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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
462/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(116)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(24)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようとするミラング共和国。ミラング共和国でラフェラル王国で活動している商人達は、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税の撤廃を要求する。

ラフェラル王国の王族と貴族の多くは、その関税の撤廃に賛成するが、王族の一人であるリーガライドは反対する。そのせいで、冷や飯を食わされるのであった。リーガライドは―…。

リーガライドはそんななか、妹であるフィルスーナとともに傭兵隊「緑色の槍」のトップのアルスラードに会う。かつて、リーガライドは傭兵隊「緑色の槍」に所属したこともある。

その中で、三者の話し合いとなり、フィルスーナによって、クーデターを起こすことが決定されるのだった。計画へと移行する。

そのようなことを起こすことが都合が良いと思っているのは、ミラング共和国と繋がっている貴族達や第一王妃の勢力であった。そんななかで、シエルマスも活動をおこなっており、「緑色の槍」に派遣しているシエルマスのスパイから情報を得るのだったが、フィルスーナやアルスラードに気づかれており、スパイらは粛清されていくのだった。

その後、そのスパイが関係していたラフェラルアート(ラフェラル王国の首都)のスラム街にあるアマティック教の教会で、教会の主要な信者とシエルマスのスパイをすべてフィルスーナとラフェラル王国の裏の者達によって始末されるのだった。そのことにより、情報が遮断されることになる。

ラフェラル王国から情報が届かなくなったことに対して、シエルマスの西方担当首席がラウナンに報告し意見をもらおうとするが、その頃、ラフェラル王国ではリーガライドらのクーデターは成功するのだった。

それはどのような過程であったのだろうか?


ラフェラル王国におけるクーデター発生後、まず、宰相を中心とする貴族政力がフィルスーナとラフェラル王国の裏の者により、気絶された後、拘束される。さらに、ファングラーデはリーガライドによって捕まることになった。

第一王妃であるヒールの方は―…、クーデターを把握し、誰が起こしているのかを妄想という感じで突き止める。失敗した人間を処分しようとするが、その時、フィルスーナが現れ、ヒールが個人で雇っている裏の者で始末しようとするが失敗し、裏の者を失うという結果となった。その時のヒールの悲鳴によって、衛兵が駆けつけて、逃げたフィルスーナが狂気をはらんだ人間であることを言うのであった。

その後、ヒールは自らの執事長を軍部の拠点へと向かわせる。自らの指示をファングラーデ王の指示としてクーデター側を鎮圧するように、という命令を―…。


 ヒールの執事長は考える。

 (ビーグラは何を考えている。なぜ、挑発しているような顔をしている。)

と。

 どうして、そのような挑発的な態度を向けてくるのか、理解することができなかった。

 それと同時に、頭にくるような怒りを感じたが、それをこの場面で表情にだすのは良くないと判断し、抑える。

 完全に抑えきれているわけではないが―…。

 (挑発しておいて、こんな表情を隠すことができていないとはなぁ~。)

と、ビーグラはわずかに笑みを浮かべる。

 こんな簡単な挑発ぐらいで、感情を露わにするとは―…。

 笑み、いや、その笑みは侮蔑の意味が込められている。

 なぜなら、このような場で、感情が読まれるということは戦争であれば、相手に何をしようとしているのかがバレる可能性を高めてしまうだけだ。そのようなことを許してしまえば、敗北に向かう可能性を上昇させることになる。

 そして、ビーグラは、ヒールの執事長がどういう状況に追い込まれているのか、まったくわかっていないようだ。

 ビーグラは、叩き上げであり、職人肌ではあるが、何も知らない馬鹿ではない。軍事以外のことも学んでいるからこそ、さらに、知識を批判的にも考えられるからこそ、より多角的な視点で物事を考えられるし、駆け引きも得意になる。

