第26話-2 反射鏡
第26話の後半部分となります。
前回まで、ランシュとヒルバスが登場した。ランシュの強い人イメージを崩しながら…。
たぶん、ここは、当初予定されていなかった、シーンばっかりになってしまいました。
瑠璃、李章、礼奈は動揺するような表情になる。
そう、ランシュは、自らの名を名乗ったのである。
そして、
「あの~、すみません。ランシュさん。」
と、瑠璃は言う。
「ん、なんだ。瑠璃。何か言いたいことでもあるのか?」
と、ランシュは言う。
「はい、ランシュさん、あなたはなぜ私たちのことを知っているのですか? それに、どうしてこんなところにいるのですか?」
と、瑠璃は半分のほほ~んとしたかのような質問をする。
「そうか、…なら、言おう。実は俺たち…、瑠璃、李章、礼奈を討伐する命令を俺の知り合いから受けているのだよ。」
と、ランシュは、言いながら瑠璃、李章、礼奈に対して、それぞれを、右手の一指し指で指すのであった。
ランシュに指を指された瑠璃、李章、礼奈は、
(? 私って…討伐されるようなことをランシュに対してしたのかな~。見覚えないし~。ここで会ったのが初めてだし…?)
(私たちを知っていることは―……、ランシュは私を含め、瑠璃さん、山梨さんを知っている人物がいる。そう、私たちの知り合いが関係しているのですか?)
(……あのランシュという人は、倒さないといけない敵っということですか?)
と、三人がそれぞれ思うのであった。
ほんの数秒も経過しないうちに、礼奈は気づく。
「ランシュが、私たちがローさんといるところに刺客を送ってきた人ですか。」
と、礼奈は確信しながら言う。そう、礼奈は思い出したのだ、魔術師ローと最初に瑠璃、李章、礼奈が会った場所に送った刺客のゴーレの話していた言葉の中にランシュという単語があったことを―…。しかし、それは簡単に聞こえるものではなかった。そう、ゴーレの風の攻撃に乗ってたまたま聞こえてきたのである。
「そうだ。俺は、瑠璃、李章、礼奈が現実世界から異世界にやってきた人間だということも知っている。」
と、ランシュは言いながら、瑠璃、李章、礼奈と自らの指を指していく。
この、瑠璃、李章、礼奈が現実世界から異世界へと来たことをクローナとアンバイドは、今ランシュの言葉によって知った。
(えっ? 現実世界? 何を言ってのだろう?)
と、クローナは心の中で瑠璃、李章、礼奈が現実世界出身であることに対して、疑問に思う。さらに、あまりにもクローナにとって現実離れした出来事であったために、クローナの思考が追いつくことはなく、むしろ停止寸前の状態であった。
(聞いたことはないが、瑠璃、李章、礼奈が何かを隠していることはわかっていた。特に、魔術師ローが関わっているのであれば、驚くべきことではない…、か。魔術師ローは、すでに何でも有りの人間だからな~。)
と、アンバイドは思う。瑠璃、李章、礼奈が魔術師ローと関係があった時点で、厄介なことではないかと理解することができた。過去に、瑠璃、李章、礼奈が住んでいた場所が石化する現象が起きて、それをやったのがベルグと言っていたことを思い出す。
(場所っていうのが…、現実世界というわけか。)
と、再度アンバイドは心の中で呟く。
ランシュに二度の指を指された瑠璃、李章、礼奈は動揺するしかなかった。ランシュが私たちのことをはっきりと知っている。現実世界出身であることを―…。
(つまり、ランシュという人は、現実世界を石化させた可能性のあるベルグという人を知っているということ―…。)
と、李章は、ランシュがベルグの居場所を知っているという自身の結論に達する。
そして、その李章の結論と同様のことについて、礼奈もいたるのであった。
それに関しては、瑠璃もわかっていて、
