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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
386/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(40)~序章 アルデルダ領獲得戦(40)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ついに、ミラング共和国とリース王国の停戦交渉が始まるのだった。

 (第二の要求―…、リース王国へと攻めてくるな。これに関しても、要求としては鵜呑みにできません。永久的に侵略しないということは有り得ないことなのだから―…。ここに関しては、要求を飲んだフリをして問題にされることはないでしょう。だけど、あくまでもすぐに要求を飲まないこと―…。これは絶対。)

と。

 ラウナンの思考では、強気でいることは確定している。

 それでも、第二の要求の場合は、リース王国へ攻めてくるなということであり、一時的に約束をしても問題は生じない。仮に攻めたとしても、リース王国自体が弱体化しているのであれば、その約束を反故にすることは簡単にできる。

 国際関係というものは、道理も慣習も重要であるが、時に、このような弱肉強食のようなことも認められる場合が存在する。ゆえに、国家を上手く運営していくというのは、大変なことであり、何が正解かは時と場合によって、違ってしまうのである。

 だからこそ、自らの欲というものをどれだけ発揮すれば良いかということに関して、慎重にならなければならないし、いろんな想定を考えないといけない。客観性を高くもった方法で―…。

 そうしなければ、国家というのは、場合によっては簡単に滅びてしまうものなのだから―…。

 そして、ラウナンは、このアールトンからの要求も、飲まないことにするのだった。

 (第三の要求―…、リース王国に不都合なことをするな、そして、リース王国の指示には従え―…、ということでしょう。ここで、私ではなく、ファルケンシュタイロやシュバリテなら一発でブチ切れているところでしょう。まあ、この要求は、リース王国側にとって都合が良いようにするためのものであることは丸わかりです。リース王国側によるミラング共和国への内政干渉と言ったところでしょう。これは強気に反論できる材料ですね。)

 第三の要求を、ラウナンが受け入れるはずがない。

 なぜなら、これは、ラウナンも心の中で思っているように、この要求自体が、リース王国によるミラング共和国への内政干渉を許してしまうものでしかないからである。

 リース王国としては、いや、ラーンドル一派としては、ミラング共和国へと内政干渉をして、自分達にとって都合が良いようにしようと考えているのだろう。どんな国であったとしても、その国の主流派の意見で同意するものは全員であることはないし、むしろ、主流派を追い落としたいと思っている勢力も存在する。

 ゆえに、主流派と敵対している国と手を結ぶことだってあり得る。

 この場合、リース王国側と通じる議員がいるということだ。彼らを通じて、ミラング共和国へと次第に、介入していくのだ。司法、行政、立法、情報媒体、世論の実権を握って―…。自らが多数派であるかのように演出して―…。

 そのようなことを、シエルマスのトップであるラウナンが許すわけがない。ここで、はい、いいですよ、何ていう言質を取られる気はない。どんなに交渉の経験がないからと言って、そのようなことに気づかないわけがない。ラウナンも裏のことは知っているので、決して、人は善人だけ構成されているとは思っていない。

 むしろ、人という生き物は、欲深く、自らが破滅するかもしれない可能性の選択を自らの欲を満たすために平然と選択するほど愚かなのだ。ラウナンも気づいていることであるが、それでも、ラウナンもまたこのような欲深い人間であり、同じようなミスをする人間なのだ。

 そして、同時に、このことに関しては、反論という形ができると理解することもできる。逆に、ミラング共和国からリース王国への内政干渉をするぞ、ということを、条件に出すことができる。なぜなら、これは、リース王国側が言ったのだから、ミラング共和国側が言っても声を大にして文句を言うことはできない。言ったとしてもラウナンは反論可能だからだ。

 (第四の要求は、ミラング共和国側の非を認めるのは、以上の三つの要求よりも受け入れやすいが、それでも、簡単に受け入れてはいけないし、受け入れた場合、ラーンドル一派、リース王国側は、それを口実にさらなる要求をしてくるのはわかりきったことだ。だけど、互いに非を認めるもののみの場合という約束が取り付けることができたのであれば、受け入れることもできよう。約束を破れば、他国に知らしめれば良いだけのこと―…。)

