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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
442/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(96)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(4)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国の商人達によって出されているラフェラル王国に流入するミラング共和国からの商品の関税撤廃の案をラフェラル王国の王子の一人であるリーガライドが反対するのだった。そして、政府と対立すことになったリーガライドは―…。

 会議の後。

 リーガライドは、王宮の中にある中庭にいた。

 (ふう~、俺も熱くなりすぎた。反省だな。口だけでも責任を取ると言っておけば良かったと思いたいが―…。あれは絶対に、俺に責任を押し付けて、自分達は良い思いをしようと考えていやがる!!! 本当に、ここに住んでいる人々の利益ではなく、己の利益のみか!!! 内情はかなり酷いもんだな!!!)

と、心の中で思いながら、反省もする。

 リーガライドは、裏の者たちを使い、しっかりと大量に情報を集めていた。ミラング共和国に関する情報を―…。

 その中で、ミラング共和国に支配された国の実態、リース王国がどうしてミラング共和国に敗れたのか、という理由を知っている。

 そして、ラフェラル王国の中でも、十分に上層部には知られているはずなのに―…。

 (ミラング共和国が、我が国を支配してくる中で考えられるのは、ミラング共和国の諜報および謀略機関とか言われているシエルマスの存在か。あの組織、征服するとして指定する前からミラング共和国の周辺諸国に諜報員を潜り込ませ、内情を探り、必要とあれば、支配される国の上層部をも自らの手駒にすると聞いている。ということは、我が国にも諜報員が…な。)

と、リーガライドは心の中で思いながら、溜息をつく。

 溜息は周囲から、運気がなくなるように見られるが、自らの気持ちを落ち着かせるためには必要なことだ。体のバランスを保つために―…。

 リーガライドも気づいていないわけではない。

 最近というか、ここ数年、ミラング共和国のスパイと思われる者たちが、ラフェラル王国の要人たちと接触していたことを―…。接待漬けにしていることも―…。

 リーガライドは、そういう接待漬けになるべきではないと思っていたからこそ、彼らと距離を取っていたのであるが、それが返って仇となったというわけだ。

 リーガライドは、ラフェラル王国の裏の者との繋がりと同時に、ある傭兵隊との繋がりを持っている。一部の役人とも―…。

 そういう意味で、周辺諸国からの情報はしっかりと入ってきており、その中で一番の危険性があるのがミラング共和国であることを結論付けた。

 だからこそ、ミラング共和国の危険というものを何度も言ったが、聞いてもらえることはなかった。

 それに―…。

 (あの宰相ファッグライドがミラング共和国と繋がっているんだよなぁ~。それに、昔の親父なら、こういう場面では確実に、ああいう宰相は切り捨てていたはずだ。ラフェラル王国にとって百害あって一利なしの存在だからなぁ~。何かあるのか? アマティック教も最近は、うちの国でこっそりと活動していやがる。裏の者に探らせているが、情報を掴めていない。それに噂じゃ、アマティック教の教主は、洗脳することができる天成獣の宿っている武器を扱っているとか―…。これは厄介だな。生の属性でも特殊能力をもっている天成獣の宿っている武器を扱うことができなければ、不利なのは間違いない。あ~、国難だらけだ。)

と、リーガライドは心の中で思う。

 リーガライドとしては、最近、ラフェラル王国に教会を構えているアマティック教もマークしている。良い意味ではなく、悪い意味で―…。

 アマティック教がミラング共和国の政府首脳部と一緒に行動しているのは分かっている。

 ゆえに、アマティック教は警戒すべき相手であり、その宗教に関する情報も集めている。

 リーガライドにとって、足りないのは軍事力ではなく、政治的味方があまりにもいないということだ。

 だからこそ、このように悩みまくっているのだ。

 そんななか―…。

 「兄様、どうされたのですか? そんなところでお悩みになって―…。」

と、リーガライドに声をかける。

 リーガライドは、その人物の声を何度も、何度も聞いたことがあるので、誰かとすぐに区別ができる。

 「フィーか。今日は、あいつに会いに行く予定じゃないのか?」

と、リーガライドは言う。

 リーガライドに声をかけてきた女性は、リーガライドと同じ母親から生まれた妹である王女のラフェ=フィルスーナである。彼女は聡明であり、人徳を兼ね備えた女性であり、リーガライド自慢の妹である。

