番外編 ミラング共和国滅亡物語(47)~序章 アルデルダ領獲得戦(47)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、グルゼンを始末しようとしたラウナンは、グルゼンに追いつき、グルゼンの首を短剣で斬り裂くのだったが、そこに、なぜかベルグとフードを被った人物が現れるのだった。
「!!!」
と、何かを嫌な気配を感じたラウナンは、再度、姿を現わすのだった。
「誰が私の眼に敵わなかったぁ~。ふざけたことを言わないでください。」
ラウナンは、すぐに、ベルグの方へと視線を向ける。
そして、ベルグであると理解する。
「なぜ、リース王国の元宰相がこのような場にいる。行方不明だと聞いていたが―…。」
そう、ラウナンにとっては、驚きでしかない。
リース王国の元宰相がなぜ、ここにいるのか、いや、どうして、この場面で出てくるのか…だ。
(もしも可能性としてあり得るのは、ベルグがリース王国と繋がっていて、グルゼンをリース王国の軍へと勧誘していると見て良い。なおさら、グルゼンはこの手で葬り去らないといけない。)
と、ラウナンは心の中で思う。
ラウナンは、ベルグという人間がリース王国から行方不明になったのではなく、そういう扱いにして、各国から優秀な人材をリース王国に勧誘していたのだと―…。ラウナンもベルグに対する情報を掴むことがほとんどできなかったことにより、ほとんど推測でしか判断することができなかった。
ゆえに、正確性に乏しく、想像力で補った。そんな感じだ。
「行方不明―…。確かに、リース王国とはもうほとんど関わりはないし、ラーンドル一派とは完全に繋がりはなくなったねぇ~。俺としては、やるべきことが決まっているのだから、リース王国自体も国さえ保ってもらえれば、どうでも良いんだけど―…。俺としては、面白い人材を見つけたから、彼の目的を達成してあげることに手を貸してはいるかな。そして、彼というのは、グルゼンのことじゃないから、勘違いしないで欲しい。俺は、シエルマスごときで追い詰められるほどの存在じゃないし、さらに、これから俺の部下となるグルゼンを傷つけられるのは困ったことなんだよ。だから―…。」
と、ベルグは少しだけ、息を吸い言い始める。
「修復。」
と、言うと、グルゼンの傷は治っていくのだった。
まるで、ラウナンによって斬られたことがなかったほどに―…。
ベルグとしては、さっきの長い言葉の内容に戻すが、リース王国とすでに関係がないことは事実であるし、リース王国側もベルグの行方がどこにあるかわかっていない。
それを知っているのは、リース王国の中には誰もいないが、会うことができるのは、ランシュとヒルバスだけであろう。
そして、ラウナンはさらに勘違いしていることを、間接的ではあるが、ベルグは指摘している。ラウナンは気づかないだろうが―…。それもそのはずである。というか、ベルグは、リース王国自体の存在がどうなろうと、自らが今、なそうとしている実験が周囲に気づかれなければそれで問題はないのだ。ラーンドル一派が権力を握ろうが、リーンウルネが実権を握ろうが―…。まあ、ベルグもリース王国の宰相である時代は、職務の関係上、リース王国にとって何が利益かを考えることが重要であることを理解していたので、ラーンドル一派の行動に対して、気に食わないことはあったが、リース王国のためと思い、リース王国のために行動してきた。
現在、リース王国と関係がない以上、どうでも良い。ただし、リース王国自体が存在してもらわないと困るのであるが―…。
それ以上に、折角、実力もあり、自らの部下にしたい、いや、なることを約束したグルゼンをラウナンによって殺される方が困るのだ。傷つけられ、戦闘ができないほどの怪我を負ってしまうことも加えて―…。
ゆえに、グルゼンがラウナンに対して、ピンチなので、少しだけ力を貸そうとしたのだ。あくまでも、ベルグは、グルゼンとラウナンの戦闘に加わる気もないし、フードを被った人物である自らの部下に参戦させることもしない。
理由はある。
「ベルグ、傷を治してもらったのはありがたいが、それでも、この勝負は―…。」
と、グルゼンが言いかけたところで、
「グルゼン。勘違いしてもらっても困る。俺は、ラウナンとか言う、お眼鏡にも適うこともない人物を俺の部下にする気はないよ。それに、俺は、この戦いには加わらないよ。傷を治したのは、平等にするためだ。グルゼンは、僕のお気に入りと戦ったり、シエルマスの刺客たちと戦ったのだから、疲れていて当たり前だ。これじゃあ、今のグルゼンではラウナンに勝つのは無理だよ。だけどね、やっと、グルゼンにとって天成獣の宿っている武器が見つかったんだ。見えるだろ、俺が持っている長剣。これがグルゼンの武器だ。それに、グルゼンの使っている長剣ももう寿命みたいだ。」
と、ベルグは言う。
ベルグがこの場にいるのは、以上だけの理由に加え、グルゼンの使っている長剣はすでに寿命がきており、いくつかの罅が入ってしまっているのだ。その罅は小さくて見えずらいものであるが、ランシュとの戦いでのものであろうと、ベルグは予想する。
そして、グルゼンは自身の武器に視線を向けると―…。
少し軽く動かす。
ピキィ!!
