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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
409/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(63)~第一章 勝利は時として毒となる(13)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、対外強硬派が久々に揃って会議をおこなう―…、次の侵略先は―…。

 「軍事的戦略? そんなものは決まっている。リース王国とはしばらく戦争はできないが、次は、隣にある弱い国、ファブラを征服する。あそこは鉄資源も豊富だろうしなぁ~。」

と、ファルケンシュタイロが言う。

 ミラング共和国にも鉱山がないわけではないが、これから遠征をしていくだろうと考えると、兵器に必要な鉄などの資源を大量に消費する可能性がある。

 武器の再利用もできるであろうが、それにしても、戦場で相手から武器を奪われたり、紛失したりする可能性が確実に存在する以上、鉄を大量に保有しておく必要があるのだ。鉄という資源を使って、周辺諸国を脅せばいいのだから―…。

 従わない国は、武力で従わせる。

 そう、相手国側が武力を用いないといけない状況へと追い詰めるのだ。相手国側から武力を用いて、ミラング共和国に攻めてくれば、ミラング共和国の国民は攻めてきた相手国を恨むこと間違いなし。

 そうすれば、ミラング共和国が戦争できる動機が発生するし、反対する奴らは「非国民」という扱いにすれば良いのだから―…。愛国心なんて国は煽動するが、実際は、己の欲望を満たすためであることが多いし、そのように動こうとする。それに気づぬのは多くの国民であろう。

 献身的な気持ちで戦争に従事する指導者など存在しないのだから―…。存在するのは、欲を持った人間、それだけなのに―…。

 「そうだな。その鉱山はぜひとも我々の家の者たちに管理させたい。」

と、クロニードルは言う。

 ファブラの経済における重要な役割である鉄鉱山の利権を抑えることができ、かつ、ファブラを滅ぼして、ミラング共和国側が手に入れることができるのであれば、クロニードルの一族がその運営に当たりたいと考えるのだった。

 クロニードルの一族は、政治家の一家として有名であるが、それでも、元々は交易などに従事していた商会を基礎としている。だけど、リース王国に敗北し、政治家としての仕事にウエイトを置くようになった。それでも、商人としての魂が染みついているのか、金になると思われる物があるのであれば、それに手に入れたくなるのだ。

 (……………これで、俺の一族を繁栄させることができる。)

と、心の中は希望で満ち溢れる。

 まだ、手に入れてもいないものを、手に入れたかのように想定して、その悦に浸る。クロニードルは老い先が短いうえ、さらに、息子、孫のことが心配で、彼らとそれら以後の血族たちの繁栄を考えるのだ。それが、クロニードルにとって、重要なことなのだ。

 「クロニードル殿。そのようなことをしてしまえば、ミラング共和国の他の商人が恨んで、何をしてくるかわかったものではない。彼らにも権利を与えた方が良いのではないか?」

と、ディマンドは言う。

 ディマンドとしては、商人たちの恨みを抱くのはあまり良くないと考える。頭が良いわけではないが、それでも、見えてしまうのだ。折角、今回のミラング共和国とリース王国との戦争で勝利して、ラウナンの交渉の結果、エルゲルダの商品税の増税および通過税の新設による税の増額がなくなったのだから、暫くの間、商人たちの信頼が重要となってくるのだ。

 商人たちは票になる。

 ここで、ミラング共和国における議員選挙の補足をおこなわないといけない。議員選挙の定数と選挙方法は前にも述べているので、ここでは触れない。

 触れるのは、選挙資格に関してである。ミラング共和国の議員選挙の選挙資格は、現実世界における多くの国かどうかは分からないが、普通選挙ではなく、制限選挙である。その資格を有するのは、税金をある程度収めているか、議員を輩出している家、領主の一族であるかのどれか一つの条件を満たしていることである。

 そして、そこに女性の参政権が一切、存在しないということも重要である。男尊女卑の考えのせいか、二百二十年前に女性への参政権を剥奪してしまったのだ。その時、女性の側が反抗してデモを起こしたのだが、軍隊を投じたりして、軍隊が積極的に政府側に与したせいで、弾圧され、女性は政治の場で意見が言えなくなったのだ、それ以降―…。

