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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
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第28話-1 神と王は対立する

更新(不定期)を再開していきます。

前回までは、ルーゼル=ロッヘを旅立ち、リースへと瑠璃、李章、礼奈、アンバイドは、クローナを仲間に加え、向かうのであった。

予定通り、第28話は分割になりました。

 

 (神に対する罪は)


 一人の少女が歩く、トントンと音をたてながら―…。


 (その者の命と災いによってのみ)


 それは、リースにある城の廊下である。


 (償われなければならない)


 少女―いや、セルティーは、自らが信仰するものの言葉を自らに刻みながら―…。

 そう、(おろかもの)は神に対して罪を犯した。それは、自らの近親者およびランシュでさえもだ…。

 そして、セルティーもいずれ犯すことになるだろう。

 人が人を殺すという名の神の定めし罪を―…。これは、生物が進化していくために、そう、自らの遺伝子(流れ)を滅ぼさせないようにするために―…、繁栄させるために―…。


 【第28話 神と王は対立する】


 ここはリース。

 そう、リース王国の首都である。

 首都ということもあって、瑠璃、李章、礼奈が見てきた村やルーゼル=ロッヘの町よりも都市の規模は、数倍のものであった。

 ルーゼル=ロッヘと同様に港町である。港の規模もルーゼル=ロッヘよりも数倍の大きさを誇っているために、多くの船が停泊している。

 そして、大型の船でさえも何隻も受け入れられるぐらいのほどの収容力を有している。

 港町であることから、現実世界で税関にあたるところも存在し、徹底的な管理のもとに交易をおこなうことができるようになっている。

 港から離れ、市街についてみると、いくつかの交易市場や一般市民がよく利用する市場が存在した。そこでは、多くの人々が日夜、売買に明け暮れていた。そして、人の賑わいもあった。

 リースの中央には、城が一つある。

 この城こそが、リース城と呼ばれるものであり、王家が住む場所だ。

 リースは王国といういわれていることから、王制である。つまり、王様が支配する国ということだ。

 しかし、その実情は王の支配とは変わりつつあった。


 首都リースの入国ゲート近辺。

 今は、瑠璃たちがランシュから招待状を受け取ってから二日後。予定通りについたのである。

 太陽はすでに真南にあり、ちょうど正午の時であった。

 「ふぅ~、やっと着いたぁ~。もうしばらくは野宿はやだ~。」

と、瑠璃は言う。この二日という野宿は、野獣やら盗賊に襲われることはなかったが、毎日ずっとテントを張っていたので、その重労働に苦痛しか感じていなかった。そう、アンバイドが一切、瑠璃たちのテントを建てるのを手伝ってくれなかったのだ。

 これらの意味を込めて、

 「特に、テントを張るのは~…。」

と、瑠璃が言いかける。その言いかけている言葉に割り込むように、

 「お前ら女子三人が料理できないからだろ。それに、テントを張ることのほとんどは李章がやっていただろう。お前らの分もな…。料理さえも―…。」

と、呆れながらアンバイドが言う。そう、アンバイドは、実際に女子三人のテントのほとんどは李章によって組み立てられたからだ。それに、女子三人はテントを使用用途とは異なる方法を何度も試みて、自ら疲れていったにすぎない。実際、料理は、クローナは少しぐらい(手伝いできる程度であるが)できるだけで、瑠璃と礼奈はまったくできなかったのだ。結局は、李章とアンバイドが中心となって料理をしていたのである。そして、その間、クローナはともかく、瑠璃と礼奈はただじっとしていただけなのだ。そうなってくると、何もしていないのに等しい瑠璃が、野宿の疲れた発言に対して、アンバイドが怒りを爆発させるのは当たり前だった。

 アンバイドの割り込んできた言葉を聞いた瑠璃は、

 「はい。」

と、申し訳なさそうに答えるのだった。

 (でも~、私は知らなかっただもん。キャンプなんて一回もやったことないし、それに―…、テントっていったら、学校の運動会で使われるのしか組み立て方知らないだもん。)

