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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
461/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(115)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(23)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようとするミラング共和国。ミラング共和国でラフェラル王国で活動している商人達は、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税の撤廃を要求する。

ラフェラル王国の王族と貴族の多くは、その関税の撤廃に賛成するが、王族の一人であるリーガライドは反対する。そのせいで、冷や飯を食わされるのであった。リーガライドは―…。

リーガライドはそんななか、妹であるフィルスーナとともに傭兵隊「緑色の槍」のトップのアルスラードに会う。かつて、リーガライドは傭兵隊「緑色の槍」に所属したこともある。

その中で、三者の話し合いとなり、フィルスーナによって、クーデターを起こすことが決定されるのだった。計画へと移行する。

そのようなことを起こすことが都合が良いと思っているのは、ミラング共和国と繋がっている貴族達や第一王妃の勢力であった。そんななかで、シエルマスも活動をおこなっており、「緑色の槍」に派遣しているシエルマスのスパイから情報を得るのだったが、フィルスーナやアルスラードに気づかれており、スパイらは粛清されていくのだった。

その後、そのスパイが関係していたラフェラルアート(ラフェラル王国の首都)のスラム街にあるアマティック教の教会で、教会の主要な信者とシエルマスのスパイをすべてフィルスーナとラフェラル王国の裏の者達によって始末されるのだった。そのことにより、情報が遮断されることになる。

ラフェラル王国から情報が届かなくなったことに対して、シエルマスの西方担当首席がラウナンに報告し意見をもらおうとするが、その頃、ラフェラル王国ではリーガライドらのクーデターは成功するのだった。

それはどのような過程であったのだろうか?


ラフェラル王国におけるクーデター発生後、まず、宰相を中心とする貴族政力がフィルスーナとラフェラル王国の裏の者により、気絶された後、拘束される。さらに、ファングラーデはリーガライドによって捕まることになった。

第一王妃であるヒールの方は―…、クーデターを把握し、誰が起こしているのかを妄想という感じで突き止める。失敗した人間を処分しようとするが、その時、フィルスーナが現れ、ヒールが個人で雇っている裏の者で始末しようとするが失敗し、裏の者を失うという結果となった。その時のヒールの悲鳴によって、衛兵が駆けつけて、逃げたフィルスーナが狂気をはらんだ人間であることを言うのであった。

その後、ヒールは自らの執事長を軍部の拠点へと向かわせる。自らの指示をファングラーデ王の指示としてクーデター側を鎮圧するように、という命令を―…。

 一方、王の大会議室。

 ここは、王や貴族、役人たちが重要な出来事を話し合う場所だ。

 そこには、リーガライド側についた役人と一部貴族たちが情報収集に勤しんでいた。

 今のところは順調に大方、進んでいることを理解していたし、まだ、予断が許される場所ではないことは理解している。

 安堵はできない。

 フィルスーナがヒールの裏の者を始末することができたことは喜ばしい報告であるが、その一方で、ヒールを捕まえることに失敗したことはミスでしかない。

 だけど、このミスを挽回することはちゃんとできるし、フィルスーナを攻めることはできない。

 リーガライドは分かっている。

 予想外の事態など、行動していれば確実に起こることなのだから、それにあたふたしても意味はない。

 今は、冷静に状況をなるべくしっかりと正確性を高めて把握し、自分がすべき選択を慎重に、的確なタイミングで行動しないといけない。

 (………さて、どう動くか……。)

