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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
443/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(97)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(5)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ラフェラル王国を支配しようと企むミラング共和国は、ミラング共和国からラフェラル王国へと流れる商品への関税撤廃をミラング共和国の商人が主張し、それを反対している王子リーガライドが反乱を起こす可能性があると踏んで、それを利用しようとする。そんななか、リーガライドは妹フィルスーナとともにあの方のいる場所へと向かうのだった。

 ラフェラル王国の首都の中の郊外。

 そこには、大きな軍事基地がいくつかあった。

 その中へとリーガライドとフィルスーナは入っていく。

 二人が会いたい人物は一緒である。

 「兄様は、本当に、私があの方に会う時は機嫌を悪くするのですね。」

と、フィルスーナは言う。

 フィルスーナは、リーガライドがなぜ機嫌を悪くしているのか分かりきっている。

 それでも、揶揄いたくなるのだ。

 まあ、これも一種の遊びみたいなものであるが―…。

 「そんな訳ないだろ!!! 俺が傭兵隊にいた頃の同期だ!!! 本当に、兄を揶揄うのもいい加減にしろ!!!」

と、イライラしながらリーガライドは言う。

 このようにフィルスーナの悪戯が苦手だ。

 リーガライドとしては、今、自分と結婚している女性のようにお淑やかで、ガーデニングとかお菓子作りとかの方を趣味にして欲しかった。フィルスーナに関しては―…。

 フィルスーナの趣味がサバイバルだと思うと―…。

 まあ、このようなリーガライドの思いは、身勝手なものに過ぎないことは確かであろうが―…。

 そんななかで、リーガライド自身と結婚している女性も十分にリーガライド基準でお淑やかとは言えない。

 「まあ、兄様はリオーネ義姉様のことが好きすぎて、リオーネ義姉様に呆れられているということに気づきもしない。」

と、フィルスーナはあることをカミングアウトする。

 理由は、リーガライドと結婚しているリオーネから愚痴を聞いたりしており、そのことによる被害の原因であるリーガライドに文句の一つでも言ってやろうということのである。

 まあ、してやったり、という感じである。

 言葉は濁しているが―…。

 リオーネ自身は、リーガライドのことで不満はあるだろうが、好きであることに変わりはなく、リーガライドの尊敬できる部分も知っている。

 少しだけ、女性に対する固定的な価値観を抱くのは止めて欲しいと思っている。

 なぜなら、女性の全員がリーガライド基準によるお淑やかさを持っているわけでもないし、そういうことが獲得できるわけではない。

 女性にだって、いろいろな人がいるのに―…。

 男性だって、全員がカッコよくて、背が高くて、逞しいというわけじゃないだろうに―…。

 リオーネは、リーガライドにそのことに気づいて欲しい。

 リオーネは、フィルスーナぐらいしか愚痴に付き合ってくれる人がいないのだ。

 理由は簡単であり、リーガライドが王宮の中では少数派であり、リーガライドの父親である現国王からあまり良い扱いを受けていないのだ。そうなってくると、女性の側においても、同様の敵味方が分かれてしまうのだ。

 そのため、リオーネは王宮の中で味方がいないのだ。結果として、フィルスーナとリーガライドぐらいしか頼れる人がいないのだ。リオーネに仕えている人はここから除いている。彼らは味方と認識しているからだ。

 さて、話を戻し、このような文句を言ってやったフィルスーナは、リーガライドをジト~という感じの目をして、見つめるのだった。

 「……………………わかったから、言わないから。」

と、リーガライドは降参するのだった。

 リーガライドは、フィルスーナに見つめられて、そのフィルスーナの圧によって、逆らえないと理解したのだ。フィルスーナは武力という強さだけでなく、圧というのも兼ね備えているのだ。生物として一番の頂点に立っているのではないか。自分よりも上ではないか、と思えるぐらいの―…。

 「兄様は、ステレオタイプな価値観に囚われているのは良くないですよ。女性関係だけですが―…。それでも、どういうふうに、国を動かすべきかという大局に関する判断は素晴らしいものがあるのに―…。しっかりしてください。他の兄や弟達を押さえて、我が国の王になってもらわないと困るのですから―…。」