と、瑠璃は拗ねながら、心の中で呟いた。

 瑠璃が三角の形をしたキャンプ用のテントは、現実世界のテレビや新聞などであることは知っていた。しかし、瑠璃は両親に一度もキャンプに連れて行ってもらっていなく、実際に組み立てたことがあるテントは、学校の運動会や体育祭などでよく使われる、白い上に学校名や地域の名前などが黒で書かれている白いテントである。それも、組み立て方のすべてを瑠璃自身が知っているわけではない。

 そして、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドはリースのゲート近辺から中央の方面へと向かって行く。競技場へと向かって―…。

 その道中、

 「屋台がでているのか、まあ~、そろそろ祭りの季節ってとこか?」

と、アンバイドは周りを見ながら言う。そう、リースは年一回の祭りの準備で大忙しの状態だったのだ。この祭りはリースの人々の娯楽でもあり、貿易に従事する者や近辺の商人や人々にとっての楽しみとして―…。

 「祭りって何ですか?」

と、クローナは疑問に思いながら言う。

 「リースの祭りを知らないのか? ここら一帯ではとても有名なんだ。規模といい、盛り上がりといいリースの祭りは、俺の祭りのランキングの中でも上位を占めるほどだ。屋台の数は多いし、イベントも規模がでかい。それに、何より騎士たちによる戦いもいいってもんだ。リースの騎士っていうのはなぁ―(以下略)。」

と、アンバイドはクローナの疑問に答える。そう、リースの祭りが何であるかを。そのために、リースの祭りの中で特に有名な騎士同士による戦いを語らずにはいられなかったのだ。アンバイドは、騎士同士による戦いは、楽しみであったのだ。リースの騎士のレベルは、上位の実力者ほどのその剣技は強く、戦いもアンバイド自身が感心するほどであった。ゆえに、語りたくなるのだ。その騎士同士の戦いの美点を―…、瑠璃、李章、礼奈、クローナの四人に―…。

 それを聞いていた、いやむしろ、少し時間が経つほど聞かされていたという表現が似合うようになっていたのである。そう、話が長すぎて、

 (もういいです。話長い。)

と、クローナが、

 (これが、オタクが自分の得意分野を語るときにやけに饒舌になり、周りが見えなくなるあれですか。)

と、礼奈が、

 (長い!! 耳でも塞ごっ。)

と、瑠璃が、

 (…………)

と、李章が心の中で呟き、思ったのである。

 そんなアンバイドによりリースの騎士同士の戦いに関する話がかれこら30分ぐらい続いた。

 アンバイドは、それについて長い美点の話しを終えると、

 「瑠璃。お前が持ってきた招待状に書かれていた場所は、たぶん中央の方にある競技場だと思う。リースにある競技場と言ったらそこしかないからなぁ~。ランシュもそこだとわかっているから、闘技場としか言わなかったのだろう。」

と、アンバイドは言う。そう、アンバイドは何もただ単に祭りについては語っていたが、別の意味を含めていなかったわけではない。

 その騎士同士の戦いがおこなわれる場所こそが、競技場であり、ランシュが指定した場所でもあるということだろう、とアンバイドは予測していた。ゆえに、競技場へと案内をアンバイド自身ができるということを示そうとしたためである。結局、瑠璃、李章、クローナに理解されなかったが―…。

 唯一、何となくではあるが、アンバイドの別の意味を理解していた一人は、

 「アンバイドさん。(なん)かよくわかりにくい説明をありがとうございます。もう少し、意味のわかるような言葉で説明してくれませんか? それも子供でも初の異世界へ来た人でもわかるような―…。」

と、言う。そう、礼奈である。礼奈は、アンバイドの言いたいことの別の意味を理解していたが、あまりにもどうでもいい、リースの騎士同士の戦いの美点に飽き飽きしていた。そう、オタクが自らの得意分野を語るときの饒舌さと、話の長さに―…、それに、校長先生のお話の長さレベルに、ああいいよ、もう、わかっていますから、の気持ちを抱いて―…。

