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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
440/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(94)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(2)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ファブラ侵攻から五年半が経過し、小国を新たに二つ併合させることに成功したミラング共和国は次の目標として、ラフェラル王国を選ぶのだった。シュバリテは慎重な態度を示しているが、ラウナンはラフェラル王国の征服に賛成するのだった。

 シュバリテは唖然とした表情を浮かべるしかできなかった。

 ラウナンがラフェラル王国の完全征服するという方針を認めてしまったのだ。

 それでも、すぐに、冷静になったシュバリテは言い始める。

 「ラウナン!!! さすがに、ラフェラル王国の完全征服はミラング共和国にとっては不味い。それなら、一部の領土を征服するにとどめて、その後は交渉で!!!」

と。

 だけど、ラウナンは、

 「シュバリテ様が不安に思う気持ちはわかります。しかし、シュバリテ様が思っている不安は取越し苦労の類でしかありません。」

と、言い始める。

 ラウナンも決して、とち狂ったからこのようなことを言いだしたわけではない。

 ラウナンは、ラウナンなりの勝算というものがあった。

 (それに、ラフェラル王国への侵攻の準備はしっかりと前々から考えているんですよ、シュバリテには言っていませんが―…。あの国は、鉱山だけではなく、港もあり、かつ、農業、漁業が大変に優れた国。そんな国を征服しないという手はないし、計画の中に入っていないわけがありません。だからこそ、前々から、シエルマスを派遣して、いろいろと情勢に応じて、準備を開始していたんですよ。王子の一人が反対しようが、関係がない。私たち、シエルマスから狙われた者からは逃れられない。)

と、ラウナンは思う。

 ラウナンは、自らが最強の存在というか、裏ですべてのことを操っており、すべての人はラウナンの掌の上で踊っている存在でしかないと―…。

 ラウナンは、五年と半年前からすでに、ラフェラル王国に目を付けており、そこを侵略するためには、かなり時間がかかると想定して、準備を開始していた。

 シエルマスを何人も派遣し、ミラング共和国の商人とラフェラル王国の官僚と王族への伝手を作り、さらに、懇意する関係になるように演出していたのだ。

 そうすることで、ラフェラル王国の内部からの崩壊を狙おうとしたのだ。

 その中で、取り込むことができなかった人物の一人に、関税撤廃に反対している王子がいるのだ。彼の人間性に関して、王族や官僚は悪い噂を流すが、どうもそういう感じではないようだ。

 その王子は、ある傭兵隊の隊長と親友のように仲が良いようだ。

 その傭兵隊は、ラフェラル王国から依頼を受けて、ラフェラル王国の兵力を補っている感じだ。ラフェラル王国も軍事力はそれなりにあるし、リース王国に少しばかり劣るだけだ。その軍事力では広い国土に満遍なく対応することができないと判断して、傭兵隊を常時雇用しているのだ。

 その傭兵隊に関する情報について、ラウナンもしっかりと把握しているが、それでも、その傭兵隊の実力を計ることができていない。なぜなら、傭兵隊は戦っていないわけではないが、本気を出して戦っているとは思えないのだ。

 そういうことをラウナンが抱いている以上、傭兵隊のことをかなり警戒している。

 それでも、ラウナンにとってラフェラル王国を支配することは簡単なことだ。

 すでに、王子では対処できないぐらいのラフェラル王国の中での味方を得ているのだから―…。

 「理由は何だ?」

と、シュバリテは聞く。

 シュバリテには、ラウナンに何か策があってそのようなことを言っているのは確かであろうが、それがどういうものかを把握しておく必要があると判断した。

 最近は、成功しているので忘れられてしまうが、気が大きくなりすぎて、実力に見合わないことをし始めてしまい、引き返せなくなる可能性があるからだ。

 特に、ラフェラル王国は大国なのだから―…。

 「ええ、理由は簡単です。すでに、ラフェラル王国の中に、ミラング共和国の味方になってくる者たちを勢力にしているからです。今回の関税撤廃問題においても、王族、官僚の重役どもの多くがすでに、シエルマスの言う通りに動くようにさせています。彼らもたくさんの弱点と欲望というものを抱いていたので、我々の思い通りにできるようにできました。ならば、ここで慎重になってしまうのは好機を失ってしまうことになってしまいかねません。だからこそ、シュバリテ様、今こそ、ラフェラル王国を征服する時なのです。」