 そして、フィルスーナは、今日、ある人物と会う予定となっているのだ。王女である以上、中々、城の外に出して貰える機会が少なかったりするのだ。王女の安全面という観点から―…。

 なのに、なぜ、城の中にいるのだった。

 「ええ、残念なことにお父様と宰相様が、外は危険なので、暫くの間、城の中にいるように―…。」

と、フィルスーナは言う。

 だけど、フィルスーナはお花畑のような環境に育っていると話し方から思いがちになってしまうだろうが、趣味が完全に、インドアとは全く逆の方なのだ。

 昔からよく城から抜け出して、外で散歩するわ、お付きの人は大変な思いをして、いつも怒られてしまい、問題児扱いされてしまうのだ。

 そして、極めつけは、外で狩ってきた肉を焚火で焼きながら食べて、美味しいと言い始めるわと、ラフェラル王国の王女の価値観にあるまじき行為をしまくっているのだ。

 そういう背景をリーガライドは知っているので―…。

 「城からこっそりと抜け出すことはしないのだな。」

と、リーガライドは言うのだった。

 フィルスーナは、困りながら―…。

 「そのことも考えましたけど―…。」

 と、少しフィルスーナが間を開けている間に、リーガライドは心の中で―…。

 (……考えてはいたんだ。)

 と、呆れるのだった。

 リーガライドの頭の中には、フィルスーナが外出禁止と言われたとしても、そこでめげることはなく、むしろ、いろんな方法を使って、城の外に出ようとするはずだ。

 そのための器具が大量に、フィルスーナの部屋の隠されていたり、いろんな衣装がしまっているクローゼットの中に、明らかに裏の者が使いそうな服すらあるのだ。

 お付きの者は、そのような裏の者の服を処分したりするのであるが、どこからとまた増えてしまうので、諦めてしまっているのだ。

 そのお付きの者の気持ちは、もう少しお淑やかになってください、とのことだ。

 それでも、フィルスーナが何も学んでいないかというと、それは嘘であり、勉学には普通に励むし、頭は良く、城の外の子どもにも教師役はしないが、いろんなことを教えてくれるし、市井の情報収集もしてくれる。

 裏の者からでは集められない情報も集まってきたりする。

 そういう面では、リーガライドもフィルスーナの行動には感謝している。

 フィルスーナは続ける。

 「今回は、あの方なので、そろそろお兄様も情報交換をしたいのではないですか?」

と。

 (本当に、フィーは俺の今したいことを先回りして読んでくるとは―…。侮れんな。)

と、リーガライドは心の中で思う。

 フィルスーナは、なぜか先読みをして行動してきていたりする。能力者なのではないかと思うぐらいだ。本人にそれを確認することもできないし、聞いたとしてもとぼけていたりするので、答えを聞けず仕舞いだ。

 理由としては―…、フィルスーナは自身が能力であり、未来予知ではなく、相手の求めていることをすぐに理解できる能力である。この能力のおかげで、外がどうなっているのか、市井がどのようなことを望んで、悩んでいるのかを理解することができた。ゆえに、フィルスーナは自身の能力に感謝しているし、能力に関して自学した中に、能力者はあまり、世間にその能力を晒さないようにしていることも理解している。だからこそ、兄弟姉妹であったとしても、能力に関しては言わないようにしている。

 そして、リーガライドはフィルスーナに敵わないと思いながらも、感謝する。

 「ありがとう。あいつの所へと向かおうか。俺と一緒ならいくら王様でも、宰相でも、城の外に出させてくれるであろう。」

と、リーガライドは言う。

 外に出さないようにしたら、強行突破することも考えながら―…。

 そして、リーガライドとフィルスーナは、ある人物のいる場所へと向かうのだった。


 一方、城の中。

 とある部屋。

 薄暗くなっている場所。

 その場所では、幾人かのラフェラル王国の要人たちの話し合いがおこなわれていた。

 「ミラング共和国側の商人の要求を受け入れない王子がいるとか―…。そいつの排除にいつまで時間がかかっている!!!」

と、一人の人物が言う。

 この人物の顔は仮面で隠されているので分からないが、体形ははっきりと分かるぐらいにぽっちゃりとしていて、普段から運動をしていないことが分かる。

 この人物は、あまり外に出ることはないし、業務に関しては、部下ではなく、ミラング共和国の指示以外では一切動くことはない。

 部下に一任するのではなく、何もしないことで政治的失点をなくそうとしているのだ。本当に必要なことをすることなく―…。不作為だ。

 「時間がかかるも何も、何回も、何回も、暗殺者を仕向けたが、あいつの部下の者たちや、あの王子自身によって、失敗している。まあ、それがどこからの者か王子の側は掴むことができていないようだが―…。」

