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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
427/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(81)~第二章 ファブラ侵攻(14)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ファブラの内戦が始まり、事態を打開することができなくなり追い詰められたフィブルはラルガリオの甘言にのって、ミラング共和国に介入要請をしてしまうのだった。ミラング共和国側は、軍をファブラに派遣する。

その中で、ミラング共和国の諜報および謀略機関であるシエルマスの統領ラウナンは、ラマガルドリアの拠点に現れ、ラマガルドリアを殺し、ファブラの統領の後継者候補の一人であるウォンラルラードをミラング共和国軍の総大将であるファルケンシュタイロの場所へと運ぶのであった。ウォンラルラードを気絶させた上で―…。

 ファルケンシュタイロのいる場所。

 そこに、ラウナンが戻ってくる。

 「ファルケンシュタイロ様、今、戻りました。」

と、ラウナンは言う。

 ラウナンは、一人の筋肉質の人間を片手で抱えながら―…。

 ラウナンの体形では、抱えられないと思われても仕方ない、と思えるものを―…。

 どこにそれだけの力があるというのか。

 ファルケンシュタイロの周りにいる高官たちは、驚きの表情で、ラウナンを見る。

 (あれが、シエルマスの統領なのか。)

 (統領になるほどの人物は、これほどまでの腕力が必要なのか。)

 (いや、天成獣の宿っている武器を扱うことができるようになると、こんなことも出来てしまうのか。)

 それぞれに驚嘆する。

 ラウナンがこの一人の人物を抱えられているのは、天成獣の宿っている武器のおかげであることは事実である。

 そのことに気づける者たちがこの場にどれだけいるのだろうか。

 そんなことを考えても、ここでは意味のないことである。

 ファルケンシュタイロはラウナンが戻ってくることに、心の中でビックリする。

 それは、このタイミングで戻ってきたという気まずさというか、ラウナンに見られるとヤバいことではなく、ただ単に、急に姿を現わすことに驚いているだけだ。意外にビビりかもしれない、ファルケンシュタイロは―…。

 「驚かせやがって。ラウナン、その肩に担いでいるのは何だ。」

と、ファルケンシュタイロは、抱えられているウォンラルラードに気づく。

 ラウナンは、ファルケンシュタイロの言葉に、表情を変えることなく言い始める。

 「あ~、これですか。ファブラの次期統領の後継者の一人で、フィブル=ファブラ=フォンメルラードの次男のラウーラ=ファブラ=ウォンラルラードさんですね。アウトローの一人で有力者のラマガルドリアの拠点の一つにいましたので、気絶させて連れてきた次第です。」

と、淡々と答える。

 これは、あくまでも、仕事の一つでしかなく、他にもやることはたくさんあるのだ。

 ラウナンの言葉や言い方に、何かを感じてしまうファルケンシュタイロであるが、それを心の中にぐっと押し込め、今は冷静に対処すること、ウォンラルラードをここに連れて来た理由を探る。

 「なぜ、ラウーラ=ファブラ=ウォンラルラードを心に連れて来る必要あったんだ。その場で処分しても構わないだろ。ファブラの現統領であるフィブル=ファブラ=フォンメルラードじゃないのだから―…。こんな奴をミラング共和国の首都ラルネで処刑したとしても、そんなにミラング共和国の国民が、そこまで興奮したり、ミラング共和国が強いという国威発揚ができるわけじゃないだろうに―…。」

と、ファルケンシュタイロは言う。

 ファルケンシュタイロとしては、ウォンラルラードにそこまでの価値があるとは思えなかった。強いて挙げるなら、ミラング共和国のファブラ侵攻を招いた直接的な原因の人物であるということだけだ。

 それに、価値がないと言ったら嘘になってしまうであろうが、それでも、価値があるか? と、ファルケンシュタイロに問わせれば、価値はそれほどないとしか、解答できない。

 「ファルケンシュタイロ様に何も言わずに処分するのはあまり宜しくないと思いまして―…。この人物、我々、ミラング共和国のファブラ介入のための口実を与えてくれた功績者なのですから―…。まあ、ラウーラ=ファブラ=ウォンラルラードさんと組んでいたラマガルドリアに関しては、その場で処分し、配下に気づかれないように処理させています。」

と、ラウナンは言う。

 ラウナンとしては、ファルケンシュタイロにどうしてここに、ウォンラルラードを運んだのかという理由を完全ではないが、説明した。ラウナンにとって、ウォンラルラードはファブラ介入の口実を作ってくれた人物であるからというよりも、ファルケンシュタイロに手柄与えたという認識が正しい。