 礼奈のこの言葉に対して、

 「ああ。」

と、アンバイドは言いながら、怒りのマークを顔の左側のおでこの部分に一つ浮かび上がらせた。ゆえに、声も低く、どもっていた。

 「…………、どうしたんですか? アンバイド。」

と、クローナが本当に疑問に思いながら言う。クローナはアンバイドが怒っているのはわかっているが、礼奈のアンバイドに対する指摘もまともなので、どうしてアンバイドが怒るような態度をとったのかがわからなかったのだ。クローナとしては、むしろアンバイドがすまないとか言うのかと思っていたのだ。それが、アンバイドが怒りの表情を見せたので、疑問に感じてしまったので、質問したのである。

 このクローナの質問は、結局のところ、

 「せっかく人が競技場へと案内してやる言ってやってるのに、感謝じゃなく注文かよ!! 少しぐらい、大人の長話しを聞いて、意図くらい読めよ。」

と、アンバイドは声を怒鳴り声になりながら言った。

 それは、周りにもアンバイドが怒っているように聞こえたのだ。

 周囲の反応としては、子どもたちに怒鳴りつける危険なおじさんという印象を与えていた。そう、関わってはいけない人であるということを周囲に結論付けさせた。

 アンバイドのさっきの怒りに対して、

 ((わかるか!!))

と、瑠璃、李章は心の中でツッコミを入れた。

 (……わからないってところが、一般的な反応ですよ。)

と、礼奈はアンバイドの発言を両手を広げ、はぁ~、と溜息をついて呆れていた。

 「アンバイドがもし言う側ではなく、言われる側だったらどうですか?」

と、クローナは質問する。そう、アンバイドのリースの騎士同士の戦いの美点に対する長い話の別の意図を理解しなかったことに対する怒りがもしもアンバイド自身に向けられたら、アンバイドはどう思うかのをについて疑問に思ったのだ。

 「そうだなぁ~、ブッ倒してるわ、そいつ。」

と、アンバイドは答える。理不尽なわがままな解答を―…。

 (((大人げない。)))

と、瑠璃、李章、礼奈は、アンバイドの答えに対して、心の中でツッコミを入れるのだった。呆れながら―…。

 「アンバイドは、大人げないですねぇ~。」

と、クローナはアンバイドのさっきの発言に言うのであった。それも、正直に―…。

 アンバイドは、怒りのマークをでこにもう一つ作り、

 「てめぇ~!! 頭来た!!! 今からここでブッ倒してやろうか!!?」

と、アンバイドはクローナの言葉に対して、ブチギレるのであった。そう、理不尽をなすほうの側のように―…。

 クローナとアンバイドのやり取り、見つめる事しかできなかった瑠璃、李章、礼奈。

 三人は、

 ((いつまでやるの?))(いつまでやるのですか?)

と、心の中で呟くのであった。呆れながら、そして、周囲から関わりのある人間であると思われないようにするために―…。


 この礼奈から始まった後、クローナとアンバイドの言い争いに移っていった口論は、李章が結局のところ双方を宥める(特にアンバイドのほうであったが…)ことによって何とか数十分後に終わることができた。

 そして、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドは、競技場を目指して進んでいった。


 ゲート近辺から瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドが移動してから、1時間半ぐらいが経過したときに、ついに、競技場へと辿り着くことができた。

 「ここが―…。」

と、瑠璃は言う。

 (写真でしか見たことはありませんが、古代ローマの人々が使っていた闘技場のようなものですか。)

と、李章は心の中でリースの競技場について感想を述べた。そう、競技場は、古代ローマで剣闘士同士の戦いがおこなわれた闘技場(コロッセウム)に似ていたのだ。もし、違う点を挙げろ言われれば、こういう言うだろう。今も使われているか? そうでないか? の違いぐらいだ。

 「各々が思いたいこともわかるが、今日はこの場所だけでも覚えておいてくれ。明日、俺たちが戦う場所だってことを―…。」

と、アンバイドは真剣な眼差しで言う。競技場は、明日、いや明日から戦いの場になるのだ。瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドとそしてもう一人の―…、そう、ランシュを倒すための場に―…。


第28話-2 神と王は対立する に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。

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