表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
42/745

第27話-2 ルーゼル=ロッヘ(6)

第27話の後半部分です。

前回まで、瑠璃、李章、礼奈、アンバイドは、ローとともにクローナを四人の泊っている宿へと連れていくのであった。

 ルーゼル=ロッヘ。

 崩れた建物をただ、ぼう~っとして見る者が一人いる。

 昨日、ゼルゲルの報復にあって店を壊された。

 そう、昨日、クローナが訪れた飲食店である。

 近くには、凍らされたままであるゼルゲルの姿があった。

 (これからどうすればいいんだ。俺は、近くにいたおっさんに助けられたが、店がこれじゃ―…、生きていくことすらできやしねぇ~。近くにゼルゲルの野郎が凍らされて像になっているのに―…。)

と、ゼルゲルによって壊された飲食店の店主は、心の中でそう呟いた。溜息も漏れるほどである。

 飲食店の店主は、これから一文無しなのだ。店を再度建てることのできるほどのお金もない。そう、ゼルゲルらによって無理矢理お金を貸され、その返済に追われていたのだから。

 表情はもう暗く、人が近づけば、近づいた人に不幸をうつしてしまいそうなほどであった。

 ゆえに、希望は現れず、不幸が大量に集まろうとする。

 しかし、希望とそれを手にするぐらいの運は、飲食店の店主にはあったのだ。

 それは、ほんの少し時間を要することにはなるが―…。


 ルーゼル=ロッヘの街中。

 瑠璃、李章、礼奈、アンバイドが宿泊している宿の中の李章とアンバイドの部屋。

 そのなかには、瑠璃、李章、礼奈、アンバイドに加え、ルーゼル=ロッヘには魔術師ローとともに来たクローナの姿もあった。

 「改めまして、私がローさんより、瑠璃さん、礼奈さん、李章さんのベルグ探しの協力するよう言われましたクローナです。」

と、言って、ペコリとお辞儀をクローナはした。

 「こちらこそ。」

と、李章のほうもクローナに向かってお辞儀するのであった。

 それを、普通に見ている瑠璃と礼奈であった。

 (あれ、(この)世界でお辞儀する風習ってあるの?)

と、瑠璃が心の中で呟いた。

 (異世界にも日本と似た風習でもあるのかな~。)

と、礼奈は思うのであった。

 現実世界と異世界において、違いは存在している。それと同時、共通している点も存在する。そう、同じ意味だと限らないが―…。

 李章はそういう意味で運がよかったといえるだろう。

 クローナがいた村での、お辞儀は基本的に、日本でのお辞儀と意味はほとんど同じであったからだ。

 これ以上、お辞儀について現実世界と異世界での同一性と相違性について語っても意味はないだろう。

 ゆえに、話を戻して、

 「クローナさんは―…、つまり、私たちの旅に同行するということでいいのでしょうか?」

と、瑠璃は尋ねる。そう、クローナはローより、瑠璃、李章、礼奈のベルグ探しの協力するように言われていることから、結局のところ、瑠璃、李章、礼奈の旅に同行するということになるのだ。

 「はい、そうになります。」

と、クローナは言う。

 そして、アンバイドは、

 「まあ、俺としては、クローナとか言ったか、お前の旅の同行は認めていい。後は他が、どうか、だ。」

と、アンバイドは言う。そう、他の瑠璃、李章、礼奈が賛成しなければ、クローナはローに対する頼みを実行することはできなくなる。

 「私は、別に構いません。それに、仲間が増えることはいいと思います。」

と、瑠璃は言う。

 「私も、ローさんのことだから、必要だと考えてのことだと思いますので、大丈夫ですよ。」

と、礼奈は言う。

 (水晶の力を使っても、クローナ(あの人)が、瑠璃さん、山梨さんの危険につながるということはないようです。)

と、李章は思い、

 「ええ、ぜひ、私たちの旅に同行してください。」

と、賛成する。

 これによって、瑠璃、李章、礼奈、アンバイドの意見の一致により、クローナが旅に同行する仲間として加わった。

 「あの~…、では、私は旅に同行しても構わないということですね。わかりました。」

と、クローナは言った。

 「クローナさん。私のことは、“さん”づけで呼ばなくて、瑠璃でいいよ。」

と、瑠璃はクローナに向かって言う。そう、瑠璃は、クローナから“さん”づけで呼ばれるのがどうしてか余所余所しく、距離があるのだと思っていた。それに、“さん”づけで呼ぶと、こっちも呼ばなくてはならないし、そうすると、距離感やなんか溝みたいなものがありそうなのが嫌だったからだ。