 そんななかで、すでに、情勢のほとんどはどちらに決しているのかを理解している。というか、推測できてしまっているのだ。

 「本当に王様の命令です。」

と、ヒールの執事長は言う。

 ヒールの執事長としては、これ以外の解答をすることしかできない。

 実際は、ヒールからの命令であるが、ヒールの方から王様の命令であると言えと言われているので、どうしようもないし、嘘であると正直に言ってしまうと、ヒールが嘘を吐いたことになり、軍部からの信頼が下がるし、ヒールの命令に忠実でないと判断され、始末されてしまうことだってある。

 一回、命を長らえさせている以上、今度失敗しまえば、後がないということを完全に理解させられてしまっている以上、失敗しないため、自身の保身のためだ。

 そんな自分の身を守るための行動であるからこそ、時に、柔軟性というものがなくなってしまうのだ。嘘を嘘で懲り固めるようにして―…。真実という世界から遮断され、いずれはその太陽すら眺める日も叶わなくなるように―…。

 そして、同時に、ヒールの執事長の言葉を聞いたビーグラは、

 (ふう~、俺たちが折れると思っていやがるな。それとも、噂は本当だということだな。ヒール王妃は失敗した者たちを処分させているとか。怖い女だこと―…。)

と。

 ビーグラは、ヒールという人間の残酷さを知っている。

 それと同時に、綺麗事だけでは国が成り立たないということも知っている。

 支配というものが、政治というものが、清濁を飲み合わせるようなものであるということを―…。

 だけど、自分を綺麗に見せるだけで、他者に対して、不幸を押し付けるのはただの馬鹿であり、私欲だけであり、国を支配するのも、組織を支配するのも、向かないし、即刻排除しないといけない存在である。綺麗さだけでなく、醜い部分も合わせ、最終的に他者とともに、他者との関係によって成り立っている社会というものがより良くなるために行動することによって、国も組織もより良い結果を多くの者が享受することができるようになる。

 そのことに気づかない者は多いし、追い詰められた者、自分だけを一番に見せたい者、自分だけが得をしたい者、自分以外はどうなっても良いと思っている者などは特に気づいたとしても、そのことを唾棄すべきものだとして、嘲笑うことであろう。彼らが真の得というものを手に入れることができないのは、唾棄しているものの大切さを理解できないからだ。それを拒絶してしまっていては―…。

 まあ、そいつらは、彼らの人生が終わるその時まで気づかないものがほとんどであろう。悲しいことに―…。

 さて、話を戻し、ビーグラはこのヒールの執事長が言っているのが誰の差し金であるのかをすぐに理解することができた。

 だからこそ、本当のことを言っているのか? ということを尋ねたのだ。

 だけど、その理由について気づいていたとしても、誤魔化すしか選択肢がないと思っているヒールの執事長は意地でもそう通し続けるしかなかった。

 そんななか―…。

 「お前の言っていることは理解できる。今、ラフェラルアートでは、クーデターが発生している。軍事貴族の多くが行方不明であり、かつ、連絡をとることができないから、叩き上げである俺を頼った。王様の命令であるのなら、俺は受けなければ、クーデターを起こした反逆どもと同じになる。だけど、今のお前の言っていることが王様の命令でなければ、それは、お前自身が王の嘘の命令を伝えたことになり、お前自身が反逆者となる。そして、俺は王の行方も軍事貴族の多くの者の行方も知っている。」

と、ビーグラは言う。

 ビーグラはファングラーデの行方を知っている。

 だからこそ、今―…。

 「ゆえに、お前の言っている王様の命令というのは、嘘である。その命令をお前が俺に伝えるように命じたのは、ヒール王妃ではないのか。あの女なら、嘘も平気で吐いて、自分の得やら名誉やらしか考えない愚かなことをしてもおかしくはない。だから、言おうではないか。」

と、ビーグラは一息を入れる。

 ヒールの執事長にとっては、自らが破滅していく、その予感しかない。

 選択を間違えた。

 どうしてこうなった。

 なぜ、このビーグラという人物は王の行方や、軍事貴族の行方を知っているのか。

 まさか!!!

