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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
453/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(107)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(15)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようと企むミラング共和国。ミラング共和国は、ミラング共和国の商人達がラフェラル王国へと流す商品に対する関税を撤廃するようにラフェラル王国に要求。それを、ラフェラル王国の支配層の多くが賛成するが、その背景にはシエルマスの工作があったと思われる。そんななか、このような政策に反対するラフェラル王国の王子の一人であるリーガライドは、フィルスーナとともに、傭兵隊「緑色の槍」へと向かい、そこの隊長であるアルスラードと話し合う。結局、フィルスーナのアイデアとともに、クーデターを起こすことを計画し始める。それは、シエルマスにとっても、ラフェラル王国にとっても想定済みのことであった。

だが、シエルマスのスパイで、「緑色の槍」にいる者たちは、フィルスーナによって始末されていくのだった。その後、シエルマスのラフェラル王国の活動拠点へとなっていたラフェラルアートのスラム街にアマティック教の教団本部はフィルスーナとラフェラル王国の裏の者の手により壊滅されるのだった。

ミラング共和国では、シエルマスの方にラフェラル王国のリーガライド側のクーデターが成功したという知らせが届くのだった。それは、シエルマスにとって想定外でしかない。

 (どういうことだ!!!)

と、ラウナンは動揺する。

 心の中で動揺しているのではないかと思う人もいるかもしれないが、そうではなく、あまりにも予想外の出来事にラウナンは、表情に出るほどの動揺を見せるのだった。

 ラフェラル王国に派遣していたシエルマスの全員からの報告がなくなり、かつ、そのラフェラル王国では、クーデターが発生し、その勢力が成功したということである。

 そのため、ラウナンは、どうしてそのようなことになっているのか理解できなかったのだ。情報も少ない以上、そうならざるをえなかった。

 ラウナンとしては、ミラング共和国の商人がラフェラル王国に対して、ミラング共和国からラフェラル王国に流れる商品の関税を撤廃させる案に反対している王子ラフェ=リーガライドに反乱を起こさせるようにさせていた。

 そういう傾向にあるということは、シエルマスの諜報員から定期的に情報としてもたらされていた。ゆえに、順調に事が進んでいると思っていた。思ってしまっていた。

 そのなかで、突然、ラフェラル王国からの情報が途絶えてしまったのだ。

 そして、ラウナンはさらに考える。

 (こういう時は、冷静にならなければならない。ここ数日の報告の中で、おかしなことはなかった。フィックバーンが私に対して、嘘を吐くことはない。入隊以後、フィックバーンには私を倒せないということを嫌というほど、実力でちゃんと体に刻みつかせている。そうなってくると、さっきも考えたが、我々の動向を知った上で、シエルマスの構成員を消したということか!! そう結論付けるしかない!!!)

と、考えながらも、イラつきの表情を見せる。

 ラウナンにとって、順調に進んでいると思っていたことが、とんでもないところで失敗に近い結果となってしまったのだ。

 シエルマスとしては、リーガライドのクーデターを成功させるのではなく、失敗させることの方が目的だ。失敗させて、リーガライドを捕まえ、リーガライドと関係のあった者たちを始末して、ミラング共和国の商人達の要望であるラフェラル王国に流れる商品にかけられている関税を撤廃を実現させる。

 その時、ミラング共和国が軍事介入をすることを忘れないし、リーガライドを捕まえるのはミラング共和国軍かシエルマスでないといけない。

 そうすることで、ラフェラル王国を交渉して、併合して、ラフェラル王国に住む者を旧ファブラの人々のように地位を落とさないといけないのだ。

 そして、ミラング共和国から派遣する軍事行政官によって支配するようにしたいのだ。

 リーガライドがクーデターを成功させてしまえば、それ自体もほとんど無意味となってしまう。

 実際問題から第三者側から言わせてもらうと、むしろ、リーガライドがクーデターに成功しかけることの方がミラング共和国の軍事的介入をし易くしたりすることができたりする。

 なぜなら、リーガライドと意見を反対にするラフェラル王国の王族や貴族が一人でも生き残っていれば、ミラング共和国への軍事介入要請を出してくれる可能性が高いのだから―…。

 だけど、リーガライドがクーデターに成功しかけているということは、軍事力の多くがリーガライド側になったことを意味し、ミラング共和国側も軍隊におけるそれなりの犠牲を出すことになりかねないのだ。そうなれば、ミラング共和国の軍事力が若干ではあるが、減少してしまうことになる。そうなれば、周辺諸国がその隙を突いて、ミラング共和国を狙ってくるかもしれない。

