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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
425/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(79)~第二章 ファブラ侵攻(12)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ファブラの内戦が起こり、ファブラの統領であるフィブルから要請でミラング共和国が軍事介入をすることになる。ミラング共和国軍はアウトロー達の数を順調に減らしていくのであった。

 リンファルラードの中央。

 そこでは、ミラング共和国軍とアウトローの戦いが繰り広げられていた。

 ここにいるのは、ラマガルドリアの部下であった。

 ラルガリオと繋がっていない―…。

 「武器を持って抵抗しろ―――――――――――――――――――――――。」

と、必死に叫ぶ。

 それでも、状況を反転させることはできない。

 ミラング共和国軍の中でも、頑強と言われ、かつて、ミラング共和国軍の中で指揮官として一番優れていたグルゼンが過去に集め、育て上げられた兵士たちによって構成されている部隊なのだから―…。

 ゆえに、アウトローといえども、簡単に殺すことはできずに、むしろ、アウトローが殺されていくという感じだ。ただし、ミラング共和国軍の部隊の兵士の中で死人が出ていないというわけではなく、アウトローの十分の一以下で死傷者は出ていたりする。

 そして、どうやって戦うのが良いかを常日頃から考えている軍人なのだ。

 戦経験のないアウトローが束になって勝てるほど甘い相手ではない。

 むしろ、負ける確率が高い戦いでしかないのだから―…。

 アウトローは頭が悪いからそのことに気づかないわけではないのだ。自らの上司である存在の命令を確実に重視しなければならないと思っているからだ。そういう意味では、何が怖いのかという優劣で行動しているにすぎない。

 だが―…。

 「あいつら強すぎるだろ。このまま戦っていても、ジリ貧じゃねぇ~か。」

 「どうするよ。」

 「ラマガルドリアの奴が怖いから従っていたまでだ。こんな奴らと戦って命を失うなんて―…、真っ平ごめんだ。」

 アウトローたちは、ミラング共和国軍の力を知り、恐れ戦くのだった。

 そりゃそうだろう。戦いの素人でしかないアウトローに対処することは到底できない。

 ここに、軍事の天才がいれば、話は若干であろうが変わってくるし、この状況もアウトロー達にとって、少しだけは有利に進められていただろう。だけど、アウトロー達の敗北をわずかばかり遅らせることにしかならないだろうが―…。

 そんななか、ラマガルドリアの部下は、兎に角抵抗しようと試みる。

 「逃げるな!!! 武器を持って抵抗しろ―――――――――――――――――――――――――――。」

 声が枯れるかもしれないということを承知しながらも、声を出し続け、ミラング共和国軍を倒すように命じる。

 ラマガルドリアのいる場所へと向かわせないために、さらに、この状況を打開するために―…。

 (何で、ミラング共和国軍がファブラにいるんだ。おかしいだろ。誰かが招き入れたのか。そうだとしたら、誰だ。)

と、心の中で焦るが、自らの状況を理解できないというわけではないだろう。

 ミラング共和国軍を招き入れた人物がラルガリオであり、要請したのがフィブルで、ファブラの現統領であることを、このアウトローは知らない。

 もし、このようなことを知っていたのなら、統領フィブルのことをかなり恨んでいただろうし、ミラング共和国軍に勝てないなりに、作戦を考えていただろう。

 事前に知っているというだけでも、かなり違いがはっきりと示されていたことであろうが、時を戻しての実験をおこなうことができない以上、その違いを完全に示すことはできない。

 要は、このラマガルドリアの部下のアウトローは、ミラング共和国軍がファブラに侵入し、リンファルラードに向かってくるなんて、想像だにしていなかったということである。

 まさに、絶望。

 これに尽きる。

 この絶望の中で抱くことができるのは、達成されることのない希望を抱くことのみだ。

 (そんなことよりも―…。)

と、今の状況を対処しようとするが―…。

 そう思考している間に、アウトローの多くが、散り散りになって逃げ始めていた。

 「こんな戦い、やっていられるかよ!!!」

 「俺は無理矢理脅されたんだよ!!! そこに男に!!!」

 (逃げて!!! 隠れて!!! 今は大人しくして、奴らが去るのを待つ!!!)

 (勝ち目のない戦いをして、一銭の得にもなりやしねぇ――――――――――――――――!!!)

