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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
450/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(104)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(12)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を併合しようと企むミラング共和国。ミラング共和国は、ミラング共和国の商人達がラフェラル王国へと流す商品に対する関税を撤廃するようにラフェラル王国に要求。それを、ラフェラル王国の支配層の多くが賛成するが、その背景にはシエルマスの工作があったと思われる。そんななか、このような政策に反対するラフェラル王国の王子の一人であるリーガライドは、フィルスーナとともに、傭兵隊「緑色の槍」へと向かい、そこの隊長であるアルスラードと話し合う。結局、フィルスーナのアイデアとともに、クーデターを起こすことを計画し始める。それは、シエルマスにとっても、ラフェラル王国にとっても想定済みのことであった。

だが、シエルマスのスパイで、「緑色の槍」にいる者たちは、フィルスーナによって始末されていくのだった。

 同様に城の中。

 ミラング共和国側の会議が終わった時―…。

 それを影で監視していた者は―…。

 (こいつらは本当にしょうもない奴らだ。ミラング共和国がどういう国か、どういう支配者の国かということも知らないのだなぁ~。まあ、我が国が支配した場合、王族は確実に処分だ。戦犯を出した一族を生かしておくわけがないよなぁ~。そして、こういう貴族どもを従わせるために、宰相にも…ッ!!!)

と、心の中で言いかけると―…。

 影で監視していた者は、視界を一瞬で永遠に終わらせる。

 自らの生命が終わったことに気づくことなく―…。

 そして、そこに複数人の裏の者と思われる者が侵入してくる。

 ヒソヒソ声で―…。

 「こいつがシエルマスの者か―…。」

 「あの人の言う通りだな。」

 「始末しておいて、正解だな。」

 と、三人の影の者は、始末したシエルマスの者を永遠の闇の中へと処分するのだった。

 それを見ていたのは―…。

 (シエルマスがこの場にも忍び込んでいるなんて…ね。で、ここがミラング共和国に与している貴族たちの会議の場として使われている。まんま、王宮の中の特別会議室の中じゃない。呆れた~。それにしても、シエルマスが監視していた理由は、ミラング共和国に与している貴族の監視。それ以外にないね。)

と、心の中で呆れながら、ここまで堂々とおこなっているのは―…、と失念を抱くのだった。

 見ていた人物とて、ラフェラル王国の閣僚クラスの者たちが、重要な会議に使う時に使用される部屋で、ミラング共和国にとって有利になる会議がおこなわれていたなんて―…。

 思っただけで、ぞっとしてしまうものだ。白昼堂々という具合に―…。

 なぜ、彼らがこのような場所で会議をおこなっていたのか、というと―…。

 特別会議室は、閣僚クラスの者たちが重要な会議で使い、それを記録する者は宰相の配下ということになっており、宰相がミラング共和国側に与している以上、この部屋の使用はいつでも自分の権限で可能というわけだ。

 それに、どんな怪しいという思いが役人の側にあったとしても、一役人と貴族では、力の差が明らかに違うのだから―…。貴族の方が役人よりも偉いし、官僚貴族は世襲であるから、王宮の中でもかなり権力を持っているし、世襲が保障されていない役人は自らの身を守るために、大人しく、言われた通りにするしかない。

 そうやって、自分の体が動き続ける限り、役人という仕事を務めるのである。貴族には、気に食わない役人を辞めさせる権利はないが、降格処分を下す権利がある。

 その官僚貴族も元々は、王族に雇われた役人に過ぎないのであるが―…。貴族の階位と役職世襲権を過去に王が与えたことによって、王族の権力を強化していったことによる恩恵を受けただけに過ぎない。

 そして、特別会議室が宰相によって自由裁量になっているのは、政治に疎い過去のラフェラル王国の王が宰相に任せた方が得であるし、その宰相も王のために仕事をしていて、ラフェラル王国の歴史の中でも語り継がれるほどに後になっており、実際、ラフェラル王国は繁栄することになった。

 だからこそ、宰相が仕事をしやすいようにするために、特別会議室の自由使用の権限を与えたのである。

 この歴史に関しては、この影でさっきの会議を見ていた人物も知っている。昔、王宮の王族の教育係によって、確実に教えられることなのだから―…。

 今回、宰相の特別会議室の自由使用権限が悪用されたというわけだ。

 (官僚貴族は、ミラング共和国に支配された後も、自分達の地位は安泰だと思っているわけね。ミラング共和国の支配層に、ラフェラル王国のような広大な土地を支配することはできないからこそ、それを束ねるために、ラフェラル王国の官僚貴族が必要になると踏んで―…。浅墓すぎるわ。)