 「王はすでに、クーデター側に捕まっている。それに、俺はクーデターに協力するか迷っていたが、王を捕まえた時点で、俺ら軍部は、クーデター側に協力することにした。俺らの部下の命をこんな場で失わせるわけにはいかないし、俺らの生活が悪くなるかもしれない、ミラング共和国の野郎どもに併合されるのは勘弁だからな。」

と。

 ビーグラは、クーデター側に同情的であった。

 特に、叩き上げの将校ほど、その傾向にあった。

 軍部である以上、軍部にとってより良い選択をすることを好む。

 これは、メリットとデメリットの両方を孕んでおり、扱いは慎重でないといけない。メリットに関しては、軍部の勢力を拡大することによって軍事力を強化することができるが、一歩間違えば、デメリットとなり、強力となった軍事力は暴走し、国そのものを崩壊へと導くことがある。他国への戦争となってしまえば、他国が被る被害をも含め、悲惨な歴史の一ページに刻むという出来事を発生してしまいかねない。

 言葉で表すことのできない悲惨なことが起こっていることだろう。言葉だけを聞いたり、読んだりしただけで、理解した気にならない方が良い。起こった流れは、より強い衝撃となって、お前に通じることになるのだから―…。

 そして、ビーグラも過剰な軍事拡大は、危険であることを理解しているし、過剰な力は時に傲慢を誘いこみ、自身の力というものを見誤ってしまう。分相応とは、軍事においては特に重要なことである。

 さて、重要なことであるが、進めていくことにしよう。

 ビーグラは、ミラング共和国に併合された場合、ラフェラル王国の軍部の数は削減されるだろうし、ミラング共和国の軍人たちから軽蔑な眼差しで見られることになるし、さらに、酷い扱いを受けるだろう。それが理不尽な扱いであることは十分に理解している。

 それは、部下達の命を危険に晒してしまうことになる。そんなことは許されないに決まっている。

 自分のことだけじゃなく、今、自分達を支えてくれている部下のことも大切にしていかなければ、組織というものは成り立たない。信頼なき組織は、ただ衰退していくだけ。

 そのようなことをビーグラは思いながら―…。

 「ということで、お前は捕まってもらうことにする。そろそろ、ヒール王女も捕まっている頃だろう。あの女の味方は、あの女のピンチの時に誰も助けないどころか、いないだろうなぁ~。」

と、ビーグラは付け加えるように言う。

 すでに、ヒールは敗北者であり、ラフェラル王国の権力を持っている者から転落していくのだ。自身が望んでいるものとは正反対の方向へ、と―…。

 それは、避けられない未来へと突入したのだ。

 ビーグラの言葉を聞いたヒールの執事長は―…、

 (ファングラーデ王がすでにクーデター側に捕まっているだと!!! 嘘だという表情すらしていない!!! ということは、私は―…。)

と、心の中で敗北と、絶望に支配されるのだった。

 だからこそ、どういう行動をとるかわかったものではない。

 媚びるのか、反抗するのか。

 大体、その二つの傾向になるだろうと、ビーグラは予想する。

 そんななかで、絶望に支配されたヒールの執事長は、もうどうにもならないと考えるが―…。

 「ビーグラ!! ビーグラ様!!! あなたの部下になりますから、私はヒール王女とは関係ありません!!!」

と、媚びて、責任を逃れようとする。

 だが―…。

 「拘束しろ!!! それに、クーデター側にでも引き渡せ!!!」

と、ビーグラは命じる。

 ビーグラの近くにいた二人の軍人が、ヒールの執事長を捕まえ、拘束し、すぐに、それを運ぶのだった。

 その時―…。

 「おい、ビーグラ!!! 俺をこんな扱いして良いのか!! 絶対に後悔するのは、テメーだぞ!!! ヒール王女の腹心であるこの俺に、こんな扱いをするとは!!! 呪ってやる!!!」

と、ヒールの執事長は罵声を浴びせるかのように、言う。

 その言葉とともに、兵士達によって連行されていくのだった。

 その罵声というものを聞いたビーグラは、そこまで心を傷つくということはなく―…。

 (人は、悪口を言う時、ピンチになった時に本性というものが見れるというが―…、あそこまで自分本位とは―…。俺も気を付けないとな。部下達の面倒を見ていき続けるためには―…。)

と、心の中でまた、一つ学習、確認をするのだった。


 場所は再度ヒールの私室。

 そこでは―…。

 (遅い!!! 何がどうなっているのやら!!! あいつは始末すべきじゃ!!!)