と、ラウナンは言う。

 それは自らの部下から伝えられる情報であり、その中に嘘がないということをちゃんと理解しているからだ。

 不安要素があるとしたら、傭兵隊であるが、それも大したことにはならないだろうという思い込みがあった。

 折角、食べごろになるように準備したのだから、そこで日和るのは良くないと判断した。ラウナンの行動原理から考えると、日和ることは有り得ない。

 シュバリアの側につかなかったのは、シュバリアが征服するのに好機になっても、動いてくれなかったからだ。

 ゆえに、何のためにシュバリテの側についたのか、ということになってしまうのだ。

 ラウナンは無理矢理でも、シュバリテを従わせることもできる。それほどの力をラウナンは持っている。

 さらに、シュバリテもラウナンという人間が、ミラング共和国の中で実質、一番、権力を持っているのではないかということを理解している。

 だからこそ―…。

 「分かった、許可しよう。」

と、言うしかなかった。

 (………ラウナンが言っていることだから、事実であろうが、何か嫌な予感がする。)

と、シュバリテは心の中で思うのだった。

 そのシュバリテの不安に思う気持ちとは裏腹に、対外強硬派の主要幹部の四人は、ラフェラル王国の征服に意欲を燃やすのであった。

 シュバリテの懸念はある意味で正しかった。


 ラフェラル王国。

 この国の歴史は都市国家から始まった国である。

 最初のうち、直接民主政を導入していた。

 その時代から、今の首都であるラフェラルアートでは、遠隔交易と内陸交易の交差点として栄えており、嵐などになる日が少ないことから良港と目されている。

 そんな都市国家だったからこそ、そこから得られる貿易利益で都市国家を発展させることに成功し、次第に、その中で貿易商として栄えた一族がラフェラルアートでの政治実権を握るようになり、その一族が政治の長となった。

 この国は珍しく、あまり対外領土拡大には消極的であった。理由は、対外遠征による費用がかかることを噂やら、他の商人から聞いており、戦争で利益を上げるよりも、周囲との平和な関係による交易での利益の方が統治におけるダメージがなくて良いということを政治方針としていたからだ。

 それでも、巻き込まれることがなかったと言えば、嘘となる。

 むしろ、ラフェラルアートの周辺の争いの中で、調停に立つことが多く、次第に、ラフェラルアートの政治実権を掌握する一族に支配を任せた方が上手くいくのではと思い、次第にラフェラルアートに併合されていく中で、政治実権を掌握した一族とその周囲が国家にした方が良いということで、連邦王国という政治体制へと変容していった。

 この連邦王国とは、王の権限が強いというわけではないが、それでも、一つの王に重要な仲裁裁定の権利を渡し、外交権の一部を委譲することによって成り立つものである。ただし、現実世界の連邦王国という定義とは異なっている可能性があるので、注意をする必要がある。あくまでも、この異世界における定義であることを忘れないで欲しい。

 連邦王国になってからは、諸侯が独自の政治をおこなったりもしながら、ラフェラルアートを支配する一族が王国の王ということになった。その一族が世襲可能にもした。

 こうして、ラフェラル王国が成立することになる。

 その後、ラフェラル王国は、王国の力を強くしようとしながらも、諸侯との話し合いで、彼らの自治権を過剰に奪うことはしないようにした。

 そして、ラフェラル王国の内政もより組織的なものとなり、官僚組織の整備されるようになった。役人選抜や軍事選抜には誰もが参加できるような試験での選考となっていった。この歴史は長い。

 王は、男性も女性もなることができるが、原則、男性の方が有利である。

 そんな国であるが、直接民主政が完全になくなってしまったが、民主政自体がなくなったわけではなく、ラフェラルアートの中での政治のみ議会があり、そこで審議され、法律を決めていくことになっている。官僚は別に存在することはなく、ラフェラル王国と同一のものとなっている。

 国家というものがすべて同じ体制である必要はない。

 国家によって、事情は異なるのだから、完全に同じになることは有り得ないのだから―…。

 ただし、その国に住んでいる人々にとって、本当の意味で利益になっているということが大事なのであるが―…。

 そのことを無視して、適当な言葉を並べて理解させても、結果は決して良い方向にいくとは限らない。注意が必要だ。人間は完璧や完全な存在になることができない以上、本当の意味で正しいかを判断することはできない。このことを聞いて、自分勝手に何でもして良いということにはならない。お前もまた完全にも完璧にもなれないのだから―…。

