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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
432/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(86)~第二章 ファブラ侵攻(19)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ファブラで内戦が起こり、それを打開するためにファブラの統領であるフィブルはミラング共和国に介入を要請する。そして、ミラング共和国は軍を派遣して、軍事介入し、アウトロー達を鎮圧することに成功する。

その後の交渉で、ファルケンシュタイロの圧もあり、ファブラ側にとって理不尽なミラング共和国側の要求をフィブルは受け入れてしまうのだった。ファブラの事実上の併合というものと鉱山採掘の利権を―…。

 二週間後。

 この間の動きついて振り返っておこう。

 ファブラは、ミラング共和国に事実上併合された。

 ファブラの統領であるフィブル=ファブラ=フォンメルラードは、ファルケンシュタイロとともに、ミラング共和国の首都ラルネへと、事実上連行されることになった。

 ここの軍政官には、クロニードル家の一族の者があてられ、彼が後に、併合後の行政官のトップになることが決まっている。これは、ミラング共和国議会ですでに可決されていた。

 そして、連行される者の中に、フィンラルラードとウォンラルラードというフィブルの二人の息子が含まれていたのは、当然のことであった。

 このフィブル、フィンラルラードとウォンラルラードの命運に関しては、後で、確実に記されることなので、今ここでは割愛する。

 今、ここではファブラの国内の二週間の動向についてまず記しておくが必要であろう。

 ファブラに派遣された軍政官であるクロニードル家の者は、対外強硬派の有力幹部の一人であるファウンダ=クロニードルの意向を受け、鉱山採掘権のための会社のようなものを立ち上げ、鉱山労働者の労働環境を悪化させる条件を無理矢理、鉱山労働者を鎮圧することで飲ませ、さらに、犯罪者を利用して、鉱山資源の採掘をおこなっていく方針になった。

 旧ファブラでおこなわれていた鉱山資源の採掘方針を無視して―…。鉱毒によって、鉱山労働者の人体に悪影響が出ることのマイナス条件をクロニードル家は無視する。理由は、そのような対策のために費用を出すことは馬鹿げたことであり、利益を一銭たりとも減らしたくないという小汚いものであった。短期の利益のために、長期的になり、自らの利益にも長期なればなるほど、それを侵してくるデメリットになることを想像の埒外に置いていってしまったのだ。

 鉱山資源の輸出による利益以外のことには何も目を向けていないのだ。鉱山の周囲の環境。鉱毒物質が含まれた水に周辺流域への浸食とか―…。

 企業は利益最大化を狙うが、その最大化とはある一定期間における利益最大化のことなのか。それとも、半永久的に利益最大化を更新し続けていくようなもののことなのか。現実は、後者だと妄想している前者という結果になるのかもしれない。クロニードル家は特に、そのような傾向にあることがわかる。

 悲劇でしかない。

 自分の利益最大化ばかりの妄想でのハッピーエンドを、この世、世界と言って良いかもしれないが、許してくれることはない。周囲の恨み、周辺環境の反逆にあうことになる。まさに、自分の利益という名の囚人になる予定なのだ、クロニードルは―…。クロニードルに媚びる者たちは―…。

 鉱山労働者たちは、ここから十年近く、ミラング共和国が滅ぶ、その日まで、苦痛の時代に入っていくことになり、後の時代の、この地域の年代記作者、いや、歴史家は、「毒を食べさせられた時代」と呼ぶようになる。

 勿論、これだけで、この不遇の時代の全てを説明することはできないであろう。必ず、切り捨てたという表現は悪いのであるが、まさに、ある部分を除けた上で判断したものもある。

 つまり、人は完全になることができない存在である以上、起こってしまう現象を直に示していることであり、それから逃れられないということである。

 次に、クロニードル家による旧ファブラ国による支配の鉱山関係以外について見ていくことにしよう。

 軍政官として派遣されたクロニードル家の者は、軍政官として、アルデルダ領でしたような方式の支配を採用し、アマティック教の教団によって、リンファルラードを監視し、統領の屋敷は軍政官の屋敷とされ、さらに、内戦になったの統領一族の政治の失敗であることを旧ファブラの領土のそこら中に広めるのであった。

 その情報を広めることにシエルマスが関与していたのは、当然のことであろう。生き残ったアウトローを使って―…。その後の始末もしっかりとした上で―…。

 その後、クロニードル家に近い者たちの一部がリンファルラードのスラムの跡地に移ってくることとなり、そこに大きな街が後に、建設されていく予定だ。

 旧ファブラの人々の生活は、クロニードル家によって増税と、社会保障の大幅なカットによって生活に苦しむ者が多くなった。この内戦で得をしたのは、ファブラの人間ではなく、ミラング共和国の対外強硬派の者だったことは、間違えようないことだ。