「ランシュは、ベルグという人の居場所を知っているのですね。教えなさい。そして、あなたがたが現実世界を石化していったのですか? 知っているのなら、石化を解く方法を言いなさい。」
と、怒声にも近いような声でランシュに向かって言う。そう、瑠璃は、ランシュから石化を解く方法およびベルグの居場所を知ることができればすぐにでも、ベルグのところへ行って、現実世界の石化を解くことができて、解決することができないかと考えたからである。そのため、気持ちも高ぶっているのである。
「居場所を教えるわけにはいかないなぁ~。ただし、現実世界を石化したのは、もちろんベルグだっていうことだけは教えておくよ。だって、瑠璃、李章、礼奈に加え、そこにいるアンバイド、そして、クローナの今の実力ではベルグには勝てやしない。だが、俺もお前たちには用があるんだよ。」
と、ランシュは言う。
(用って……、一体、私たちに何の用があるの。)
と、礼奈は心の中で思うのであった。
「招待しに来たんだ。瑠璃、李章、礼奈をな。俺がリースで騎士の催しものに変えて、今年だけの盛大なゲームに参加してもらうためのなぁ~。アンバイド…、お前も参加しても構わないぜ…。それに嬢ちゃんもな。」
と、ランシュは言う。ランシュは、ここにいる瑠璃、李章、礼奈、クローナ、アンバイドを開催するゲームへと招待したのだ。そう、ランシュがベルグから与えられた命令を実行するために―…。
その言葉は、クローナとアンバイドに警戒を生み出す。
「ランシュとか言ったか…。このゲームとやらは、俺にとって参加するメリットがないのだが…。」
と、アンバイドは言う。実際は、アンバイドにとってランシュのゲームに参加することにメリットはあるが、あえてランシュに何を提示して自らを参加させようしてくるのを確認しようとしたからである。
「そうだな。もし、俺を倒すことができたのならば、ベルグの居場所を教えてやるよ。愚かな復讐者になり果てたアンバイド。俺はお前のなぜ復讐しようとしているのか知っているんだぜ。」
と、ベルグは言う。そう、メリットと、それに付け加えてアンバイドの目的を含めて―…。
「余計なことを言うのか。なら、ここで始末してもいいのだが…。」
と、アンバイドは言いながら、ランシュへの挑発をかける。
それに対して、
「今、ここで戦うの嫌だね。折角のゲーム参加者が一人いなくなるのはねぇ~。」
と、ランシュは、自らが企画したゲームの参加者が減ることが自分にとっても、ベルグの命令に成功の可能性にとっても良くないと判断し、ここでの戦いを避けるという意味を含めた言い回しをする。
アンバイドは、沈黙していった。これ以上、自分自身がランシュに対して言うことはないという意思を込めて―…。
「じゃあ、言うべきことはあともう一つか。ヒルバス、招待状を向こうにいる瑠璃に渡してきてくれ。」
と、ランシュはヒルバスに向かって言う。
「はい。かしこまりました。ランシュ様。」
と、ヒルバスは言う。その表情は、自らの上司の命令にただ黙って従う従者のようであった。
ヒルバスは、瑠璃のもとへ向かって行く。招待状を渡すために―…。
そして、ヒルバスが瑠璃のもとへ、素早く移動した。そう、瑠璃、李章、礼奈、クローナが目に追うことのできないスピードで、そして、一瞬というわずかな時間を使って―…。
そのヒルバスの瞬間移動を、瑠璃、李章、礼奈、クローナはただ、唖然としてでしか見ることができなかった。
「これは、驚かせてしまいました。失礼。」
と、そう言うと、ヒルバスは瑠璃の真正面のすぐ近くに現れた。
「!!!」
と、瑠璃は再度驚くことになった。
「これをどうぞお受け取りください。罠などは一つもございません。ただの招待状です。」
と、ヒルバスは瑠璃に向かって左手に持っていた招待状を、差し出す。
(罠がある招待状って何?)