 それは、礼奈にしても同様であった。

 「クローナさん。私のことも同様に“さん”づけなしで呼んでいただけると嬉しい。」

と、礼奈は言う。

 「はい。わかりました。瑠璃、礼奈、私のこともクローナのお呼びください。」

と、クローナは瑠璃と礼奈に対して言った。そのときの表情は、少し距離感がなくなったのではないかとさえ思った。

 「親睦を深めることは大事だが、お前ら、今から重要なこれからの予定について言う。」

と、アンバイドが空気を重くするように言う。それは、これから三日後にリースで開催されるゲームの参加者としてランシュから招待されたのだ。それに、招待状も渡されたのだから、ランシュの臣下のヒルバスに―…、そして、その場にはランシュ自身もいたのだから―…。

 そして、瑠璃、李章、礼奈、クローナは、静かになり、アンバイドの話しを聴こうとする。

 「……。これからのことだが、俺たちは今日にもここ、ルーゼル=ロッヘを発ち、リースへと向かって行くことになる。ここからリースまでは、二日で辿り着くだろう。しかし、今の瑠璃、李章、礼奈、クローナ、お前たち四人の実力ではランシュやヒルバスらに勝つことは不可能。それに仮に、修行したとしても、ランシュやヒルバスに追いつくことすらできない。それでも、リースでのゲームに参加する覚悟はあるか?」

と、アンバイドは、瑠璃、李章、礼奈、クローナに尋ねる。そう、ランシュやヒルバスに弱いとわかっていたとしても、リースでのゲームに参加するのかという覚悟が本当にあるのかを確かめるために―…。

 瑠璃、李章、礼奈、クローナは言葉はないが、頷く。参加するという、戦うという覚悟を強くしめす意思を真剣な表情に変えて―…。

 その意思を理解したのか、

 「わかった。リースに到着後、少しだけではあるが、俺が修行をつけよう。お前ら四人のな。では、早速がさっさと宿をチェック・アウトしてルーゼル=ロッヘを発つぞ。」

と、アンバイドは言う。

 そして、瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドは、自らが泊っていた宿をチェック・アウトして、旅の食糧や必需品を市場で確保した後、ルーゼル=ロッヘを発った。

 瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドの一行は、二日後にリースに到着することになる。

 そして、リース到着後の翌日に、ランシュが催したゲームが開催されることになる。


 一方、リース近郊のランシュのいる場所。

 それは、広場となっていた。

 そこでは、多くのものが地面に伏していた。

 そう、ここでは、2時間と30分ほど前からランシュが催すゲームの参加チームを決めるための戦いが―…。

 それを、ランシュは、少し上にいる台座から眺めていたのだ。戦いを―…。

 そう、すでに決着がつく戦いを―…。

 一人の人物が攻撃を受け、地面に後ろ向きに倒れる。

 「……こんな長く戦うことになるなんて―…。」

と、少し息を切らしながら一人の少女が言う。

 (ランシュの幹部に近い家臣は半分ほどしかいなかったみたいね。それに奴らは、むしろを雑魚を中心に戦って、数を減らしていた。それに―…、ゲームの参加者を最初から決めていたような気もする。)

と、一人の少女は思う。

 そう、ランシュの幹部近い家臣、ここではランシュの直属の部下といってもいい、彼らは天成獣の力を十分に発揮せず、かつ、実力の弱い者から直接倒しにいっていったのだ。つまり、実力のある者及びチームをゲームの参加者として選抜していたのだ。ベルグの命を忠実に守るために―…。

 「そこまで!!!」

と、大きな声が聞こえる。

 そして、ランシュは台座から立ち、辺りを見回す。左から右へと―…。

 (…………なるほど、これはなかなかの実力が揃ったみたいだな。)

