番外編 ミラング共和国滅亡物語(78)~第二章 ファブラ侵攻(11)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ファブラの内戦にミラング共和国が軍事介入するのであった。ミラング共和国軍はファブラの首都リンファルラードの中へと入っていくのだった。そんな中での一コマ。
リンファルラード。
その市街。
すでに、戦場となっており、一部の建物はアウトローたちによって壊されていた。
壊れた者、アウトローに捕まった者たちのその後は行方知れずだ。
どうしてそのようになったのか。
彼らは一体、連れ去った者をどうしたのか。
殺したのか、奴隷にしたのか、考えられる可能性はたくさんある。
ここで、このローの住んでいる異世界における奴隷制に関しては、地域によって存在するし、完全に廃止した地域も国も存在する。
奴隷に対する扱いに関しても、地域によっては異なっていたりする。これらの相違性に関しては、挙げたとしても数多くなる。
だけど、共通していることもある。奴隷の生殺与奪の権利は奴隷の所有者に握られているということだ。そのことだけは、この異世界において、変わらないということだ。奴隷という言葉を使わず、実質上、そのような身分の者たちは、異世界においても存在する。詳しい内容に関しては割愛させていただくが、重要なのは、自らの優位のために、他者を見下すことを人は為すことがあるのだ。そういう負の面と言ってもおかしくないことを、しっかりと理解していただきたい。このことを負の面どころか、称賛する者だっている。悲しいことに―…。
さて、話を戻して、アウトローたちは、住民に対して強姦をなす者もいるぐらいだ。彼らは、普段から抑えつけられていることから、自らが優位になった時に、何でもして良いということを考えてしまっているようだ。アウトローの全員がそのように考えているわけではないが―…。
弱い者は何をされても文句を言うことができない。リンファルラードのアウトローにおける絶対のルールが存在し、アウトローが住んでいない地域まで拡大していた。そう、アウトローたちのルールが内乱により、制圧された場所に広がっているということだ。
そんななかで、リンファルラードの一般の人々、内乱に関係していない人たちに大きな悲劇をもたらしていた。ファブラの中枢部はそれを助けるための、何とかしようという思考はすでになくなっており、自らのことで精一杯になっており、後継者候補の者たちは次期後継者になるための闘争に夢中だ。
こんなことになってしまって喜ぶのは、周辺諸国であると思われるが、周辺諸国の多くの国にしても、逆のことに言ってしまうことになるが、困ったことになる。ファブラは鉱山資源輸出国であり、ファブラから鉱山資源を輸入している国や商人は多かったりする。ゆえに、ファブラの安寧こそが、周辺諸国にとっては良いことなのだ。一番困るのは、内戦によって、ファブラから鉱山資源が輸出されなくなることだし、鉱山資源の採掘ができなくなることだ。
だけど、それを望まないのはミラング共和国ぐらいか。
さて、再度話を戻し、アウトローたちは、今日も戦いを繰り広げながら、一部は―…、どこかの民家へと侵入する。
「おら!!!」
と、とある家の玄関を壊して中に入る。
そして、このアウトローは様子を見ながら―…、
(金目の物はないか。ここは外れだな。後は女も―…。折角、他の奴らが戦いにかまけてくれているんだ。そこをついて、ウハウハしたい。)
このアウトロー、男の心理は、この内乱によってリンファルラードの治安は悪化の一途をたどっており、それを利用して、リンファルラードの家に侵入して金目の物を盗もうと考えていたのだ。アウトローを完全にコントロールするのは難しい。
理由は、彼らは軍事訓練を受けた人間ではないし、自らが楽して生きることに長けている。政治家になってしまえば、自らの利益になるようなことしかせず、国にとって、国の中に住んでいる人々にとって、本当に必要なことをすることはない。結果として、国が衰退し、最悪の場合には、滅ぶことになったとしても―…。
他者の責任して、その時に自己責任という言葉をその他者に浴びせて―…。自分が仕出かしたことの重大さと悪さに気づくことなく、自分は間違っていないと思う気でいる。質の悪い存在であることが理解できるであろう。
そして、さらに、女性を襲おうと考えている。このアウトローにとって好みの、であるが―…。
家の中を乱暴に荒し回りながら、探すが―…。
「どこにもないか。」
散乱している物に目を向けることもなく―…。いや、目は向けているが、その状況に罪悪感を抱くことなく―…。
そして、悪態をつく。
「チッ!! 次だ!!!」
と、アウトローの男は言う。
そう、次の家も、今の家と同様に金目の物を探そうとする。
結局、被害が増えるだけだ。
だけど―…。
ガタッ!!!