と、瑠璃はヒルバスの言葉について疑問に思うところもあったが、ここは素直にヒルバスから招待状を受け取った。それを、右手で持った。
「お受取り感謝いたします。では、失礼。」
と、ヒルバスが言うと、瞬間移動して、ランシュのもとへと戻っていった。
(この瞬間移動を見るのは、何か心臓に悪いなぁ。)
と、瑠璃は心の中で思っていた。
「ヒルバス。渡し終えたな。なら、ゲームの開幕式は、三日後、リースにある競技場でおこなう。お前ら五人のうち、その場に来たもの全員を俺の主宰するゲームの参加者とみなす。誰も来なかった場合、失格とみなして、お前らを直接俺の全ての部下で、お前らを討伐する。どっちが、賢明な判断かは言わなくともわかるよな。では―…。」
と、ランシュは言い終える。そして、ランシュは黒い渦の中へと消えていった。
そのとき、
「痛って!! 誰だよ、ここに人を放置したのは!!!」
と、ランシュの声が聞こえたという。
つまり、ヒルバスが投げた気絶しているフードを被った一人の人物にぶつかった後、面倒なのでランシュ自身がそこに置いたのであるが、黒い渦の中へ入った後、自らが置いたのに足をぶつけたのである。ちなみに、そのときにランシュは前にこけかけたという。
(やっぱり、カッコ悪い悪役のほうが似合いますねぇ~。ランシュ様は。)
と、ヒルバスは半分小馬鹿にしながら思っていた。
「では、みなさん。三日後、リースの競技場でお会いできることを楽しみにしております。」
と、ヒルバスは言って、黒い渦の中へと消えていった。
そして、黒い渦はすぐに消えたのである。跡形もなく…。
(最後のバカみたいなカッコ悪さは別として―…、今、最善なのは―…、参加することか…。瑠璃、李章、礼奈の被害をださないようにすることを考えたら。)
と、アンバイドは心の中で呟いた。そう、瑠璃、李章、礼奈、それに加えてクローナを巻き込んで、ゲームに参加せずに、ランシュの持っている部下、つまり、リースの軍隊のランシュの息のかかったものと戦うのは無謀であると判断したからである。アンバイド自身でも、リースの軍隊の多くよりも強いとしても、ヒルバスぐらいの実力者となれば、さすが、複数を相手にすることはできない。それに、アンバイドはヒルバス、ランシュの実力者となると、本気を確実に最初からだしていかないと、勝利することは難しくからだ。
そのようにアンバイドの思考が動き回っている間、
(…かっこ悪いなぁ~。ランシュ。)
と、瑠璃が思い、
(物覚えが良い人ではないです。完全に注意散漫だった。しかし、こちらが攻撃を仕掛ければ、確実に反撃されていた。)
と、李章がランシュに対して考察し、
(ゲーム…か。罠じゃなければいいけど~。)
と、礼奈は心配した。
クローナは、
(あっ…、瑠璃、李章、礼奈に挨拶しないと。)
と、思っていた。
リースの近郊、ランシュのいる場所。
「くう~。なんで、拠点に帰ったらすぐに倒れた人がいるんだよ。それもあいつが…。」
と、ランシュは言う。
ランシュは、黒い渦を通って拠点へと帰ってすぐに、気絶して倒れていたフードを被った一人の人物に足を引っかけてしまったのである。
そのせいで、真正面から転んでしまってしまった。ゆえに、頭にたんこぶができていた。
たんこぶをさすりながら、自らのカッコ悪さを嘆くのであった。
「ランシュ様。むしろ、部下の前でそれを見せたら、まもなく愛されキャラになりますよ。」
と、ヒルバスが冗談のように言う。むしろ、ヒルバスの感情は、ランシュのカッコ悪いところを部下に見せれば、面白い奴となっていじられキャラになって、自分も毎日ランシュをいじれるのではないかと考えていた。
「愛されキャラになる前に、部下から舐められるわ!! そうすれば、俺の威信が地におちて、統制が不可能になる。」
と、ランシュはヒルバスに口調を強めて言う。
「っていうか、ヒルバス。全員集めているか。広場に。」
と、ランシュは付け加えるかのように言う。
これから行うことをするために、事前にヒルバスに言って集めさせていたのだ。フードを被った一人の人物を除いて―…。ランシュにとってフードを被った一人の人物は、これから自らの部下でも幹部や側近近い実力者になれるほどの逸材なのである。そう、天成獣の力がそれほど強いのである。
そして、ランシュは広場へと到着する。
ヒルバスは数歩、ランシュの後ろに控えていた。
ランシュは辺りを見回した。
「お前ら!! 三日後に俺が考えたゲームを開始する。この中でゲームに参加できるのは、ここで残った俺がチームに選んだ以外の、9チームとする。その選抜は、お前らがチームを組むなりして、他のチームとなって戦い、残りが9チームとなったときに選抜を終了とする!!! では、始めよ、もちろん、ルールはない。」
と、ランシュは宣言する。この広場に集まっていた、200名を超える自らの部下たちに―…。
こうして、ゲームへ参加する9チームの選抜の戦いが始まった。
ここに一人に一人の少女がいた。容姿は瑠璃を少し成長させた人物で、瑠璃よりも少し年齢が上である。
「瑠璃は許さない。」
と、一人の少女は言う。会ったこともない瑠璃に、恨みを抱きながら―…。
【第26話 Fin】
次回、ルーゼル=ロッヘの最後の話しとなるのか?
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
いろんな意味で、伏線をはりすぎてしまったと思います。数は多くのないのですが…。いつの間にか、ランシュがあんなカッコ悪いキャラになってしまいました。う~ん、話をつくるというのは、自分の考えているのとは違う方向にいってしまいます。不思議です。