 ラマガルドリアをここに運んだのなら、確実に、ファルケンシュタイロに擦り寄る態度を示すだろうし、その中で、ファルケンシュタイロが希望を与えながら、最後に絶望させることによって殺す方法を用いるか、気に入られてミラング共和国軍の中に入れられる可能性が存在する。後者の可能性を排除するために、ラマガルドリアは殺した。

 そうすることで、シエルマスの後顧の憂いをなくしたのだ。ラウナンにとっての、も含まれるが―…。

 「そうか、わかった。ラウーラ=ファブラ=ウォンラルラードの処分はこっちでしておこう。それ以外にもあるんだろう。」

と、ファルケンシュタイロは問う。

 ラウナンがこれだけの用事で戻ってくることは十分にあり得るが、それだけではないというのも何となくだけど察してしまう。

 そのファルケンシュタイロの感情を理解したのか、ラウナンは言い始める。

 「そうですねぇ~、他にもというのであれば、ラウーラ=ファブラ=ウォンラルラードさんの兄であるリット=ファブラ=フィンラルラードさんもこちらの方へとお運びしましょうか。」

と。

 その言葉を聞いたファルケンシュタイロは考える。

 (………運ばれても困るが、争っている一人だけをここに置いておくよりも二人の方が―…。なるほど、これは面白い。)

 ファルケンシュタイロの頭の中に黒い欲望が見え始めた。

 ファルケンシュタイロは思いついてしまったのだ。

 自らの快楽を満たすための新たな方法を―…。

 残虐性を孕んだアイデアを―…。

 「ラウナン、リット=ファブラ=フィンラルラードもこっちへと運んでもらおうか。生かしたままな。」

と、ファルケンシュタイロは命じる。

 その言葉にラウナンは、ほんのわずか、薄ら笑いを浮かべる。

 (……………これぞ人だ。残虐性は、人たらんとしてくれる。)

 この短い心の中で思っているラウナンの言葉に、人間という生物の(おぞ)ましさの一つを感じさせられてしまう。

 人という生き物は、ハッピーエンドを迎えたり、人格に優れた者が活躍する物語のようなことにならないこともある存在だ。

 そういう面とは逆の、残酷なことを簡単にこなし、それを快楽としてしまうこともある。善悪は結局、主観的なものでしかないのか。

 いや、人という生き物が主観性から逃れることができない以上、人が考える、判断する、行動する者に主観性を帯びるのかもしれない。この世界のすべてを理解できないからこそ―…。

 そして、残酷さという表現もまた、主観性のものでしかないのだろうか。

 その残酷さというものを、ラウナンは好むか嫌うかと言えば、好まないまでも、否定的になって、忌避の感情を浮かべるものではない、と考えている。

 理由としては、人の裏というものをたくさん見てきたラウナンだからこそ、人が汚く、悍ましい生き物であることを十分に知っている。

 世界が残酷であることも―…。

 そして、ラウナンは、ファルケンシュタイロの言葉に対して、

 「はい、畏まりました。」

と、返事をするのだった。

 ラウナンにとって、今、ファルケンシュタイロを表の場面では忠実な部下のように振舞うのが正しい、周囲に思わせたい像であることは事実だ。裏でファルケンシュタイロを操っていれば良いのだから―…。

 (さて、次の仕事に取り掛かりますか。)

と、ラウナンは心の中で思いながら、姿を晦ますのだった。

 ラウナンが姿を消すのを見た者たちは―…。

 (……………相変わらず、どういう原理なんだ。)

 (………どっかへ行ってくれたぁ~。ラウナン(あの人)がいる場だとどうしても、威圧されているように感じて、心臓に悪い。俺の寿命が縮まってしまうじゃないか。)

 そんな感じに思うのだった。

 そんななか、ファルケンシュタイロは、

 (今回の遠征は、あまり俺にとって良いものがないだろうと思ったが、意外にも収穫が多かったなぁ~。クククククククククク、さて、俺個人の楽しみもできたことだし、ファブラ侵攻を終わらせるために、どんどん進めていかないとなぁ~。)

と、心の中で思う。

 楽しみで仕方なくなった。

 ファブラ侵攻の計画の段階では、あくまでも侵略することだけであり、それを楽しむこと、要は自らが軍人として優れていることを周囲に示すことができると思っていた。

 だけど、それ以外には何もないと思っていた。

 ゆえに、楽しいという気持ちはあるが、それでも、クロニードルのような興奮にはならなかった。

 だが、ファブラに来てみるとどうだ。演習に使える大きな森林があり、かつ、ファルケンシュタイロの快楽を満たしてくれる残虐な方法を提供してくれるファブラの次期統領候補の兄弟がいる。

