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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
438/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(92)~第二章 ファブラ侵攻(25)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ファブラの内戦は、ミラング共和国の軍事的介入によって終了することになり、統領の息子たち二人は裁かれるのだった。

そして、もう一人―…。

 ミラング共和国の中にある裁判所。

 その地下にある秘密法廷。

 そこでは、ミラング共和国が表沙汰にすることができない事件が秘密裡に裁かれる。

 ミラング共和国の国民のほとんど知らない場所だ。

 七つの領主だって知っている者は、半分にも満たない。

 余程、ミラング共和国の裏側に通じていなければ、聞くこともないほどである。

 シエルマスよりも知られていなかったりする。

 この法廷がなぜ国民に知らされていないのか?

 それは、ここが知られると、ミラング共和国は国民が権利を持っている国であり、その裏では国民を無視したことがおこなわれているということが知られてしまうのは良くないと思っているからだ。

 このことは、ミラング共和国という国のためであることもあるが、それでないことが大半であり、権力者、為政者の権力維持のためになされることが多いのだ。

 今回の裁判もそのようなものだ。

 ここでの法律は、ミラング共和国の権力者達によって、自己都合の解釈が勝手になされる。裁く側が正義であり、裁かれる側は悪であるという、あまりにも公平性というものを無視するものである。

 権力とは、時にこういうことができたりする。

 だけど、勘違いしてはいけない。

 その権力の行使の仕方を一歩でも間違えると、とんでもない悲劇を生み出すことがある。

 思い上がる者ほど、そのことを忘れていたり、知らなかったりするのだ。

 その思い上がりを見ることができるかもしれない。

 そして、今回の裁く側は勿論、ミラング共和国の現在の権力者達であり、裁かれる側は―…。

 「ここは―…、裁判をする場所と見えるが―…、なぜ、私をここへ?」

と、裁かれる側の人間は疑問に思う。

 自分がなぜ裁かれなければならないのか、と!!

 驚きでしかない。

 自分が裁かれる理由がないのだから―…。

 それでも、可能性の中では理由というものが分かってしまうのである。裁かれる側の人物もそれを理解しているのだ。現実になって欲しくないという気持ちが強いせいで、目を背けてしまっているが―…。

 「フィブル=ファブラ=フォンメルラード。貴様がここに連れてこられる理由ははっきりとしているだろ。貴様を裁くためだ!!」

と、一つの声がする。

 その声がした場所は、現実世界における裁判所の法廷のイメージを抱いてもらうと、ほとんどそのままである。

 例外は、傍聴席が数席しかないということと、フィブルを弁護する者が誰もいないということだ。

 そして、裁判官の席は三つほどあり、そこに座るのは、左からラウナン、シュバリテ、ファルケンシュタイロである。

 クロニードルやディマンドは、この裁判で役に立つことはない。だって、あの二人は暴言とか、能力とかがないのだから―…。

 ゆえに、今回のフィブルを裁く場には来させなかったのだ。

 そして、裁かれる人間であるフィブルは、この場におけるシュバリテの言葉に、嘘であって欲しかったことが現実になり、悲痛な気持ちを抱くのだった。

 「罪人は、罪人らしくしおらしくしておれば良い。これから裁判を開始する。」

と、シュバリテは宣言する。

 この秘密法廷で、中央の席に座っている責任裁判官と呼ばれる者が、開廷の宣言をすることが、暗黙の決まりとなっている。

 この決まりが決定した過程というのは後に、リース王国のミラング共和国に関する政治や法律を研究する学者によって明らかにされることが、このような秘密法廷の決まりが確立されるのは、二百十二年前のことであり、男尊女卑の思想が根付いていく過程の中であった。

 そして、その時は、女性の反乱者を秘密裡に裁くためのものであった。

 このことが明るみになった時、ミラング共和国の後半の二百年ほどの時代を、男性優位時代とするようになり、良くない時代と評価されるのであった。

 ミラング共和国が滅亡している以上、良くない時代と評価されるのは致し方ないことだ。

 ゆえに、リース王国併合後からリーンウルネの摂政の時代と後のいくつかの女王、王の時代を現地の言葉で「良き時代」の意味で使われる言葉があてられて、呼ばれるようになったという。