長剣に罅が入る。
こんな時間が経って罅が入ることはないし、経験したこともない。だけど、不思議とこれは事実なのだ。ランシュも気づいていないだろうが、ランシュの攻撃が重く、グルゼンの今まで使っていた長剣が優れた鍛冶師によって作られたものであろうとも、天成獣の宿っている武器による攻撃のせいで、剣として弱ってしまっていたのだ。
戦いの中であるからこそ、周囲に集中しすぎてしまっていたからこそ、気づかなかったのだ。
(こいつの弔いぐらいは後からしよう。それよりも―…。)
と、グルゼンは気になっていることを言い始めるのだった。
「ベルグ―…、俺が扱えるかもしれない天成獣の宿っている武器が見つかったと言ったな。それを渡してくれ。それで、ラウナンとのケリをつける。」
と、グルゼンは言う。
そのグルゼンの言葉の意味をすぐに理解しているし、ベルグが持っている長剣はグルゼンに渡すものである以上、すぐにグルゼンに渡すのだった。
それを受け取るとグルゼンは、すぐに理解するのだった。
「俺を選んだようだな。これからよろしく、相棒。」
と、グルゼンが言うと、ベルグから渡された長剣を構える。
その間、いくらでも、ベルグやフードを被った人物、グルゼンを斬り殺すことができるチャンスが素人目にあったと思われる状況で、ラウナンは、攻めることができなかった。
なぜなら、ベルグやフードを被った人物からは、ラウナンがどんなに強くなったとしても、この二人を倒すことができないということを理解させられるのだ。
それに、実際、ベルグとフードを被っている人物がラウナンに負けることはまずあり得ない。実力に差がありすぎるのだ。
ベルグは、わかっている。
(ラウナン=アルディエーレ。彼は天成獣の宿っている武器をちゃんと扱えないようだねぇ~。自らの武器の特性をしっかりと、天成獣の能力をしっかりと理解できずに―…。透明化の意味もわからず―…。)
ゆえに、ベルグのお眼鏡にかかることはない。
ベルグとフードを被っている人物は、グルゼンを守るような感じを止め、後退するのだった。
これ以上、グルゼンとラウナンの戦いを邪魔するのは良くない。
イーブンにしたのだから、グルゼンの勝利を見守ることにしよう。そんな感じで―…。
そして、勝敗に関して―…。
(ふう、初めてなのに、グルゼンは―…。やっぱり、俺の見込んだことだけある。戦闘の天才だ。)
と、ベルグは心の中で思いながら、グルゼンの勝利を確信するのだった。
フードを被った人物も、ベルグと同じく、グルゼンが圧倒的な力で勝利すると、予想した。確実に起こることとして―…。
なぜなら、グルゼンは、たとえ、天成獣の宿っている武器を今日、初めて扱えるようになったとしても、その精髄というものを完全ではないにしろ、本能的に理解することができるであろうと―…。
そして、戦いの場面へと移る。
「ふう、今なら逃げることができますよ。だけど、私としても、グルゼンにミラング共和国軍を辞めてもらうのは困ったことなんですよ。そして、我々の邪魔をしてくるに決まっている。リース王国の元宰相と繋がっていることは、つまり、リース王国への裏切りと見なす!! ミラング共和国のため、大人しく処分されることがこの世の道理だ。」
と、ラウナンは、最後に叫ぶように言う。
ラウナンとしては、敵国とグルゼンが繋がっているのだ。
ゆえに、許されることではないし、始末しなければ、リース王国にとって有利なことになるのは、目に見えているからだ。
そのようなことを、ラウナンは見過ごすことはしないし、グルゼンを始末する好機を得ることができたのだ。
そして、同時に―…。
「それに、天成獣の宿っている武器を今、初めて扱ったということは、まだ、天成獣の能力も把握できていないでしょう。なら、そんな私でも簡単に―…。」
と、ラウナンが言いかけたところで―…。
「そうか、わかった。済まないな。もう一度、俺に言ってくれ、ラウナン。お前の傲慢な言葉よりも俺の相棒の説明の方が重要だったからよぉ~。それに、そうやって、自分が上だと思って踏ん反り返っていると、足許救われるぜ。」
と、グルゼンは挑発する。
グルゼンは、今、自らの手で持っている天成獣の宿っている武器の中にいる天成獣と話し合い、この天成獣の能力と戦い方を教えてもらったのだ。
グルゼンは、天成獣の宿っている武器を用いての戦い方は素人でしかないが、それでも、数々の戦闘を経験している猛者であることは間違いないし、軍人としては優秀な存在だ。
ゆえに、今の状況で、自分が素人であることをちゃんと理解している。だからこそ、やるべきことは決まっている。
