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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
392/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(46)~序章 アルデルダ領獲得戦(46)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国とリース王国との戦争は、停戦協定が結ばれるが、リース王国の騎士団の騎士を失った衝撃にリーウォルゲは一人になろうとするのだった。そして、ランシュやラウナウ、ヒルバスは、戦死者の数の確認などの作業におわれるのだった。

一方で、停戦協定の内容の報告を終えたラウナンは、その報告の場にいなかったグルゼンを探し始めるのだった。

その中で、グルゼンはベルグとその右腕が後を付けていることに気づくのだった。そして、もう一つ―…。

 グルゼンは、少し広い場所に出ると、走るのを止める。

 部下はすでに、別の場所へと、第二師団のいる場所へと向かったことであろう。

 (ふう~、なるほどな。)

と、グルゼンは心の中で思う。

 一つは、ベルグとその右腕の気配を感じる。

 彼らは、俺と話をするためにつけているのであろう。

 心の中で思わなくても、何となくであるが推測することができる。

 そして、もう一方は―…。

 グルゼンは、心の中で言おうとする直前、すぐに、殺気の正体に気づき、長剣を構え、防御に態勢をとる。

 そして、その殺気を出している場所に、体を正面に、長剣を構えている方を向けると、そこには―…。

 「チッ!! 気づきやがったか!!!」

と、ラウナンは言う。

 キーン!!

 グルゼンの長剣とラウナンの短剣が衝突するのだった。

 「へぇ~、シエルマスの統領が直々に来てくださるとはねぇ~。よっぽど、俺に知らせたい成果でもあるのか、………もしくは、俺がミラング共和国軍を辞めるから、他国に取られることを恐れて―…。」

と、グルゼンが言い終える時には、すでに、距離を取っていた。

 (早ッ!! これは天成獣だな!!!)

と、グルゼンは判断する。

 ラウナンが、天成獣の宿っている武器を扱っているのだと―…。

 そうしなければ、このような暗殺に成功する確率は低かっただろうし―…。

 天成獣に選ばれたからこそ、このように実力を示して、シエルマスのトップの地位になることができたのだと―…。

 「のんびり話してやる暇などありませんよ。」

と、ラウナンは消え、グルゼンの隙を突こうとする。

 その移動速度は、グルゼンでも追うことはできない。

 (私の天成獣は、このように透明化もできる特殊個体なんですよ。)

 そう、ラウナンの持っている武器に宿っている天成獣は、属性に関して生であるが、それでも、特殊能力を持っており、このように、背景に溶け込むことができるのだ。

 だけど、ラウナンは、十分に、この天成獣の力を発揮させることができていない。あくまでも、身体強化と透明になることができる特殊能力しか理解しようとしていないし、それ以外に、必要だという認識にいたっていない。暗殺に必要だからというものの基準で判断したがゆえに―…。

 そして、今、風景と同じになり、グルゼンの隙を窺い、その一瞬を突こうとするのだった。

 一方のグルゼンは、

 (…………消えた!! 高速移動をしているような感じならば、周囲の木が揺れたりとか、葉が落ちてきたりとか、土煙が複数し続けるとかしているが、それがない。ということは、透明化か何かをしている可能性が高い。厄介だな。)

と、心の中で考える。

 決して、隙を見せないようにしながら―…。

 グルゼンは、土煙に関して、二回以上発生することがないと判断しているし、今は夜である以上、それを確実に土煙だと判断することができないということは十分に理解している。それでも、匂いや感覚を研ぎ澄ませている。

 情報判断を、体の一部の器官だけにするのは、判断ミスの助長になる。だからこそ、複数の方法で―…。総合的に―…。

 視界に関しては、夜といえども、明かりの中に長時間いなかった以上、夜目のおかげで、暗い場所でも木のかたちや地面の形などを判断することができる。それでも、細かい石ころや小さな虫の存在が近くにいることがわかるわけではない。

 そうである以上、慎重にことを進めていかないといけないし、ラウナンは確実に隙を突いてくるのだから、集中し続けないといけない。

 そういう意味では、グルゼンよりもラウナンの方が有利であることに変わりはない。

 (フフフフフフフフフフフフフフフフフフフ、私がどこにいるのかはわかっていないようですねぇ~。そうやって、集中し続けていてください。人はどこかで必ず油断する生き物であることに変わりないのですから―…。殺気を消すことぐらい簡単なことなんですよ。)

と、ラウナンは、心の中で落ち着いている風に見せるのだった。

 さらに、ラウナンは、さっきまでラウナンに向けていた殺気を消してしまうのだった。ただし、完全というわけではないが、グルゼンが気づかない程度ぐらいにすることは簡単にできる。殺気で気づかれるようであれば、シエルマスの統領なんてできるはずがない。