 さて、話を戻し、フィブルを裁く秘密法廷が開始される。

 「では、ラウナン、被告フィブルの犯した罪についてはどういう感じだ。」

と、シュバリテが言う。

 その言葉を聞いたラウナンは、座っている椅子から立ち上がり、罪状を読み上げる。

 「フィブル=ファブラ=フォンメルラード。彼は、ファブラ国の統領でありながら、ファブラ国の国民にとって秩序と安寧を守ることができずに、自らの政策によって作り出してしまったリンファルラードのスラム街を拠点とする浮浪者達による勢力の拡大に対処できず、内乱へと発展させました。これは、ファブラ国の国民を安寧と秩序を、意図的に陥れたということになります。ゆえに、内乱扇動罪によって、被告フィブル=ファブラ=フォンメルラードに刑を処すのが妥当とされます。」

と、ラウナンは文章を読み上げていく。

 今回、ファルケンシュタイロがいろいろとフィンラルラードとウォンラルラードを処理している間にも、ファルケンシュタイロを含め、ラウナン、シュバリテは、フィブルの処遇をどうするか何度も話し合いが持たれていた。

 このことをフィブルは、勿論、知るはずもない。

 そして、フィブルも気づいている。

 (これは、私を秘密裡に処分して、ファブラの領土内から反乱のための神輿をなくそうということでしょうか。)

と、フィブルは、心の中で思う。

 反乱を起こすにも、時には大義というものが重要になる場合がある。それは、誰もがこの反乱の大義名分と、それに従う方が良いと人々から思ってしまうような存在である。

 その存在になりうるのが、過去にある領地を治めていたとか、その関係者の一族とかなど、理由はいろいろと用意することができる。

 要は、従うに値するかどうかが一番の問題になる。

 そして、フィブルはその可能性を未だに孕んでいるのだ。完全に排除することはできない。

 ミラング共和国側は、僅かにでもその可能性が存在しているのなら、排除すべきだと判断するにいたった。ミラング共和国の対外強硬派としては、周辺諸国を支配していくための侵略をおこなって必要があり、それを成功させるためにはわずかでも、自らの領地の中での反乱分子が勢いづくことは決して、ミラング共和国の今の自分達の体制によって良くないことは分かる。

 なぜなら、反乱分子が勢いづき反乱を起こしたら、それを利用する輩、周辺諸国は確実にあると睨んでいるからだ。特に、リース王国であろう。

 リース王国のラーンドル一派は対外政策に積極的であるかどうかは分からないが、侵略を主とはしていないようだ。あくまでも、交易で自らにとっての優位に立つ、そのことを重要視としているから、経済的な面での相手側の従属というか、依存を狙っていたりするのだろう。

 そして、この頃のミラング共和国の対外強硬派の認識としては、リース王国はミラング共和国のことを恨んでいて、いつか、仕返しをしようと考えているのではないか、と―…。

 正しくは、リース王国の中で、ラーンドル一派以外は、ミラング共和国に関して、大なり小なりに恨みはあるが、すぐにミラング共和国を貶めようとは考えていない。機会があるまでは、じっとしているし、中の基盤を固めることに必死であり、優先順位は低い。

 一方で、ラーンドル一派は、アルデルダ領を処理することができたので、ミラング共和国には感謝しかないし、恨みどころか、都合が悪くなったら、ミラング共和国の対外強硬派を利用しようと考えてすらいた。まあ、妄想の中の産物なので、実現されることはなかったし、その機会も存在しなかった。ラーンドル一派は、リーンウルネの側の派閥との間での抗争に夢中になっていた。

 リーンウルネにとっては、迷惑なことでしかなかったが、それでも、自身の勢力を強くすることはできた。よっぽど、ラーンドル一派はリース王国の人々から恨まれていたのだろうか。まあ、ああいう我が儘は嫌われても仕方がない。

 さて、話を戻すと、フィブルは、自らが裁かれる理由に気づき、絶望する。

 この裁判で、味方は誰一人いないのだから―…。

 「内乱扇動罪か。そうなると、良くて、無期懲役で、悪くて、死罪か。」

と、シュバリテは言う。

 シュバリテの言葉を聞いて、フィブルは動揺するも、すぐに反論を開始する。

 「いくら横暴な真似をするにしても、併合もされていない時に、ミラング共和国の法律を持ち込むのは良くないのではないでしょうか。」

と、はっきりと言う。

 たどたどしさなど存在しない。

 言葉に詰まれば、何か変な理由を言われて、最悪の結果になる可能性が存在するのだから―…。

 「フィブル=ファブラ=フォンメルラード。貴様に意見する自由も、反論する自由も存在しない。そのことも分からないのか? 分かるわけないよなぁ~。ファブラ国を内戦へと導いてしまったのだから―…。」