と、ヒールが思っていると、再度―…。

 「あら、私に対する酷いありもしない噂を広めてくれた人ね。」

と、女の声が聞こえる。

 その声を聞いたヒールは、思い出す。

 あの憎々しい存在のことを―…。

 「フィルス~ナ~ァ~。」

と、ヒールは言う。

 その声は、憎しみの感情がかなりの勢いで込められたものであり、フィルスーナという存在を許す気はない。ここでは言葉にできないほどに残酷な方法に使ってやろうと考えるのだった。その想像を抱く時に、憎しみと同時に、自らの勝利という甘美がヒールの頭の中、心の中、感情の中にもたらされ、高揚の気分を与えられる。

 二つの気持ちのために、ヒールはフィルスーナのいる方と思われる場所に、視線を向けるのだった。

 「会話できるのか分からないわ。だけど、ヒール王女、いや、逆賊ヒールに言わせてもらいます。あなたがアマティック教の信者として、ミラング共和国に通じていることは分かっています。今、ミラング共和国は、ラフェラル王国を征服しようと本当に活動しており、それを実行することができる段階にある。それに、実行する勢力が政権を握っている。退くことはないでしょう。彼らは、軍事によってのみしか支配する方法を知らないのですから―…。だから―…、あなたを殺させていただきます。残念です。」

と、フィルスーナは言う。

 正々堂々と―…。

 裏の者のことを知っており、それに近いことをしている以上、今のフィルスーナの言っていることは裏の者としてはマイナスの評価を下されてしまっても仕方ないことである。

 なぜなら、誰にも悟られることなく、始末するのが良い行動とされるのだから―…。強者に舐めプとか言われる相手を見下して舐めた態度をとることは、いつどこで自らの窮地を招いてしまうのか分からないし、油断を生じさせやすくなるし、相手に隙を晒すことにもなる。

 要は、避けないといけないことをフィルスーナは、避けていないということになる。

 そのようなことをしているのには、ちゃんと理由があるし、理由がなければこのようなことはしない。

 理由は、あくまでも、自供させることだ。

 それは無理だろうという気持ちを抱いているが―…。

 「私を殺す!! そんなことは不可能だわ!!! 私に味方する者たちは多いし、世界の各国、ミラング共和国、リース王国が私の死を放っておくはずがない!!! 私はリース王国の王族であり、アマティック教の敬虔な信者であり、誰もが称賛する存在。ゆえに、このような品位の欠片もなく、裏の者のような仕事をする変わり者で、信頼関係もない者は私を殺せば、只々、そやつの人生は終わるだけだ。地獄へ落ちて―…。だからこそ―…。」

と、ヒールは言いかけるが―…。

 「もう良い、聞き飽きた。」

と、フィルスーナは言うと同時に、短剣でヒールの首から上と下を真っ二つにするのだった。

 ヒールの意識は数秒の時間の経過後、モザイクのような景色から白へと何もなくなるのであった。

 ヒールの人生はここで終わることになった。

 この人物は、結局、本当の幸せというか、自身が手に入れるべきも手に入れることなく、自らの生涯を閉じるという結果となった。彼女の行動と周囲の要因により―…。

 その後、ヒールの遺体は、裏の者たちによって処理され、頭部のみがすぐにラフェラルアートの中心部に晒されることになり、後に悪の女王という称号を得ることになるのだった。

 勿論、侮蔑の意味で―…。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(117)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(25)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


PV数が増えますように―…。

次回の『水晶』の投稿日は、2023年8月1日頃を予定しています。

では―…。

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