番外編 ミラング共和国滅亡物語(102)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(10)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国の併合を企むミラング共和国の対外強硬派政権。そんななかで、ミラング共和国の商人達からラフェラル王国へ流れる自国の製品の関税を撤廃するようにラフェラル王国に要請しており、多くのラフェラル王国の王族と貴族が賛成するのであった。だが、その中で反対していたのは王子のリーガライドであり、妹のフィルスーナとともに「緑色の槍」という傭兵隊のいる拠点へと向かい、そこの隊長であるアルスーラドと話し合った。その中で、フィルスーナはクーデターをしようと言い出すのだった。それは、ミラング共和国の対外強硬派も望むことであった。そして、「緑色の槍」の中に潜んでいるミラング共和国のスパイをフィルスーナは始末するのだった。
フィルスーナは、良く城から抜け出す。
そんな中、偶々、裏の者の仕事場を見つけてしまうのだった。
王族であったからこそ、当時の裏の者たちは、どうしようか迷ったが、彼女は興味があったのか、入りたいと言い出してきた。
王族なので、父親であるファングラーデに許諾を取りに行ったのだが、フィルスーナが裏の者に入るのは許さんということで許可が下りなかった。
それで、諦めるようなフィルスーナではなかった。
フィルスーナは、始めてみた日から時々、裏の者がある組織へと通いつめ、裏の者の技を教えてもらったのだ。強情な方法で―…。
裏の者から、フィルスーナは、「強い女性」という意味の愛称で呼ばれるようになった。その愛称は、フィックシーナという。ラフェラル王国で使われている言語での言い方だ。
その後、フィルスーナは裏の者からの手ほどきを受け、元々、実力があったのか、メキメキ力を付けていくことになった。
こっそりと裏の者の任務にも参加し、ちゃっかり功績を裏で挙げていたりする。
裏切り者の始末もお手の物だ。
最初は、若干の抵抗があったが、今でもあるかもしれないが、それでも、感情的に慣れてしまった。それによって発生するストレスの対処法も見つけた。
それは、外でアウトドアをして、一人で大自然の中でキャンプをすることだ。
それがどうして、ストレスの解消となるかは、大自然の中で生きていることを感じることで、動物の命を奪うことで、自分が生かされていることに確認することができるからだ。
だけど、精神が異常な人であると判断するのは間違ったことになるので、ここで否定させてもらう。
歪まずに生きているということが、均衡を保ちながらできているというわけだ。
そして、裏の者の技術があることは、リーガライドやアルスラードはしっかりと知っている。
そう、クーデターを起こす可能性がある以上、その敵となる可能性のある勢力に情報を漏らすわけにはいかない。
というか、漏れてしまうのは避けられない以上、相手に与える情報はこちら側で統制をかけるべきだ。
そして、今回、シエルマスのスパイと思われる存在は、最初からこのフィルスーナによって始末された人物であることは断定していた。
「緑色の槍」の側でも、最初から入隊してくる者がどこそこの素性の者かはしっかりと把握するようにしている。部下の中でも信頼できる者に依頼して―…。
フィルスーナも、この依頼を裏で受けて、調査をしていた。
その結果、今、始末した人物は、アマティック教のラフェラルアートにある教会に何度も通っており、中で盗聴しているとシエルマスの一員であることが分かったのだ。
シエルマスの諜報力は周辺諸国の中で一番であるが、個々人の実力を順位にすれば、シエルマスの一員よりも優れた諜報能力を持つ者はちゃんといたりするのだ。
それに、シエルマスは五年と半年で規模を拡大したので、数は多くなったが、諜報する力が決して伸びたというわけではなく、場合によっては衰えたと言っても過言ではない。
諜報員の数が増加したので、教える新人の数も増加し、全員に完全に教え切れているというわけではない。それでも、優秀なのが入ってくるようになったので、優秀な奴は兎に角、優れていることに間違いないのであるが、一員間の実力差が大きくなっているということなのだろう。
この人物は優秀であったが、結果として、フィルスーナよりは劣っていることが発覚した。自らの命を奪われるということによって―…。
そして、アルスラードに抱き着いているフィルスーナは満面の笑顔であるが、すぐに、顔つきを真剣に、睨みつけているのではないかと思えるぐらいに変化させる。