と、フィルスーナは言う。

 ラフェラル王国の王の中に、女性の王がいないのは偶々である。

 ラフェラル王国では、男性のカリスマ性のある王族が注目されることが多く、世間は国王イコール男性だという概念を持っている人々が多い。

 その流れという慣習と言ってもおかしくない結果、男性が国王になり続けていた。

 フィルスーナは自らがラフェラル王国のトップになりたいかというと、そういうわけではないし、好きな人もできたので、そこで、ゆっくりと一緒に過ごせたらと考えている。国王の地位は大変そうだと思っている。

 それに、フィルスーナは、王宮という狭い中で権謀術数ばかりの魑魅魍魎とした私欲ばかりの王族や貴族と日夜、政争を繰り広げるのは好きではない。それよりも、外で、自由にサバイバルをしながらの生活を送っておきたいのだ。それに、好きな人もそういう趣味があるのだ。

 そういう意味では、フィルスーナとその好きな人の相性は良いのかもしれない。嫌いなものは同じだし―…。

 そして、自らの兄であるリーガライドは欠点こそあるが、それでも、優れた能力を持っており、権謀術数好きの私欲ばかりの王族や貴族と戦うだけの度胸があり、傭兵隊で鍛えられた戦闘技術、王族教育によって得られた教養もあり、世間からの評判も良かったりする。残念なところも含めて、受け入れられているのだ。

 そういう意味では、次期ラフェラル国王になるのは、リーガライドが相応しい。世間の本当の支持はリーガライドに向いているのだから―…。

 (それに、兄様を支持しているのは、商人や工業の方々が多いですからねぇ~。それに一般の人々も―…。私は自由気ままに動く、変わった王族の人で通しておくの、その方が都合が良いですし―…。)

と、フィルスーナは心の中で思う。

 私欲というものがフィルスーナにないと言ったら、嘘ではないが、自分が国王になるよりも、兄を国王にした方が、物事は上手くいくと思っているのだ。

 次期国王の筆頭候補は、王族と貴族の中では、ファングラーデの長男で、父親のひも付きと周囲から噂されているラフェ=フィッガーバードである。この人物に対する印象はフィルスーナの中でも、リーガライドの中でも良くない。

 有り体に言えば、強い者に媚び、弱い者には罵詈雑言を浴びさせる人であり、幼い頃からというよりも、自分に見合わない地位のせいで、自分を見失ってしまった哀れな人だ。

 ゆえに、フィッガーバードがラフェラル国王になることを諦めれば、王国によって良いものと思ってしまう。昔は、優しい気遣いのできる人間なのに―…。性格から考えて、裏方の方が似合ってそうだと、フィルスーナは思っていたりもする。勿論、裏の仕事ではなく、裏方としていろんな人と交渉するという仕事のことである。

 次に、王族と貴族以外、商人や工業関係者たち、その多くがリーガライドが次期ラフェラル国王になることを支持している。理由としては、ラフェラル王国の利益、ひいては、自分達の基盤の利益をしっかりと考えているのだ。商人や工業関係者たちは、ラフェラル王国から自身の作った製品を輸出し、対外貿易で儲けようとしているのだ。ただし、それらの関係者の中にも、得られる儲けのほとんどを自分の者にしようとする輩がおり、それをフィルスーナは嫌っていたりする。彼らのような輩が蔓延ってしまうと、ラフェラル王国の経済にダメージを与え、貧困による社会保障を増やさないといけなくなるからだ。

 儲けは一部は今後のために、得られた多くは自分と自らの製品を作ってくれた人々のために還元すべきだと、フィルスーナは思っている。経済を回してもらう方が、ラフェラル王国にとって都合が良いし、栄える方が、スラム街のようなものが形成されづらくなると考えているからだ。スラムは貧困の象徴だとフィルスーナが認識しているからだ。

 まあ、本当の意味で言えば、フィルスーナがラフェラル王国の国王にして、リーガライドを補佐に回した方が良いのだろうが―…。

 「俺も王になりたいと思っていないのだが―…。というか、フィルスーナのようなのが国王になってくれると俺は助かる。俺も政務は支えるが、俺自身、トップという器だとは思えないんだが―…。」