と、ランシュは思う。

 「ここまでで生き残った者よ。私のゲームの参加者となった9つのチームよ。私は君たちを光栄に思うよ。そして、三日後のゲームでは、君たちにある者たちと戦ってもらう。」

と、ランシュは声を高くあげながら、意気揚々に言う。

 「それは、こいつらだ。」

と、続けながら、声は大きく高くであった。

 そして、映像を映す機械のような物でランシュの真上近くにある壁に映される。そう、ゲームに参加することが決定したチームに―…、この戦いに生き残った者に―…。

 そこに写しだされた人物は、瑠璃、李章、礼奈の三つであった。

 「こいつらの他にも、アンバイドがこの中にはいる。」

と、ランシュは映されていない人物の一人であるアンバイドについて、言う。

 そうすると、生き残った者たちの中には、驚きと動揺を見せる者もいた。

 「おいおい、あのアンバイドと戦うのか。」

 「でも、アンバイド(あいつ)を倒せば俺の名声が―…。」

 「お前が戦えよ、アンバイド(あいつ)と。」

 「えええええええええ~~~~~~~、僕がですか?」

と、周囲からさまざまな声が聞こえた。

 (アンバイド。なるほど、ランシュからベルグの居場所でも聞いて復讐しようとでもしているのですか? 馬鹿なことよ。愛している人を失った男の復讐などただの醜い結末を迎えるものよ。それも復讐相手がローが現在、最大警戒している相手よ。……人のことの心配なんてしても意味ないか。私は―…、あの映しだされている人物の中に瑠璃(あいつ)はいる。私の母を悲しませている存在が―…。)

と、一人の少女は言う。そう、瑠璃を少し成長させた少女である。

 そして、一人の少女はランシュの言葉を待つ。

 アンバイドという人物がランシュの口からでてきたことによる、周囲のさまざまな声が少しずつ止み始める。

 それを確認して、

 「いいか。ゲームでは、参加チームのそれぞれの実力により、勝負する順番をこちら側から決めることにする。では―…。」

と、ランシュは言う。そして、参加チームが瑠璃、李章、礼奈と戦う順番が発表された。

 そう、ベルグから受けた命令の言葉を守ることができるように―…。


 そして、数時間が経過した。

 ランシュとヒルバスは、広場から自らの仕事部屋へと戻っていた。

 「順番に関してはわかるのですが、戦いの間にあんな期間を開けて、いいのですか? ランシュ様。」

と、ヒルバスはランシュに尋ねる。

 「ベルグが時間稼ぎは最低限しろって言うからな。それに、ベルグのやろうとしていることには、今は少し時間を必要としているみたいだ。それに、瑠璃、李章、礼奈(あの三人組)をここに留めておけば、ベルグのやろうとしている時間をつくることはできるしな。」

と、ランシュは言う。そう、ベルグの命令の条件を守るために―…。

 「ふ~ん、そうですか。まあ、それで構いません。あとは、リースのセルティー王女がこのゲームに参加してきそうなことについては―…。」

と、ヒルバスは懸念についてランシュに聞く。

 「もし、セルティー皇女がこの俺のゲームに参加したいのであれば、参加すれば、飛び入りでな!! そうすれば、こちらにとって不利なことを何かされることはないだろう。」

と、ランシュは答える。

 「そうですか。わかりました。」

と、ヒルバスは言って、ランシュの仕事部屋から退出していった。

 (ふん、楽しみだな~。さ~て、俺の復讐(生きる意味)についても、ゲームとともに進めていくこととしようか~。セルティー(あの)王女にリースの崩壊の全てを背負ってもらってねぇ~。)

と、ランシュは心の中で呟く。

 そう、ランシュは、リースへと復讐しようとしていた。あの日、ランシュが生まれ育った村で起こった惨劇で唯一生き残った人物としての役目を―…。そのために、その後で得た暖かいほのぼのとした感情と気持ちを押し殺して―…。

 ランシュは、過去のあの日から止まってしまった村の人々の代償をリースの王家に払わせるために―…。


 これから、始まるは、一人の人物の復讐である。

 たとえ、ゲームは公平なルールで行われるものであったとしても―…。

 これは、人がすべての真実を知ることが生を受け、死ぬまでの間にできないという大きな事実のために―…。

 そう、ランシュは復讐という役目を与えられ、それに踊らされる傀儡の人形のごとく、ただ、その役目を本人は気づかずに演じていく。

 自らの終わりに向かって―…。


 【第27話 Fin】


次回、新章(リースの章)開幕。ついに、ランシュの催すゲームが始まるのか?

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の更新は、予定だと2020年8月下旬になると思います。第28話も分割する可能性が高いです。

このリースの章では、特に前半は魔術師ローの出番は少なくなると思います。中ごろになってくると、番外編でランシュ育った村で起こった惨劇について書いていこうと思います。瑠璃を恨んでいる瑠璃に似ている子との戦いになってくるとリースの章の後半戦となってきます。予定ではありますが―…。

リースの章はたぶん、かなり長くなると思います。これは、ほぼ確実です。


追加:2020年8月20日に、「セルティー皇女」を「セルティー王女」と修正しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