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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
406/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(60)~第一章 勝利はときとして毒となる(10)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、新たな騎士団長を決める交渉は騎士団側に有利な結果で終わり、一方で、騎士団側はリーンウルネが執務に使っている部屋に招かれるのだった。


昨日、新たな騎士団を決めるための交渉は、今日の投稿分で終わると書いてしまったような気がします。すみません。完全に疲れが出ています。酷い方かもしれません。

 リーンウルネの部屋。

 そこには、騎士団の代表が呼ばれていた。

 そう、新たな騎士団長として内定したフォルクスと、その付き添いでニナエルマとラウナウが―…。

 リーンウルネは話し始める。

 「うむ、そこにソファーがあるから適当に座るが良い。儂は、儀礼的な場でなければ、そこまで礼儀とかは求めたりはしないの~う。というか、堅苦しいのはあまり好きじゃないからの~う。」

と。

 リーンウルネとしては、恭しくされるのをあまり好むことはなかった。理由は、よそよそしい態度をとられると、相手の本音が分かりにくく、かつ、媚びを売っていて、気持ち悪いと感じてしまうからだ。むしろ、媚びを売るような連中にろくなのがいないというのを経験上、知っているからだ。

 そのことを含めて、これからの話の内容を考えると、気軽になってもらう方が安心して話せるというわけだ。

 騎士団側の方は、戸惑いもしたが、リーンウルネの言っていることを受け入れる。

 「そうさせてもらう。」

と、フォルクスが代表して返事をすると、ソファーに三人が座るのだった。

 リーンウルネは執務机へと座り、騎士団側の方を向いて話し始める。

 「さて、今回のミラング共和国との戦争に関して、話させてもらうとするかの~う。」

 そう、リーンウルネはまず最初に、今回のリース王国とミラング共和国との戦争に関する話をし始める。

 「お主らも知っておるじゃろうが、今回、ミラング共和国との戦争、実はの~う、アルデルダ領における二つの政策が関係しておるのじゃ。商品税の増税と通過税の新設と言えば、わかるかの~う。」

 リーンウルネの言葉に対して、フォルクスは言う。

 「そのことに関しては、騎士団も情報を集めています。エルゲルダがアルデルダ領の財政再建のために、商人たちから巻き上げる税を増やしたという感じだと聞いています。」

 「そうじゃの~う。実際に財政再建のためであることは事実じゃ。だけど、二つの税のうち、エルゲルダが提案したのは、通過税の新設の方じゃ。もう一方の商品税の増税に関しては、当時の財務のトップが財政収支を悪化させたことによって、そのための責任回避のために提案したようじゃ。儂の影の情報によると―…。」

と、フォルクスの言葉に対して、説明を加える。

 そう、実際に、エルゲルダが通過税の新設や消費税の増税の二つを提案したのではないかと思われるが、現実、エルゲルダは通過税の新設しか提案していない。このことは重要だ。だけど、世間と言われるものは領主が自らすべてをおこなっているのではないかということだと思いがちだ。まあ、最終的に責任者であり、容認している以上、何もかも無関係であるとは言えない。トップとしての責任は確実に存在する。

 リーンウルネの言葉に、フォルクス、ニナエルマ、ラウナウは驚く。

 (……………まあ、片方が提案していないけど、承認しているから領主の責任がないということはない。だけど、リーンウルネ様の情報収集能力は騎士団以上―…か。)

と、ニナエルマは心の中で思う。

 表情に出すことはないが―…。

 それでも、リーンウルネの影の情報収集能力に驚くしかなかった。その情報収集能力は騎士団のそれを軽く越えていると思う。

 実際、リーンウルネの頭脳と影の能力が組み合わさっているからこそ、騎士団以上の情報収集能力を達成することができている。片方だけでは、騎士団以上になることはなかったであろう。

 そういう意味で、リーンウルネという人間の存在は、かなり大きなものである。

 (ガハハハハハハハハハハハハハハ、リーンウルネ様は優秀な部下がいるし、さらに、それを扱いこなしている。たまげたものだ!!!)

