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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
435/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(89)~第二章 ファブラ侵攻(22)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ファブラの内戦はミラング共和国の介入により、ミラング共和国に事実上併合されるという形で終結することになった。一方で、フィンラルラードとウォンラルラードは―…。

 「さっさとかかってこいよ、ミラング共和国軍で一番剣術が弱いとされている人よ。」

と、ウォンラルラードは言う。

 ウォンラルラードは、ファルケンシュタイロの説明を疑うことはない。

 疑うよりも希望というもので、すべて覆われてしまっているのだ。悲しいことに―…。

 (……クククククククククク、絶望の始まりがあるぜぇ~。)

と、ファルケンシュタイロは、心の中で思いながら―…。

 ファルケンシュタイロの部下達も、ウォンラルラードの言葉に心の中で失笑してしまっていた。ウォンラルラードに気づかれないようにしながら―…。

 そんななか、フィンラルラードは、

 「へぇ~、ウォンラルラードは私に次いでしか剣術の力がないのだから、そういう調子の良いことは言わない方が良いよ。私なら、こんな雑魚の説明されている人を倒すことは簡単にできるんだけどねぇ~。」

と、言う。

 フィンラルラードのことも、ファルケンシュタイロの部下達は、馬鹿だと思ってしまい、心の中で嘲笑し、侮蔑するのだった。

 そんなことに、フィンラルラードは一切、気づくことなく―…。

 そんななか、ファロネンズは、

 「ウォンラルラード様、私から攻撃をして、宜しいということでしょうか?」

と、たどたどしく聞く。

 ファロネンズの心の中を覗くことは、今、後の結果のためにすべきことではないことが十分に分かっているので、ほとんどしないようにする。

 そんななか、余裕の笑みを浮かべ、ウォンラルラードは言う。

 「ミラング共和国軍の中で一番弱いんだろ。剣術が!!! 何もせずに、俺が勝利することは強者の側の矜持に反する。だからこそ、優しい俺は、最初に弱い者にも活躍の場を与えているのだよ!! 分かったのなら、さっさと攻撃してこい!!!」

 本当の意味で、ウォンラルラードは、ファロネンズに勝利できると思ってしまっている。

 なぜ、ミラング共和国軍の中で一番弱い者とウォンラルラードを剣術で勝負させようとしているのか。本当にそうなのか?

 普通に考えれば、気づけるだろうということに、ウォンラルラードは気づくことにできない。哀れな存在だ。

 まあ、実際に、ウォンラルラードと同じ状況に陥った場合、気づけない可能性も考慮に入れると、哀れだと完全に馬鹿にすることはできないのだが―…。

 そして、ファロネンズは、ウォンラルラードが最初に攻撃してこないことをすぐにいろんな方向から理解し、ウォンラルラードに向かって、自身の真剣を抜刀し、攻めてくるのであった。

 「はあああああああああああああ。」

と、まるでやる気のない声を出しながら―…。

 それでも、足取りはしっかりとしていたし、所作の方もしっかりとしていた。

 剣豪と言われてもおかしくない者のそれである。

 その動きを見て―…、ウォンラルラードは―…。

 (素人のそれでしかないな。こんなの相手に真剣で戦え、って、体の良い厄介払いじゃないか。簡単に受け止めることができる!!)

と、心の中で思いながら、ファロネンズの剣による攻撃を受け止める。

 ファロネンズは剣を一度上に上げてからの攻撃であった。振り下すという―…。

 その攻撃を受け止めたウォンラルラードは、

 「そんな見え見えの攻撃で、俺様に一撃を与えられると思うなよ!!!」

と、大声で言い始める。

 その声を聞いたファロネンズは、

 「強いです!! ファルケンシュタイロ様!!!」

と、弱音を言い始める。

 そんななか、フィンラルラードは、

 「うわ~、ファルケンシュタイロは、ウォンラルラードを舐めてかかっているようだね。だけど、ウォンラルラードが勝てるとは思えないんだよねぇ~。だって、私が一番の剣術を持っており、かつ、私に勝てない者に勝利などないのだから―…。」

と、呑気なことを言う。

 これは、フィンラルラードの嘘である。

 フィンラルラードとウォンラルラードは、剣術の稽古で戦ったことはない。なぜなら、ファブラの将来の統領になる可能性がある以上、傷を負わせるわけにはいかないという周囲の家臣たちによって、一切、二人は試合をすることはなかったのだ。