何か音がする。
その音をこのアウトローは聞くことになる。
(!!! この家、誰もいないと思ってたけど、誰かいる!!! 女なら襲って、男なら殺すか、ちょうど武器も持ってるしな!!!)
そう、このアウトローは、武器を持っている。
その武器は、斧である。
この斧を振り下したりできれば、簡単に人を殺すことができる。薪を割るために使うのではなく―…。
このアウトローの男は家の中に入り、音がした方向へと向かう。
そこには―…。
一人の美しい女性がいた。
この家に住む女性である。
女性は一人でリンファルラードで店を経営しており、そのお店はそれなり繁盛しており、リンファルラードの中で美人で有名であった。
内乱のせいで、ここにはしばらくの間、外を出て、お店に向かうことができなくなっていた。アウトローがリンファルラードの市内を跋扈し、横暴な振る舞いをしているからだ。
(お~、これは美人じゃねぇ~か。)
このアウトローの中に邪というか、女性にとって、遭いたくないということになる欲望を抱く。情欲と言っても良い。
このアウトローに、欲望を我慢するという言葉は存在しない。そんなことばかりしてしまっていたら、アウトローの中では生きていくことはできない。野垂れ死んでいくのが関の山だ。
この男がアウトローとして今まで生き残っている以上、世渡りが下手ではないということは確かだろう。アウトローの世界の中では―…。
そして、今、目の前にいる女のことばかりに集中してしまっている。
一方、美人の女の方は、怯え切ってしまっている。
だけど、冷静さがないわけではない。
女は辺りにこのアウトローを追い出すための武器がないかを目で見ながら探す。
椅子―…、それを持ち上げて、あの男に一撃を頭部もしくは腹部に一撃を目一杯力を入れて、与えることができる。だけど、その椅子を取るまでに男に気づかれてしまえば、意味はない。
机―…、これを持ち上げて、椅子と同様に―…。だけど、机は椅子より重く、この女性が振り回せるほどのものではないし、椅子同様のデメリットも存在する。
辺りを見渡す。
そんななか、地面に注意深く視点を向けることができない。今、部屋に入って来ているアウトローの男から視線を逸らすことが自身にとっての最悪の結果に繋がる可能性があることを、本能的に理解している。そう、目を離した隙に襲われるのではないかと思い―…。
人間は決して、完全に合理的であることを理解することができる生き物ではないし、そのような存在になることはできない。本当の意味で合理的であるかを知ることができないからだ。人が生きて死ぬまでの間に―…。
つまり、今の女性も完全に自分にとって都合が良い選択を完全にできているとは言い難い。それでも、自らにとって良い結果を出すしかないのだから―…。
「ケケケケケケケケケケケ、こんなところに、こんな上玉がいるとはなぁ~。大丈夫だよぉ~。大人しくしていれば、途轍もない気持ち良さなのだから―…。」
この男の基準ではそのように思うのだろう。
だけど、それはこの男の基準でしかなく、女性の基準ではないし、この男の基準をこの女性が喜んで受け入れるわけがない。嫌なものは嫌。どのように見せても―…。
女性も自分がどういう目に遭うのかは想像することができる。心の中に傷ができることだ。
それがどれほどの同様の被害に遭った女性の心を痛めつけるのか、このアウトローの男に理解できるはずは今のところはないだろう。自らの欲望に正直なのである。
自らの強さが分かっているから―…。
この女の前では、自分は強い立場に、優位性を発揮できるのだと―…。
傍から見れば、迷惑なことでしかないし、気持ち悪いことでしかない。この男がそのようなことに気づくことはない。
女は恐怖に支配されるが、それでも、希望がなかったわけではなかった。
そう、後ろに―…。
「ふ~ん、アウトローって市内にいるのはこんなものしかいないのね。」
と、女の声がすると、男は女の声のする方へと向こうとする。