「で、レイロードがシエルマスからのスパイということで良いのか? フィルスーナ。」
と、アルスラードは言う。
アルスラードも表情を温和な表情から、傭兵達を纏める長に相応しい冷酷な表情をする。
アルスラードにとって、傭兵隊を率いるということは所属している部下達に対して、公平に見なければならないし、温情だけではやっていけないことを理解している。部下の気持ちや意見を聞かないのはもっとダメなのであることも理解している。
気持ちや意見を聞いた上で、公平に判断を下さないといけない。
要は、一つの判断で、傭兵隊が分裂してしまうのであり、そのような結果にならないようにするために、尽力しないといけないということだ。
気苦労が耐えないということだ。
「そうね。でも、私も聞いたことあるけど、レイロード以外にもシエルマスのスパイはいる。確実に―…。ラフェラル王国を事実上併合しようとミラング共和国が考えているのであれば、反対しているリーガライド王子と繋がっていることが知られているので、ここにスパイを一人しか置かないというのは有り得ない。それに、仲間をレイロードから聞き出したとしても、無駄ね。レイロードが知らない同僚のお仲間さんが潜り込んでいる可能性は確実にあるのよ。」
と、フィルスーナは言う。
フィルスーナは、裏の者の仕事中の時は「兄様」ではなく、「リーガライド王子」という。これは、自分が捕まった時に、自らがラフェラル王国の王女であることを悟らせないためである。
それでも、目立ってしまっているので、意味のないことではあるが、気休めにはなると考えているようだ。
それに付け加えて、アルスラードがフィルスーナと呼んでおり、二人は抱き合っている以上、確実に、隠そうとしていることは意味のないことでしかないが―…。
そんな中でも、フィルスーナは仕事とプライベートはある程度、使い分けるようだ。
そして、フィルスーナがラフェラル王国の裏の者達からの情報によると、シエルマスは一つの組織に何人もスパイを送るという。そのスパイは同僚のスパイを何人か知っていたりするのだが、一方で、他にも同組織のスパイがいるということを知らせずに潜入させるのだ。
簡単に言うと、スパイ達は同様の目的で同じ組織から派遣されたスパイの全員を知らないというわけだ。
このような措置をとるのは、仮に一人のスパイが潜入した組織からバレたとしても、全員が芋蔓式に捕まらないようにするためである。そうすることで、潜入先の情報を得続けることができるのだ。情報を確実に手に入るということが重要だとシエルマスが判断しているからだ。
情報が途絶えるということは、手探りでの行動になってしまい、想定外の敗北を被ってしまう可能性が存在するのだ。そのようなことになってしまえば、シエルマスの責任を裏で問われてしまうのは避けられないことだ。
裏で、ということは、表で責任を問われることはないので、法がはたらくことはなく、シエルマスのトップが粛清処分を受けることは避けられないということだ。ラウナンは望みやしない。
フィルスーナは、シエルマスのその仕組みを知っているので、レイロードを処分したとしても、シエルマスのスパイが「緑色の槍」の中にいることは確実に分かる。どれだけの数がいるのか把握することができない。
要は、虱潰しするかのように探すしかなく、シエルマスのスパイの全員を倒すことはできないというわけだ。
まあ、逆に、レイロードを見せしめにして、シエルマスのスパイに警戒心を与えることを考える。
それに付け加えて、情報が漏れているということは、嘘の情報を流すことができるということだし、漏れていると分かると、それを知った上で行動することができるので、いろんな意味でやりようはある。
「そうか、諜報組織から逃れることはできないか。まあ、それでもやりようはいくらでもある。シエルマスか―…。ミラング共和国の諜報および謀略組織。そして、その統領はラウナン=アルディエーレとか言ったか。先のリース王国とミラング共和国の戦争でも裏で糸を引いていたというのは、界隈じゃ有名な話だな。厄介のところから狙われたもんだ。」
と、アルスラードは頭を抱えるのだった。
だけど、どうにかできないとは思っていない。
クーデターを起こす以上、ミラング共和国が軍事的介入をなしてくることは十分に分かっている。そうなると、どこかでシエルマスの統領であるラウナン=アルディエーレと事を構えることになるのは避けられない。
ラウナンやミラング共和国軍のトップであるファルケンシュタイロに勝たないとクーデターの成功はないのだから―…。