 第四の要求は、さっきまで見て来た三つの要求よりは、時と場合によっては、受け入れることが可能なものである。

 理由は、リース王国側が、ミラング共和国に非があったことをミラング共和国が認めた後に謝罪した場合、それ以上、要求をしない場合には受け入れることも吝かではない。というか、謝って終わるのであれば、簡単なことだ。一人の頭を下げる分だけで済むのだから―…。

 それに、ミラング共和国に住んでいる人々には、このような情報を流せばよい。ミラング共和国のトップは、相手に頭を下げることができるほどの人格者であるが、リース王国側は相手に対して悪いことをしても頭を下げることができないほど倫理観も道徳観もないような者が国の実権を握っている愚かな国であると―…。

 まあ、ラウナンは、シエルマスのトップであり、謀略や諜報に長けていることから、世論など簡単に操作できる。そのように思っている。国民など、情報弱者のくせに、一端(いっぱし)の情報を得て、理性的な判断および、合理的な思考ができていると思っているのだから―…。現実、誰も完全にはできていないのであるが―…。シエルマスだろうが、ラウナンだろうが、ミラング共和国の国民であろうが―…。

 ゆえに、自らが本当に正しいのかを問い、完全に正しくはなれないけれども、そうなろうとすることが大切なのに―…。

 さて、話を戻すと、第四の要求に関しては、ラーンドル一派はミラング共和国側が非を認めて、謝罪すれば、ミラング共和国を侮ったり、下に見て、あることないことを風潮してくるだろうし、それをきっかけに、ミラング共和国に対して、理不尽な要求をしてくるのは、目に見えている。

 この場合、第四の要求を受け入れるべきではない。

 まあ、アールトンもすべての要求が受け入れられるとは思っていないので、ただ強気に出たことをアピールしているだけなのだが―…。

 (第五の要求は、この交渉を担当している者の欲だな。だが、私ならもっと賢いことを言ったはずだ。言葉にすれば、ミラング共和国側が自らで決められる関税を撤廃し、リース王国側がすべてを決められるようにする、とね。さらに、リース王国側の関税自主権をミラング共和国側は認める、とね。交渉には慣れているようだが、要求は強気のためのアピールであるということがバレバレになってしまっている。やるのなら、完璧にやるべきだな。この要求を受け入れることは、勿論できない。増税が今回の戦争の原因になったのだから、それを受け入れることは確実にできない。譲れない一線ですね。)

 第五の要求は、分かりやすいぐらいにリース王国側にとって有利なものであるのだ。その要求をラウナンが受け入れるはずがない。今回の戦争の原因になっているのだから―…。

 戦争を望んでいる対外強硬派であるが、それでも、勝てない戦争を易々とする気はない。戦争に勝たなければ、自らの権力の基盤を維持することはできないのだから―…。目に見える勝利、それこそが対外強硬派を基盤を揺るぎないものにしていくのだ。

 そして、しばらくの間、リース王国とは、違う場所に目を向けないといけない。同じ国と戦争するにも、理由というものが必要なのだが、同時に、リース王国側はラーンドル一派に実権を握ってもらい続けないと困るのだ。ラーンドル一派が暴走して、リース王国の国民との間に溝ができていくのが、望ましいのだから―…。

 そう、リーンウルネがリース王国の実権を握るのは、最も危険なことでしかない。ミラング共和国にとって―…。

 さらに、ラウナンはこの要求で、アールトンの意図を理解するのだった。意図を理解するのに、誰もが理解できる統一として抱くべき理由などいらないのだ。要は、気づけば良く、答えが合っていれば良いのだから―…。だけど、原因を探ることは今後のために重要であることに違いはない。だからこそ、後でこの原因を探っておく必要はある。後に良い選択をするために―…。

 ラウナンは、アールトンの意図を理解したのは、要求があまりにも馬鹿正直すぎたのだ。ラウナンも心の中で思っていることだが、関税の撤廃というような婉曲の表現を使ったり、関税自主権などの言葉で、すぐには自らの意図に気づかれないようにしないといけなかった。それをしなかったせいで、ラウナンは気づいた。アールトンが強気の要求をして、アピールしていることを―…。勿論、アピールは、リース王国側に対してであるが―…。

