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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
434/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(88)~第二章 ファブラ侵攻(21)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ファブラの内戦はミラング共和国軍の軍事介入によってすぐさま鎮圧されるのだった。

しかし、ミラング共和国から突きつけられた要求を受け入れざるを得なくなり、ファブラはミラング共和国に事実上併合されるのだった。

その後、凱旋式典がミラング共和国の首都ラルネでおこなわれるのだった。

そして、フィンラルラードとウォンラルラードは―…。

 一週間の時が経過した。

 軍隊の中にある戦争犯や軍紀違反を収容する牢屋ある建物の中。

 そこには、二人の人物がいた。

 「さっさと出しやがれ!!!」

 「私をこのような場所に入れるのは、得策じゃないよねぇ~。」

 ウォンラルラードとフィンラルラードだ。

 二人は一時的に、ファルケンシュタイロの拷問によって、意気消沈してしまったようであるが、なぜか復活していた。

 忘れるのが上手いのだろうか?

 そんななか、看守をしている軍人の二人は、ウォンラルラードとフィンラルラードの両方を見下した表情で見ながら―…。

 (こいつら四六時中、声出すからなぁ~。ウォンラルラードの方は五月蠅いし、喚くし、まあ、それも毎日ずっとできるわけではないだろうし、声も枯れる。フィンラルラードは、ここでの境遇に文句ばかり言う。お前らは、すでに捕虜なんだよ。分かっているのか!!! そういう意味では、意気消沈を続けている旧ファブラの統領だった男の看守の方がよっぽど良かった。噂では、かなり大人しく、見張るのが楽だと―…。あ~、羨ましい~。)

と、一人の看守が思っている。

 この看守は、ウォンラルラードの入っている牢に近い。

 さて、この牢屋に関して、少しだけ詳しく説明をすると、牢屋のある建物の構造は全部で三階となっており、一つの階に二十ほどの牢屋があり、ウォンラルラードとフィンラルラードが収容されているのは、そのうちの三階であり、この階は特に重要な戦争犯を収容することになっている。

 ウォンラルラードとフィンラルラードは、特に、拷問の時に口(うるさ)かったこともあり、ファルケンシュタイロによって、三階の方の牢屋へ閉じ込めるように命じられたのだ。

 そして、今、三階に収容されている戦争犯は、フィンラルラードとウォンラルラードの二人しかいない。フィブルは一般の刑務所の中の特別待遇の場所に、収容されている。

 理由は、フィブルはミラング共和国の正式の場で、裁く必要があるからだ。

 これはウォンラルラードとフィンラルラードの二人と処分の方法が異なるということを示している。

 その方法は次期に分かることなので、ここですぐに述べる必要はないだろう。

 そんななか、一人の看守が思っていることは、毎日、毎日、凝りもせずに喚くウォンラルラード、筋肉をムキムキにさせている男が、まるで、小さい我が儘な子どものように感じてしまい、子どもじゃあるまいし、という感じ、こいつらの看守の役目をさっさと終えたいのだ。

 さらに、フィンラルラードの方は、看守に向かって、自分の待遇を良くしろとのんびりした感じで言うのだ。その感じで、接しやすい人かと思って、どういう待遇の改善をしたら良いか気まぐれで聞いてみると―…。


 ―私は、次期ファブラの統領となる人物なのだから、このようなネズミがいそうな場所ではなく、豪華絢爛な場所に移動させて、最高級のおもてなしをすべきだよねぇ~。当たり前のことでしょ。私は、生まれた時から素晴らしく優秀なのだから―…。その話をいっぱいしてあげよう―


 これはほんの一例だ。

 これから始まったフィンラルラードの自分自慢は、話があまりにも長すぎて、看守にとっては呆れるような内容なのだ。

 まるで、自分が完璧超人であり、誰もがフィンラルラードを賞賛しているようなことを言っているのだから―…。

 この看守も、ファブラの内戦というものを知らなければ、この人は凄い人だと思っていただろうが、その内戦を知っている以上、フィンラルラードが完璧な人物ではなく、多くの欠陥を抱えた人物であると見なしている。