そうなると、敵というのがはっきりとしたという感じだ。
「シエルマスはこの地域では一番の諜報力と謀略する力を持った組織だから―…。だけど、最近のシエルマスの諜報員の実力もピンキリになっている感じ。数と規模を増員したという話を聞くけど、そのせいで、質が追いついていないみたいね。」
と、フィルスーナは言う。
これから「緑色の槍」の中にいるシエルマスのスパイを狩っていくことになる以上、シエルマスの全体の状況をしっかりと知っておく必要があり、それを探った結果、シエルマスの近況を十分に手に入れることに成功したのだ。
そこから得られた情報によって、シエルマスのスパイの個々の実力に差が見えていることを理解したのだ。この情報によって、危険な存在は誰かを理解し、それに当たらないようにするのだった。当たっても対処できるように―…。
「……………クーデターが成功することを祈るのみか。」
と、アルスラードは言う。
それが自分達にとっての生死における生命線なのだ。
王族のほとんどと貴族の大部分は、ミラング共和国からの輸入品に対する関税を撤廃することに賛成しているのだ。ラフェラル王国の権力の主要部は、ミラング共和国が抑えたのはかなり大きなことである。
それでも、この状況であったとしても、一寸先は闇と言われることをここから示されていくのである。
さあ、どうなることやら―…。
翌日の朝。
「緑色の槍」の全員が集められた場所で、アルスラードは昨夜、起こったことを話す。
「皆の共、昨日、シエルマスのスパイが判明し、粛清した。ミラング共和国のシエルマスは我が傭兵隊の情報を盗聴して、ミラング共和国に情報を提供しているものと見なされる。そこには、「緑色の槍」にとって、重要な情報が含まれていたのは確かだ。以後、シエルマスのスパイがいて、発覚した場合、昨日の夜のように、処分することにした。以後、気をつけるように―…。」
と。
このアルスラードの言葉は、このような意味である。
ミラング共和国の諜報および謀略機関であるシエルマスのスパイが傭兵隊「緑色の槍」に潜入して、うちらの情報をシエルマスに漏らしていたんだ。それを発見したので、見せしめとして始末した。だから、シエルマスのスパイの奴は分かっているよなぁ~。情報を漏らそうとすれば、お前らは確実に始末の対象になっているから―…。有無、それは許さないから、理解のほどよろしく。後、シエルマス、その背後にいるミラング共和国が何をしようとしているのか、ちゃんとこちらは把握済みだ。こんな姑息なことをしても意味はない。ということでぇ~。
つまり、シエルマスのスパイが諜報しても意味はないということを伝えようとしているのだ。
恐怖と同時に―…。
シエルマスのスパイも始末できるぐらいのことは、「緑色の槍」でもできますよ、という感じで―…。
(クッ!! 誰だよ、しくじった奴は―…。俺の知っているスパイは生きているから、別にいたのだよなぁ~。)
と、心の中で、シエルマスのスパイの一人は言う。
彼は、レイロードと同じく、シエルマスの一員として「緑色の槍」に潜入しているスパイである。レイロードがシエルマスのスパイで同僚であることは知らないが、「緑色の槍」の中で会話をしたことはある。そして、彼はレイロードがいなくなったことに気づかない。
あくまでも、同じ組織に属する同僚という感じだ。仲良くしているわけではない。同僚の一人にすぎない。
別の一人は―…。
(レイロードの奴がいない。ということは―…、レイロードがシエルマスのスパイだと気づかれたというのか。俺のことを話していないだろうなぁ~。より慎重に行動しないといけないなぁ~。レイロードがドジしやがって!!!)
心の中で、このように思っているのが、レイロードが知っている人物である。
自らに追及が及ばないことを祈るのだった。
だけど、そのような希望は今夜、打ち砕かれるのだった。
その後、アルスラードの話しは終わり、各々、自らの仕事に戻っていった。
シエルマスのスパイに恐怖を抱かせた上で―…。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(103)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(11)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
今日は、諸事情によりいつもの時間より遅くなってしまいました。申し訳ございません。
では―…。