 シエルマスの統領へと実力でなった以上、それなりの実力を兼ね備えているのは当たり前のことだ。一族のコネなどなかったのだから―…。

 そして、ラウナンは気づいている。人が油断しないことがない生き物であることを―…。

 さらに、グルゼンが、ラウナンのいる場所をわかっていないことを―…。

 (ふう~、ここまでラウナンの居場所がわからなくなると、どこかに完全に撤退した、ということは有り得ず、潜んでいる。わからない以上、釣るしかないな。)

と、グルゼンは心の中で思い、ほんの一瞬、気を緩める。

 これは釣り。

 ラウナンという存在を舐めてかかっているからこのようなことをするのではなく、純粋に、居場所がわからない以上、ラウナンにとって都合の良いチャンスを作っておく必要がある。ラウナンは自らの得意に敏感に反応する性格だと理解して―…。

 そして、同時に、この近くで、グルゼンの隙を窺っていると推測して―…。

 そう、グルゼンの勘というものや、状況判断力というものは、群を抜いていると言ってもおかしくない。そのために、日頃から勉学や知識を吸収し考えることを厭わず、それを自らの中へと落とし込むことを怠っていない。新たな視点を作り出すことが生き残ることに繋がる可能性が存在するからだ。

 そして、同時に、軍人であるからこそ、自らの体を鍛え上げつつ、戦闘勘というものを、実際の戦いの中で養ってきた。経験を無駄にせず、知識を貪欲に学び、理解というステージへと導くことができる稀有な存在だ。このようなことが本当の意味でできる人間は少ない。

 人は理解した気になることは簡単にできるが、本当の意味で理解できる前の段階で簡単に諦めてしまうのだ。それを完全に駄目な人間だとして判断するのは早計だ。日々、入ってくる情報を処理しないといけない以上、一つのことに対して、追及していく時間など限られているのだから―…。

 さて、話を戻そう。

 (……私を釣るつもりか。だけど、その釣りも私の前では意味をなさないだろうに―…。それでも、少しは様子をして、焦らしてやることにしますか。グルゼンは、私の攻撃に対して、何かしら考えている可能性が高い。)

と、ラウナンは、心の中で思う。

 ラウナンとしては、このままグルゼンの策に乗っかっても良いと考えた。なぜなら、グルゼンのわずかな隙さえあれば、確実に、グルゼンの息の根を止めることができると確信できているからだ。

 いくらグルゼンといえども、天成獣の宿っている武器を扱うことができない以上、いや、まだ、見つかっていない以上、動きが遅いと判断しても良い。

 そう、天成獣の宿っている武器を扱う者は、身体能力が強化され、人よりも速い移動、素早い攻撃、威力も十分に強くすることができるのだ。

 ゆえに、グルゼンは、ラウナンよりも力の差があるし、それを補っても対抗するための術をグルゼンは知っているが、それでも、長時間戦えるわけでもない。それに、グルゼンは、リース王国の騎士と戦っている以上、疲れているのは確かだ。

 ラウナンもそのように予想することができる。

 実際、グルゼンはランシュと戦っているし、シエルマスの一員とも戦っている以上、疲れがあるのは事実だ。それでも、油断する気も、疲れが原因で戦えないと弱音を吐く気もない。

 ここは、戦場であることを理解しているからだ。

 (俺の釣りを読んだというわけか。さすが、裏の世界で活躍し、国の暗部を掌握しているだけあるな。だが、俺自身も甘くなるわけにはいかないなぁ~。)

と、グルゼンは心の中で思いながら、今度は隙を無くすのだった。

 グルゼンとしては、もうさっきのような隙というチャンスはないぞ、ということを示すために―…。

 つまり、ラウナンはさっき攻めておけば良かったということを、気持ちの中に抱かせるためのものである。これがグルゼンの次の狙いであるからだ。

 (………クッ!! さっき攻めておけば良かった。グルゼンめ―…。だけど、そう思わせるのが狙いだと分かっている。ふん、俺がお前のような表の世界しか知らない人間に負けるわけがない。俺は裏の世界を牛耳っているのだからなぁ~。)

と、ラウナンは心の中で思う。

 そこには、グルゼンより自分は強いという気持ち。

 グルゼンという存在が、軍人という表の世界でいくら活躍しようが、本当の実力などあったとしても、裏の世界で時に謀略、足の引っ張り合いを制して、その地位を確立したこともない存在なんて、一流の謀略や暗殺の前で無力であることをラウナンは、知っている。

 いや、そのように思う経験が今度も成功するという、根拠のない自信を抱かせている。

 ここに、ラウナンは、人の可能性、いや、人の完全性というものを無意識のうちに抱いてしまっているのだ。それが過ちであることに気づかずに―…。

 そして―…。

 (さあ、私の本気を見せるとしましょう。)

と、ラウナンは心の中で思うと、消えて移動し、グルゼンへ一気に近づくのだった。

 ガサッ!!

