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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
378/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(32)~序章 アルデルダ領獲得戦(32)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、リース王国側は、王国側の指令という名のアールトンの騎士団を弱らせるための作戦が実行に移され、指令を受けた騎士はミラング共和国軍第四師団を攻めるのだった。一方、ミラング共和国軍第四師団は、第二師団がリース王国の騎士団と積極的に対峙するとされていたので、混乱するのだった。

だが、それでも、数の差は圧倒的であった。

 一時間後。

 第四師団で激戦となっていた場所。

 そこらには、リース王国の騎士の遺体がいくつもあった。

 それに加え、騎士以上に第四師団の遺体も存在し、第四師団が被った被害がかなりのものであることが理解できるであろう。

 数で数えるとしたら、正確にするのであれば、それなりの時間がかかるだろうということは見た目からわかる。

 目算では、数百という感じであろうか。

 「リース王国の騎士ども、散々の俺たちの仲間を殺しやがって―…。」

 「まあ、こっちは大きな痛手だ。次は、奴らのことを潰してやる!!」

 「卑怯はリース王国の専売特許だ。あいつらは、このような奇襲をしなければ、俺らには勝てないんだよ。」

 「仲間の恨み、晴らしてやる~。」

 「許すな、リース王国!!」

 ここにいるミラング共和国の兵士たちは、リース王国の騎士を恨んでいる。

 ともに、この遠征の中で食事をした戦友とも言うべき友を、今回のリース王国の騎士による奇襲攻撃によって殺されたのだ。無惨にも―…。

 この兵士たちが、リース王国の騎士に勝つことは単体では不可能としか言いようがない。なぜなら、彼らは、兵士としての特訓をそれなりに受けているが、騎士ほどに徹底的なものではないし、ほとんどが兵士であるが、農作業もおこなう者たちなのだ。

 ミラング共和国の兵士は、特に一般の下級兵士は農閑期の時期に兵士としての訓練を受けるのであり、この下級兵士は農家の次男、三男などの長男以外の者たちが多い。長男は、家の跡継ぎである以上、戦場に出して、死なれるわけにはいかない。次男以下に関しては、跡継ぎではないし、土地の分割できるほど広い農地を持っていないのがほとんどなので、農閑期に兵士として軍に所属させた方が、農家の食糧事情にとっても良いというわけである。もしかすれば、軍の中で出世して、家に対して、仕送りをしてくれるかもしれないという計算を働かせて―…。

 まあ、現実は、そのように軍の中で出世するのは、ほんの一握りであり、兵士としての実力、上官から気に入られることがなければ、ほとんど不可能であるが―…。まあ、奇跡みたいな例が、グルゼンであろうが―…。

 まあ、グルゼンの率いる部隊には、農家の次男、三男以下も多いが、絶対多数ではなく、役人の子ども、議員の子どももいたりする。そういう役人や議員の子どもでも、軍人として優れていない馬鹿はほぼいない。グルゼンの軍の中では、馬鹿というか、愚か者はほとんど生き残ることができないのだから―…。

 さて、話を戻すと、このような兵士たちにとって、折角、同じ釜の飯を食ってきた仲間が死んだのだ。悔しさがないと言えば、嘘になる。むしろ、復讐してやりたいと思ってしまうのだ。要は、圧倒的な力で、絶対に敵わないと思わせるほどの差というものが、ここで戦った者たちにリース王国の騎士は与えることができなかった。

 よりリース王国への恨みを増したという結果が残しただけなのだ。

 まあ、リース王国の騎士の処分をしているだけに過ぎないのだが、ラーンドル一派にとっては―…。まさに、ラーンドル一派の手の平で踊らされていることに気づかずに―…。いや、気づくはずもないだろう、そういう想像も、情報も持っていないのだから―…。情報とは、時に嘘というものが多分にあるが、それでも、それを正確に判断することができる能力をもった上で、しっかりと情報を持っておかないといけないのだ。自らの破滅という未来を回避するためには―…。

 そして、軍というものは、一概にすべてにおいて当てはまることはないのだが、共に兵士たちが一緒に生活している以上、連帯意識というものを生み、それが、軍隊としての一致した行動およびそのような行動が戦闘の面では一緒の動きによって、相手に威圧を与えることができるのだ。同じ意見という同じ行動をする者が多くいるということは―…。時に数は武器となる。

 その連帯意識というものは、時に、同調圧力を生むことがある。一つの意見、全員同じ意見でないといけないという感じにしてしまう諸刃の剣がある。時に、これは、一つの目的に向かって、確実に進めさせることができるが、同時に、そのせいで、破滅へと一直線に進むことも可能なのだ。このことを忘れてはいけない。