 ゆえに、どちらが剣術で強いのかというのは、誰も分かっていない。

 ある程度の推測であるなら、フィンラルラードよりもウォンラルラードの方が強い。

 この推測は、フィンラルラードとウォンラルラードに幼い頃から剣術を教えていた者の判断によると、であるが―…。

 「フン、何もできないフィンラルラードの癖に!!」

と、フィンラルラードの言葉が聞こえていたのだろうか、ウォンラルラードは返事をする。

 ウォンラルラードは、フィンラルラードが周囲の人々がわざと優秀だと言っていたことに気づいている。

 兄弟であり、時には共に何かをすることがある以上、嫌でも理解できてしまう。

 その時、どうしてできないことをさもできているように周囲が言うのか、不思議に思うのだった。

 フィンラルラードは、自分が何もできないことを認めることができなかった。

 そして、周囲もフィンラルラードから恨まれると、自身の身に危険が及ぶ可能性を考えて、フィンラルラードを褒め称えたのだ。自らの身を守るために―…。

 その結果、フィンラルラードは誰からも自らの能力のできる、できないというものの区別をすることができずに、何でもできるというように育てられたため、自分は凄い人間だと思うようになってしまったのだ。

 人に恵まれなかったし、自身の性格にも恵まれたということであろう。

 まあ、恵まれるという言い方はおかしいものであるかもしれないが―…。

 そして、ファロネンズは、ウォンラルラードから距離を取るのだった。

 「さすが、ファブラの次期統領候補だった者だ。剣術に関しては、小さい頃から結構な修行をされていたのでしょうか。」

と、ファロネンズは言う。

 ファロネンズとしては、暫くの間、ウォンラルラードの強さに関して、ウォンラルラードから聞き出すことを考えるのだった。

 まあ、本当に、ウォンラルラードの自慢が聞きたいか、と言われると、そうでもないし、そもそも、興味がない。

 というか、いつまで、このようなことをし続ければ良いのか、と思っているぐらいだ。

 そんななか、ファルケンシュタイロは、というと、

 (ここまで双方とも馬鹿とは―…。ファロネンズの方も呆れてしまっているが、暫くの間、戦い続けておいて欲しい。こんな馬鹿な茶番も、俺の日々の仕事からくるストレスの解消には最高なのだからなぁ~。ウォンラルラードの剣筋を見ても、素人のそれと変わりはしないな。教えている者も、旧ファブラの統領の息子だからとかなり甘めに評価していたに過ぎない、ということか。まあ、統領の息子に怪我でもさせれば、指南している者の責任を問われるかもしれないからな。そんなのは嫌だし、適当に褒めておけば、良い給料は貰えるからなぁ~。まあ、ミラング共和国軍で、そのような指南なんてできはしないが…な。)

と、心の中で思う。

 ファルケンシュタイロは、ウォンラルラードの剣術がどれくらいかを見破ることはできる。

 軍人である以上、剣術を鍛えておくことは必要であったりする。

 戦争の中で、剣を使ったり、槍を使ったり、弓を使ったりすることがあるので、そのための、技術や腕を磨く必要があるからだ。必要とあれば、馬術もここに加わる。

 将官になろうとするエリートであれば、作戦の立て方、周辺諸国の地理と歴史、彼らの思想、ものの考え方、などの分野が必要となるし、軍人にとっては重要となるのだ。

 その点に関しては、ファルケンシュタイロも軍事と関係があるからと、勉強はしているが、それでも、周辺諸国の思想や、人々の考え方にはあまり興味がなかったのだろうか、すぐに、そのことに関する勉強は必要ないと見下して、しなくなったけど―…。

 一方で、グルゼンは、いろんな分野を貪欲に吸収していた。無駄にするかしないかは、要は使い方次第であるし、使える場面があるかどうかという機会にもよる。それに、使えないと思っている者が使える時に、知っていないがために戦争で敗北するのが一番危険である。

 そもそも、必要か、必要じゃないかを、簡単に判断することはできたとしても、本当に必要か、そうじゃないかという判断はできやしない。要は使い方次第であるし、その性質をどう使うかということ次第なのである。

 そのことに気づかず、無駄だから、何もするな、というのはあまりにも浅はかな考えに過ぎない。この世に無駄と言われるものは、その場面では必要がないということをさも、どんな時でも無駄と言っているに過ぎない。現実に、すべての面において、ある知識が無駄だということが完全に成り立つということはないのであるが―…。

 まあ、限度というものが存在している以上、省くことをしないといけないからであろうか?

 そのことは、まだ分からない。

 そして、ウォンラルラードに剣術を指南した者が、ウォンラルラードに傷を負わせる大変だと理解しているがために、適当に褒めて、教えたのであろうということをファルケンシュタイロは、見破っている。

 勘に近いものである。

 せめて理由を挙げるとすれば、ウォンラルラードの動きがミラング共和国軍に剣術を一切、教えてもらわずに入隊した者たちで、初心者が良くする動きをしているからだ。

 ファルケンシュタイロも新人の剣術稽古などの視察を良くするので、そういうところから分かってしまうのであろう。

 そして、ミラング共和国軍は軍隊である以上、ファブラの統領の後継者候補のような適当に褒めるだけの教えは通用しない。

 なぜなら、ミラング共和国軍は、軍人として兵隊として使えないと戦いで負けてしまい、自国の領土を相手側に支配されてしまうことになるのだから―…。そういう意味では、ちゃんと鍛えているであろうが、そこに暴力的な要素や、パワハラの要素がないと言えば、嘘となる。