と、リーガライドは心の中で思うのだった。


 霊安室。

 その場には、一つの遺体がある。

 フィルスーナによって殺されたヒールが私的に雇っている裏の者である。

 そして、衛兵がその遺体を見分していると、そこに―…。

 「……………何か私に対するいらぬ噂が流れそうなので、それを止めに来たわ。」

と、一人の女性が聞こえるのだった。

 衛兵の中で隊長と思われる人物が女性の方向へと向くと、ドレス姿の女性が一人いた。

 その女性を見覚えがあったので、その名前を言う。

 「フィルスーナ王女様―…。なぜ、このような場所に―…。」

と、衛兵の中で隊長と思われる人物が言う。

 なぜ、このような場に来ているのか。

 霊安室など、普通の王族なら近づこうとすらしない。

 ファングラーデだとしても、用事でもなければ近づくことすらない。

 重要な人物の遺体の見分に立ち会わないといけない時があったりするのだ。

 まあ、表立ってのことではないが―…。

 そんななか、どうして王女で王族であるフィルスーナがここに来るのか、疑問を感じるのだった。噂とは何か? そのような疑問を抱き、失礼のないようなことにしないといけない。

 「風の噂で、そこにある死体と私が愛人関係にあるとか言うのが私のもとに流れてきてね。私は愛人もいないし、アルスラード一筋だし、そのような気に食わない噂の出どころがどこか、分からないからこそ、あなたたちに聞きたいの。教えてくれる、誰が言っていたのか。」

と、フィルスーナは怒りの感情を抱きながら言う。

 そのように感情はあり、ここでその怒りの感情を見せたとしても、フィルスーナが疑われることはないのだから―…。それに変な噂が漏れるのが嫌だったのだ。

 その噂を聞いたのは、一時間ほど前であり、その噂の出どころは知っているが、敢えて、知らないフリをしないといけない。噂の出どころは第一王妃であるヒールからであろう。

 大方、遺体とヒール自身の関係を衛兵から聞かれた時に、誤魔化すために咄嗟に思いついた嘘であるのだと―…。

 そのような噂が漏れれば、自身の悪評がさらに広まることになるし、アルスラードを根も葉もない噂で不快にすることは許さない。

 だって、ヒールは男娼とか一々いれているが、フィルスーナの方はそういうのは嫌いだし、大好きなアルスラードの前では十分に清くいたいと思っているのだ。まあ、この異世界においては、珍しいのか判断することはできないが、好きな人に一筋という考えの持ち主であることが分かる。

 憎きヒールとは違い―…。

 衛兵は―…、

 (フィルスーナ様がこの人物を殺したということを一切、否定しようとはしなかった。だけど、愛人関係であることは否定しようとしている。何が真実なのか、問うべきか、問わないべきか。そう考えると、フィルスーナ様がこの人物を殺したというのは確かとなる。そうなると、衛兵としての自分の役目はここで、フィルスーナ様を逮捕することでしかない。だけど、このまま逮捕して良いのか。なら、なぜ、ヒール王妃は嘘を吐くことが必要であったのかという疑問を感じることになる。ヒール王妃の言っていることが正しいのであれば、ストーリーとしては上手くいくが、フィルスーナ王女が嘘を吐いているとも思えない。………やるしかないか。)

と、心の中で覚悟を決めるのだった。

 「フィルスーナ王女様、この人物を殺害した容疑で逮捕させてもよろしいでしょうか。」

と、衛兵は言う。

 衛兵としては、王族に失礼があってはいけないとも思っており、言葉は丁寧にするが、それでも、王族であったとしても、犯罪者を逮捕しないわけにはいかない。

 これは、法律にも定められていることであり、そのことを無視してはいけないという責任感だ。

 「残念ながら、あなたは現場を見たとしても、どんなことが起こったのかを理解していないから、そういうことが言えるのよ。残念ながら、私は裏の者と知り合いがいて、教えてもらったことによると、彼はヒール王妃が私的に雇っている暗殺者よ。証拠ならたぶん、その人物の死体から出てくる道具でわかると思うわ。さらに、ヒール王妃は自分の立場を守るために、かなりの嘘を言うわ。後―…、私はこういう裏の者と恋愛関係になったことはないし、婚約者以外に自分のありのままの姿を見せたことはないわ。そこに嘘がないことは神だろうと、裁判長の前だろうと、堂々と誓うことができるわ。」

