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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
382/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(36)~序章 アルデルダ領獲得戦(36)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、番外編で、ランシュ、ヒルバス、ラウナウ、ニナエルマの前にミラング共和国軍第四師団の騎馬部隊の一部が攻めてきており、ヒルバスとランシュの活躍で、全滅させるのであるが―…。

 一つの死体が付け加わる。

 その兵士は一体何者なのか?

 そう、その兵士は、ランシュ、ヒルバス、ラウナウ、ニナエルマに見つかった不幸な存在であることは確かだ。

 そして、今、ここはランシュたちがいる場所であり、かつ、ミラング共和国軍の第四師団の一部の兵士の死体が大量にある。騎馬兵と馬の―…。

 それをしたのは、ランシュとヒルバスであり、先頭を走っていた者を除きランシュがなしたものである。

 なぜ、彼はランシュに殺されたのか?

 それは―…。

 (俺が運んだ兵士は、隙を突いて、ヒルバスを殺そうとするが、返って、反撃にあい、その後、兵士は痙攣(けいれん)を起こし、その後、ピタっと動きを止め、倒れるのだった。)

と、ランシュが心の中で思って、言葉にするのだった。

 決して、口には出さなかったが―…。

 そして、ヒルバスは、望んで、この兵士を殺そうとしたわけではない。

 なぜなら、ヒルバスは、この兵士を即座に殺すよりも、情報を引き出した方が得なのではないかという考えていたからである。その後、殺して処分するかは、兵士の態度によるところが多いけど―…。

 だけど、ここでは、不思議としか言えないのだ。

 (痙攣を起こして―…。何かこの兵士には裏があります。)

と、ヒルバスは心の中で思うのだった。

 だって、普通の兵士が痙攣を起こして倒れて、そのまま帰らぬ人になるとは到底考えずらい。持病でもあったのだろうか? 急性の類なのだろうか?

 そう思うのはヒルバスだけでなく、ニナエルマもその可能性が高い。

 そして、ニナエルマは慎重を期して、ヒルバスを襲おうとして、痙攣を起こし、倒れた兵士の体を調べるのだった。

 (………………体に目立った損傷、何か物で斬られたり、殴打されたような痕跡はない。後、こいつが裏の人間、ミラング共和国軍ならシエルマスか―…。なら、自殺する可能性として考えられるのは、毒物か―…。)

と、ニナエルマは心の中で思いながら、死体の口を開け、なかを観察する。

 (そういうことか。)

 理解するのだった、死因を―…。

 そして、ニナエルマはラウナウの方へと向かって行く。

 「結局、情報は手に入らずじまいか。」

と、ラウナウは言う。

 ラウナウは、ニナエルマが何か情報を手に入れたのではないかと思い。

 そう、こういうのは、ニナエルマの方が細かいところに気づき、そこから推測してくれるものだと思い―…。

 「そうですね。とにかくどこかで本部と合流しないといけないでしょうが―…、本部の方が襲撃されて、占拠されているかもしれませんし―…。」

と、ニナエルマは答える。

 ニナエルマとしては、情報が手に入らなかったのは、事実であるが、それは詳しいことまでであり、少しはわかっている。

 そして、これからどうすれば良いはわからない。

 だけど、やることは決まっている。

 (俺たちもどうすればいいかはわからないが、ただこれだけはわかっている。目の前に現れるミラング共和国軍を倒しておく必要はあるし、一人を生かして、どうしてミラング共和国軍がいるのかという理由を吐かせないといけない。)

と、ランシュが心の中で思っているようなことを―…。

 ランシュが思っていることから、ヒルバスも、ラウナウも、ニナエルマも思っている。情報は戦場においても武器になることが大きい。諸刃の剣という一面をもっているのであるが―…。

 そして、ニナエルマは手に入れられなかったということに対して、だけど、重要な情報も手に入っている。毒による自殺と同時に―…。

 「あの兵士の遺体からは、ミラング共和国軍の諜報部隊を示す、刻印が見つかりました。」

 そう、ニナエルマは、口の中にある歯の一本にミラング共和国軍の諜報および謀略部隊シエルマスの紋章が―…。

 それは、口を開けなければわからないものであり、かつ、その歯も良く見ないとわからないものである。要は、一本の奥歯を抜歯した上で、人工的な歯を作っていることである。この技術に関しては、ミラング共和国の一部にしかないものであり、その技術自体もマイナーなもので、ほとんど知られていない。知っているのは、勿論、シエルマスの関係者であるが―…。抜歯の技術ではなく、人工的な歯を作る技術であるが―…。

 まあ、別の大陸では、このような技術は、数百年前にすで確立されており、誰もが受けられるほどのものにはなっているが―…。そのための機械と麻酔も用意されている。ただし、麻酔がなぜ効くのかはわかっていないのだが―…。

 ニナエルマの今の言葉に、ラウナウは驚くのだった。驚きしかないだろう。

 そして、ラウナウも言うのだった。

 「まさか、シエルマスか!!! なら、いざってときに、毒による自殺を考えてもおかしくはないか。そして、シエルマスから情報を得るのは難しい。あの部隊は、リース王国の騎士団の方でもほとんど情報が掴めていない。」