と、別の人物が言う。

 ぽっちゃりとした人ではなく、スラっとした細マッチョな人物が言う。

 この人物は、軍人上がりなのだろうか、言葉がハキハキとしたテンプレのような感じを抱かせる。ステレオと言っても良いだろうか。

 軍に所属していたのは、数年前までで、すでに壮年期に差し掛かっており、白髪も混じりになっており、かつ、貴族出身であり、この人物の兄に何かあった時のおまけでしかなかった。その兄は、息子が十分に成長し、彼がその貴族の一家を継いでいる。その兄に対して、この人物は嫉妬していたりする。その兄はリーガライドや、フィルスーナのことをかなり評価していたりするし、リーガライドと関係がある傭兵隊のことも同様に評価している。

 兄が憎い上で、さらに、リーガライドやフィルスーナのことも憎んでいるのだ。

 そして、この人物は軍人上がりでもあるが、自らの情報網を構築していたりする。

 さらに、他国の謀略機関と繋がっていたりもする。そこに情報を自国の情報を提供していたりする。

 まあ、裏切り者というわけであろう。状況によっては―…。

 「まあ、良い。今回は何人かシエルマスの方々も来てくださったのだから―…。我々が欲しいものは国か。」

と、ここでのリーダー的な役割を果たしている人物が言う。

 この人物は、すでに聞いたことのある声だ。

 まるで、王様にイエスマンをしていた時とは違う口調になっていた。言い方というか。言葉はそこまで変わらないのに―…。

 「いや、そうでないだろ。欲しいのは我々が安泰に暮らすための利益であろう。主人を変えるだけの行為でしかない。」

と、言う。

 その言葉に続いて―…。

 「ファッグライド宰相様は、やっぱり素晴らしいことを言われます。」

 そう、さっきのリーダー的な役割を果たしている人物とは、ラフェラル王国の宰相であるファッグライドだ。

 彼は裏切り者であり、ラフェラル王国の存続よりも、自らの権益を望み続ける。安泰という名の―…。

 ファッグライドは、貴族の中でも侯爵の家の出であり、宰相に就任することができる要件を満たした上で、今の王であるファングラーデの推薦で、二年前から就任している人物である。

 そして、この会議の場には、シエルマスの人間が参加しているのだから―…。

 シエルマスの人間は、ミラング共和国の要求を言いに来ただけであり、このような馬鹿話に付き合っている暇はない。

 「こちらも用事がある。だからこそ、簡潔に言う。そのリーガライドという王子を煽って、傭兵隊どもに反乱を起こさせろ。そうすれば、我が国の介入もしやすくなるだろ。後は、我々の指示に従ってもらう。傭兵隊ごときが我々に勝てるはずがないのだからなぁ~。」

と、シエルマスの人物が言う。

 この人物は全身が黒ずくめに覆われているので、その姿がどんな要望かは分からない。

 (傭兵隊どもに死者が出れば、そいつらを俺の道具に変えてやるとするか。俺の武器で―…。)

 このシエルマスの者、何か良からぬことを企んでいたりする。

 彼もまた―…。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(97)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(5)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


『水晶』および『この異世界に救済を』、『ウィザーズ コンダクター』(カクヨムのみ)を読んでいただき感謝しかありません。

『水晶』は、番外編の第三章に突入し、これ長くなりそうだなぁ~、と感じさせていると思います。まだ、重要な人物を完全に登場させていないので、第三章のプロローグのような感じだと思ってください。

『水晶』の番外編が予想以上に長くなってしまい、サンバリアへと向かう瑠璃たちの方を再開できずにいます。サンバリアの章までのネームは数年前に完全に仕上がっており、ネーム最終章の執筆をしており、第283話の途中まできています。あと、ネームの方は50話もかかることなく、第一編が完結するのですが―…。

ということで、無理しない程度に、体調に気を付けて執筆していきます。

では―…。

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