 さて、話を戻し、直接民主政は完全になくなったとしても、国民の中の一部はちゃんと政治は民の者だという認識をしっかりと持っている。なぜなら、民が政治にしっかりと関心を政治に関して勉強してから持つようにしなければ、国というものは簡単に暴走し、民を巻き込んで滅ぼすということを理解しているからである。

 この一部の者たちは、普段から自らの仕事をしていながらも、学び続けることと、疑い続けて、正しいかどうかをしっかりと考え続けることを怠っていない。だからこそ、本当の意味で正しい判断を多くの面で、確率を高くして下すことができる。すべての面ではないとしても―…、だ。

 そして、自らが失敗した判断を下した時に、自らの過ちを認めることができるほどに、人格面でも優れている。

 そして、ラフェラル王国の住んでいる多くの人々は、普段の仕事や生活に忙しく、そのように政治に関する勉強をする時間はないし、そのことを理解できないと認識している。時間を作ろうとすれば作れるし、いろんなところから情報を集めることができないわけではない。だけど、そのようなことはしない。王国の政治は、安定しているし、生活をする上で困る者たちはほとんどいない。歴代の政治が築き上げたものが良かったことの証左なのかもしれない。

 そんな感じで、これ以上の説明は長すぎるかもしれない。

 さて、ラフェラル王国では―…。

 「なぜ、ミラング共和国との関税撤廃に関する条項に反対する。リーガライド!!!」

と。

 ラフェラル王国の現国王、ラフェ=ファングラーデは、怒りの表情を大会議の間で繰り広げる。

 この大会議の間とは、ラフェラル王国の首都ラフェラルアートの中央に聳える巨大な茶色に近い黄色の城壁で巡らされている城の中にあり、貴族と王族が会議をする場所として使われている部屋である。

 この部屋は、ラフェラル王国の首都にある王族の城の中で、最も広い部屋であり、他国の使者や要人を招いて、パーティーを開くこともできるぐらいだ。

 王とその許可された者しか入ることのできない大会議の間の奥にある「王の段」という部屋の中でも三段ほど高い場所にある椅子に座っているのが現国王だ。

 ファングラーデが王となったのは、今から十五年前ほどであり、父親である先代から受け継いだものである。

 ファングラーデ王は、非凡という類のものではないが、官僚たちからの評価は普通であり、平凡な人であるという印象を受ける。

 今は、王の段にある椅子に座っている関係で、王としての威厳があるように見える。

 そんななか、ファングラーデはこれからミラング共和国との間の貿易での関税撤廃に反対している者がいるのだ。それもよりによって―…。

 「お父様、いや、王様。ミラング共和国の狙いは我が国から富を奪い去ることです。理解できますか。今回の関税撤廃は明らかに片務的であり、我が国のみが関税撤廃であり、ミラング共和国は今まで通りじゃないか。それに、鉱山資源なら、我が国にも十分にあります。なのに、ミラング共和国からわざわざ輸入する必要はないと思いますが―…。」

と、リーガライドと呼ばれる人物が反論する。

 ラフェ=リーガライド。

 この人物はラフェ=ファングラーデの三男であり、第二夫人の子どもである。第二夫人はすでに故人であり、十六年前に他界している。

 ラフェ=リーガライドは幼いながらも、母親やそれに近しい人々から教育を受けており、ラフェラル王国がどういう歴史を持ち、周辺諸国とどう関わってきたのかしっかりと教え込まれている。それだけでなく、剣術や素手での戦いについても学んでいる。

 その他にもいろいろと学んでいるし、一時は、傭兵隊にも所属していたとか―…。

 そんな人物であるが、今回のミラング共和国側の要求には呆れるしかなかった。

 それは、ミラング共和国が征服戦争に成功しているから、自分の言うことは何でも聞いてもらえると勘違いしているし、ミラング共和国が征服した国の支配の方法が残酷である情報も流れている。

 それに、征服された国の支配層は全員ではないが、一掃されていることが多いのだ。

 そのことから判断して、ミラング共和国に支配されたら、王族、貴族、国民を含めて不幸になるからだ。

 その征服のための布石としての、関税撤廃だということをリーガライドは見ているのだ。

 ゆえに、今回の関税撤廃に反対している。

 不平等なものであることも分かっているし―…。

 そして、ファングラーデはリーガライドの言葉に反論するのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(95)~第三章 傲慢も野望が上手くいくことも長くは続かない(3)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


今日、体調崩しました。

明日の投稿は可能かどうかは分かりませんが、無理しない範囲でしていきたいと思います。

今は、大分良くなっているのですが―…。昼当たりに崩して―…。

では―…。

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