 シエルマス、ミラング共和国の諜報および謀略部隊であることはわかっている。その現状がどうなっているのか、どういう存在なのかはほとんどわかっていない。

 その原因は、情報を漏らさないようにしていることと、毒による自殺というように、ピンチになって逃げられない、捕まるような場合には相手に情報を渡さないために、その歯の押して、毒を出して―…。解剖学もあまり発達していないし、死者の記憶を再生することができる能力者がいないということだ。ゆえに、情報を漏らさないというための方法としてはかなり利に適っている。だけど、人命軽視であるということは確かとしか言いようがない。

 そういう意味で、シエルマスという組織はわかっていても、中がどうなっているのかわからないのだ。

 まあ、一部には、少しだけど、知られているのだ。

 シエルマスが完全に情報を統制することはできやしない。どんな不都合な事実を知った者たちをこの世から消していったとしても―…。

 「そうですね―…。う~ん。」

と、ニナエルマは考え始める。

 ニナエルマとしては、今までに得た情報からシエルマスの情報と、シエルマスが何をしようとしているのかを考えるのだった。

 実際は、このシエルマスは第四師団の監視であり、逃げるようなことがあれば、そうしようとした者を殺すことが目的である。

 要は、その目的に気づいたとしても、大したことはない、という感じである。

 むしろ、取り逃がさなかった方が正しいし、処分したことも正解としか言いようがない。

 なぜなら、このシエルマスの一員である者が生き残り、逃げおおせることがあったならば、ランシュ、ヒルバスの情報が漏れるのは確かなことだし、統領のラウナンが確実に二人を消そうとするからだ。そういう意味では、ランシュとヒルバスはラッキーと言える。

 そして、ニナエルマが思考中、すぐに、ランシュとヒルバスは辺りに敵がいないか見張り始める。警戒を緩める場所ではないからだ。どこに敵が潜んでいるのかわかったものではない。

 (一応、周囲には敵っぽいというか、人がいるような感じはしない。だけど、油断することはできない。気配を消すような人物もいると教えられたことがある。こういうのは、生死に関わるので、実感というものがなくても、しっかりと聞き、覚えている。)

と、ランシュは心の中で思う。

 ランシュとしても、自らの命を守るために必要なことはしっかりと騎士としての座学でちゃんと学んでいる。その方法を実践に近い形式でも学んでいる。それが重要であることを認識している。

 それでも、戦争は初めてである以上、見落とす可能性を否定することができないので、さらに、警戒を強める。シエルマスという諜報および謀略部隊が関わっている以上―…。そういう者たちは、正々堂々とか正攻法というものをとってくるはずはなく、相手の隙というものを狙ってくるのだから―…。油断ならない。

 そういうことがランシュの警戒の度合いを高めるのだった。

 そして、ヒルバスも警戒の度合いをあげる。

 一方、ラウナウは、

 「シエルマスとなると―…、あいつらの中には完全に気配を消すことができるのもいるという噂があるぐらいだ。くぅ~、本当、面倒なことになったな。」

と、言う。

 その時!!!

 「誰か来ます。」

と、ランシュが言う。

 ランシュは、何かが近づいてくるのを感じた。

 そう、近づいてくる者の気配を感じたのだ。

 そして、ランシュが言うと、ラウナウ、ニナエルマ、ヒルバスが一気に警戒の度数を上げ、いつでも戦うことができる準備をするのだった。

 そう、一瞬のうちに―…。

 そして、一人の騎士が近づいてくるのだった。

 その騎士の姿が明るみになる。

 「フォルクス副騎士団長。」

と、俺は言うのだった。

 警戒を解除することはできないが、それでも、警戒の度合いを落とすことはできる。油断することは駄目だが―…。

 「ランシュか―…、それと、ヒルバス、ラウナウ、ニナエルマいるな。重要な話がある。ここを移動しながらしよう。」

と、ランシュに気づいたフォルクスは、ヒルバス、ラウナウ、ニナエルマにも気づくのだった。

 そして、偽物の可能性もあるので、警戒を完全に解くことはしなかった。

 それを理解しているからこそ、警戒を解除してくれとフォルクスは言わなかった。当たり前のことだから―…。

 なぜ、フォルクスがここにいるのか?

 その理由は、移動しながらの会話でわかることになる。

 四人と、フォルクスは移動を開始する。

 移動をしながら、フォルクス副団長が話し始めるのだった。

 「今回のミラング共和国軍の侵攻の理由は、アルデルダ領の外国に対する関税を増税することが原因で、それを怒ったミラング共和国が軍を率いてアルデルダ領に侵入したというものだ。しばらくの間は、ミラング共和国軍もアルデルダ領での領兵との戦いで、騎士の方に回せる兵力はなかった。昨日になって、アルデルダ領のエルゲルダが突然の降伏を宣言。そして、すぐその日の夜に、うちの騎士団の団長の命令を破った騎士がミラング共和国軍を強襲して、その報復で、今、領境にいる我々騎士団の軍が攻められることになった。それで、何とか応戦しているが、不利な状況には変わらない。撤退も視野に入れている。」

と、どういう状況か説明していく。

 そして、すでに、現実世界における午前零時を回っており、すでに、リース王国の騎士によるミラング共和国第四師団への夜襲は昨日のことになっている。

 リーウォルゲは、フォルクスを他のリース王国の騎士団の騎士を本陣へと集めるために、今、歩き回っているのだ。なぜか?