そう、美人の方ではなく、新たにした後ろのいると思われる女に―…。
だけど、男は振り向こうとする前に―…、言葉を発する前に―…。
美人の女性は、顔を青褪めながら見てしまうのだ。
「アウトロー達は真っ当な人間になるか、なれない人間は大人しく、自分達の住処で大人しく引き籠っていれば良いのに―…。駄目ね。」
と、女は続けて言う。
そう、このアウトローの後ろにいた女はこのように続けて言う前に、アウトローの男の首を持っていた剣でざっくりと斬ってしまったのである。このアウトローの男の生は一瞬で終わりを迎えることになった。自らがどうしてそうなったのかを理解できずに―…。
女は青褪めながらも自らが想像できる嫌な目に遭わなかったことに、心の中で安堵を感じるが、それと同時に、今、目の前にいる女は味方かどうか分からないのだ。
「隠れていなさい。それから、争いが治まったなら、すぐにでもファブラから出て行きなさい。この国は、ミラング共和国の領土になってしまい、ろくでもない奴らがここを支配するようになるわ。善意の忠告ではなく、警告よ。幸せな時を過ごしたければ―…。」
と、アウトローを斬った女は言う。
少女から大人の女性になりかけている感じであり、ミラング共和国の軍服を着こなしていた。
その少女から大人になりかけているミラング共和国軍の兵士の言葉を聞いて、反応することができなかった。
今の光景は残酷なものと判断できるだろうが、頭の中の理解が追いつくことがない。ゆえに、言葉にする方法も見つからない。
やっとの思いで言った言葉は―…、
「……あ……り…がとう。」
と。
その言葉を出すだけにどれだけの労力を使ったのだろう。
簡単に言える言葉であるかもしれないが、この状況を考えると簡単な言葉でない。
そのことを理解するには、同様の状況に達さないと無理なのかもしれない。
「いえ、私の仲間とされている軍の一部は、酷いことをするのに何の躊躇もないから―…。私が今、斬った男のように―…。だから、戦乱が終わったら、逃げなさい、再度言いますが―…。」
と、ミラング共和国軍の兵士の女は言う。
女は歩き出して行くのだった。
そこに―…。
「イルターシャ、そんなところで油を売ってる暇なんてねぇぞ!!! アウトローどもを始末していくぞ!! というか、アウトローの一人をやったのか!!! まあ、良い。次へかかれ!!!」
と、ミラング共和国軍の兵士の男の声が聞こえる。
イルターシャと呼ばれる女性は、
「……ええ、わかっているわ。あなたは私を侮辱することしかできないのかしら―…。」
と、皮肉を込めて返事をする。
「ふん、そう思っていろ。俺は、別に女だから侮辱しているんじゃない。出世して欲しいから厳しくしているだけだ。余計な時間をかけるわけにはいかない。俺はこっちの方へと行く。」
そして、ミラング共和国軍の兵士の男の方は、市街の中の方へと向かって行くのだった。
アウトローを、内乱の鎮圧の名目で、殺して行くのだった。
この男は、グルゼンの部下であったし、自らが置かれている状況についてはわかっている。グルゼンの下についていくことはしなかった。自らがグルゼンの足手纏いになることはわかっていたし、家族もいる。だからこそ、自らが不遇な環境にあったとしても、大切な家族のために頑張るのだ。それが生きがいなのだから―…。
そして、イルターシャの方も、市街の中央の方へと向かって歩き出すのだった。
その後、襲われそうになった女は、
(………………助かったのよね。)
と、心の中で思う。
イルターシャの警告が聞いたのか、内乱終結後、隣国へと逃れ、そこで商売をなし、成功するのだった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(79)~第二章 ファブラ侵攻(12)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
戦争というものは、こういうものである。悲しいことに―…。
では―…。