 それに、喋り方がゆっくりであったとしても、何か、中身というものがあまりあるような話し方でもなかったからだ。

 フィンラルラードは、自分が優れていることを自慢していること以外に、自分を示すことや、他者を評価している話というものがないのだ。

 そして、フィンラルラードは、看守のことを見下しているのだ。

 ゆえに、フィンラルラード自らがどういう状況にあるのか理解していないのが分かって、この看守は、フィンラルラードのことを馬鹿で、愚か者であると見なしている。

 さらに、看守の役目をする別の軍人仲間から聞いた話によると、一般の刑務所に収容されているフィブルは、大人しく、変な暴言も吐くことがない。

 それを聞いたこの看守は、フィブルの方を羨ましく思っていた。ウォンラルラードは吠え、フィンラルラードは文句ばかりなので、フィブルの方が扱いやすいなぁ~、と思ってしまったのだ。

 実際は、フィブルの方を看守している者にとって、フィブルは不気味に感じてしまうのだ。触れたくない腫物のように―…。

 そういうことを知らないからこそ、フィブルの方が良いと感じてしまうのだ。

 知らないからこそ、隣の芝生が青く見えたのであろう。

 そして、この看守を含め、もう一人の看守も、二人の見張りに辟易するのだった。

 そんななかで―…。

 「ほお~、牢屋に入れられている理由も理解できないとはなぁ~、お前らはよっぽどの馬鹿だ。俺が折角、拷問(きょういく)してやったというのに―…。」

と、この牢屋へと向かってくる声がする。

 その声の主は、何人もの同じ軍服を身に付けている者を後ろに従えて―…。

 そう、この人物は―…。

 「ファルケンシュタイロ様!!」

と、一人の看守、フィンラルラードの近くにいる看守の方が驚く。

 そして、二人の看守はすぐに立ち上がり、ファルケンシュタイロに向かって、敬礼をする。

 ファルケンシュタイロは、軍部の中のトップであり、看守ごときが無礼な働きをして良いという存在ではない。そのことが分かっているからこそ、すぐに、背筋をビシッと伸ばしたのだ。

 「すみません、すぐに敬礼できなかったことを―…。」

と、看守の一人が言う。

 このことに対して、ファルケンシュタイロにとっては、この看守の無礼はどうでも良かった。

 「そのことはどうでも良い。それと、お前らは、二階の方へと向かってくれ。それに、お前らは、こんな負けたことにも気づかない馬鹿を見張っていたんだ。少しぐらいこいつらの影響を無意識にうけて、無礼になるのも仕方ない。ご苦労だった。ここまで良く、馬鹿の囚人に対する看守の仕事を全うした。」

と、ファルケンシュタイロは言う。

 その後、ファルケンシュタイロが二人の看守を殺すことは…なかった。

 理由としては、軍人の中でも専門の職を任せることが常時できる者を自らの勝手な理由で殺すことはあまりメリットのあることではないからだ。軍人というものは戦争をすれば、必ずと言っても良いぐらいに戦死者が出るのは避けられないので、このような罪を犯していない軍人を処刑するような処断はよろしいことではない。