と、ラウナウは心の中で笑うのだった。

 リーンウルネを家族から聞いてる以上、その聞いている通りの存在なので、笑わざるを得ない。馬鹿にしているのではない。素晴らしい人材がいることに喜びを感じているのだ。

 「そして、その政策の情報をラーンドル一派どもはすぐに掴んで、容認したのじゃ。まあ、理由はお主らも知っておるであろうの~う。あやつらの理由はこうじゃ。アルデルダ領はすでに、リース王国にとって、金の成る木ではなくて、あるだけでリース王国の財政に余計な出費をするだけの迷惑な領土じゃ。それに、エルゲルダはレグニエド王の信頼を得ており、それに対する嫉妬も加わって、今回のアルデルダ領の政策を利用して、ミラング共和国を煽ったのじゃ。戦争に追い詰めるようにしての~う。」

と、ここでリーンウルネは一回、間をおき続ける。

 「そして、ミラング共和国では、このアルデルダ領の政策のせいで、穏健派が追い詰められ、穏健派も真面な政策を打てずに、対外強硬派が政権を掌握することになったのじゃ。その時、対外強硬派のトップのシュバリテよりもシエルマスの統領ラウナン=アルディエーレが裏でコソコソしていたようじゃの~う。ラウナンに関しての情報は、こちらにもほとんどないと言っても良い。」

と、リーンウルネの言葉にフォルクスが割り込んで言い始めるのだった。

 「シエルマスだと!!! なぜ、シエルマスが関わることになっているんですか!!!」

 そのフォルクスの驚きに対して、呆れながらリーンウルネは答える。

 「フォルクス。儂もシエルマスに関する情報はほとんどない。特に、ラウナンに関する情報はわかっていないのと同じじゃ。あの男は、かなり危険な存在じゃし、部下でも探らせると死体となって返ってくる可能性が高いか、行方不明か。その可能性が高い以上、ラウナウやシエルマスの方に派遣することはできない。ゆえに、儂にも噂の噂しか情報が手に入らないということじゃ。じゃが、シエルマスが対外強硬派に加担しているのは確かじゃ。儂も過去にラウナン=アルディエーレをパーティーで見たことがあるがの~う、あれは自分以外の人間は人だと思っていないのじゃろう。近くにいたグルゼンとか言う将軍の方がよっぽど、権力者に向いていると思えるぐらいに危険じゃの~う。ラウナン=アルディエーレは―…。」

 そのリーンウルネの言葉に、ミラング共和国の諜報及び謀略組織であるシエルマスの統領であるラウナン=アルディエーレという存在がどれだけ恐ろしいかを理解してしまう。騎士団側は―…。

 (あの時、戦場の中でシエルマスがいるということに関しては、不思議ではないと思ったけど、シエルマスが今回の戦争にも関わっていたということか。)

と、ニナエルマは、少し別の思考をしているが、それでも、リーンウルネの話はしっかりと聞いている。

 「長くなってしまうので、これ以上、シエルマスのトップについて、戦争の中で触れることにするとするかの~う。対外強硬派は、ミラング共和国の政権を掌握した後、穏健派の主要人物達を粛清していき、それから逃れられた主要な人物は数が少ないと思われるの~う。」

 そう、このように完全に結論付けることはできないが、それでも、対外強硬派による穏健派への弾圧行為というか、粛清行為をおこなわれたことをリーンウルネは知っている。逃れてきた穏健派の一家族を保護して、彼らの情報を聞くことができたからだ。

 ゆえに、リーンウルネは状況によっては、ミラング共和国へのカードを一枚持っていることになる。そのカードの使い方は状況や次第によって、変わってくるであろうが―…。

 「その後、対外強硬派はリース王国との戦争準備をおこない、数カ月後に、今回の戦争のため、アルデルダ領へと進軍してくることになる。これを狙っていたラーンドル一派としては、好機と見たのかどうかは知らぬが、この戦争を利用してアルデルダ領をミラング共和国側に割譲することを考える。ただ、割譲するのだと不味いから、アルデルダ領とリース王国の他の領境での戦闘にして、アルデルダ領を見捨てた。」

 そのリーンウルネの言葉に、騎士団の側の三人は顔を青褪め、かつ、怒りの表情へと変化させていく。

 「ラーンドル一派!!! そんな売国行為が許されると思っているのか!!!」

と、フォルクスが声を荒げる。

 「落ち着くのじゃ、フォルクス!!!」

と、リーンウルネは、フォルクスを落ち着かせる。圧を用いて―…。

 フォルクスは怒りを感じたことを完全に恥じたわけではないが、それでも、無理矢理に落ち着かせるのだった。

 リーンウルネは、話し続ける。

 「儂もそのラーンドル一派の考えを理解しておったが、儂としても、まだ、完全に反抗できるような時期でもないし、力もなかった。ゆえに、何もすることができなかった。儂としても、この恥を忘れる気はない。」

