番外編 ミラング共和国滅亡物語(91)~第二章 ファブラ侵攻(24)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
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(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ファブラの内戦は、ミラング共和国軍の力によって鎮圧され、事実上、ファブラはミラング共和国に併合されるのだった。
凱旋式典もおこなわれ、その後、フィンラルラードとウォンラルラードはファルケンシュタイロの欲を満たすために、その生を終わらせられる羽目になった。
時は戻る。
ファブラ侵攻後。
ミラング共和国の首都ラルネに帰還し、凱旋式典を終えた日の翌日。
ファルケンシュタイロは、ラウナンとシュバリテに呼ばれて、ある場所へと案内されるのだった。
そこは、ミラング共和国の行政官庁が入っている建物の中でも、特定の役職に就いていないと入ることのできない部屋がある。
そこにファルケンシュタイロ、シュバリテ、ラウナンがいるのだった。
「シュバリテ総統、なぜ、私はここに呼ばれたのですか。また、新たに侵攻する計画もしくは、穏健派どもが反乱を企んでいるのでしょうか?」
と、ファルケンシュタイロは尋ねる。
ファルケンシュタイロとしては、何か良からぬことが起こっているのではないかと、勘繰りたくもなる。
穏健派は、アマティック教などを使って、もうほとんど血祭りにあげることに成功しているが、それでも、完全に潰せたとは思っていない。
どんな勢力も、完全に潰すなんて無茶なことだ。
たとえ、食事会に誘って、そこで、誘われた穏健派の有力者を全員、あの世行きにしたとしても―…。
だけど、勢力を完全に回復させないようにすることはできる。
そして、ファルケンシュタイロはそれが上手くいっていたとしても、何か変な要因が絡んで、対外強硬派にとって不利になっているのではないか…と。
「残念ながら、二つとも外れだ。ファルケンシュタイロ。今回、ここに呼んだのは、君たち、ミラング共和国軍の力を強化するための天成獣の宿っている武器が大量に手に入り、やっと、届いたということだ。シエルマスをしても、これだけ見つけるのには苦労した。」
と、シュバリテは言う。
シュバリテが言っている間に、姿を現わしたシエルマス、統領であるラウナンの部下と思われる人物が車輪付きのテーブルで運んでくるのだった。
あまりにもシュールな光景に、ファルケンシュタイロも一瞬、ひいてしまっていた。
だけど、すぐに表情を軍人のキリッとさせた厳つい表情に変える。
ラウナンは、
(あ~、あの光景を見て…ですか。クククククク、面白いですねぇ~。)
と、心の中で思うのだった。
ラウナンとしては、ファルケンシュタイロのさっきの表情の変化の原因を理解して、心の中で笑うのだった。嘲笑ではなく、純粋に面白いと思って―…。
「つまり、その天成獣の宿っている武器を扱える者を軍隊の中で試せ、ということだな。」
と、ファルケンシュタイロは言う。
天成獣というものは、ファルケンシュタイロも知っている。
これほど、軍事力を強化することのできる武器、いや、兵器は存在しない。
ファルケンシュタイロにとって、いつまでも天成獣の宿っている武器を持ってこなかったので、その面では不満も感じていたが、天成獣の宿っている武器は一つ集めるだけでも難しい。
ラウナンも勿論、自らの武器の中に天成獣の宿っているものを持っているし、扱うこともできる。選ばれている。
だからこそ、
「ファルケンシュタイロ様、この中からファルケンシュタイロ様が気に入った物を一つ選んでください。」
と、ラウナンは言う。
ラウナンは、天成獣に選ばれることがどういうことかを知っている。
天成獣の声が聞こえるかどうかは、扱えるかどうかの基準になることはないが、扱える者には分かる独特の感覚があるし、属性の力をすぐに解放できる者がほとんどだ。例外も存在しないわけではないが、例外というだけに、かなり少ないのである。
そして、ラウナンに言われるままに、ファルケンシュタイロは、車輪付きのテーブルの上に置いてある大量の武器を見ていく。
(………俺が天成獣に選ばれるという意識でやっているんだろうなぁ~。ミラング共和国軍は、天成獣の宿っている武器を扱う者がいたことは過去には存在しているようだが、それは一部であるし、グルゼン側の人間にもいたなぁ~。名前は知らないけど―…。まあ、これだけ大量に天成獣の宿っている武器があれば、誰かは確実に天成獣に選ばれることは間違いないな。勿論、グルゼン側の人間には、天成獣の宿っている武器を一本も渡しはしないがな!!!)