と、フィルスーナは言う。

 フィルスーナは、自身の言っていることに嘘はないし、嘘を吐かないといけないところの部分は、敢えて、自らの言葉で言わないようにして、嘘を吐いていないという証拠にしようとしている。

 嘘を吐いていないのであれば、偽証罪に問われる可能性は低いとしての判断だ。

 それでも、フィルスーナは、ヒールが私的に雇っている裏の者を殺害したのは事実だ。そうしなければ、フィルスーナの方が殺されていた可能性があるので、正当防衛を成り立たせようとすれば、できないわけではないが、実力差が圧倒的にあり、逃げることができたのではないかと思われる判断を下されても文句は言えない。

 だけど、フィルスーナの行為によって、将来、ヒールの気ままによって殺されるという可能性をしばらくの間、なくすことに貢献したということなのであれば、罪を免れることは可能かもしれないが、それで罪がなくなったとしても、フィルスーナとしては嬉しいという気持ちにはなれない。

 現実に、人を殺しているのだから―…。

 そのことを正当化したいとは思わないが、こうなってくると正当化しないといけなくなる。悲しいことに―…。

 「そうですか。だけど、この人を殺したことに関しては否定されないのですね。」

と、衛兵の隊長と思われる人物は言う。

 この人物にとっても、なぜヒールが私的に雇った者を殺したことを一切、否定しないのか。疑問しか感じない。

 「真実を知りたいのならば、教えないこともないけど、知ったら最後、あなた、ヒール王女の側からも命を狙われることになり、闇の中に消えているだけよ。それに、私はここでは嘘は言っていないし、事実に関しては一切、否定していない。それに、今日、クーデターは成功し、兄さまがラフェラル王国の権力を握り、ラフェラル王国に住む人々の生活が良くなり始める時代になるから―…。」

と、フィルスーナは言う。

 この言葉で、衛兵もある事実に気づくことになる。

 だからこそ―…。

 (フィルスーナ王女様の言葉から考えれば、王女様が今、台の上にある死体を殺した犯人であり、それはヒール王女と関係のある者であり、真実を知ったら、ヒール王女から命を狙われることになる。ということは、ヒール王女の言っていることは嘘ということになる。聞いているフィルスーナ王女様の噂で、男遊びに溺れているような話は一切、聞きませんし―…。これは、責任感という行動で動いてはいけないことになり、かつ、今回のクーデターはフィルスーナ王女様も関わっていることになり、トップはリーガライド様ということになるのか。ファングラーデ王が行方不明だと噂が流れている以上、非常事態になっていることか。こうなってくると、法律を建前にすることはできなくなる。有利な方につくべきだ。)

と。

 衛兵も責任感だけで行動できるわけではないし、そのようなことだけが行動原理となっているわけではない。

 平時であれば、何があったとしても、法やルールという概念で行動しても、大丈夫であるし、そのように動くことで社会が上手くいくことが多いのを知っている。

 だけど、一度、非常事態になった場合、法律通りに行動するのが正しいかと言われると、そうとはいえない場合も存在するのだ。

 今、まさに、フィルスーナの言葉によって、その考えに到るのだった。

 クーデターが今、ラフェラル王国で発生している以上、平時ではないとすぐに判断することができる。衛兵であり、王宮内であまり動きのない場所、安全な場所におり、クーデターの情報がもたらされなかった以上、今、クーデターが起こっていることを知ったとしても不思議ではない。

 だからこそ、この衛兵の隊長と思われる人物は、平時ではない思考へと切り替えるのだった。こういう非常事態の場合は、法やルールも大事であるが、同時に、勝ち馬に乗ることが重要であり、王が行方不明であるという情報が伝わっている以上、王を隠す必要がある。