 リーンウルネは悲しそうな、悔しそうな表情をする。

 リーンウルネだって、今回、力があるのであれば、ラーンドル一派から権力を奪い、すぐにでも、アルデルダ領に騎士団や王国軍を派遣し、エルゲルダ追放と同時に、ミラング共和国軍の撃退をはかったであろう。だけど、そのような力は現実にない以上、今、自らができる最大限のことをやるしかない。

 人として、無力さというものを感じてしまうものだ。罪の意識がないわけではないということだ。

 騎士団の側も怒りもあるが、リーンウルネの表情を見て、少しだけ溜飲を下げる。それでも、リーンウルネを許す気はない。だって、騎士団は今回のリース王国とミラング共和国との戦争でかなりの騎士が亡くなってしまったのだから―…。

 「そして、今回の戦争は、同時にもう一つの目的をラーンドル一派は持っていた。そう、お主らも薄々感じているじゃろうが、騎士団長のリーウォルゲに今回の敗戦の責任を取らせる予定じゃった。いや、それは今回のエルゲルダの政策と同時に、ミラング共和国を煽って、戦争となり、アルデルダ領をミラング共和国に割譲しようとしたラーンドル商会の対外交渉の中で陸上交易を担当しているアールトンはそのように思っておったのじゃが、それ以外のラーンドル一派の重鎮達はアールトンをその責任でスケープゴートにする予定で、実際に、しておるから確実のことであろうの~う。そして、戦争の中で、騎士団の食糧事情を盗賊に襲われたという嘘の情報で悪くし、その裏で騎士団を買収して、嘘の王命を利用して、リーウォルゲの命令に反してミラング共和国軍を奇襲して、多くが倒され、ミラング共和国軍を怒らせてしまい、騎士団はミラング共和国軍に攻められることになったのじゃ。そして、騎士団は大きなダメージを受けた。その間に、ミラング共和国軍のラウナン=アルディエーレは何を考えたのか分からないが、リース王国と停戦交渉をおこない、協定を結んだそうじゃ。何かを恐れているのか、良く分からぬか。」

と、リーンウルネは最後に悩むのであった。

 リーンウルネは、どうして、有利な状況なのに、リース王国と停戦協定を結んだのか。理由として考えられるのは、これ以上リース王国が不利になると、何かリース王国に噛みつかれる可能性があるのか。もしくは、これ以上、戦線を伸ばすのが得策ではないかと考えたのか。

 そのように、リーンウルネはその理由を理解し損ねるのだった。

 実際、ラウナンが恐れたのは、リーンウルネという存在であり、当の本人はそのことに気づいていない。自分という存在を完全に理解することができない以上、このようなこともあったりする。

 だけど、気を付けないといけない。自分という存在がどういうものを知らないという面が、重要な結果を及ぼすことになる場合が存在し、そのようなことが重要な結果を及ぶす時、返って、最悪および最高の結果をコイントスをするようになるのだ。そう、最悪の結果になってしまえば、何も分からず、自らの破滅の結果になることもあるということだ。

 「最後に、今回の戦争の結果、アールトンはラーンドル一派によって粛清され、リーウォルゲはラーンドル一派にとって邪魔とされ、ミドールによって戦場で暗殺されたというわけじゃ。儂の影が実際に見ている以上、嘘というわけではないじゃろう。そして、儂はこれから自らの派閥の力を強化することにするかの~う。お主ら、騎士団も加わるか?」

 リーンウルネは、騎士団を勧誘する。

 リーンウルネは、これから騎士団を自らの派閥に加えることで、これからの派閥強化をして、場合によっては、ラーンドル一派から政権を奪おうと画策する。

 その答えは、騎士団の中では決まっていた。

 「今のところは、お断りさせていただきます。騎士団は、リース王国のために存在するのであり、リーンウルネ様個人のために存在はいたしません。誠に申し訳ございませんが―…。騎士団長の交渉で助けてもらったことには感謝いたしますが―…。」

と、フォルクスは答える。

 あくまでも、リーンウルネと協力する場合は、騎士団からかなり追い詰められた時と決めており、今回、リーンウルネに助けられたことに関して感謝はするが、それでも、リーンウルネと協力するか別の話になる。

 「そうか、わかった。これで話は終わりじゃの~う。」

 こうして、リーンウルネと騎士団側の話し合いは終わるのだった。



番外編 ミラング共和国滅亡物語(61)~第一章 勝利はときとして毒となる(11)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


疲れが酷いので、無理しない程度に進めていきます。

では―…。

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