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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
391/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(45)~序章 アルデルダ領獲得戦(45)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ついに、ミラング共和国とリース王国との間で、停戦協定が結ばれるが、リース王国の騎士団の方では、多くの犠牲者を出すことになった。

 ランシュとラウナウが本陣に戻ると―…。

 「リーウォルゲ団長―…。」

と、ラウナウは近くにいた、リーウォルゲに心配そうな表情をして話かけるのだった。

 ラウナウとしては、リーウォルゲが今のような結果になったことを、後悔しているのだろう。

 というか、リース王国の騎士団に所属している以上、上からの命令は絶対であり、その上が騎士団の数を減らして、自らにとって都合が良い人物を騎士団の中に送ろうとしているのだ。

 裏切り行為でしかない。騎士団にとっては―…。

 リース王国の騎士団は、強くあることで、リース王国を守ってきており、王国に対する忠義が篤い者たちが多い。過去に反乱がなかったと言えば嘘になるが、そんなに多いわけではなく、二回、大きなのがあったが、そのうち一回は、その当時の王における悪政を潰すためであった。ゆえに、後に、その当時の騎士団の反乱の指導者は、リース王国の国民には英雄のように扱われていたりする。

 だからこそ、リース王国のために真面目に仕えているからこそ、今のラーンドル一派のやり方は許せるものではなかった。このような事態が続くようであれば、最悪の場合、反乱を起こさないといけなくなる。

 そのような事態にしたいとは思わない。

 それは、周辺諸国にとって、都合が良い展開でしかないのだから―…。リース王国の領土を支配するための―…。

 そして、ラウナウは、リーウォルゲが手塩をかけて育てた騎士たちの半分近くを失ったのだから、それもミラング共和国との戦争を利用して、リース王国のラーンドル一派が―…。

 リーウォルゲは、何となく犯人に関して、気づいているだろうが、証拠も確証もない。証拠を突きつけても無駄であるどころか、リーウォルゲを謀反を起こそうとしている人物であると、逆に、リーウォルゲを葬り去って、騎士団をラーンドル一派の息のかかった人物をトップに送って、騎士団をラーンドル一派にとっての軍団にしようとすることはわかりきっている。

 結局、そのようなことをしても、リース王国の軍事力が上昇するどころか、低下してしまうのだ。周辺諸国にとって都合が良い結果にしかならない。

 そのことを理解しているのか、ラーンドル一派の考えには呆れるしかない。

 そして、ラウナウは、いつものような言い方で声をかけることができなかった。

 それを見ていたランシュは、

 (先輩でも心配することはあるんだな。空気…読めたのか。)

と、心の中で思うのだった。

 ランシュとしては、ラウナウが空気を完全に読めないとは思えないが、それでも、これまでの経験からラウナウが人の気持ちを理解できるとは思えなかった。大袈裟で、寛大であるが、人の気持ちも分からずに声をかけてくるのだから―…。

 リーウォルゲは、ラウナウの声は聞こえており、少し考え、気持ちを落ち着けてから話し始める。

 「すまない。まさか、騎士団が暴走するとは―…。完全に俺の読み違いだった。少し一人にさせてくれ。」

と、ラウナウに向かって言うと、リーウォルゲはどこかへと行ってしまうのだった。

 そして、誰も、リーウォルゲの元へと向かうことができなかった。全員、やるべき仕事が多く、それに、こんなにも同じ騎士団の中の団員が命を落としてしまったのだから、ショックで、誰も周囲を考えられる余裕がなかった。

 だけど、これは、後に後悔することになる。


 一方、ミラング共和国の本陣では―…。

 そこには、さっきまで停戦交渉をしていたラウナンが戻ってきていた。

 さらには、ここには多くの指揮官が集まっていた。師団を率いられるほどの―…。

 だけど―…。

 「グルゼンがいない―…。」

 そう、ここには、グルゼンがいなかったのだ。

 そして、第四師団のナックルオーバー将軍はいるのであるが―…。

 「なぜ、グルゼン(あいつ)はいないんだ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」

と、ファルケンシュタイロは叫び出すのだった。

 ファルケンシュタイロとしては、グルゼンにも来て欲しかった。友達とか、親友とか、優秀な指揮官だとか、そんなものではない。

 (ここに呼び出して、今回の戦争で、第二師団を使って、リース王国の騎士団の軍を迎え撃たなかったことの責任を追及する予定だったのに!! 俺の追及から言い逃れできないと思ったからか!!! ざまあみろ、って言いてぇが、グルゼンの奴を捕まえて、辞められる前に処分しないとな!! グルゼンがミラング共和国の敵側につかれてしまっては困る。)