 このミラング共和国の兵士たちは、そのことに気づくことはないだろう。農家として必要な技術や考え、経験というものはあるが、それ以外に関しては、ほとんどないと言ってもよい。だけど、彼らを馬鹿にするのはお門違いと言ったものだ。大事なのは、それを知る機会も捉えるための能力を持ち合わせる機会がなかったということだ。

 そして、ミラング共和国の第四師団の全員がこのようにリース王国の騎士へと恨みを募らせていったわけではない。

 「…………………うっ…………………………。」

 ここに一人の兵士が、体を震わせているのだ。

 なぜ、彼は―…。

 (殺された、あんなに簡単に斬られるなんて!! こんなはずじゃないのに―…。)

と、心の中で恐怖を抱く。

 それは、さっきのリース王国の騎士たちが攻めてきた時、隣の共に戦ってきた兵士がリース王国の騎士によって斬り殺されたのだ。その剣での斬る速度が、この人物の目から見えるものではなく、さらに、一瞬、何が起こったのが理解できずに、殺されたのを見たのだ。恐怖以外の何ものでもない。

 ゆえに、一人の兵士が想像した英雄物語、いや、勇敢で誰にも負けず、あっさりと敵が殺されていく物語という名の妄想が存在しないことを知ったため、一人の兵士の戦争観はあっという間に崩れ去り、この場所には二度といたくないと思うのだった。

 それでも、ここから逃げ出すことはできない。逃げ出した者は、翌日に殺されて、その遺体が兵士たちが必ず通る場所に晒されているのだから―…。それを知っているからこそ、心は壊れていく。殺人鬼、戦闘狂? 違う。恐怖で思考を停止し、言われた通りに何でも実行する都合の良い玩具になるだけだ。ミラング共和国にとって―…。

 そして、このリース王国の騎士による奇襲攻撃は結果として、派遣された騎士の二割はこの場で殺されてしまったであろう。

 残りの逃げたリース王国の騎士たちは、すでに、別の恨みを抱いていたが、それでも、これに対処することはできなかった。怪我を負った者もおり、戦闘できる者の数は減ることになろう。

 一方のミラング共和国の第四師団は、あちこちで―…。

 「おい、お前ら!! 本陣からの命令だ。今すぐ、集合し、リース王国の騎士団がいる場所へと進撃を開始する。」

と、伝令の者たちが第四師団の命令を伝えるのだった。

 それを聞いた者たちの多くは、今、受けた恨みが強く、士気が上昇していた。これ以上ないぐらいに―…。

 殺されていった仲間の敵をとることができるんだ。

 その思いは、彼らを、復讐の鬼へと変えていく。

 「聞いたか!!」

 「ああ。」

 こうして、彼らは、集合場所に集まるのだった。


 同時刻。

 夜になって三千の時刻が過ぎた。

 ミラング共和国軍の第一師団と第三師団は、リース王国の右翼に奇襲を仕掛けるのだった。

 「いけえええええええええええええええええええええええええええええええええええ、リースの馬鹿野郎どもに我々の苦しみを分からせてやれ―――――――――――――――――――――――――――!!!」

と、第一師団のいる場所から声がする。

 これは、第一師団のトップであるフォーフォー=イフォル将軍の近くにいる側用人が言い始める。彼は、このようにフォーフォー=イファル将軍の意向を全員に伝えることができるほどに、声が透き通っており、多くの人々に響くのだ。

 フォーフォー=イファル将軍は、軍人としても指揮官としても普通の人であり、なぜ、出世しているのか分からない人物であり、何となくの強運で出世したような人物である。だけど、ファルケンシュタイロのような権力欲というものは強い方ではなく、部下思いなところもあり、変なことはしてこない、命令に忠実な人である。

 ゆえに、ファルケンシュタイロの軍隊より、変な、駄目な人間が来ることは少ないが、それでも、いないわけではないので、彼らが戦場で足を引っ張ることがあり、そこまで戦功を持っているわけではなかった。

 対外強硬派からも人畜無害という評価が下されており、殺されることもなく、生き残っているのだ。命令に忠実というだけで―…。

 『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

と、兵士たちは叫び声を上げながら攻めていくのだった。

 第三師団も同じであった。

 この二つの師団によって攻められたリース王国軍は、

 「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!」

と、叫び声を上げる者、

 「とにかく、大勢を立て直せ!!!」

と、上げる、現場の指揮を担当する者。

 これらの声が木霊するが、それでも、リース王国の軍隊が大勢を立て直すのはかなり難しい状態である。

 それでも、今回の遠征で、ミラング共和国軍は、アルデルダ領の戦いの中で、兵士の一割強がすでに戦闘不能もしくは、戦死という形で消費してしまっている。

 そして、リース王国軍は、この戦争で戦闘に至っていなかったので、軍隊の兵士における戦死者数および負傷者はない。だけど、それ以外の被害が少しだけあるので、確実に被害なしと判断することはできない。