 逃げる、逃げる。

 すでに、ラマガルドリアの求心力はなくなっていた。

 ミラング共和国軍と比べれば、無きに等しい。

 そう、これがラマガルドリアの力でしかないのだ。限界と言っていいかもしれない。

 後は、ラマガルドリアの敗北を待つまでしかない。確定的に起きる可能性が高いことを―…。

 「大人しく投降しろ。投降しないのであれば、お前たちを殺す。」

と、ミラング共和国軍の兵士の中で、指揮をおこなっている兵士が言う。

 この兵士は、ファルケンシュタイロの直属の部下ではなく、元グルゼンの部下である。

 戦争が残酷なことであることをしっかりと理解している。上からの命令には絶対服従で従うこと―…。

 ファルケンシュタイロという人間が、グルゼンの元部下たちをかなり冷遇して、それを処分するために、このような危険な任務を授けていることを―…。

 それでも、一人でも多くの人間を生かそうとする、軍人の中の指揮官として当たり前のことをこの人物は行使しようとしている。一人でも多くの自らの味方が生き残るのが後々、重要になってくるのだ。練度のある兵士の数はかなり必要になるのだから―…。

 その指揮をおこなっている兵士の言葉に威圧感を感じてしまったラマガルドリアの部下は―…。

 「投降する。」

 その言葉を言い、この場で降伏するのだった。

 リンファルラードの中央での戦いは、ミラング共和国軍の圧勝で終わる。


 一方、統領の屋敷。

 その敷地には、たくさんのアウトローと軍人がおり、彼らはウォンラルラードとフィンラルラード、果てはフィブル派に分かれて、睨み合っている状態だ。

 そんな中、リンファルラードの中を着実にミラング共和国軍が制圧していっていることに気づく者はほとんどいない。

 そして、フィブルは、この時、新たな情報を部下から入手するのだった。

 「フィブル様、ミラング共和国軍がリンファルラードの中に侵入し、アウトロー達を制圧していっています。」

 「そうか、良かったぁ~。これで―…。」

と、言いかけながら、フィブルは自信を取り戻すのだった。

 そう自信を―…。

 「ミラング共和国軍に関しては、今回の内乱の鎮圧のために要請しておいたことだ。だから、ミラング共和国軍には、内乱を起こしているアウトローたちの始末を続けていってもらうし、この屋敷を包囲しているアウトローの始末もすることになっている。だから、私に付いていく者は全員、屋敷を包囲しているアウトロー達を鎮圧するために動員してくれ。」

と、フィブルは言う。

 フィブルにとっては、これが好機なのだ。

 ミラング共和国軍が、リンファルラードのアウトローを倒している間に、統領屋敷を包囲しているアウトローたちを撃退しようと考える。

 「わかりました。」

と、部下は伝令を各所に伝えに行くのだった。

 その伝令が伝わることはなかったが―…。


 フィンラルラードの屋敷。

 その執務室で、のんびりと外を眺める人物が一人。

 「うわ~、すごいことになってるねぇ~。」

と、のんびりとした口調で、他人事のように言う。

 フィンラルラードである。

 危機感というものを一切感じていない。

 感じるはずもない。

 自らがこの内乱で殺されるなんて微塵も思っていない。

 自らが、ファブラの統領を継ぐことは確定しているものであり、誰が邪魔してこようが自らの力で対処できると思っているのだ。

 そして、今、囲まれているので、無理に動いても意味がないと考えている。

 それに、この別邸には、非常時に備えて、いろいろと備蓄しているので、ここから無理矢理外に出るよりもじっくりと好機と同時に、相手側の戦意喪失を待つ方が得策なのだ。

 さらに、アウトロー同士が勝手に争っているのだ。お互いに争って潰し合っているのに、そこに割り込む必要はない。美味しいところを掻っ攫えば良いのだから―…。

 ある意味、真面な作戦であるが、同時に、その例外を考えることができないという面で単純としか言いようがない。

 「他人事のように言われますが、このようにウォンラルラード側のアウトローに屋敷を囲まれては―…。」

と、アーレイは危機感を持って言う。

 アーレイとしては、ここまで囲まれて、何もしなければ、フィンラルラードに統領になる資格がないのではないか、ファブラに住んでいる人々に思われるかもしれない。

 まず、フィンラルラードに統領の役職に就任してもらわなければ、アーレイとしては困るのだ。

 フィンラルラードが統領となり、その間の政治の中で、フィンラルラードが失政をして、アーレイが優れていることをファブラの国民に思わせることができてから、フィンラルラードを追い出すか殺して、アーレイ自身がファブラの統領になる方が都合が良いのだから―…。