と、ファルケンシュタイロは心の中で言う。

 そう、ファルケンシュタイロとしては、ミラング共和国としても、グルゼンがミラング共和国軍を辞めてどこかに行かれるのは困ったことでしかない。だからこそ、ミラング共和国軍を辞める前に、始末しておかないといけないのだ。

 怒りながらも、冷静さを完全に失っていないのだ。ファルケンシュタイロは―…。

 だけど、周囲は、ファルケンシュタイロが怒り狂っているようにしか見えていないのだが―…。

 「怒りをぶちまけても今は―…。ラウナン、リース王国との結果を報告しろ。」

と、ファルケンシュタイロは言う。

 リース王国と停戦交渉をしてきたのは、ラウナンなのだから、結果を知っているのはラウナンのみだ。

 ファルケンシュタイロは、別に、停戦交渉が決裂しても問題はない。というか、決裂したのなら、リース王国を滅ぼすまで、戦うことができるのだから、万々歳だ。

 そして、ラウナンは言い始める。

 「ファルケンシュタイロ様、そして、師団長の皆さま。一人だけいないようですが、後で、私が伝えに行きましょう。」

 まだ、言い始めただけなのだが、辺りにいる師団長たちは、冷や汗でもかいているのではないかと思えるほどに、緊張するのである。

 ラウナンという存在は、軍隊にとっても、逆らえる存在ではないことを理解させられる。ラウナンは、シエルマスの統領であり、シュバリテよりも実質、恐ろしい存在であり、彼らの知っている噂によれば、ミラング共和国の実権は、ラウナンが握っているのではないか、と。

 現に、そうである以上、彼らの噂が嘘ではないということになる。それでも、ラウナンに対して、不満がないと言えば嘘になるし、彼の傲慢さは腹立たしいものであるし、感情が許したいとは思えないと、はっきりと認識できるぐらいだ。

 ラウナンは、そのことを感じてはいるが、結局、自分よりも強いわけではないと理解しているから、何も配慮することはないと、判断しているのだった。

 ラウナンは、少しだけ、間をあけ、続ける。

 「今回、私がリース王国との間、停戦交渉をおこないましたが、停戦交渉は成功いたしました。」

 そう、リース王国との停戦交渉は成功している。

 お互いに納得は完全ではないが、できる範囲の交渉はできているのだ。

 (チッ!!)

と、ファルケンシュタイロは心の中で思うが、それを表情に出すことはなかった。

 出したところで、ラウナンにとっては、痛くも痒くもない。

 「今回の停戦協定により、我が国は、リース王国の領土であったアルデルダ領を獲得し、通過税は廃止、商品税に関しては、減税という感じになります。以上です。これで、リース王国との戦争は終わり、戦勝記念を開催しないといけませんねぇ~。その前に、私は、グルゼンのところへと向かいましょう。」

と、ラウナンはすぐに消えるのだった。

 ラウナンが消えたとしても、周囲にはラウナンの率いるシエルマスの一員がいるので、ラウナンの悪口を言うことはできない。その悪口によって、場合によるが、消されるかもしれないのだから―…。それを恐れて―…。

 (やっと消えてくれたか!! だが、これで、しばらくの間、リース王国へと攻める口実を失った。他国との戦争ということになるのか。まあ、グルゼンが葬り去れば、リース王国以外は何とかなるはずだ。軍事力では、我々は周辺諸国よりも強いのだ。)

と、ファルケンシュタイロは心の中で思うのだった。

 ファルケンシュタイロとしては、ラウナンがどこかへと行ってくれた、助かったと思った。だって、ラウナンがいるのであれば、ろくに自分の我が儘を言うことはできないし、命を奪われそうな感じがして、恐怖が続き、精神的に疲弊してしまう。

 だけど、見張られている以上、緊張感が続くことに変わりはないが―…。それでも、ラウナンとシエルマスの一員のどちらが恐怖かと問われれば、ファルケンシュタイロは間違いなく、ラウナンと答えるだろう。ラウナンがシエルマスを統領として率いているのだから―…。

