番外編 ミラング共和国滅亡物語(80)~第二章 ファブラ侵攻(13)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ファブラにおいて内戦が始まり、フィブルはその状況を解決するために、ミラング共和国に助けて欲しいと要請するのだった。その要請を受けたミラング共和国は、軍事介入をしてくるのだった。ミラング共和国軍は、リンファルラードの戦闘で、アウトロー達の数を順調に減らして言っていた。
そんななか、ウォンラルラードとラマガルドリアのいる場所に、シエルマスの統領であるラウナン=アルディエーレが姿を現わすのだった。
「ラウナン=アルディエーレ?」
と、ウォンラルラードは現れた人物を軽蔑して見る。
急に姿を現わしたことには驚いたが、それでも、自分より強いとは思えなかった。
ウォンラルラードの判断基準は、筋肉の量、武力の実力だ。
そうであるならば、ラマガルドリアに関しては、認めていないのかという問いもある。
現実は、ウォンラルラードはラマガルドリアのことは認めていないが、それでも、武力があるので、雇用しているだけに過ぎないし、彼のアウトローの人脈を使って、自らの勢力を強化しているためだけに過ぎない。
用済みになれば、切り捨てるつもりである。
例えば、ファブラの統領の地位をウォンラルラードが手に入れることができた暁には、下賤なアウトローどもを軍隊を使って始末するつもりだ。
ウォンラルラードとアウトローの繋がりを暴かれることを何よりもウォンラルラード本人が恐れているからだ。
一部の人にはとっくにバレているのだが―…。そういうことには気づいていても、気づかないフリをするのだ。そうしておけば、特に何も問題はないのだから―…。臭い物に蓋をする、そのような感じで―…。
「まあ、ラウーラ=ファブラ=ウォンラルラードさんが、私の存在を知らないのは当たり前のことです。それに、私を殺そうとしても無駄ですよ。ファブラのアウトローごときに私が後れを取ることはありませんから―…。」
と、自信満々にラウナンは言う。
ラウナンは、ファブラのアウトローのことを情報でしっかりと知っている。
アウトローはあくまでも喧嘩に強いが、天成獣の宿っている武器を持っている者はいないと報告されており、ラウナンの敵ではない。
天成獣の宿っている武器を持っていない者で、敵となるのは、すでにこの世にはいないと言っても過言ではない。昔であれば、グルゼンがいたであろうが―…。
そのグルゼンも、ミラング共和国とリース王国との先の戦争で、ベルグから天成獣の宿っている武器を与えられ、それでラウナンに勝利したのだから―…。まあ、そのことをラウナンは認めないだろうが―…。認めてしまえば、ラウナン自身のアイデンティティーというものを簡単に喪失してしまうのだから―…。暴走するかもしれないのだ。
一方で、ラマガルドリアは、ラウナンの登場から冷静に、警戒度をマックスにさせるのだった。
理由は、ラウナンが今までに会ったことのない存在であり、自身よりも強いということを理解させられるのだから―…。
(俺に気づかれることなく、中に侵入してきたんだ。危険極まりない。それに隙を探っても、どこにもないなんて―…。ウォンラルラードの馬鹿が変なことを言わなければ良いが―…。)
と、心の中で思う。
ラマガルドリアにとっては、一番最悪な展開なのは、ウォンラルラードがラウナンに対して、変なことを言って、ラウナンを怒らせることだろう。
ラウナンは怒らせると何をしてくるか分からないからだ。
殺される可能性も十分に存在するからだ。
そのような場面になった場合、ラマガルドリアは対処することなんてできやしないし、自分すら守ることができない。
ゆえに、ウォンラルラードが馬鹿なことを言うなと念じるしかなかった。
今、変なことを言うなと面と向かってウォンラルラードには言えない。
言った場合、ウォンラルラードが余計に馬鹿なことを言ってしまう可能性が高いと判断しているからだ。
ウォンラルラードはフィンラルラードより僅かばかり優れているとしても、良くないということに変わりはない。ウォンラルラードを殺して、ファブラの統領の地位を手に入れようと企んでいるラマガルドリアにとっては、馬鹿で優秀じゃない人物の方が好ましい。そのような理由で、ラマガルドリアを選んだが、ここで自身の選択が最悪なことに気づくのだった。
ラマガルドリアは狡猾な人間であり、頭の回転が遅いわけではないが、それでも、ミスをしないということはない。ゆえに、今回はラマガルドリアのミスであり、致命的な可能性を孕んだものである。
そうなると、ラマガルドリアはすぐに自分の置かれている状況は危険だということに気づく。
その様子をラウナンはすぐに理解するのだった。
(ラマガルドリア…。アウトローの中でもかなりの実力者とされている人物ですか。彼は頭が良く、世渡りも上手い。私の部下に欲しいぐらいですが、欲がありすぎるのが良くないですね。後顧の憂いをなくすために、葬って差し上げた方が良いですね。まあ、少しだけ会話を楽しむことにしましょう。どうせ、ファルケンシュタイロは、グルゼンの元部下達を葬り去りたいと考えているのでしょう。だけど、彼らはしつこいし、練度もある。だから、そんな減ることはないでしょう。)