と、続ける。

 そう、この人物は、しっかりとミラング共和国がどのようなことをするのか予測できていた。

 (ミラング共和国が我が国を支配した場合、まず、考えられることは反乱を起こした私たちを処分した後、王族を反乱を起こさせるほどの無能であるということで、処分する。王族を根絶やしにする。ミラング共和国なら普通にやりかねない。シエルマスの統領ラウナン=アルディエーレと対外強硬派はそのように考える可能性が高い。その後、宰相やら官僚貴族の中でも権力のある奴らを殺して、ここに、軍事行政官を派遣してくる。その軍事行政官とともにアマティック教の教団員を派遣し、ミラング共和国に従順でない者を見せしめに殺していき、それを晒す。結果、恐怖によって、人々を支配する。官僚も役人も、含めて―…。ラウナン=アルディエーレという人間の性格を完全に理解できないが、かなり危険だということは分かる。この戦いはかなり危険なものであることも―…。)

と。

 この人物が集めた情報から推測して考え得る限りのことを言っている。

 実際、ミラング共和国は、ラフェラル王国を征服した後、王族を始末し、宰相以下官僚貴族の多くの当主を抹殺して、官僚貴族が反乱を起こすようなら、一族郎党始末しようとしている。

 それに加えて、領地貴族も反乱を起こそうとする者を殺そうとしている。

 役人に関しては、反旗を翻そうとかしていなければ、今まで通りに働くことができるようになる。

 そして、ラフェラル王国滅亡後の領土に関しては、領主貴族をいくつかの管区という形で纏め、その管区に軍事行政官を派遣し、彼らに支配させるつもりだ。

 五年と半年の間に、アマティック教の信者も増えたので、彼らも派遣して、ミラング共和国のことを悪く言おうとしている者を報告させ、見せしめとして抹殺しようと考えていたりもする。

 ミラング共和国が征服した場所でおこなってきたことを、そのまま実施しようとしているのだ。そのようにすることで、征服された場所からのミラング共和国への反乱を防いできたのだ。武力弾圧という方法で―…。

 そのような方法しかミラング共和国側は知らないし、そのようなことしかしない。対話などという甘い方法を実践する気はない。

 ミラング共和国の対外強硬派は、周辺諸国のことを自らよりも下に見ているのだから―…。征服が成功したことによって、その考えがより一層強化された感はある。

 成功は、自らにとって自信と勇気を与えるが、同時に、傲慢さも与えることになり、変更する必要はないということを抱かせる。

 それは、時として、同じ時はないということに反するかのように―…。

 結果として、変化することによって得られる利益と生存の道を無意識のうちに捨てさせ、過去の栄光というものに縛り付けられてしまい、最悪の場合、自らの破滅へと繋がっていくのだ。悲しきことに―…。

 一方で、ミラング共和国がラフェラル王国を征服した場合にしそうなことを推測しながらも、その中でキーマーンとなるミラング共和国の諜報および謀略機関であるシエルマスの統領、ラウナン=アルディエーレという人物についても、この人物は考察する。

 その考察も集めた情報によって、なされていることは事実であるが―…。

 ゆえに、これから起こすことは、危険性も高いことであるが、同時に、しなければラフェラル王国自体がなくなってしまうことになるのだ。

 ミラング共和国に支配されたラフェラル王国の領土内に住んでいる人々の生活は、ラフェラル王国があった時よりも貧しくなるのは確実だと言えるのだから―…。

 ファブラが現にそうであるように―…。

 (この戦いは、犠牲を払ってでも、国を守るためには必要なこと。そう思っていないとやっていけない、というのもあるけど、事実だから―…。そして、事が起こるのも近づいている。とにかく今は、危険な要素を探しながらも、成功の可能性をわずかでも上げていかないと―…。)