と、ファルケンシュタイロは心の中で思う。
選びながらも、どうするのが自分らの勢力にとって、都合が良いかを理解している。
さて、今回、これを集めるために、シュバリテはかなり予算を動かし、そして、ラウナンはその予算を使って、シエルマスを動かして、天成獣の宿っている武器のあるという情報を基に探したのだ。これだけの数が集まるのは幸運としか言いようがない。
ファルケンシュタイロは、長く見つめる。
そうすると―…。
(こいつだ!!!)
まるで、何かに導かれるように、一つの武器を取っていた。
その武器は、剣であり、刃の部分が一メートルもないものだった。
そして、ファルケンシュタイロは確信することができた。
この武器は、俺が扱うべきだと―…。
「ほお~、ファルケンシュタイロ様、素晴らしい。天成獣に選ばれるとは―…。」
と、ラウナンは言う。
ラウナンは知っている。
自らが天成獣の宿っている武器に選ばれている以上、それがどういう状態でなるのかを―…。
ゆえに、ラウナンは、ファルケンシュタイロの運というものの強さに、感心を抱いているのである。
「ラウナン、俺は天成獣に選ばれたというのか。」
と、ファルケンシュタイロは言う。
ファルケンシュタイロは確信を抱いていたが、これは初めての感覚である以上、それが本当かどうか他者の客観的な視点が欲しいのだ。
そういう意味で、ラウナンに聞いてみたのだ。
ラウナンが天成獣の宿っている武器を扱うことができるのは、分かっていることなのだから―…。
「ええ、選ばれていますよ。」
と、ラウナンは堂々と答える。
その言葉を聞いて、ファルケンシュタイロは安心したようだ。
(俺は―…。)
ファルケンシュタイロの中には、これから自分がいろんなできるという気持ちを抱き始めた。
だけど、忘れてはいけない。
ミラング共和国が先の戦争で破ったリース王国軍の中には、天成獣の宿っている武器を扱うことができる者はそれなりにいるということだ。
ミラング共和国とリース王国のそれぞれの軍隊において、天成獣の宿っている武器を扱う者の数に差はあるが、全体の確率からすると、そこまで変わらない。
「だけど、ファルケンシュタイロ様。いくら力を手に入れたとしても、逆らってはいけない相手がいることはお忘れなく―…。」
と、ラウナンは圧をかえる。
その圧を受けたファルケンシュタイロは、ラウナンとの間に力の格差があるのを理解した。させられたと言った方が良いかもしれない。
(天成獣の宿っている武器を手に入れたとしても、こいつとの差はかなりあるということか。しばらくの間、というか、一生涯、大人しくしとけということか。まあ、別に今は、勝っているのだから、逆らう気はないがな!!!)