と、ラウナンは、心の中で思う。
ラマガルドリアは、ラウナンにとって排除すべき存在に変わった。
だけど、時間稼ぎをなすために、少しばかり話すことにする。
「何を言ってきやがる!!! 俺がこのような気配を消して、奇襲するしかできないような奴に負けるはずがない!!! ラウナン=アルディーレ、お前こそ、俺に従うべきだ。従えば、もっと良い思いをすることができるぞ!!!」
と、ウォンラルラードは言う。
ウォンラルラードの心情は、自分が一番であり、それ以外は自分より下だという認識だ。ラウナン=アルディエーレも簡単に、自分に従うことになると一切、疑っていない。疑う必要がないのだ。自分のやっていることは正しく、成功するのだと―…。
ウォンラルラードは気づいていないだろうが、自身がすべてにおいて正しいと思っている勘違い人間の一人であることを―…。人という生き物は完璧になることができないからこそ、自らを変化させることができるのに、そのことに気づかずに、終わることを望むのだ。そのことに気づくべきだが、それは、ウォンラルラードの生涯においては不可能なことであろう。
(ふ~ん、典型的な自分が一番タイプの人ですかぁ~。駒にするのは良いかもしれませんが、エルゲルダという駒がいる以上、そこまで無理して手に入れて、保護する必要もないんだよなぁ~。捨てて構わないということ。ラウーラ=ファブラ=ウォンラルラードはファルケンシュタイロにでも渡して、あっちの方での処分に任せますか。)
と、結論付ける。
ラウナンは、冷静であり、舐めていないにしても、余裕な表情を心の中でしている。相手側に悟られないようにしながら―…。
「従うですかぁ~。私、あなたのような人物に従う気はないですよ。ラウーラ=ファブラ=ウォンラルラードさんは、私よりも強くないのは分かりますから―…。それにいくら筋量を増やしたとしても、動きにキレがなければ、無用の長物でしかありませんから―…。それに、人の中で権力を握る人間は、武力だけでは不可能。ちゃんと交渉に長け、相手を利用できるぐらいの話術、工作能力が必要になります。ファブラの次期統領になりたいのなら、そういう能力をしっかりと身に付けるべきでしたねぇ~。」
と、ラウナンは言う。
ラウナンとしては、ウォンラルラードのことがどうでも良いとは思っていないが、こんな小物ごときに説教することになろうとは―…、悲しく思うのだった。
それでも、ウォンラルラードとの会話はほとんどしても意味がないと理解していた。
「俺を馬鹿にする気かぁ~。」
と、ウォンラルラードはキレ気味であった。
ウォンラルラードの感情は、ラウナンにとっては簡単に分かってしまうことであり、どうウォンラルラードが行動しようとも、選択しようとも、ラウナンは簡単に対処してしまうのだ。ウォンラルラードがそのことに気づくことはないし、気づいたとしても、時すでに遅し、という感じになっていることだろう。
ウォンラルラードが自らの能力を向上させたり、理解することができるようであれば、もう少しマシな結果になったことは否めない。
そんなキレ気味のウォンラルラードに対して、ラマガルドリアは、
(チッ!! こいつは、今、目の前の奴の実力が分かっていない。というか、自分が命じれば、誰もが従ってくれるとか思って、言ってんじゃないだろうなぁ~。もし、そうなら、こいつは早めに片付けた方が良いし、ウォンラルラードに責任を押し付ければ良いか。)
と、心の中で思う。
ラマガルドリアには、分かっている。
ゆえに、ラウナンに無駄に反抗しようとする姿勢を見せないし、かつ、警戒度を緩めないようにしている。
ラマガルドリアは、ウォンラルラードが馬鹿なことをして、こちらに波及してこようものなら、ウォンラルラードを見捨て、ラウナンに責任を押し付けようと考えていた。決して、上から目線の言葉ではなく、自らが子分であるかのように振舞って―…。
ラマガルドリアとしては、半分屈辱的なところもあるが、それでも、圧倒的な、埋められることのできない存在に出会っている以上、これしか方法がないのだ。ラウナンに取って代わろうとしても今は無理だと理解して―…。
そんななか、ウォンラルラードとラウナンの会話は進んでいく。
「馬鹿にする気などございません。私はラウーラ=ファブラ=ウォンラルラードさんの実力をただ単に述べただけですよ。それに、私―…、ラウーラ=ファブラ=ウォンラルラードさん程度の存在なら、簡単に始末することができますよ。というか、天成獣も知らないそうですし―…。あと、ラウーラ=ファブラ=ウォンラルラードさんの処分に関しては、ミラング共和国軍で今回、現ファブラの統領であるフィブル=ファブラ=フォンメルラードの要請で軍隊を派遣した者のトップであるファルケンシュタイロ様に判断してもらいましょう。後、ここから逃げることはできませんし、私に捕まったも同然の状態にあるのですから、余計な反抗は身を滅ぼすだけですよ。」
と、ラウナンは言う。
その顔は余裕の笑みを浮かべていた。
(何だ、その余裕の笑みは―…。ふざけやがって!!)