 そして、議員資格を有する者の割合は、ミラング共和国の全人口の三パーセントになる。そして、腐敗選挙区も発生しており、買収するだけで、確実に当選できるような仕組みとなっており、政治家一族を作り出す温床となっている。普通選挙にしても、選挙区によっては、ある一族が毎回当選するよという結果になっていたりするなどの世襲制のようなものが発生しているから、普通選挙も制限選挙もこの点においては変わりはないだろう。誰が票を持っているかによる、ということでもあろう。

 そして、その政治家一族が優秀な人材を議会に送り出し、送り出された人物が国の中に住んでいる人々のために権力を行使するのであれば、良き制度となるであろうが、私欲のためだけに行動し、国の中に住んでいる人々の本当の利益も考えず、無視してしまえば、返って、自分達の首を絞めることになるだけだ。

 そして、ミラング共和国の議員の全員がそうであるとは限らないが、それでも、対外強硬派の主要幹部がそのような人材で構成されている以上、議員になってくる人物たちもそのような者が多くなる。擦り寄って利益を欲するために―…。

 さて、話を戻して、商人が票になるのは事実だ。昔、ミラング共和国は内陸交易で栄えていたのであり、その名残りで商人として登録されている者も多く、彼らは選挙権を持っているので、彼らに立候補者は名前を書いてもらわないといけない。ゆえに、商人に媚びる。

 これがわかってもらえるとなぜ、ディマンドが商人を敵に回したくないが理解できるであろう。

 つまり、商人の信用を無くす行為をすれば、商人から票が得られなくなるので、議員として当選する可能性を大幅に減少させてしまうことになる。それを危惧しているのだ、ディマンドは―…。

 議員なんて、選挙で当選しなければただの人とは、良く言ったものである。

 ゆえに、商人の信頼をなくすかもしれない、ファブラの鉱山利権をクロニードルの一族にすべて握らせるわけにはいかない。

 対外強硬派がリース王国との戦争に勝ったとしても、完全な基盤をまだ確立していないのだから―…。

 「確かに商人どもには配慮しないといけないのか。面倒だが、まあ、譲歩はしてやろう。だが、鉱山の利権は我々の一族の所有でないといけない。儂にも伝手があるのだからの~う。」

と、クロニードルは言う。

 クロニードルの伝手の広さは議会内でも有名であるが、ろくでもない人材がほとんどである。アウトロー、危険な信仰者軍団など数知れない。ディマンド以上に、その手の伝手を持っている。

 (……………アマティック教以外の宗教なんて、()()()()()()()()()。クロニードルもいい加減手を切ればいいのによぉ~。)

と、ディマンドは心の中で思う。

 ディマンドは最初のうちは、アマティック教のことを危険な存在だと思っていたが、教主のイルカルに接していくうちに、この宗教の考えに次第に染まっていったのである。本人はそのことに気づいていないようだが―…。

 「まだ、手に入れていないものをいくら語っても仕方がない。で、ファブラに関して、どれくらい情報を持っている? ラウナン―…。」

と、シュバリテは言う。

 シュバリテは、いくら手に入れていない利権について話しても意味がない。それよりも利権を手に入れるためには、ファブラを征服しないといけないのだ。そうなってくると、費用対効果というものが重要になってくる。

 だからこそ、ラウナンに聞いておく必要があるのだ。ファブラの状況を―…。

 (ふう~、ファブラに関する情報はほとんどありませんが、聞いている情報では、ファブラの鉱山利権に対する闘争とまではいっていないようですが、統領家の兄弟の仲があまり宜しくないということでしょう。なら、それを利用して―…。)