 リーウォルゲに次いで、重要な役職であり、実力があるとわかっているからだ。このように一人で伝令させる場合、今回のことから考えると、フォルクス以外にいないのだ。

 「フォルクス副団長、つまり、我々騎士団から戦死者が出ているですか?」

と、ニナエルマは質問する。

 そう、ニナエルマが考えているのは、奇襲したことにより騎士の側に戦死者が出ているということだ。そして、撤退も視野に入れることは相当の数であるということだ。

 そして、リース王国およびこの周辺地域におけるこの時代の全滅の判断基準は、全体の三割前後の戦死者を出すことである。これがいつ決められたのかはわからないが、それでも、こういうことになっているのだから、という慣習として、軍隊に受け入れられていたりする。

 現在、リース王国の騎士団における騎士の今回のミラング共和国との戦争での死者は、騎士として従軍した全体の二割である。

 要は、後、一割が戦死するようなことがあると、全滅という基準を満たしてしまうというわけだ。

 そして、ニナエルマの質問を聞いて、フォルクスは苦虫を噛みしめるような感じで答える。

 「そうだ。」

 答えはこれしかない。

 悔しくないわけがない。

 もし、自分がこのような愚かな行動を止めることができれば、どれだけの騎士の命を戦死という運命から救い出すことができたのだろうか。

 過去にああだこうだと言っても、過去の出来事を変えることは人という存在にはできやしない。過去へ行くことができないのだから―…。

 ゆえに、過去のことを反省して、未来に対して、近い状態になった場合に、ちゃんと対処できる方法を編み出しておく必要があるのだ。それが過去の出来事を無駄にしないということなのかもしれない。

 だけど、悔しさとは違う感情を抱く者がいた。

 「マジかよ。どうなっていやがる。つ~か、騎士団長の命令を無視して、領内に入った挙句、反撃を喰らうなんて―…。もう少し慎重に事を進めろ。」

 (死んでしまっては意味がないだろうに―…。)

と、ラウナウは怒りを露わにする。

 そのラウナウの表情を見たランシュは、余裕のない表情をするのを見たことないので、珍しく思うのだった。

 (これは、先輩かなり怒っているな。絶対に!!)

と、ランシュは心の中で思うのだった。

 そして、ヒルバスは、

 (先輩が―…、ここまで怒りを露わにするなんて―…。攻めた騎士はふざけるな、って言ってやりたいですね。だけど、死んでしまっては、意味がない。)

と、心の中で思うのだった。

 ヒルバスとしては、怒りの感情もあるが、死んでしまっては、この世で何も挽回するチャンスもなくなるだろうに、と哀れに思うのだった。

 そして、フォルクスは、言う。

 これを言わなければいけないのだから―…。

 「いくら、起こってしまったことを批判しても、今は意味がない。それに今は、事態に対処しないといけない。俺以外の天成獣の宿っている武器を扱っている者たちが応戦して、何とか凌いでいるのが現状だ。そして、俺らの場所には、ランシュとヒルバスがいる。二人とも本陣に着いたからすぐにでも戦ってもらう。わかったな。」

と。

 今は、原因を探ることも大事だが、ミラング共和国軍が攻めてくる可能性が高いので、それに対処しなければならない。相手が、リース王国の騎士団の都合など考えてくれるわけがない。

 だからこそ、一番先に何をしなければならないということを見落としてはいけないのだ。

 そして、ヒルバスもランシュも、ラウナウも、ニナエルマも、覚悟していた。

 戦うことを―…。騎士団が陣を張っている場所で―…。

 (やってやるさ。)

と、ランシュは、心の中で思い、自らがやるべきことを決意するのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(37)~序章 アルデルダ領獲得戦(37)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


4年目に突入した『水晶』ですが、長々とした番外編に完全に捕まってしまっています。序章をまだ、2023年2月15日の段階でも執筆中という状態です。それでも、序章に関しては、そろそろ区切りがつきそうな感じはしています。序章に、投稿分50回前後もあるなんて―…。どうしてこうなった。

この番外編が、2023年中に終わるか、すでに雲行きも怪しくなっているなか、『ウィザーズ コンダクター』も第10部を執筆し終えるのもかなり難しい状況となっています。『ウィザーズ コンダクター』は週四回分を仕上げることができているし、執筆が進む時は、五回とか、六回とかあるので、まだ、可能性は高いと思いますが―…。

一方、『この異世界に救済を』に関しては、プロローグは確実に2023年中に仕上がると思います。というか、プロローグそろそろ重要な展開をやって、完成という感じなので―…。

さて、話を戻して、『水晶』、2023年中に番外編を仕上げることができなかったらごめんなさい。リースの章が終わらなかった2021年の時のような展開にならないように、頑張ります。

そして、PV数と評価、ブックマークが増えますように―…。

では―…。

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