 酷いものだ。

 善というものが必ず悪に勝つということはないし、善や悪も主観的なものに過ぎず、人によって悪や善の基準も異なる。

 だけど、周囲を不幸にしていると、次第に、周囲がより不幸にならない方法を選択してくるので、返って、周囲を不幸にしている側にとっても不幸なことであるし、不幸にしかならない。

 結局、人という生き物は、自分だけでは成り立つことができず、周囲というものとの協和することも重要なのである。自分の利益を主張してはいけないとは思わないが、周囲との関係を踏まえた上で、ということは避けて通ることはできない。

 さて、クロニードル家による旧ファブラの支配に関しては、ここまでにしよう。


 場所は、ミラング共和国の首都ラルネ。

 そこには、多くの者が祝いの声が上がっていた。

 騎馬兵、壮観な格好をした歩兵。

 周囲の人々は―…。

 「ミラング共和国軍最高!!!」

 この一つの声が次第に―…。

 『ミラング共和国軍最高!!!』

 この大合唱となり、ファルケンシュタイロは、ファブラの内戦介入、併合による最も大きな貢献を果たすようになった。軍の指揮官のトップとして―…。

 ファルケンシュタイロの名声はさらに上がる。

 ラウナンにとっても、ファルケンシュタイロの名声が上がることは悪いことではないし、利用しやすくなって有難いと思うほどだ。

 ファルケンシュタイロが通ると―…。

 「ファルケンシュタイロ様――――――――――――――――――――!!!」

と、叫ぶ観衆はその英雄を一目見ようとする。

 その英雄を見た、話した、というようなことが一度でもあれば、自慢になるし、ファルケンシュタイロの直属の軍団に属していると言えば、確実に、人気者になるのは、今のミラング共和国の中では間違いのないことである。

 ただし、全員が全員、ファルケンシュタイロのことを英雄だとみなしていないし、リース王国との先の戦争の内容を知っている者達からは―…。

 そして、ファルケンシュタイロの残酷性を知っている人物は、こんな英雄を認めようとはしないだろうし、恨みさえするだろう。

 そんな声も今の世間からは、消されるというか、無視されるという結果にしかならない。勝ち馬に乗ることを好むのだから―…。自らが生き残ることを望んで―…。

 「おい、あれが!!!」

と、一人の声がすると、一つのところに焦点を集めるのだった。

 それは三つの檻であり、その中に三人の人物がそれぞれ別々の人物が入れられていた。

 その人物は、ファブラの統領であったフィブル=ファブラ=フォンメルラードを一番前に、次の檻に長男のフィンラルラード、最後の檻にウォンラルラードである。

 それを人々は、物珍しそうに、侮蔑の感情を抱いて、視線を向ける。

 この視線に対して、三人は、恥ずかしそうにする。自分が見世物させられていることに―…。

 それに加えて、ミラング共和国軍の圧力に屈し、かつ、ファブラが滅んだことによって、自らの目標が達成できなくなったことを悟って―…。

 「ファブラを混乱に陥れた可哀想な人たちだわ。」

 「こんな奴らがいなければ、ファブラは滅ぶことがなかったのに…ね。」

 「しょうがないじゃない。私たち…の祖国、ミラング共和国は強いのだから―…。野蛮人たちに国の統治とは何か、人としての道徳性とは何か、それをちゃんと教えて差し上げないといけないのよ。」

 「そうだね、彼らを立派な人にするのが、ミラング共和国の役目で、私たちの役目よ。」

 侮蔑な感情の言葉だ。

 人という生き物は決して、完全にも完璧にもなれないし、生まれた時から人生を終えるその時までに、崇高な存在で居続けることはほとんどというか、ほぼというか、それよりも珍しいぐらいにできないのだ。

 そのことを忘れて、自らの優越性を示すがために、旧ファブラの統領一族のこと、ファブラのことを馬鹿にする。

 最低な人々とは、こういうのを指すのだろう。

 そして、一種の優越感は、差別意識へと繋がっていくし、旧ファブラの領土の人々に対して、なしていく、最低な行為がおこなわれることを物語っているのだ。

 現実、旧ファブラの領土は惨い仕打ちを受けることになる。

 その後、凱旋に集まった人々は、ミラング共和国軍の兵士に歓声を送るのだった。

 その一団の中に、グルゼンの部下だった者たちはいない。

 彼らがいては困るからだ。

 それでも、グルゼンの部下だった者たちの一部は沿道から凱旋を見ながら、どういう状況下を把握しようとする。それを仲間内に伝える必要があるからだ。

 そんな中に―…。

 (ミラング共和国の国民の心は、どんどん、杜撰で、醜くなっていっているわ。アルデルダ領のように、ファブラの方も自分達の優越性のために、差別していくのね。最低だわ。この国は―…。対外強硬派は、国への偽りの愛を教えているのだわ。それを愛国心と言って―…。)