「そんな自信に満ちて言うところ悪いが、俺は強い!!!」
と、ウォンラルラードは言う。
ウォンラルラードはすぐにラウナンの方へと向かって行き、
「ふん、全然動けていないじゃないなか。俺の一撃で大人しくなって、俺に従え――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
と、ウォンラルラードは言う。
その言葉というか、怒声のようなものを聞いたラウナンの感情は、一切、揺れ動くことはない。
こんな弱い人物に、冷静さを失うことなんてない。
あるわけないだろ。
ラウナンは、ミラング共和国の諜報および謀略機関のシエルマスの統領という職に就いており、周辺諸国で最も恐れられる組織のトップなのだから―…。
実力は勿論、申し分ないぐらいにあるし、ファブラの次期後継者候補ごときに遅れをとることはない。
実力の差が違いすぎる。
いくら筋肉をつけて、強く見せようとしても、それは子どもが可愛い悪戯程度のものでしかない。ささやかな―…。それに大惨事になるような思い付きでもない。
ゆえに、簡単に対処する。
「ガァ!!」
ウォンラルラードの攻撃、右手によるとてもではないが、気絶程度のレベルで済むほどのないパンチによる攻撃をラウナンは受けることなく、右足の蹴り、ウォンラルラードを一発で気絶させるのだった。
意識を簡単に奪い去って―…。
「ふ~う。シエルマスを知らない者は、簡単に私を舐めてかかる。良くないことだが、あまり目立つのも良くない。」
と、ラウナンは呆れながら言う。
ウォンラルラードが弱い癖に、粋がって、ラウナンを攻撃してこようとしたからだ。不快でしかない。ファルケンシュタイロに渡すということがなければ、今、ここで殺していたとしてもおかしくない。
その様子を見たラマガルドリアは、
(シエルマス―…。どっかで聞いたことがある。それにあの実力―…。)
と、心の中で考えながらも、自分がすべき行動はわかっている。
だからこそ―…。
「ウォンラルラードの方は、そちらが欲しいのなら渡す。それに、ウォンラルラードは、ファブラの次期統領の候補者だ。そいつの父親のフィブルに言えば、必ず良い身代金を受け取ることができるし、ファルケンシュタイロに渡せば、報酬さえ貰えるだろ。だから―…ッ。」
と、ラマガルドリアが言いかけるが―…。
(えっ!!)
ラマガルドリアの意識は、永遠の黒となってしまう。
ラマガルドリアの見た景色はそのようになった。
そして、それを見たラウナンは―…、
(お前は、始末しておくことの方が後顧の憂いをなくすことになるからな。残念だったねぇ~、ファブラの統領になることもできずに、死んでしまい。)
そう、ラウナンは、自らの武器である短剣を投げて、ラマガルドリアの首を貫通させることによって、殺したというわけだ。
それにどれだけの腕力と、短剣にどれだけの破壊力と貫通力がいるかを想像すると、とんでもないことになるが、天成獣の宿っている武器である以上、不可能ということはない。
現に起こっている以上―…。
そして、ラウナンは、ラマガルドリアの拠点から出て行くのであった。
次の目的地へと向かって―…。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(81)~第二章 ファブラ侵攻(14)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
このラウナンの動きに関しては、今後も続くだろうし、あの三人の結末は―…。
『水晶』の現在、執筆している場所は、ストックが少しだけあるので、ファブラ侵攻の後のエピローグみたいなところです。
かなり、残酷で、理不尽なことを書かないといけないような感じです。ファブラ侵攻の内容が終了した後は、もう一章を挟んだ上で、再度、ミラング共和国の対外強硬派の中の動きを描いていって、ミラング共和国とリース王国の戦争を書いていく予定になっております。
そう、ミラング共和国が滅亡する戦争で、ランシュが大活躍したやつですね。
2023年度中に完成する可能性がかなり低い状況になっているなと感じております。最終章は、最悪の場合、100部分を超えそうな気がします。ランシュ以外の動きの方も書かないといけないので―…。そうしないと、番外編を作った意義がなくなってしまいますから―…。
さて、『水晶』のお話はここまでにして、やっと、『この異世界に救済を』のプロットの第3部を書き始めることができました。報告は以上かな?
後、カクヨムの方で掲載している『ウィザーズ コンダクター』は第9部の後半戦を執筆しているところで、ある家の侵攻を―…。これ以上は言えません。
最後に、『水晶』の次回の投稿日は、2023年5月23日を予定しています。月曜日は休みますので―…。
では―…。