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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
459/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(113)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(21)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようとするミラング共和国。ミラング共和国でラフェラル王国で活動している商人達は、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税の撤廃を要求する。

ラフェラル王国の王族と貴族の多くは、その関税の撤廃に賛成するが、王族の一人であるリーガライドは反対する。そのせいで、冷や飯を食わされるのであった。リーガライドは―…。

リーガライドはそんななか、妹であるフィルスーナとともに傭兵隊「緑色の槍」のトップのアルスラードに会う。かつて、リーガライドは傭兵隊「緑色の槍」に所属したこともある。

その中で、三者の話し合いとなり、フィルスーナによって、クーデターを起こすことが決定されるのだった。計画へと移行する。

そのようなことを起こすことが都合が良いと思っているのは、ミラング共和国と繋がっている貴族達や第一王妃の勢力であった。そんななかで、シエルマスも活動をおこなっており、「緑色の槍」に派遣しているシエルマスのスパイから情報を得るのだったが、フィルスーナやアルスラードに気づかれており、スパイらは粛清されていくのだった。

その後、そのスパイが関係していたラフェラルアート(ラフェラル王国の首都)のスラム街にあるアマティック教の教会で、教会の主要な信者とシエルマスのスパイをすべてフィルスーナとラフェラル王国の裏の者達によって始末されるのだった。そのことにより、情報が遮断されることになる。

ラフェラル王国から情報が届かなくなったことに対して、シエルマスの西方担当首席がラウナンに報告し意見をもらおうとするが、その頃、ラフェラル王国ではリーガライドらのクーデターは成功するのだった。

それはどのような過程であったのだろうか?


ラフェラル王国におけるクーデター発生後、まず、宰相を中心とする貴族政力がフィルスーナとラフェラル王国の裏の者により、気絶された後、拘束される。さらに、ファングラーデはリーガライドによって捕まることになった。

第一王妃であるヒールの方は―…。

 「お久しぶりです。お義母(かあ)様。」

と、フィルスーナは落ち着いた雰囲気で言う。

 (相変わらず、憎しみの感情を私に向けてくること―…。いい加減、私の姿を見て、お母様の面影を思い浮かべるのは止めて欲しい。だけど―…、この女は私たちにとって許されざる罪を犯した。)

と、心の中で、強く思う。

 ヒールがフィルスーナのことを恨んでいるように、フィルスーナもヒールのことを恨んでいる。

 これは、ヒールのような我が儘によるものではなく、純粋に見たからこそ、奪われたからこその恨みである。

 そのことについては、後に触れるので、今は述べることでもない。

 そして。両者ともに恨みを抱きながら、対峙し、言葉の応酬が始まるのだった。

 「ふん、第二王妃の娘か―…。一体、何の用だい? 私はこれから、ラフェラルアートで起こっているクーデターに対処しないといけないのだよ。王宮でもクーデターを起こしている不届き者を始末しないといけないのよ。さっさとそこにいて、私が通り過ぎるのを静かに怯えて待つといいわ。」

と、ヒールは言う。

 ヒールは、このクーデターを起こしている人物を推測することができる。裏で糸を引いているのが誰か。

 そして、このクーデターを鎮圧することに成功してしまえば、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品に対する関税撤廃に反対する者はいなくなるし、そうなれば、アマティック教の教主イルカルから褒められることに間違いはないのだから―…。

 さらに、この憎き第二王妃の娘であるフィルスーナを排除することに成功すれば、もう二度と、第二王妃を思い出すことなく、嫌な思いをしなくて済むのだから―…。

 ヒールは自らにとって邪魔者の存在を許す気はない。

 自分は一番目立つ存在であり、それを脅かす存在は許してはならないのだ。

 そして、ヒールはフィルスーナのところへと向かって移動を開始する。

 それと同時に裏の者がついてきているのは、分かっている。

 ヒールがフィルスーナを通り過ぎた時に、裏の者がフィルスーナを暗殺するという合図を送る。

 (………フフフフフフフフフフフ、私が通り過ぎた時、お前の命は尽きることになるのよ。どんなに、裏の者が着そうな服を着ていたしても、裏の者としての成果をあげていたとしても、本場の者に敵うことはありませんのよ。知ってる。フィルスーナ、お前がやっているのは、おままごとに過ぎないのよ、変わった―…。これで、もう二度とあの女の姿を思い浮かべることもなくなるでしょう。ようやく、私が報われる時がやってきたわ。私は目立たなければならない。私は王族であり、王族は誰よりも人々から称えられ、恐れられ、(ひざまず)かれるのだから―…。そうでないとおかしいの。)

と、心の中で思いながら、フィルスーナのいる場所を通りすぎる。

 その時、ニヤァとした表情をしながら―…。

 (さようなら。)