 兵力の練度を上げることを怠ってはいけないが、その練度の上げやすさは、軍事訓練した者としていない者では差があることを、ファルケンシュタイロは理解しているからだ。

 ゆえに、看守と言えども、軍人として戦う訓練を十分におこなっているので、このようなつまらないことで殺すのはもったいない。

 それに、今日は、お待ちかねの楽しみの日なのだ。

 余計な事を気にしている暇などない。

 そして、これからのお楽しみのために、この二人の看守にこの場にいてもらっては困るのだ。

 これから起こる残酷なことに―…。

 「はい、畏まりました。」

と、看守の一人が返事をする。

 そうすると、フィンラルラードとウォンラルラードの見張りの役目を果たしていた看守の二人は二階へと向かうのだった。

 これからおこなわれるであろうファルケンシュタイロの残酷な趣味を興味本位で見たいとは、思わない。

 変なことを知らないようにするのは、ミラング共和国軍の中で生き残っていくためには必要な処世術であったりする。

 まあ、一方で、秘密を知ったとしても天成獣の宿っている武器を用いて上手く回避するイルターシャのような例外も存在するが―…。


 数分後。

 完全にいなくなったことが確認され、さらに、見張りの人員を立てて、外に音が漏れないようにする。

 それが完全に終わると、ファルケンシュタイロは薄気味悪い笑みを浮かべる。

 「さあ、これからお前らは生きてきたことを後悔するだろうなぁ~。」

と、ファルケンシュタイロは言う。

 ミラング共和国の首都ラルネに送られるまでの間におこなわれた拷問は、物理的なものであって、希望を与えるようなことは一切していない。

 ファルケンシュタイロにとって、本当の拷問はここから始まるのだ。

 いや、拷問と呼ぶべきものではないだろう。

 これから始まるのは、フィンラルラードとウォンラルラードにとって、希望もないことなのだから―…。

 「まずは、ウォンラルラードを外に出せ。」

と、ファルケンシュタイロが言うと、部下がウォンラルラードの牢屋の鍵を持っていき、ウォンラルラードの入っている牢屋を開けるのだった。

 その様子を見たウォンラルラードは、それを怪しく見ると思っていたが、閉じ込められたのが長かったせいなのか、僅かにある相手の隙だと思ったのか、まるで神から祝福が与えられたのではないかと思える時の信仰者の表情の笑みを浮かべ、すぐに、外へと出るのだった。

 ここにいる者たちの実力を考えることなく―…。

 「おいおい、俺を外に出してくれるということは、俺が優秀だから、ファブラの支配者として使えると判断して、俺に恩赦を与え、ファブラの統領にしてくれるということ、だな。」

と、ウォンラルラードは言う。

 ウォンラルラードは、言葉の通りに思っており、これから自分はファブラの統領となって支配できるのだと勝手な妄想を言い始めるのだった。

 どういう結果になるのかということを知らずに―…。

 その言葉を聞いて、一瞬、怒りを感じたファルケンシュタイロであるが、すぐに、ウォンラルラードが自分の状況を理解できずに言っていることに気づき、侮蔑する表情を浮かべるのだった。

 (こいつ―…、最初から自分は助かり、こちらが旧ファブラのトップの地位にお前がつけると思っているのか。アホすぎる。すでに、希望を抱いていやがる。こんな馬鹿のための最も良い方法はすでに考えてある。)

と、ファルケンシュタイロは心の中で思いながら、これからおこなわれるであろうことに、楽しみを馳せる。

 ああ、これから、希望が絶望へと変わる時間が始まるのだから―…。

 「というわけで、ファロネンズ頼んだぞ。」

と、ファルケンシュタイロが言うと―…。

 「畏まりました。」

と、ファロネンズが返事をする。

 ファルケンシュタイロから指名されたファロネンズは、正式な名はファロネンズ=ラットリという。ミラング共和国軍の軍人にして、階級は現実世界における少佐相当であるが、ファルケンシュタイロの直属の部下となっている。

 軍の中の指揮官としての地位に就くことはないが、それ以外のある面ではかなりの優秀さを誇る人物だ。

 まあ、実際に、ある面でミラング共和国軍の中で一番というわけではないが、ファルケンシュタイロに心の底から従っている者たちの中では、一番であることに間違いはないが―…。

 ファロネンズは、ウォンラルラードの近くへと向かって行き、持っていた真剣を一本渡すのだった。

 そのことに、ウォンラルラードは、

 「おいおい、これを俺にくれるというのか。要は、俺をファブラの統領にしてくれるというわけだな。話が早くて助かる。」

と。

 この言葉から、ファルケンシュタイロはシナリオを少しだけ変えて言い始める。

 「残念だが、ファブラの統領になるためには、お前さんの目の前にいるファロネンズに勝ってもらわないと困るのだよ。ファロネンズは、ミラング共和国軍の中で一番剣術の()()人物であり、俺の直属にしているのは、軍の中での事務処理が一番上手いからに過ぎない。ファブラの統領になるのなら、簡単に勝てるだろ。」

と。

 ファルケンシュタイロは、絶対にウォンラルラードが敗北することを理解している。

 そのための処理班もちゃんと用意している。

 そして、ウォンラルラードは剣術自体、昔からファブラの統領の家に剣術を教える者から教わっていたので、苦手という意識はない。フィンラルラードより上手いから、という理由で―…。

 そして、ウォンラルラードは構える。

 目の前の雑魚だと言われている相手を倒して、ファブラの統領という地位を手に入れるために―…。

番外編 ミラング共和国滅亡物語(89)~第二章 ファブラ侵攻(22)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


残酷なことがエピローグという感じになりますが―…。

PV数が増えたりするといいなぁ~、と思いながら祈ります。

では―…。

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