と、一人の女性は思うのだった。

 彼女にとって、この凱旋による人々の声は、まるで、天使の顔をした悪魔を礼賛しているようだ。まるで、自分達を不幸という破滅を迎えるために、一時の快楽を与えているのような―…。

 ある意味で合っているし、間違ってもいる。

 対外強硬派は、本当に、このように周辺諸国に対して、自分の属している国は強いと示すことによって、自分達は幸せに、名誉、地位、権威などを手に入れられると思っている。そこに、周辺諸国を見下す感情を存分に含ませて―…。そして、合っていることは次第に、大きな破滅へと進んでいるということである。

 それは、じっくりと忍び寄ってきていた。

 (私のような軍人が今、考えたところで無意味なことに過ぎないわ。だけど、いずれ来るだろう。早まらず、遅くならずにどのタイミングで乗るのか、そこを見極めないとね。)

と、心の中で思う。

 いつの日か、起こるかどうかは分からないが、それでも、未来のある一定の先にいる人たちには分かっている。彼女の思っていることがどれだけ重要なことであるのかを―…。

 忠誠心だけで生きていけるほど、この世の中は甘くないし、裏切ってばかりでも、同様のことが言える。本当に一面だけから見ようとすることがなかなかに難しいのがこの世なのかもしれない。

 そして、その女性、名前はイルターシャというのは、このまま、パレードを無感情で見ていくのだった。周囲からは若干怪しまれそうであるが、凱旋に盛り上がっているため、気づかれなかった。


 凱旋の後。

 凱旋式典が開催されていた。

 そこには、対外強硬派の主要幹部が揃っていた。ラウナン以外は―…。

 その式典で―…。

 「では、総統であらせられますフォルマン=シュバリテよりお話があります。では―…。」

と、式典の司会者が言うと、シュバリテが壇上に上がる。

 シュバリテは、言うべきことを何度も確認して、それをメモした紙を自身の服のポケットの中に入れる。

 「ミラング共和国総統フォンマル=シュバリテだ。今回の凱旋式典に参加していただきありがとうございます。今回、ミラング共和国軍は、隣国の一つであるファブラ国において発生した内戦を無事、解決することができた。これは素晴らしい功績であり、さらに、ファブラ国の統領は自らの過ちを反省し、私に、ファブラ国の統領の地位を譲渡してくれることになった。ファブラ国の統領であったフィブル=ファブラ=フォンメルラードも自らの後継者たちによる内戦で、自らの過ちに気づき、功績のあるミラング共和国のトップである私に、この統領の地位を譲り渡したのだ。フィブル=ファブラ=フォンメルラージ自身の手で―…。これで、皆さんが、どういうことか分かっておりますね。そう、ファブラ国、いや、もう旧ファブラと呼ぶのが相応しいでしょう、旧ファブラはミラング共和国と併合することになり、我が国の国民となりました。旧ファブラの人々が我が国の国民になった以上、彼らを立派なミラング共和国の国民にしないといけない。そうすることが私たち、ミラング共和国民に課された使命であり、天より与えられたものです。どうか、旧ファブラの人々が粗相なことをしたとしても、優しい顔をして、ミラング共和国民とはこういうものだと教えてあげてください。あの忌まわしきアルデルダ領の者ども、今は大人しくなり、自らの罪を償っておる。だからこそ、我々の力で、旧ファブラも良き方向に導けることであろう。そして、今回、大活躍をしたミラング共和国軍の兵士達には、最大の賛辞を送ろう。ミラング共和国軍なしにミラング共和国はないのだと―…。最後に、ミラング共和国に繁栄よ、栄華よ―…。」

と、シュバリテが言う。

 この言葉には嘘だらけのものでしかない。

 ファブラ国の統領であったフィブルがミラング共和国に事実上併合されたのは、フィブル自らということにしているが、実質は、ミラング共和国との交渉の中で脅されたことによる強制されたことである。どこに自発的要素があるのだろうか。

 だけど、人々にこのような真実が知られることは、ほとんど言ってない。人々が見ている情報など、この人における社会のほんの一部でしかないし、改竄された情報だって存在するのだ。お前が信じているものの中にさえ―…。無条件だろうが、何かの理由があろうが―…。

 そして、すでに、ミラング共和国の総統の中にも、旧ファブラに対する侮蔑が存在しており、優越感、というものが悪い意味で存在してしまっているのだ。驕りであり、傲慢であるものが―…。

 「総統の言葉でした。次に―…、ファウンダ=クロニードル様のお話です。」

と、司会の人が言うと、壇上はシュバリテと交代する形で、クロニードルが上がってくるのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(87)~第二章 ファブラ侵攻(20)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


さて、ファブラ侵攻の大きな内容というか、内戦は終わり、これからはエピローグという感じになっていきます。伏線が張られてしまったという感じです。

次回の投稿日は、2023年6月6日頃を予定しています。

では―…。

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