と、心の中で言う。

 言葉にすれば、フィルスーナが勘づいて、失敗することは丸見えなので、心の中で思うことで、フィルスーナに気づかれないようにしたのだ。

 それは瞬時の、無意識の判断であり、ヒールという権力欲の強い者が、ここまで生き残ることができた理由である。

 「笑う表情もしない方が良いですよ。」

と、フィルスーナは言う。

 その言葉を聞いたヒールは、自分の仕出かしたミスに気づく。

 だけど、笑う表情をしていることで、なぜ気づくのか理解できなかった。

 これは勘である。

 直感と言った方が正しい。

 直感というものは瞬時に、自らが経験してきたもの知識から得たものを結び付けて結論を出しており、その過程がどうなっているのかを説明することはできない。

 だが、直感は大抵、正しかったりする。

 そのことを知っているフィルスーナは、すぐに、防御の態勢をとり、ヒールの裏の者の攻撃を防ぐのだった。

 キーン!!

 「へえ~、やっぱりいると思ったぁ~。容貌から考えて、初老になり始めというところね。いくら若作りしても、誤魔化すことはできない。そして、母を直接殺したのはお前だな。」

と、フィルスーナは言う。

 フィルスーナは、自分の母親である第二王妃を殺した人物を知っている。あくまでも、武器による攻撃ではなく、毒物による毒殺であるが―…。

 その現場の近くを通りかかり、その時に、この裏の者の人物を見ているのだ。執事の姿をした―…。

 だからこそ、今の目の前にいるこの人物を許すことはないし、いくら命令だと言っても、懺悔させようなどとは思っていない。

 「ほ~お、その目から見れば、嘘を言っているわけじゃない。だけど、お前のような小娘ごときでは私との経験値の差があるのだよ。」

と、裏の者が喋り始める。

 フィルスーナの実力がかなりのものであることを理解したのだろう。というか、確実に分かっている。今の攻撃を察知し、防御までとり、自らの体に裏の者の短剣による攻撃を受けなかったのだから―…。

 こうなってくると、どうやってフィルスーナの隙というものを作らせるのかが、重要なこととなってくる。

 だからこそ、喋る。

 喋りながら、フィルスーナを観察し、隙が何であるかを探ろうとする。

 「良く喋るものね。というか、あなたは裏の者である以上、殺されても文句は言われないよね。」

と、フィルスーナは言う。

 フィルスーナにとっては、確認である。

 そのような確認をしているのだから、この相手の実力というものを理解してしまったのだろう。経験はあるが、それでも、倒せない相手ではないし、実力差があるのは分かっている。何か実力を隠している感じにも見えない。

 動きは初老に近いと思われるので、どこかに衰えというものを感じさせる。

 実際は、ヒールの側に常にいるので、自らの体を鍛えたり、実力をアップさせたりする機会に恵まれなかったのだ。ヒールは裏の者に対する費用をケチったのではなく、失敗すると簡単に処分してしまい、さらに、その噂がどこからか漏れてしまい、それを裏の者達が知ってしまったために、ヒールに雇われることを拒否したのだ。

 ゆえに、ヒールの私的な裏の者は、この人物以外にはいない。

 そして、この人物は優秀であるがゆえに、ここまで生き残ることができたのだ。いや、他に裏の者がいないために、ヒールとしても処分することができなくなっており、生き残ることが結果として可能になったのだ。

 そういう意味では、この裏の者は幸運に恵まれたということだ。

 さて、その幸運は、ここで潰えてしまうのだろうか。

 さあ、その分岐点が始まる。

 「喋りすぎる者は、技量が弱いとな!!!」

と、ヒールの裏の者は言いながら、すぐに、フィルスーナを攻撃しようとするのだった。

 フィルスーナをここで殺すべきかは迷っていたが―…。

 「殺しなさい!!! フィルスーナの死ぐらい、私の方で適当な理由を見繕っておくわ!!!」

と、ヒールは言う。

 この言葉は、ヒールの私的な裏の者に対するフィルスーナ殺害への許可が出たに等しい。

 そして、この人物の目の色を変え、本気モードになってフィルスーナを殺そうと短剣をより強く握りしめ、一撃で仕留めようとする。

 その様子をすぐに理解したフィルスーナは、自らの天成獣の宿っている武器である短剣ではなく、スピアを取り出す。

 このスピアは、今、長さがフィルスーナの背の半分しかなく、槍としての機能を果たせないのではないかと思えるのだが、それをフィルスーナは構え、高速移動を開始する。

 (!!!)

 ヒールの私的な裏の者は、フィルスーナが急に視界から消えるのだった。

 そのように映った。

 そのことに気づいたほんの一秒の時間も経過しない時に―…。

 「無音槍突(むおんそうとつ)。」

 静かに、このヒールの私的な裏の者に聞こえないようにして言うと、その人物の喉の方に突き刺し、そこから震動が発生し、その人物の首を破壊してしまうのだった。

 その様子を見てしまったヒールは、

 「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」

と、叫ばずにはいられなかった。

 たぶんだけど、ヒールの人生の中で、一番長く叫んだのではないかということだ。

 そして、その声を聞いた者はすぐにでも、ヒールの元へと駆け寄ろうとした。

 その間に―…。

 (ここまで長く叫ばれるとは―…。)

と、フィルスーナは心の中で思いながら、死体を処理する時間はないので、姿を晦ますのだった。

 その間の、首の部分を破壊されたヒールの私的な裏の者は、その自らの生涯を終える。

 そして、数秒後、衛兵が何人もやってきた!!!