 逆に、それに付け込んで、ミラング共和国側の関税自主権と同時に、リース王国側における関税の撤廃を要求しても良い。そのようにラウナンも考えることができる。

 (第六の要求は、人質ですね。それも、リース王国側に有利な―…。要は、ミラング共和国の次期総統を先にミラング共和国の議会で選ばせ、それをリース王国側の人質とするわけだ。その間、リース王国にとって都合の良い人間にすれば良い。洗脳なんて簡単だ。さらに、金と利権を与え続ければ良いし、後に、その次期総統が王になった時、リース王国にとって都合が良い人物を次期総統に選出させるようにすれば良い。つまり、ミラング共和国の政治的実権をリース王国側が実質上、握るというわけか。この人質は、返って、危険なことでしかない。………これは確実に断らないといけないことですね。逆に、交換人質という手も使うことは可能―…。最悪の場合は―…。)

 第六の要求を受け入れる気持ちは、ラウナンにない。ミラング共和国から次期総統になるものを今の総統の時代に決め、リース王国に派遣しろと言っているのだ。

 この要求は、一件、人質をとって、ミラング共和国がリース王国へと攻めないようにしているが、それだけではなく、一方的であることをも利用したものである。さらに、次期総統をリース王国にとって都合の良い人物にしようとしているのも確かだ。

 これは、リース王国側からしたら、長期間かけて、ミラング共和国をリース王国、ラーンドル一派にとって都合が良いようにしているだけに過ぎない。次期総統が総統になった時、、その総統に圧力をかけて、次期総統候補をリース王国にとって都合が良い者を選択するように言うことができるのだから―…。そして、勿論、リース王国にとって都合が良い者には、それなりの利権を与え、懐柔していくのだ。さらに、その利権を得ている者たちの弱みを握って―…。飴と鞭―…。そして、彼らの心を支配するのだ。

 こうすれば、彼らがリース王国を裏切ることはほとんどなくなる。むしろ、リース王国のために、真摯に働いてくれるだろう。利権を失うことと、裏切った時の代償を恐れて―…。

 要は、ミラング共和国は、リース王国の属国という扱いにされるというわけであり、植民地のような扱いを受けることも避けられない。ミラング共和国に住んでいる国民の多くは―…。

 それを、ラウナンは避けたい。

 というか、ラウナンはこの地域で一番強い国に、ミラング共和国をしたいのだから、この要求を受け入れる謂れはない。絶対に反対する。

 そして、ここで、ミラング共和国の民主主義という根底は、リース王国の都合のために変容することが発生するのだ。腐敗? 繁栄? その答えは未来のある時点においてわかることであろう。だけど、このことは実現されることはない。この時のラウナンには気づかないだろうし、多くの者は理解できないだろう。自らの属している国が滅びると思うのは、よっぽどにその政治が悪いか、対外的な強国が攻めてくることが予想されている時、もしくは両方が重なっている時であろう。

 この根底の変容は、民主主義による総統の選出によることである。

 そして、ラウナンは最後の第七の要求に対して考え始める。

 (第七の要求は、最後に、普通に最初に聞けば馬鹿な要求を入れてきましたか。私が第一から第六の要求が理不尽であればこそ、そこに驚いて、この第七の要求を受け入れるという感じたのでしょう。上から目線の要求だ。本当に頭にきますねぇ~。だけど、そのことを理解したとしたうえで、冷静になれば良いだけのことだ。この交渉担当官、交渉のことを知っているねぇ~。ここから、私の妥協ラインを探っていくということですか。)

 第七の要求を、詳しく見る必要はないだろう。

 それでも、少しだけ、ある一点に関してみていくと、第一から第六の要求を理不尽なものにして、最後の部分を見落とさせるということだ。そう、この第七の要求を受け入れると、自動的に第一から第六の要求を否定したとしても、第七の要求を理由にできてしまうのだ。

 不義理を働いたのは、ミラング共和国側という感じで―…。

 そのことに、ラウナンはすぐに気づくことができた。というか、相手の要求というものは、どんな頭にくるものであったとしても、最後まで聞くべきである。こういう落とし穴があるのかもしれないのだから―…。

 そして、ラウナンは冷静になり、

 (さて、こちらの要求も言いますか。)

と、心の中で、アールトンへの要求を考え、言い始めるのだった。

番外編 ミラング共和国滅亡物語(41)~序章 アルデルダ領獲得戦(41)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の投稿日は、2023年2月28日頃を予定しています。

この間に、ストックを増やしていきます。

では―…。

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