 だけど、ミラング共和国軍は奇襲することで、数で上回っているリース王国軍の兵士たちに上手く対抗している。ここに騎士がいれば、少しだけ違っていただろうが、今回は騎士の数を減らすということも入っているし、かつ、騎士がいるのはリース王国軍の左翼側であり、かなりの距離がある。

 アルデルダ領をミラング共和国側に割譲することはするが、それでも、これ以上の侵入を許す気はない。

 「祖国のため、リース王国のために戦え―――――――――――――――――――――――!!! 我らの祖国を壊そうとしているミラング共和国の野蛮な軍人どもを、血祭りにあげろ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!」

と、さらに、現場の指揮を担当する者は、声を荒げる。

 その声は、悲鳴によって、遠くまで、聞こえることはなかった。

 聞こえるはずもない。

 なぜなら、今、襲われているのはミラング共和国軍ではなく、リース王国軍なのだから―…。

 そうなってくると、いくら大勢を整えるのには、それなりの時間がかかるし、後退する必要にも迫られるが、ここは防衛しないといけないことがわかっているので、どうしようもない。この現場の指揮を担当する者よりも上、もしくは、総大将であるファルアールトの判断が必要となる。

 だけど、ファルアールトは、そのような判断をギリギリまで下すことは有り得ないだろう。アルデルダ領の割譲に関しては、ファルアールトより上のラーンドル一派による判断であるが、それ以上は防ぐように命令されているのだ。

 ここで失敗するようなことがあれば、ファルアールトは、軍法会議ものとなり、そこで今回の失敗の責任を取らされて、処刑ということだって十分にあり得る。アールトンとともに―…。そんなことになるのは、ファルアールトにとって嫌だし、わずかな自らの名誉に縋りつきたいのだ。

 そのために、今回も、多くの兵士が犠牲にされていくのだ。ラーンドル一派のために―…。他の人々のことを考えずに突っ込んで―…。ミラング共和国もまた同様であるが―…。

 『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 それでも、ミラング共和国軍の左翼軍、第一師団と第三師団の攻撃は止むことはなかった。


 一方、ミラング共和国軍の本陣。

 ラウナンは、シエルマスからあることを聞き出すのだった。

 「ほう~、リース王国軍の総大将は、ラーンドル一派の息のかかっている人ですか? ありがとう。」

と、納得するのだった。

 シエルマスの一員、自らの部下からの報告で、総大将ファルアールトの裏の情報を手に入れるのだった。実際、ある程度、裏の情報については、知っていたが、ファルアールトが総大将であることを知るのに時間がかかってしまった。その原因は、グルゼンの監視およびその他の師団の観察および動向を探る必要があり、必要な数を割くことができなかったからだ。さらに、グルゼンおよび彼が率いる第二師団の監視に向かわせた者たちが相次いで行方不明になることがあり、そこに割かないといけなかったからだ。

 ゆえに、各所での動きが大きいので、その分、人を必要とする分も多かったのが災いしたことになる。グルゼンの予想外の行動とかで―…。

 「下がってよろしい。」

 「はっ。」

 ラウナンに命じられた報告した部下の一人は、姿を晦ますのだった。

 (さて、ラーンドル一派にはリース王国が滅びる日まで生き残ってもらわないと困るのだよ。策の変更だな。)

と、ラウナンは、心の中で、今回の予定を変更させようと考えるのだった。

 それは、ラウナンにとって、長期的にリース王国という存在を支配しやすくするため、より簡単になすためにする上で、より良い作戦だと思ったからだ。

 ラウナンはある人物のところへと向かうのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(33)~序章 アルデルダ領獲得戦(33)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


ここからが、序章の大きな盛り上がりの場面となってきます。

やっと、今日の執筆で序章の終盤へと近づけることができているような感じです。

序章がこんなに長くなるとは―…、予想外です。

今年中に、番外編が終わるのか、2月なのに不安になってきました。

一方で、『この異世界に救済を』のプロローグは確実に2023年内に仕上がるということに関しては、自信を持って言えますが―…。

そして、読んでくださった方、評価をしたり、ブックマークをしてくださっている方、本当に感謝しかありません。どうぞ、『水晶』、『この異世界に救済を』、『ウィザーズ コンダクター』をよろしくお願いいたします。

では―…。

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