 そんな楽しみがあることに気づかない自分が、どうしようも馬鹿だと感じてしまうし、ここまでの楽しみを提供してくれたファブラ侵攻には感謝しないといけない。

 ファルケンシュタイロの楽しみは始まったばかりだ。

 「さあ、ファブラの統領屋敷を包囲して、ラウナンの野郎が行動しやすいにしろ!!!」

と、命じるのだった。

 ファブラ侵攻はより激しくなっていく。


 一方、アウトローが根城にしているリンファルラードの郊外。

 特に、ラマガルドリアが拠点にしていた場所の近く。

 そこを一人の女性が歩く。

 その女性は、ミラング共和国軍の軍服を着ていた。

 (思ったよりもアウトローがいないようねぇ~。それにしても、アウトロー達はリンファルラードの中央の方に向かったのかしら―…。それにしても―…。)

と、心の中で思っていると、目の前に、何かあるのを発見する。

 そう、幾人もの人が倒れているのが―…。

 (………………あれは―…。)

と、近づこうと考えるが、何か危険な予感がしたので、近づくことなく、今、いる場から判断しようとした。

 その方が、賢明な選択になるという自らの勘を信じて―…。

 そうやって、辺りを見回すと、すぐに、人がどうして倒れているのかを理解することができた。

 (誰かにやられたようだね。格好からはアウトロー。ということは、ここを守るほどだから、かなりの有力人物がいたと考えて、ミラング共和国軍もしくはシエルマスがやったようね。なら、関係ないし、別の場所へと向かうか。)

 と、一人の女性、イルターシャが思いながら、別の場所へと向かうのだった。

 このイルターシャの判断は、賢明であった。

 この時、シエルマスが近くで、イルターシャの行動によって、抹殺する可能性が存在したのだから―…。

 イルターシャもシエルマスの存在に気づいていたわけではないか、誰かがイルターシャを見ていることに関しては気づいていた。

 ゆえに、別の場所に向かって行くのだった。

 今は、その時ではないと判断して―…。


 リンファルラード、統領の屋敷近く。

 ミラング共和国軍とアウトロー達との戦いが激化していた。

 「進め―――――――――――――――――――――――――――――!!!」

と、ミラング共和国軍の現場指揮官の一人が叫ぶと、兵士達はアウトロー達に向かって行く。

 この兵士達は、アウトロー達に殺されるために、彼らに向かっているわけではない。

 勿論、命令で向かっているのであり、その一挙手一投足が完璧に近いほど揃っているし、かつ、自分達の数が多いので、一人であれば怖がってしまう存在の兵士も十分にアウトロー達に余裕の表情で向かって行ける。

 同時に、兵士の多さと規律のとれた行動を見たアウトロー達は―…。

 「クッ!! 軍隊がくるだと!!!」

 「それも、ファブラのじゃねぇ――――――――!!! あれは見たことがある―…。ミラング共和国の軍隊だ!!! 逃げろ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」

 アウトロー達は逃げ始める。

 四方八方に―…。

 普段から、軍隊で戦うための訓練を受けていない以上、軍隊の戦いがどういうものかを理解できないし、戦争がどういうものかを理解できないので、何も抵抗することができずに逃げていくのだ。叶わないと思い。

 アウトロー達にとって、自らの命が重要であり、生き残る可能性が低い側、利益を得られない側に味方するはずもない。

 それに、裏切りを悪い事だとは認識していない。忠誠だけで生きていけるのなら、アウトローなんてなっていないし、アウトローの中で生き残れるわけがない。

 彼らの経験がそうさせる。

 そして、ミラング共和国軍がファブラの統領の屋敷を包囲することに成功する。

 すでに、ラマガルドリアがこの世にいない以上、形勢を立て直す可能性のある人物は存在しない。

 ミラング共和国のファブラ介入は、ほぼ成功したも同然と、この時なったのである。

番外編 ミラング共和国滅亡物語(82)~第二章 ファブラ侵攻(15)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


ファブラへの軍事介入に関して、ミラング共和国が軍隊を派遣することで、ほとんど上手く片付くということになったけど、ファブラ側にとっては都合の良いようにはいかない、という感じになっていくと思います。

本当に、番外編はなぜか残酷な描写が増していくのなぜだろうか?

では―…。

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