 そして、ラウナンはグルゼンの方へと向かって行ったので、ラウナンが確実にグルゼンを仕留めてくれると思ったのだ。ラウナンは実質上、ミラング共和国の実権を掌握しており、かつ、戦闘力も暗殺の面ではミラング共和国の中でも随一と言ってもおかしくない。だって、ラウナンは、自らの実力と謀略で、シエルマスのトップになった人物なのだから―…。

 ゆえに、戦闘力がいくら優れていて、シエルマスのほとんどの暗殺を返り討ちにできるグルゼンと言っても、ラウナンほどの暗殺に優れている者に不意を突かれたら、何も抵抗することができないのは確かだ。

 どんなに戦闘力が優れていようとも、人である以上、永遠に集中力を最大にさせていられることはできない。人という存在が完璧ではないし、さらに、人が想像するものに完全無欠なものなど有り得ないことなのだから―…。人は欠点を持っている生き物である以上、どんな優秀で最強とされる人物に隙ないということはない。これは分かりきっていることだ。

 だからこそ、グルゼンを暗殺することにラウナンが成功できると思ってしまっても、当然のことであろう。

 だけど、忘れてはいけない。

 ここには、失敗する要素が盛り込まれていないのだ。

 そう、グルゼンがラウナンを返り討ちにする可能性というものを―…。

 ゆえに、ラウナンがグルゼンの暗殺に成功することで、グルゼンが周辺諸国へと仕官するという危険性は存在しないことを―…。

 まあ、グルゼンは、周辺諸国に仕官するのではなく、ベルグの方へと向かうのであるが―…。

 ここに、人の考えというものは楽観的であるが、その中に、悲観的な要素がないと言えば嘘になるだろうが、完全にすべての可能性を抑えているとは思えない結果になる。これは、人が完全ではないからこそ、起こるし、逃れられるものではない。

 そして、ファルケンシュタイロは、ミラング共和国が周辺諸国の中でリース王国に次いで、強いということを認識している。ゆえに、リース王国以外の周辺諸国と戦ってもミラング共和国が勝利できると、確信することができる。絶対とは存在しないということを忘れて―…。


 一方、グルゼンのいる場所の近く。

 「ほ~う、今回の戦争は、停戦交渉が成立したのかぁ~。ミラング共和国のシエルマスのトップも馬鹿ではないということか。停戦交渉をしたのは、リース王国の王妃リーンウルネが王国の実権を掌握することを恐れたようだ。」

と、ベルグは言う。

 ベルグとしては、少し離れた場所からグルゼンをつけている。

 グルゼンも気づいているし、敢えて、無視している。

 ベルグとしても、グルゼンを暗殺するためにつけているわけではないし、それに、グルゼンにはこれから大事な報告をするという仕事があるのだから―…。

 そして、フードを被った人物がベルグの隣にいる。

 「ベルグ―…。このままグルゼンをつけるのは良いが、グルゼンに向けて殺気を放ちながら、つけているのがいるぜ。」

と、フードに被っている人物が言う。

 フードを被っている人物とて、アババほどではないが、こういう裏の仕事は得意な分野である。そして、ベルグの右腕と言ってもおかしくない。ベルグとは、長年の付き合いである。

 ベルグが、グルゼンを部下にしたい気持ちはわかってしまう。グルゼンの卓越した軍人としての能力をかっているのだ。そうすれば、もしも大国に攻められることがあったならば、軍勢をもって対抗することができる。今は、大人しく、ベルグの目指している実験を成功させるために、周辺諸国に気づかれるわけにはいかない。

 そして、フードを被っている人物は、グルゼンに向かっている人物にすぐに気づく。殺気を放っているのは僅かしか感じないが、それでも、その殺気を放っているのが強者であることを理解する。

 ベルグは、

 「そうだね、君の言う通りだよ。それに、殺気を放っているのはシエルマスの統領ラウナン=アルディエーレだねぇ~。俺に言わせれば、アババの足元にも及ばないと言ってはアババに失礼すぎるほどに、下の奴が、自らが最強だといきっていやがる。それでも、天成獣の宿っている武器を扱うようだねぇ~。さあ、どうなることやら―…。」

と、楽しそうな表情を見て言うのだった。

 まるで、自らの好奇心を満たすようにして―…。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(46)~序章 アルデルダ領獲得戦(46)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


では―…。

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