 「ヒール王妃。どうなされましたか!!!」

と、衛兵の一人、その中の隊長と思われる人物が声をかける。

 「…………………………殺された。犯人は、フィルスーナよ!!!」

と、叫ぶように言う。

 ヒールは、今の状況を冷静に考えられるほどの状態にはなっていない。

 というか、ヒール自身が自らの裏の仕事を任されていた人物がこんな簡単に殺されてしまったのだから、冷静になれる方がどうかしているとしか思えない。

 そして、衛兵は、

 (……………この人物は誰だろうか。ラフェラル王国の裏の者の格好ではありませんし、王妃の愛人? いや、王妃に愛人がいるとは聞いていない。それに男娼なら、別のルートから入れさせているはずだ。それに病気がないか確認しているはずだ。)

と、心の中で冷静に考えるのだった。

 ヒールが男好きであることははっきりと衛兵の中では知れ渡っていることだ。この王女の私室で何をしているのかは想像することもできるが、中を確認していないので、推測の域を出ない。

 だけど、ヒールが呼び寄せる歓楽街のそういう女性の相手をする男性に関しては、事前にヒールの部下が病気がないかを検査した上で、さらに、特別の代金と払って、来てもらっていた。それに、この情報を漏らさないように、そういう男性の家族や恋人を人質にしていたりもした。

 そう、情報が漏れれば、ラフェラル王国で大問題になってしまうのだから―…。

 そして、そういう男性の姿形に関しては、衛兵は全員、頭の中にたたき込んでいる。

 だからこそ、今、目の前で、頭と体が離れた遺体の初老と思われる男性がいるのが疑問でしかない。イケメンでもなければ、若くもないのだ。

 ヒールが選ぶ、そのような男性は、若くてイケメンが多く、ラフェラル王国の女性たちから人気を獲得していたりしており、吟遊詩人だったり、歌や踊りを提供する者の仕事をしていたりもするのだ。女性の手が届かない男性を、自由にとっかえひっかえしていたのだから―…。

 ゆえに、見覚えのない初老の男性に関して、尋ねざるを得ないのだ。

 「すみませんが、この人はどなたでしょうか、ヒール王妃。」

と、さっきヒーナに声をかけた衛兵は言う。

 他の衛兵は、ヒールの怒りに触れないように大人しくしているし、この衛兵の隊長が変なことを言わないことを祈るしかなかった。

 失言もできない緊張ある場面だ。

 その後、ヒールは考えるのだった。

 (この死体を見られた以上、どうにかしないといけないわ。だけど―…、男娼ということで誤魔化すのは不可能。さらに、執事もいるけど、変な噂を流される可能性もある。裏の者があの小娘に殺された者しかいないとは―…。どうする? あの小娘のせいにするのは基本として―…。そうだ!!!)

と、心の中で閃くのだった。

 途轍もなく、悪い企みを―…。

 「さっさ、フィルスーナが来て、私の愛人を紹介すると言ってきて、そこで、この愛人の紹介の仕方が気に食わなかったのか、目の前で殺したのよ!!! そして、これで王妃を貶められる…とか笑顔で言って、小走りで逃げていったのよ―…。あっちの方へ―…。」

と、ヒールは言う。

 ヒールの中では、いきなりにしては、良いシナリオを創り出すことができたし、後ろにいる執事が証言者となってくれるし、これでフィルスーナを殺人罪で貶めることも、排除することもできる。

 「ハッ、分かりました。フィルスーナ様を探させていただきます。」

と、衛兵の隊長と思われる人物が言うと、衛兵たちはその死体を回収していくのだった。

 その後、二手に分かれて、死体を霊安室へ運ぶものと、フィルスーナ様を探すことになった。

 ………衛兵が去るのを見て―…。

 (裏の者の死体を回収されたのは不味かったが、それでも、何とか私の権力で誤魔化すことができますわ。それに、フィルスーナがいくら罪を逃れようとして嘘を吐いたとしても、私の第一王妃としての権力と人脈をもってすれば、どうとでもなるわ。それに、クーデターを潰さないといけないわ。王様に―…。)

と、心の中で余裕の笑みを浮かべるのだった。

 自らが勝者であり、排除されるのは第二王妃の娘であるフィルスーナだと―…。

 その笑いは、結果として、自身の絶望に染めるまでの時間を延ばすだけでしかなかった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(114)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(22)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


PV数が増加しますように―…。

『水晶』、『この異世界に救済を』を読んでくださったり、評価してくださった皆様、ありがとうございます。

今後ともよろしくお願いいたします。

では―…。

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