と、シュバリテは言う。

 シュバリテとしては、フィブルにも何も言わせる気はない。

 この裁判の判決も決まっており、フィブルに反論なんてさせないし、意味のないことでしかない。

 フィブルはただ、そこで、怯えていれば良いのだ。

 そして、すぐにシュバリテはまるで、ここが劇場であるかのように、演技をし始める。

 そう、決まっているのだから―…。

 「ファルケンシュタイロ。フィブル=ファブラ=フォンメルラードは優秀な人材か?」

と、畏まった上で、シュバリテはファルケンシュタイロに尋ねる。

 ファルケンシュタイロの言うべきことは決まっている。

 「違いますな。ファブラ国という一刻を治めていた一国の主である以上、内戦を起こすような人をファブラ国の国民が再度、信用するとは思えない。フィブル=ファブラ=フォンメルラードは、内戦を起こしていることと、抑えられなかったということを加味すると、死罪が相当な判断だと思います。ちなみに、交渉の中で、フィブル=ファブラ=フォンメルラードは、ミラング共和国のフォルマン=シュバリテ総統に、ファブラ国の統領という地位を譲渡したのです。その過程で、ファブラ国の統領を裁くのは、ミラング共和国の法律が適用されるようになっております。そのことをフィブル=ファブラ=フォンメルラードが知らないわけがありません。自らの命が助かりたいための妄言でございましょう。さっきの言葉は―…。」

と。

 ファルケンシュタイロも、フィブルが死罪になることは決まりきったことなのだから―…。

 そこで、死罪にすべきではないということを反論する気はない。

 フィブルに同情する気持ちもない。

 ファルケンシュタイロにあるのは、これからのミラング共和国軍の強化であり、天成獣の宿っている武器を扱える者を強化して、次の征服したい国に向けての準備をおこなっていくことである。

 なので、負けたファブラの元統領の裁判という形式的なものはさっさと判決を下して、終わりたいのだ。

 そのために、シュバリテやラウナンに手を貸すことは簡単にできるし、天成獣の宿っている武器を授けてくれたことに感謝さえしている。

 ゆえに、一部に嘘を混ぜることも簡単にできる。

 フィブルが無理矢理脅されてシュバリテにファブラの統領の地位を譲渡した時に、譲渡した時の統領を裁く権限について、なかった内容をあったように言うのに、後悔も感じないし、罪の意識も感じない。

 そして、いくらフィブル抵抗しようとも、法的には理不尽なものであったとしも、ここで、味方する者がいない以上、時には武力を行使しないといけない場面でもあるが、その武力すらないのだ。

 後は、まるで運命で決められているかのような出来事で、フィブルの人生の終わりを迎えるしかないのだ。

 真実の内容は、簡単に嘘によって塗り固められるのだ。

 だけど、ずっと嘘で覆うことはできないだろう。

 それでも、フィブルの生の終わる時以上に、覆うことはできるようだった。

 その後―…。

 「もう、これ以上、審理していたとしても、結果が覆る証拠など出てくることはないでしょう。シュバリテ様、ファルケンシュタイロ様。判決を下した方が宜しいか、と。」

と、ラウナンは言う。

 ラウナンとしては、もう形の上での審議としての時間は十分に消費したし、これ以上、茶番劇を止めて、さっさと終わらせようとしたのだ。

 そのラウナンの意図を理解したのか、シュバリテとファルケンシュタイロは双方、頷き、判決を下す。

 「判決!!! フィブル=ファブラ=フォンメルラードを内乱扇動罪により、死罪と処す。」

と、シュバリテが判決を言いあげる。

 その後、フィブルがどうなったかは、触れる必要もないだろう。

 この事実は、暫くの間、闇の中に葬られることになる。

 それだけを記しておけば良い。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(92)~第三章~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


今回で、第二章は完成します。

残酷な第二章の結末となってしまったというわけです。

第三章はビターエンドという形になると思います。

第二章を書いていて思ったのは、予想より長くなってしまったということと、あまり文章が上手く書けていなかったことです。気持ちの面では、苦しいとか、キツいとかいう気持ちを抱くことはないのですが―…。

第三章では、少しでも成長していけたらと思います。

書いていくことで、文章が上手くなっていければ―…。

次回の投稿日は、2023年6月20日頃を予定しております。

ストックを溜めないと―…。

では―…。

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