と。

 この人物は、辺りを見回しながら、何もいないことを確認すると消えるようにして、部屋から出て行くのであった。

 これから起こるであろう出来事が上手くいくことを心の中で祈りながら―…。


 ラフェラル王国の首都ラフェラルアート。

 その中の薄暗い場所にあるアマティック教の教会の中。

 この教会は薄暗くなっており、近くに住んでいるのはスラムの人間であり、隠れるのにはうってつけの場所だ。

 こんな場所にいながらも、黒い衣装で全身を覆っている者たちが幾人もいた。

 そして、ここで話し合いがおこなわれる。

 「………「緑色の槍」の方にいた我が同僚も気づかれて、全員始末された。ラフェラル王国にも優秀な裏の者がいるのは確かだ。この裏の者をどうにかしないと、「緑色の槍」の反乱を誘発したとしても、ミラング共和国軍だけで鎮圧することができなくなる。これは不味いことになったぞ。上に報告するか?」

と、一人の人物が言う。

 この人物もシエルマスのメンバーであるが、同時に、マネージャーという天成獣の宿っている武器を持っている者だ。

 部下で、「緑色の槍」に潜入していた者たちが全員、フィルスーナによって始末されてしまったのだ。それを見ることができずに―…。

 そして、始末した者の正体がフィルスーナであり、王族であることも分かっていないようだ。

 彼らは諜報力があると言っても、今の仕事は裏まで調べたりするのではなく、潜入している者の監視とシエルマスの情報が漏れないようにするための行動であり、始末も含まれている。

 「上に報告するにしても、こっちも王宮の官僚貴族どもを見張らせていた奴が殺されており、俺が証拠を消そうとして向かえば、あっちの裏の者によって、俺の命が危ういことになってしまう。そんな感じを抱いてしまっていた。まるで、見張られているという感じで―…。」

と、もう一人の人物が言う。

 この人物は、王宮にいる官僚貴族に潜入している、もしくは、協力関係にある者とのつなぎ役を監視することを任務としていた。

 今日、官僚貴族たちによる会議が開かれ、その後、それを監視していたシエルマスの潜入していた者が一人始末されたのだ。

 その時、もう一人の人物は、殺されたシエルマスの遺体を回収しようとしたが、シエルマスに属さない裏の者たちによって、運ばれていったのだ。

 その者たちを始末しようとしたが、その時、悪寒を感じてしまったのだ。そこへ向かえば、確実に、自身の命がなくなるのではないかと思えるぐらいの殺気を―…。

 いくら天成獣が宿っている武器を持つと言っても、扱えるようになってから三ヵ月しか経過しておらず、そこまで天成獣の宿っている武器の扱い方の訓練を受けていないもう一人の人物にとって、まるで格が違いすぎる人物に出会ったという感じだ。

 殺されるよりも情報を伝えるべきだと判断して素早く、ここまで逃げ来たというわけだ。

 逃げる中で何とか、その悪寒から振り切ることができたという確信を抱くことはできた。

 「…………………かなり良くないことになっていますねぇ~。東方担当のトップに伝えると―…、確実に、私たちがあの世行きですよ。」

と、このラフェラルアートのシエルマスのトップの人物が言う。

 彼は、東方担当のトップに今の現状を報告してしまえば、自分達を含め、本部から処分するマネージャーが送られ、全員あの世行きなのではないか、と―…。

 これは、彼らにとって大きな失態であり、取り繕うことなどできやしない。

 ゆえに、報告しないということに賛成することができる。

 自らの命を守るということをしていかないと危険であることを同僚の死から嫌でも理解させられるのだから―…。

 「じゃあ、どうするんだよ!!! 本部もすぐにこのことに勘づくはずだ!!!」

と、小声ながらも強くこの人物は言う。

 この人物とて、「緑色の槍」に潜入した部下が全員バレて、殺されてしまっている以上、本部の意見を窺わなければいけないだろ。偶然にも、処分されずに済むことだってある。

 このような話の流れの中で、生き残っているラフェラルアートにいるシエルマスの一員達は、これからのことで行き詰まりを感じていた。

 そして、その焦りから気づいていなかったのだ。

 ここはすでに―…。

 「勘づかれた時は誤魔化せば良………。」

と、途中で声が途切れる。

 今の言葉を言っていたのは、ラフェラルアートのシエルマスのトップの人物であり、彼は自らがどうなっているのか気づくことなく、自らの―…。

 「どうし…。」

と、この人物も言おうとしたが、最後まで言うことはできなかった。

 この日、ラフェラルアートのシエルマスは、このアマティック教の中で全滅した。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(105)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(13)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


ふう~、そろそろクーデターの本格的内容へと近づきつつあります。あくまでも現実のものではなく、『水晶』の話の中のことです。

次回の投稿日は、2023年7月11日頃を予定しています。

では―…。

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