 そのわずかな音に、グルゼンは気づき、すぐに音のした方へと向きを変えるが、そこには誰もいなかった。

 実際は、さっきまで、ラウナンが草の茂みの中に隠れていたが、グルゼンの目で追えるものではなかった。

 天成獣の属性が生である以上、常人には見えない速さで移動することができる。

 これに対抗することができるのは、同じ天成獣の宿っている武器を扱う者であり、戦いの経験をしっかりと積んでいるものでないと難しいことだ。

 グルゼンは、どこかの場面で、ラウナンの動きはわかるようになるかもしれないであろうが、それでも、暗闇とグルゼンの持っている武器に宿っている天成獣の能力で透明になってしまっているので、グルゼンを見つけることは難しい。

 そうなってくると、感覚と勘に頼らないといけなくなる。

 (見えないか。ふう~、集中力の隙をつく。過剰な反応はラウナンの野郎を有利するだけだ。あいつは、確実に俺へと攻撃をしてくるはずだ。首や頭、胸の部分が一番狙われやすい。暗殺は一発で終わらせることを目的としているからな。)

と、グルゼンは心の中で、焦りを見せないように、冷静に考える。

 グルゼンだって、命を狙われていることは、ここ最近、特に酷いので、わかりきっている。自分が命を狙われる理由も―…。

 ゆえに、それに対処することは、昔からしてきた。

 だけど、今回の敵はかなりヤバいということだ。

 その予感がした時―…。

 (首を貰いました!!)

と、ラウナンは思いながら、短剣をグルゼンの近くにすぐに向かい、グルゼンの首に向かって振るのだった。

 この時、ラウナンは、グルゼンの首の中央まで斬れるぐらいまでを想定していた。

 だけど!!

 「!!!」

と、グルゼンはすぐに予感がしたのか、わずかに左側に自らの体をずらすのだった。

 それでも、グルゼンの首は斬られるのだった。

 「ガァ!!」

 (声が―…。クソッ!!! 喉を斬られたら、かなりヤバい!!!)

と、グルゼンは、焦りを見せるのだった。

 グルゼンとしては、喉を斬られている以上、早めに止血しないとヤバいが、今、戦っているのがラウナンであるため、兎に角早めにラウナンと戦いで決着をつけないといけない。

 そうしないと、グルゼンの方が自らの生を終わらせてしまう結果となる。

 そんなことを望みはしない。

 「やっと、焦った顔を見ることができましたよぉ~。グルゼン!! 貴様は、いつも油断した姿を見せず、常に、冷静沈着な表情をして、俺らをいつも出し抜こうとする。厄介な存在でしかありません。ミラング共和国軍を辞めるのならば、始末しておかないと―…。誰も、私の手の中から逃れることはできない。これは、この世の摂理―…、受け入れなさい。」

と、ラウナンは、長く言葉を言うと、消えるのだった。

 グルゼンとしては、声を出せない以上、ラウナンに言ってやる言葉を言うことができない。

 それでも、グルゼンが回復するのをラウナンが待ってくれるわけがないことを、はっきりと理解している。

 (ふう~。ここは―…。)

と、自らの覚悟を決めようとしていたグルゼンは、そこに、誰かが現れるのだった。

 一人ではなく、二人が―…。

 「へえ~、彼がミラング共和国の諜報および謀略機関シエルマスの現在の統領か。…私としては、グルゼンを殺してもらっては困るのだよ。俺の眼に敵わなかったクソが!!」

 そう―…。

 (ベルグ!!)

 そう、現れたのはベルグであった。

 そして、ベルグの横には―…。

 フードを被った人物がいるのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(47)~序章 アルデルダ領獲得戦(47)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


ついに、序章の盛り上がる場面に入って来ました。停戦協定、グルゼンとランシュのバトル、そして、グルゼンとラウナンのバトル。この最後の方がある意味、今後において重要だったり―…。

そして、最近の『水晶』と『ウィザーズ コンダクター』の執筆に関しては、自分で納得できなかったり、不調だなぁ~、と思えたりすることに気づくことが多いなぁ~、と感じたりします。これが、今の悩みかもしれません。文章の構成とか、書き方とか、上手くなりたいし、満足できるようにしたいと2023年3月は、心の中で前半は感じているのかな~、と思ってしまいます。

『水晶』のPV数は4万を超えたので、少しだけ気持ちは楽になっていますが―…。

PV数が増えますように―…。

最後に、次回の『水晶』の投稿日時は、2023年3月7日頃を予定しています。

では―…。

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