ラウナンの持っている武器の天成獣の宿っている武器の能力の中に、透明化があるということを―…。
「言ってくれる。終わりだ―――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
と、ラウナンはグルゼンへと向かい、襲い掛かってくるのだった。
グルゼンは気づいている。
そして、近くにいるベルグも、フードを被った人物も―…。
(ミラング共和国の謀略および諜報機関シエルマスの統領ラウナン=アルディエーレ。彼は今、大失態を犯した。暗殺の基本は、暗殺対象および周囲から気づかれないことが原則。それなのに、彼は、冷静さを失ったのか、何か自らが圧勝で勝てると思ったのか、真っ直ぐ、何もフェイントもなしに、攻めてくるとは―…。愚かなことだ。グルゼンの方がよっぽど暗殺者として向いている。それに、アババに言わせれば、雑魚としか言いようがない。)
と、ベルグは心の中で思う。
ベルグとしても、暗殺のための前提というものを理解していないわけがない。彼は好奇心の塊であり、忠実な僕なのだ。
そして、その原則として、暗殺対象に気づかれないということであり、かつ、暗殺対象側の人間にも気づかれてはならないということだ。暗殺された時にはすでに逃走を開始しておかないといけないと―…。
その暗殺を得意としているラウナンは、まるで、自分から暗殺という分野からあまりにも離れた方法で、グルゼンを殺そうとしているのだ。バレた時点で、すでに、ラウナンは自らの得意分野に引きずり込むことに失敗してしまっているのだ。
結局、天成獣の宿っている武器を用いることで、天成獣の宿っている武器を持っていないグルゼンを圧倒しただけに過ぎない。
ゆえに、イーブンになれば、結果というものはわかりきったことになる。
「五月蠅ぇ―…、蝿が!! 生龍斬撃。」
グルゼンは長剣を上と構え、その長剣に、天成獣から借りた力を纏わせ、ラウナンに向かって上から下へと斬る動作をして、長剣に纏わせた力を解き放つのだった。
それは、まるで、龍のような形へと変化し、ラウナンがその攻撃に気づいて、回避しようと行動を始めようとした時には、飲み込んでしまうのだった。
まるで、龍の前に、人が無力であることを示すかのように―…。
それを見たベルグは、笑みを浮かべるのだった。
「グルゼン、君は素晴らしい。俺が見込んだだけある。グルゼンの戦闘力および、指揮能力は、我々にとって確実に必要なものだ。科学のトラガル、暗部のアババ、それに私のもとには、強い猛者たちがやってくるかもしれない。実験成功後は、楽しみだ。」
と、つい、言葉にしてしまうのだ。
グルゼンの放った「生龍斬撃」は、ベルグの好奇心を刺激するには十分なほどに―…。
(……………ベルグが気に入るわけだ。アババも強いと認めるわけだ。この男は、ベルグ様の腹心に相応しい。我々とともに―…。)
と、フードを被った人物が心の中で思うのだった。
彼は、グルゼンを認めたのだ。
グルゼンという存在を―…。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(48)~序章 アルデルダ領獲得戦(48)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
ある意味で、最終章の一部がネタバレしていような感じが今回ですね。
最終章のネームを書いているので、グルゼンがここで、まさか、ここでとは―…。という感じで、しどろもどろになりながら思ってしまいます。言語化できずに、すみません。
『水晶』の第1編最終章で、グルゼンは登場します。というか、そのシーンはすでにネームで登場シーンを書いてしまいましたから―…。誰かと戦います。予想はつくと思いますが―…。
ネタバレに近いものはここまでにして、『水晶』の番外編の序章は後もう少しで終わり、第一章に突入します。序章で活躍した人がああいう結末になるのは、序章の伏線の関係上、仕方ないかなと思います。
「ミラング共和国滅亡物語」なので、番外編の最後は、第129話で触れているので、分かると思いますが、ランシュ以外の視点を入れるとかなり長くなるし、あのシーンへと繋がりそうなところを執筆できたので、私自身としては驚いています。まさか、ここで繋がるとは―…、という感じで―…。また、言語化が上手くできずに、すみません。
『水晶』のPV数やユニーク数に関して、増えて欲しいです。
そして、『水晶』を読んでくださったり、評価およびブックマークしていただいた方には感謝しかありません。ありがとうございます。これからも『水晶』をよろしくお願いいたします。
では―…。