 そう、つまり、状況によって、今回の出来事、判断を間違うと、ミラング共和国はかなりの損害を受けることになるのは避けられないということだ。

 (こうなった場合は、ラフェラル王国の王族の中で、一人でも生き残りがいて、ここに来れば―…。)

と、ラウナンは、心の中で結論を導きだす。

 そう、ラフェラル王国の王族の一人が生き残り、リーガライドを殺したいほどに恨みを持っていれば十分だし、ミラング共和国の領土の中に入ってくれば、軍事的介入の口実はできる。

 この世に、国が大きな行動をするためには、大義名分というものが形だけであったとしても必要なのだ。人々を納得させられるかということを含むかどうかは関係がない場合もあるが―…。

 そして、この大義名分が人々に受け入れられずに、人々の力が強い場合は、国の今からしようとしている大きな行動は停止させられる可能性がある。そこまで簡単に起こる事ではないが―…。

 まあ、国の大きな行動をその国に住んでいる人々に見えないようにすれば、簡単に自分達の思い通りにすることはできるのだが―…。その結果が失敗で、人々の白日のもとに晒されることになれば、その非難は一気に業火のごとき規模になってしまうであろう。その業火は、国の政権をも焼き尽くしてしまうかもしれない時もある。

 話を戻し、ラフェラル王国の生き残りでリーガライドに反発している王族がいなければ、貴族でも良い。重鎮なら尚更だ。王族の生き残りがいて、リーガライドを殺したいと思っているほどに恨んでいる者と同じように口実をでっち上げることは簡単にできる。軍事的介入をするための―…。

 そんな希望が現実になるかどうかによって、今後のミラング共和国の動きが変わってくるのだ。

 (良くもやってくれたなぁ~、リーガライド―…。)

と、ラウナンは、リーガライドのことを恨みながら―…。

 ラウナンの掌の上で踊ることなく、むしろ、ラウナンのシナリオに沿うことなく、勝手なことをしたのだから、ラウナンはリーガライドに恨みを抱き、あっさりとした死ではなく、苦痛の死を与えなければならないと感じたのだ。

 だけど、ラウナンはまだ重要な面で勘違いをしているし、気づくことは今のところないだろう。頭の中にこれっぽちも大事なことが入っていないのだから―…。ある女性の情報が―…。


 さて、ここで時を少し戻そう。

 今のラウナンが、ラフェラル王国のクーデターを知ったのは、ラフェラルアートのアマティック教の本部が壊滅した日から七日後のことである。

 そう、七日前に戻って、その夜。

 傭兵「緑色の槍」の拠点としている場所の傭兵隊長室。

 そこには、三人の人物がいた。

 「たぶん、これでミラング共和国のシエルマスの諜報員およびアマティック教の教団員を始末できたと思うし、地方のは、リーガライド様の裏の者が拘束しており、裏の者の拠点で外に出られない場所で閉じ込めることに成功していると思う。」

と、フィルスーナは言う。

 その声に抑揚は感じられない。

 別に、感情を出すようなところでもないで、していないだけである。

 宰相ファッグライド=インペンスが中心となっているミラング共和国に協力的な者たちの会議を監視していたシエルマスの者と、そこから逃げたマネージャーを追跡して、ラフェラルアートのスラム街にあるアマティック教の本部を、リーガライドの裏の者とともに襲撃して、シエルマスとアマティック教の経団員を始末したのである。フィルスーナは―…。

 その後、リーガライドの裏の者はラフェラル王国にあるアマティック教の教団の監視をおこなうために移動し、アマティック教の教団員で怪しい動きをしている者がいれば、拘束を可能にした。さらに、裏の者の拠点に、外に逃げられないようにするための監禁も許可されている。

 今回の場合、ラフェラル王国を守るためには仕方ないことだと割り切るしかなかった。

 まあ、このようなことばかりを常時する気はない。気に食わない意見があったとしても、何でもかんでもこのような措置を取るのは、最悪の場合、恨みを抱かれて、そのことが情報として人々に漏れることによって、最悪の展開になってしまい、国の滅亡ということも十分にあり得るからだ。

 「ご苦労、フィルスーナ。本当に仕事が早いなぁ~。知恵袋というのは、分かるわぁ~。」

と、リーガライドが、フィルスーナを賛美する。

 フィルスーナの仕事が上手いことに関しては、知っていることであるが、毎回感心させられるのだ、リーガライドは―…。

 リーガライドとしても、フィルスーナの仕事ぶりによって、助けられているので、感謝しかない。

 そして、聡明であることから、信頼できるのだ。

 「シスコンの兄がいるな!! リーガライドの方はどうなんだ? 王族と主要貴族の明日の動向は、分かっているのか?」

と、アルスラードは言う。

 アルスラードとしては、フィルスーナの作戦が成功している以上、リーガライドの今、言っていることがはっきりと分かっていないと王族や主要貴族の全員を捕らえることができないであろう。