と、リーガライドは言う。

 リーガライドは国王になりたいと、これぽっちも思っていない。

 リーガライド自身が、頭が固いというわけではないが、フィルスーナという優秀すぎる妹を見ていると、彼女の方がよっぽど国王に向いているのではないかと思うぐらいだ。

 商人や工業関係者にフィルスーナの方がラフェラル国王に向いていると言うと―…。


 ―いやいや、あの人が優秀な人ではありますが―…。如何せん、女性ですから―…。周りが支持するかどうかわからないんですよぉ―


 困ったような顔をするのだ。

 続いて―…。


 ―でも、やっぱりリーガライド様の方がラフェラル王国の次の国王に相応しいですよ。人格的にも立派ですから―


 という、言葉が聞かれるのだ。

 リーガライドの方が困惑してしまうのだ。

 リーガライドは、ラフェラル王国の歴代の国王が男性ばかりであることを知っている。その歴史はたまたま男性のカリスマ性のある人々が多かったからだし、偶然の要素も絡んでいるからというのも知っている。

 だけど、リーガライドは、自らの妹であるフィルスーナを見ていると、彼女の行動力とか、情報収集力とかから、国王に向いているのはフィルスーナの方であり、女性が国王に就いた方が今のラフェラル王国の繁栄に繋がるのではないだろうか。

 それに、リーガライドは周囲には言っていないが、傭兵隊にいた頃、戦い方も鍛えられたが、交渉術も鍛えられている。むしろ、誰かと友情を深めたり、交渉したりする方が楽しいと思っているのだ。所属する立ち位置があるのは分かっているが、身分とか関係なく、一個人として―…。

 そういう意味では、ラフェラル王国の国王になってしまうと、それが不可能になってしまうのではないかと思ったのだ。

 ラフェラル国王という肩書がどうしてもついて回ってくるせいで―…。

 そういう意味では、リーガライドは交渉担当官になりたいと思っているのだ。いまだに、その職に就くことはできないでいるのだが―…。

 「ラフェラル王国の人々の価値観で、国王は男性の方が良いというのは、変えるのにかなりの時間がかかるんです。女性で国政の仕事をしている人は僅かばかりいますが、成果の目立つ役職にはいません。それに、私はあの方と生涯を添い遂げるんです。」

と、フィルスーナは言う。

 最後だけは、曲げることができないし、譲る気は一切ない。

 それだけ、あの方に盲目なのだ。

 別に怪しい人ではないから、そこのところはご安心ください。

 「本当、自分の決めたことに関しては、強情というか、周囲の反対関係なく進めようとするよな。我が妹ながら―…、感心して良いのか、呆れたら良いのか―…。」

と、リーガライドは手に頭を当てながら言う。

 リーガライドも分かっている。

 フィルスーナを変えることは―…。変えることができるのは、悔しいが、あの方だけであろう。

 「それは、兄様に任せるとします。そろそろ着いたと思いますので―…。」

と、フィルスーナは言う。

 目的の部屋が見えたからだ。

 すでに、その施設の中に入っていたが、話し合いが長くなってしまったのだ。

 リーガライドとフィルスーナが到着した部屋の名前は、傭兵隊長部屋と書かれてあった。

 その部屋のドアをノックする。

 トントントン。

 そのノックする音が聞こえたのか、中にいる人物が返事をする。

 「誰だ。」

と、部屋の中にいると思われる人物からの声が聞こえる。

 「リーガライドだ。アルスーラド、用件があるから来た。」

と、リーガライドは言う。

 「分かった、中に入れ。」

 アルスラードという人物の入室許可の返事があったので、二人で部屋の中に入った。

 「事前にこちらへと伺うことを言ってくれれば、ここではなく、王宮の方へと向かったのに―…。相変わらず―…。そういうことか。」

と、アルスラードは、予約もなく、リーガライドが来た理由を理解するのだった。

 アルスラードは今日、フィルスーナと会う約束をしていた。

 そして、その当日に、リーガライドとともにやってきたので、フィルスーナが誘ったのだろうと思ったのだ。

 ここにいる人物こそが傭兵隊の長であるアルスーラドだ。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(98)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(6)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


では―…。

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