 ゆえに、そのような要素のせいで、軍人の数がなかなか増えなかったりする。一応、兵力は常時五万弱はいるので、周辺諸国の中では多い方だし、農民や貧民から非常時には徴兵するので、十万を超えることはあるのだが―…。常時軍事訓練を受けた者と非常時のみの者たちを比べれば、確実に前者の方が優れていることは当たり前のことであり、言わなくてもすぐに気づけることであろう。

 その軍事訓練の中には、剣術もあり、戦闘の基本は剣であるが、戦いの中での戦死者の多くは天成獣に宿っている武器でのものによるのを除くと、弓によって戦死する者が多い。弓を教えれば良いという意見にもなるが、弓は長距離戦用なので、短距離での戦いでは対応することができない。ゆえに、槍や剣が重要であるし、基礎となっている。

 その基礎がしっかりできているといないと、では、戦場での生存率にも影響をする。

 それに、戦いの中で生き残る者が多ければ多いほど、次の戦いも数を多く投入することができるし、軍人の補充はそんな簡単にできはしない。なぜなら、人には数という限度があるし、小さな子どもを戦場に送ったとしても、あまり役に立つことはないし、軍人でも罪悪感を感じることがある。子どもを投入することは、それだけ、追い詰められているという証拠になるからだ。敵側から見れば―…。

 ゆえに、軍人の生存率を上げるために、必要なことは経験上から分かっており、そのために確実な方法は取り入れるし、手を抜くことなんて、道理が通らないのだ。

 さて、長くなったので、話を戻すと、ファルケンシュタイロはウォンラルラードの剣裁きや所作を見て、呆れるし、実力を正確に把握しているということだ。

 ファルケンシュタイロが心の中で思っている間に、ウォンラルラードも真剣での攻撃を開始し、ファロネンズとウォンラルラードの剣術の攻撃の応酬が続くのだった。

 そして、数分後にファルケンシュタイロは、ウォンラルラードの剣術および希望も十分に持つことができた把握したようだ。

 (さて、そろそろ終わりにさせるか。)

と、心の中で思うと、言い始める。

 「ファロネンズ、この馬鹿を始末して構わない。」

 そのファルケンシュタイロの言葉に―…。

 「分かりました。」

と、ファロネンズは返事をする。

 「ウォンラルラード、最後に残す言葉はないか。言ってみろ。」

 これは、明らかにファロネンズが、ウォンラルラードを殺せるということを理解しての言葉だ。えっ、と思う人もいるかもしれないが、今は進めていくので、説明は後ほどしていくことにする。

 「何を言っているんだか。さっきまで、俺様の攻撃をずっと、何とか防いでいたお前が、俺様を始末できるわけがないだろ。」

 ウォンラルラードは、ここにも来てもまだ気づいていないようだ。

 なぜ、ファロネンズをウォンラルラードの剣術での対戦相手にしたのか、を―…。

 「それが最後の言葉で良いということだな。」

と、ファロネンズは言うと、急に構える動作をとり―…。

 素早く油断しているウォンラルラードへと移動し、素早く、自らの剣を横に振り、ウォンラルラードの首から上と下の体を分けるのだった。

 その動きに、フィンラルラードは言葉にもできないほどに目を奪われ、自ら兄の人生の終わりということを認識するのに、数分と思って良いほどの感覚の中の時間を経過させるのだった。実際は、数秒ほどでしかないが―…。

 (誰が剣術が一番弱い人物を当てるかよ。それに、絶望を知らずに死なせてしまったのは、俺としては失敗だったな。だが、別の奴に絶望を与えることはできたのだから、良しとするか。いっぱい、いっぱい、絶望を与え続ければ良いのだから―…。)

と、ファルケンシュタイロは心の中で思う。

 そう、今回、ウォンラルラードの剣術での試合で、彼を殺させたファロネンズは、ミラング共和国軍のファルケンシュタイロの部下の中で一番の剣術の使い手である。事務仕事にも長けているが―…。

 ファルケンシュタイロの嘘に気づくことなく、ウォンラルラードは斬り殺されたのだ。

 少し考えれば、ファルケンシュタイロの嘘を見破ることはできたであろうが、このように閉じ込められ続け、かつ、冷静さを失う大きな希望を与えられれば、勝手にそうウォンラルラードが思ったかもしれないが、そのような状況になると、人は簡単に希望を見て、デメリットを考慮しなくなることがある。

 ウォンラルラードは愚か者であるが、誰もがそのようにならないとは限らない。

 冷静さを見失ってはいけない。

 どんな時でも、自分にとってのデメリットの可能性を考えないといけない。そうすることで、メリットばかりに浮かれる可能性は低くなるだろう。

 まあ、このことを知っておくことほどに、重要なものはないが―…。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(90)~第二章 ファブラ侵攻(23)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正すると思います。


では―…。

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