 そして、リーガライドは表情を沈ませながら言う。

 「全員の予定を把握することはできた。だが、一人だけ、ラフェラルアートを発った王族がいる。そいつが向かっているのは、ミラング共和国だ。仮にクーデターが成功しても、ミラング共和国との戦争は避けられなくなる。覚悟はしてもらいたい。」

と。

 リーガライドは、裏の者ではなく、自分の足で、王族の使用人たちと日常会話に耽りながら、王族や主要貴族の予定を聞いて回っていたのだ。怪しまれているのは避けられないが、一応、明後日に反省の意見を述べると言って、明日には、そのための交渉に入りたいから、王族や主要貴族の予定を聞いて回り、国内にいる人、暇な人に交渉の仲介を務めるお願いをしようとしている、と―…。

 まあ、そのことによって、明日と明後日のどちらかを怪しまれたのは仕方のないことである。まあ、交渉の仲介を要請する前に、クーデターは発生するんだけどね。

 という感じに、リーガライドは思っていたりする。

 そして、その情報を得ていくなかで、すでに、ラフェラルアートを発ってしまい、ミラング共和国に向かって行ってしまった王族がいたのだ。それを裏の者が襲っても、結局、撃退される可能性が高いし、情報を集めた時点で、ミラング共和国の領土内に入ってしまっているのだ。

 その情報をフィルスーナもリーガライドにも、もたらされていなかったのだ。理由は、ミラング共和国からラフェラル王国に流れてくる商品の関税の撤廃に反対であり、かつ、彼らにクーデターを起こさせようとしているので、彼らに重要な情報をもたらさないために、一人の王族のミラング共和国行きの情報を与えず、密かに動かしたのだ。

 「ですかぁ~。やけに、一番上の兄のフィッガーバード様がいないなぁ~、と思っていたら―…。何かあるとは思っていましたが、ミラング共和国の方へと向かっていたとは―…。王国の裏の者を使ったのかもしれません。」

と、フィルスーナは言う。

 フィルスーナとしては、フィッガーバードがいなかったことに気づいていたが、どうしていないのかという理由までは完全には分かっていなかった。それだけ、情報秘匿のレベルが高かったのは確かだ。

 それに、フィルスーナ自身、シエルマスと関わり合いのある工作員の始末が中心で、そこまで手が回っていなかったのもある。

 ということで、ここでリーガライド側は重要なミスを犯したということになる。

 アルスラードは、すでに自分達が引き返すことのできない状態であることを理解している以上、ここで引き下がるわけにはいかない。

 そして、ミラング共和国側の方もラフェラル王国のクーデターが成功した場合、フィッガーバードを利用して、軍事的介入をしてくることは避けられない。そうなると、ラフェラル王国でのリーガライド側の正当性を確保しないといけない。血統における正統性はあるのだが、正しい道理という意味での―…。

 「いや、王国の裏の者ではないだろ。王国の裏の者は、すでに、俺の側についているというか、俺が王国の裏の者の統率を担当しているのだから―…。現場は、フィルスーナが実質、担当していることになっているんだがな。」

と、リーガライドは言う。

 リーガライドは、ラフェラル王国の裏の者の実態については分かっているというか、その裏の者のトップがリーガライドであり、彼の配下になっているのだ。完全に―…。

 そのようになっている一つの背景に、フィルスーナの兄であり、フィルスーナの人柄と、共に仕事をしたということが影響している。仕事での信頼があるということだ。

 そうなってくると、三人の中であることに考えが行きつくのだ。

 そう―…。

 (誰がフィッガーバードを護衛しているの?)

 フィッガーバードを護衛している者は、何者かということになる。

 それは―…。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(108)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(16)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


『水晶』の方はラフェラル王国のクーデターへと内容が移り、フィルスーナ大活躍が見られると思います。

『水晶』は第三章が想定以上に長くなっており、25回は超えることが確実であり、クーデターの内容が終わっても、ミラング共和国の介入やらとが―…。2023年度中に終わる可能性がこれでかなり減少していっています。悲しいことに―…。

それでも、納得できる形で物語を進めていくことにします。

応援のほど、よろしくお願いいたします。

一方で、カクヨムで投稿中の『ウィザーズ コンダクター』の方は、そろそろ投稿している箇所は、第8部が投稿し終えそうな感じです。執筆は第9部の終わりに入っており、第10部は、第9部より長くなるかもしれません。

ということで、『水晶』、『ウィザーズ コンダクター』、『この異世界に救済を』のPV数が増加しますように―…。

では―…。

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