と、ラウナンは心の中で考える。

 そして、すぐに言葉を発する。

 「シュバリテ様。ファブラに関しては、こちらとしてもあまりにも小さい国なので情報がほとんどありませんが、集められている情報では、ファブラの次期統領に関しては、兄弟の仲があまり宜しくないとのことです。情報収集には、一年ほどの時間をいただきますが、その期間があれば、ミラング共和国軍の軍隊もさらに強化することができるでしょう。ファルケンシュタイロ様ならやってくれます。」

と、ラウナンは言う。

 ラウナンとしても、今回のミラング共和国とリース王国との戦争で、ミラング共和国軍が勝利した結果だとしても、兵力の消費はそれなりにある。それを無視して戦争することも可能であるが、ミラング共和国軍の消耗を激しくさせてしまうし、無理な戦線の拡大は今回の戦争で、グルゼンに殺されまくったせいで、人手不足が深刻になっている。

 そのせいで、周辺諸国への謀略や情報収集にかなりの影響が出ている。シエルマスとしては、人材を育てるのに一年以上の期間が必要であり、ファブラへの侵略のための情報収集を利用して、新人を育てることに、今、決めたのだ。

 まあ、それを心の中で思うことはなかったし、この場で言う必要はない。味方ではあるが、ラウナンにとっては、操り人形でしかないのだ。対外強硬派の幹部など―…。

 (それに―…、これを機会に人員を増やしますか。)

と、心の中で思いながら―…。

 シエルマスの数を増やすことも忘れることなく、そのための予算の拡大をシュバリテは確実に認められるだろう。

 シエルマスの予算は、通常予算から支出されることはない。それとは別のミラング共和国の総統が自由に使える総統予算というものが存在し、そのなかの秘密交流費の中の一部に、シエルマスのための費用が存在する。名前は、秘密交流費の中の対外諸国費というものである。

 シエルマスの名前を出すことはできない以上、わかりにくいように名前を変えているのである。ミラング共和国の議員でそのことを知っている者は多く、そのことに関して、シエルマスの費用だろと、口にする者は表立っていない。そんなことを口にすれば、シエルマスによって、存在そのものが消されるかもしれない。その恐怖があるからこそ、議員はシエルマスを敵に回すようなことは言えない。暗黙了解にもなっているのだ。

 つまり、この対外諸国費の増額をシエルマスの統領であるラウナン=アルディエーレは要求しているのだ。シエルマスの人員を増やし、これから領土が拡大した時にシエルマスの育てた人材を利用して、周辺諸国および支配したばっかりの領土の不穏分子を炙り出し、彼らを見せしめにして、ミラング共和国に反抗するのを防ぎ、税と侵略のための兵士を輩出することを喜んでする国民にしたいのだ。

 それはつまり、ラウナン=アルディエーレと彼が統領を務めるシエルマスのやりたい事に対して、何でも文句を思っていたとしても、協力してくれることになるのだ。ミラング共和国の国民にとって、それに抵抗する手段はないと言っても良い。ゆえに、シエルマスに媚びを売るしか己が生き残れる道は存在しないのだ。シエルマス、いや、ラウナンに利用されて、最後に見捨てられることが、一番良い選択としか残されない世の中になっていくのだろう。その世を誰もわかっていなくても、望みはしない。

 そして、ラウナンは、どうしようかと考えを巡らせる前に―…。

 「わかった。ラウナン、頼むぞ。」

と、シュバリテが言うと、

 「ええ、わかりました。シュバリテ様。」

と、ラウナンは返答するのだった。

 その後、会議はお開きとなり、対外強硬派は、ファブラ侵略への準備を開始するのだった。

 対外強硬派の全員が、これからの叶うか分からない希望に縋り、かつ、夢馳せるのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(64)~第一章 勝利は時として毒となる(14)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


この番外編の第一章はもう少しで完成いたします。

執筆の方は第二章を進めています。

かなり、ミラング共和国も残酷なことをするなぁ~。自らの欲のために―…。最後の最後は―…。


そして、他作品なんだけど、『この異世界に救済を』に関しては、次回の投稿でプロローグが完成します。そして、今年の目標の二つ目が達成できることとなりました。はあ~、良かったぁ~。

ということで―…。


では―…。

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