 ここで、フィンラルラードを殺すことはできるが、そうしてしまうと、ウォンラルラード側に都合の良い口実を与えることになる。

 そのようなことになると、ウォンラルラードがファブラの統領になる権利を得、アーレイはフィンラルラードを殺した逆賊として汚名を着てしまうことになるのだ。そんなのは嫌だ。

 アーレイが欲しいのは逆賊という汚名ではなく、統領の地位であり、周囲からの称賛なのだ。

 「大丈夫さ、アーレイ。私は、小さい頃からどんなことをしたとしても、素晴らしい結果しか残さなかったのだから―…。その私が言っていることはすべてにおいて正しい。大人しく待っていれば良い。時期、アウトローどもは自らの数を最大限に減らすし、その時、私たちの軍を利用して、アウトロー達を殺せばよい。あいつらは、いても国のために役に立つことはない。精々、国の礎のために数を減らしてくれれば良いのさ。」

と、フィンラルラードは言う。

 彼にアウトロー達に対する同情心はない。

 フィンラルラードは、自らが統領になるべき存在の家に生まれ、統領になることは規定路線であり、誰もが自分の優秀さによって敬われるべき人物だと認識している。

 誰もそのように認識しているわけではない。

 世間の認識は、馬鹿で自意識過剰というのが、噂されている評価だ。

 その評価が、フィンラルラードに伝わらないようにされているだけだ。

 フィンラルラードはそのことに気づくことはない。

 「はぁ~。」

と、アーレイは不安になる。

 (この人は馬鹿だと思ったけど、ここまでとは―…。内乱が起きて、何もしない人間を誰もトップにするわけがないだろ。それに、私としては、さっさと動きたい。どうする?)

と、アーレイの方は心の中で迷いが生じるのだった。

 フィンラルラードの命令に違反して、行動しても良い。

 その行動によって、ウォンラルラード側のアウトローを鎮圧することに成功ならば、フィンラルラードの手柄にしても良い。そうすることで、アーレイの命令違反の行動を不問にしてくれる可能性だってある。

 だが、可能性でしかない以上、不問にされない場合もある。

 フィンラルラードはプライドがのんびりな言葉と反して、高いので、返って、殺されるかもしれない。

 アーレイは殺されることを望まない。

 アーレイが望んでいるのは、ファブラの統領になることだ。そう、フィンラルラードを追放して―…。

 だからこそ、アーレイは動こうにも動けなくなってしまっているのだ。

 アーレイは悩み続けるのだった。


 リンファルラードのアウトローの居住地。

 その場所に一区画にある家の中。

 その中には、ラマガルドリアとウォンラルラードがいた。

 この二人を守るように、アウトローの中で信用できる者たちを配置している。

 そうすることで、ラマガルドリアとウォンラルラードの安全を確保しているのだ。

 だけど―…。

 「ふむ、ここがファブラの次期統領候補が一人のラウーラ=ファブラ=ウォンラルラードの拠点としている場所ですか。アウトローどもが巣くっていそうな場所ですねぇ~。」

と、ラマガルドリアとウォンラルラード以外の人物の声がする。

 ラマガルドリアは一気に警戒度を強める。

 「そんなに警戒しないでください。警戒したとしても無意味だと思いますよ。」

と、その声を出した人物が姿を現わすのだった。

 その人物は―…、

 「私の名前を名乗っていませんでしたねぇ~。私の名は、ラウナン=アルディエーレでございます。」

と、ラウナンは名乗る。

 そう、ラマガルドリアもウォンラルラードも知らないだろうが、この人物はミラング共和国の諜報および謀略組織であるシエルマスの統領、その人である。

 ラウナンは、落ち着きながらも、二つの獲物を見るのだった。

 どうしようか、という感じで―…。

番外編 ミラング共和国滅亡物語(80)~第二章 ファブラ侵攻(13)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


では―…。

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