 答えは決まっている。

 「分かりました、フィルスーナ王女様。私はこの事件に関して、深く探りを入れることはいたしません。しかし、あなた様には、勝っていただかないと困りますので―…。」

と、衛兵は言う。

 そう、この人物は、フィルスーナとリーガライドの勝利に賭けたのである。

 この一言で説明することができるし、それ以上の言葉はいらない。

 そして、矛盾があるとすれば、王が行方不明になっているのに、クーデターが起こっていると考えていなかったことである。

 説明するのであれば、疑いの気持ちはあったが、それでも、確証を抱くことはできなかったというのが正しい。

 一つの情報だけで、完全に正しい判断を下せるとは限らないのだから―…。

 「そうですね。では―…。」

と、フィルスーナは言うと消えるのだった。

 その様子を見ていた衛兵の隊長と思われる人物は、

 (この人を敵に回すのは危険だ。ヒール王女よりも―…。)

と、思うのだった。

 ヒールは、言葉によって周囲を自分の思い通りに動かすことで、周囲に恐怖を与えるものであったが、一方のフィルスーナは、自分から行動する実力を兼ね備えながら、かつ、人々を動かすことができるのだ。

 どっちが怖いかと言えば、この衛兵の隊長と思われる人物からすれば、フィルスーナだと自信をもって答えることができる。

 なぜなら、フィルスーナの方が人を殺すことに迷いというものがないのだから―…。それに自身の力でおこなうことができるし、場合によっては、霊安室にいる衛兵は全員殺されていてもおかしくはないのだから―…。

 だからこそ、フィルスーナの実力を認めないといけない。ヒールより危険である存在であることを―…。

 同時に、真面な支配者になってくれることを思いながら―…。


 一方、軍部の拠点。

 そこには、ヒールの執事長がいた。

 そして、軍部の中で、叩き上げの上層部の職人肌の人間が机に向かって、職務に励むのだった。

 ヒールの執事長は―…、

 (厳ついなぁ~。というか、軍事貴族が誰もここにいないだと!!! どうなっていやがる!!! 現場の叩き上げにお願いしないといけなくなるとは―…。)

と、心の中で、プライドを傷つけられたのか、苛立ちの感情を抱くのだった。

 そのような感情を、この軍人はすぐに見破っていた。

 (ヒール王女の執事長か~。名前は知らないが、覚えてももう意味はないだろ。俺のことを勉強もできない軍事だけの馬鹿だと思っているのだろうな。俺も勉強ぐらいは最低限する。地理も国際情勢も知らない奴に戦争はできないし、人々の協力がなければ、戦争に勝つことすらできない。俺がこの地位に就いているのは、上役の人間もだが、生かしてもらった多くの人々のおかげだ。)

と、心の中で思いながら、自分が馬鹿にされていることに、若干だが怒りの感情が湧くが、それでも、自分が過去に学んだことを思い出し、気持ちを静めるのだった。

 同時に、このヒールの執事長がこれから何を言おうとしているのか、大体予想することができる。その場合の答えも決まっている。

 「ビーグラ大将。今、ラフェラル王国ではクーデターが起こっており、王様からの指令です。軍部を動かし、クーデターに加担しているものを捕らえるように―…。捕らえられない場合は、殺しても構わないと―…。」

と、執事長は言う。

 その言葉に、ビーグラと呼ばれる軍人は、

 「ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。」

と、笑いあげるのだった。

 その様子に、執事長は頭の上にハテナマークを浮かべるのだった。

 やっぱり、叩き上げは頭がおかしいと思えるぐらいに―…。

 「お前たちには情報がちゃんと行き渡っていないようだな。それは、本当に王様の命令か?」

と、ビーグラは尋ねるのだった。

 すでに、執事長が伝えた王の命令の内容がどういう背景のあるものかを、ビーグラは理解している。

 それが分かっているからこそ、敢えて、挑発するかのように尋ねる。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(116)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(24)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


『この異世界に救済を』の投稿があるので―…。

では―…。

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