と、ファルケンシュタイロは心の中で思うのだった。
ファルケンシュタイロとしても、ラウナンに逆らうのは得策だとは思えなかった。シエルマスという組織が上手く成り立っているのは、ラウナンがいるからこそだ。そのことが分かってしまっている以上、ラウナンを殺すなんて選択肢をとることはできない。
それに、ラウナンは天成獣の宿っている武器を扱うようになってからどれくらいの期間が経っているのかファルケンシュタイロには予想も付かないが、長いというのは分かる。
そして、ラウナンの実力を理解しているから、今のファルケンシュタイロでは敵わないということも―…。
「ああ、分かってる!!! 俺も馬鹿なことをして、病死なんてしたくはないからなぁ~。もしくは、不審死か? それに、そこにある武器は俺の部下達を試しても良いんだな。」
と、ファルケンシュタイロは言う。
これで、軍事力を強化することができる。
天成獣の宿っている武器を扱う者が多ければ、それだけ戦いで有利になることは確かなのだから―…。
「ええ、これはファルケンシュタイロ様が率いるミラング共和国軍を強化するためのものです。どうぞ、持って行ってください。この武器を売らなければ―…ですが―…。」
と、ラウナンは言う。
その言葉に対して、
「分かってるさ。こんな素晴らしい物を俺の味方以外に売れるか。」
と、ファルケンシュタイロは返答する。
(これで、ミラング共和国軍の軍事力は十分に強化することができる。いずれは、リース王国を圧倒し、滅ぼすことも十分できるようになる。さあ、成長してくれ。そうすれば、ミラング共和国だけで、半島のすべてを支配し、いずれは世界へと覇を唱えることができる。)
と、シュバリテは心の中で思う。
シュバリテの目標は、シュバリアを倒すまでは、シュバリアよりも上の地位に就き、シュバリア以上の活躍するということにあった。
それは、先のミラング共和国とリース王国との戦争で、リース王国に勝利することで達成することができた。
さらに、ファブラ侵攻を利用して、ファブラを併合することに成功し、この成功で統治者としての自信をかなり高めることに成功した。
それゆえに、自分なら世界の全てを支配することができるのではないか、という気持ちを抱くことができた。
その自信ほど危険なものはない。
だけど、シュバリテが気づくことはないだろうし、気づくことイコール絶望と終わりを意味することになるのだから―…。
その後、ファルケンシュタイロは、自らの部下達に天成獣の宿っている武器を持たせて、天成獣に選ばれるかということを試した。
そのなかで、何人かは、天成獣に選ばれるのだった。
これからも、そのことは続くであろうが―…。
時は戻る。
フィンラルラードの真っ二つにされた遺体は回収される。
これがどのように処分されるかは知らない方が良い。
死んでしまった人間が喋ることはないのだから―…。
ファルケンシュタイロは、
(ふう~、俺が天成獣の宿っている武器を扱っている可能性にも気づかないとはなぁ~。愚かだ。まあ、そういう愚か者だったからこそ、俺の欲は満たされたのだからなぁ~。試し打ちにもちょうど良かった。属性は生というところだろう。精進は欠かせないなぁ~。)
と、心の中で思う。
今回のフィンラルラードとの勝負には、ファルケンシュタイロが手に入れた天成獣の宿っている武器の試し打ちというのも兼ねていた。
すでに、いくつかの戦い方は練習したのであるが、それでも、実戦に近い方が分かりやすいものだ。
まあ、これを実戦に近いものというのは、間違っている可能性は十分に存在するだろうが―…。
ファルケンシュタイロは、自らの武器である剣を見ながら、フィンラルラードの血が一滴もないことに、満面の笑みを浮かべ、その剣を鞘の中に収めるのだった。
「ファルケンシュタイロ様。そろそろ、軍部における大事な会議の時間となります。移動を―…。」
と、ファルケンシュタイロの側近が言う。
「ああ、分かっている。向かうとするか。」
と、ファルケンシュタイロが言うと、その側近とファルケンシュタイロは別の棟にある会議室へと向かって行くのだった。
そう、これから軍部での会議があり、軍部の方針を決定し、ミラング共和国議会に上奏するのだ。
自らの軍部の力をミラング共和国の中で強くしていくために―…。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(92)~第二章 ファブラ侵攻(25)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
PV数が増えますように―…。
次回で、第二章は完成します。
では―…。