました。
まだ、第3章の執筆の途中な状態です。
そろそろ、第3章のクライマックスの方を書けそうなぐらいな気がします。
2023年中に番外編が終わる可能性は、かなり低いなぁ~、と思っています。
ここまで、長くなるなんて~。予想外です。
では―…。