番外編 ミラング共和国滅亡物語(31)~序章 アルデルダ領獲得戦(31)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿をしています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ファルケンシュタイロがリース王国軍を攻めるための作戦を言うのだった。その後、グルゼンは第二師団をファルケンシュタイロの命令に違反するように、後退させるのだった。そして、グルゼンはどこかへと向かうのだった。
夜になる。
リース王国の側、その騎士団の騎士が集まっていた。
これは、騎士団長であるリーウォルゲの命令ではない。
すでに、これは決まっていることだ。
王国側から与えられた指令なのだから―…。
「さて、良く集まってくれた。勇敢なる我が王国の騎士たち。では、作戦を実行に移そう。」
と、騎士の格好をした男の一人が言う。
そして、この場にいる騎士たちは、ミラング共和国へと攻撃を仕掛けるのだった。
その攻撃を仕掛ける相手は―…、
「あそこにいるミラング共和国の右翼の軍だ。夜襲が効果的!!」
と、男が言うと、集まっている騎士たちは攻撃を開始するのだった。
ミラング共和国軍の第四師団へと―…。
その前に、グルゼンが率いる第二師団は後ろの方へと後退しているのだった。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」
と、叫び声が上がる。
これは驚きでしかない。
今夜、この師団は、リース王国の騎士を攻めようとしていたのだ。
グルゼン率いる第二師団が仕掛けた上で、その隙を突いて、リース王国の騎士の本陣を―…。
だけど、今夜、攻められているのは、リース王国の騎士団ではなく、第四師団である。
斬られながらも、指揮官はすぐに指示する。
「リース王国の騎士だ。反撃しろ!!! 数はそこまで多くはな―――――――――――い!!!」
と、指揮官の言葉が響く。
この指揮官は、第四師団のトップであるナッド=ナックルオーバー将軍の部下の部下というべきであろう。現場で主に活動する者である。
すぐに、とにかく急いで態勢を整えようとするが、リース王国の騎士団であるため、実力は、ここにいる兵たちよりも強く、態勢を立て直す前に斬られていくのだった。
「ぐあああああああああああああああああああああああああああああ。」
「リースの兵が強すぎる!!!」
「助けてくれ――――――――――――――――――――――!!!」
「おい、お前、俺が走っているのを、邪魔するんじゃねぇ――――――――――――――――――――!!!!」
叫び声があちこちから聞こえ、指揮官の言葉など聞こえはしなかった。
それでも、リース王国の騎士は全員無事であるはずもなかろう。
「ぐわっ!!」
一人の騎士が、ミラング共和国軍の第四師団の兵士によって、隙を突かれて斬られる。それを騎士の仲間が斬った奴を斬る。
だけど、兵の数は圧倒的に第四師団の方が多く、今攻めているリース王国の騎士だけでは、完全に倒することはできないのは確かだ。天成獣の宿っている武器を扱う者はこの場には一切いない。
それは、天成獣の方が、さっきの食糧配給に疑問を感じたことを使用者に伝えたことであろう。それに、きな臭い匂いを感じる者もいた。
ゆえに、今、ミラング共和国軍第四師団に攻めているリース王国の騎士は、騎士団のだいたい四割という感じだ。
その様子を見ていたシエルマスの一員のグループの中のリーダに当たる人物は、
「予想外なことが起こっている。ラウナン様のところへと、一人伝えろ、指示を仰ぐんだ。」
と、言うと、グループの中の一人がラウナンのいる場所へと向かうのだった。
(………………予想すれば、リース王国の騎士を処分しようとしているのか、囮にしているのか。まだ、何か攻撃があるかもしれない。それにしても、第二師団は一体何をやっている。そっちにいた、一員は一切、帰ってこないし―…。使いすら―…。)
と、リーダーは怒りを心の中で感じるのだった。
シエルマスは定時に統領であるラウナンに報告するようになっている。その報告に、第二師団の監視に当たっていた人員が一人も帰ってこなかったのだ。なぜ、このようになっているのか、別の奴を送ったのが、そいつも帰ってこないという感じだ。
リーダーは予想することはできる。ここが戦いの場でないのなら―…。
そう、すでに、第二師団を監視しているシエルマスのメンバーは、この世にいないし、別の奴を送っても無駄だ。後追いを増やしているだけに過ぎないのだから―…。
そして、状況は一刻として変化していく。
ミラング共和国本陣。
ラウナンは、ファルケンシュタイロとともにいた。
そろそろ、リース王国軍へと総攻撃を仕掛けるのだ。
そこで、リース王国に大打撃を与えて、さらに、リース王国の中心都市リースに近づくために―…。
ラウナンは、シエルマスの一人が急にやってくるのに、気づく。
その人物から耳打ちをされる。
「緊急、第四師団がリース王国の騎士団によって攻撃されています。」
「!!!」
その言葉に、ラウナンは驚くのだった。
ラウナンは、リース王国の騎士団に関する情報を知っている。
(リース王国の騎士団。精鋭揃いと聞く。だけど、諜報や謀略が主な我々にとっては、相手ではない。だけど、騎士団の中には、天成獣の宿っている武器を扱う者がいるという。そいつらには警戒だな。だけど、なぜ騎士団の騎士が!! ……!!! なるほど、リース王国側としては、いや、ラーンドル一派としては騎士団の騎士を処分したいというわけか。ならば、そっちを潰すのが良いな。)
と、ラウナンはすぐに策を心の中で、修正するのだった。
最大限、自らにとって都合が良いように―…。
「伝えろ、第四師団の一部を使い、リース王国の騎士団の陣地へと攻めろ。騎士団は孤立する。あいつらは、リース王国のラーンドル一派が処分したいと思っているのだからなぁ~。」
「ハッ!!」
ラウナンの言葉に、報告をしてきたシエルマスの一員は、すぐに自らが元々いた第四師団の方へと向かうのだった。
(……………リース王国の主流側にとって、都合の良い結果となってしまうが、それでも、リース王国の騎士団を生かしておく方が返って、危険だ。主流側が倒れた場合、確実に権力を握る可能性が高いのはリース王国で最も人気のある王妃だ。あの女は、確実に騎士団との関係を修復させてくるだろうし、必要とあれば、兵士も騎士も強化してくるだろうし、そいつらを暴走させないようにもいくらにでもできる。それだけの力と人望がある。ラーンドル一派の権力で何とか、あの王妃が権力を握れていないだけだ。主流派にはいつまでも権力を握ってもらわないとな。リース王国が滅びるその日まで―…。)
と、ラウナンは、心の中で考える。
すでに、指示を出しているので、変更するのは不可能である。
だけど、ラウナンは、ミラング共和国、ひいてはシエルマス、ラウナンにとって、どのような行動が良いかを考えるのだった。
ここで、ラーンドル一派を潰したとしても、その後、権力を握るのは確実に、リース王国の現王妃であるリーンウルネである。
リーンウルネに関しては、ある程度、シエルマスを使い、情報を集めることに成功はしている。周囲の近しい人々からは、もう少し外に出るの止めていただければ良いが、それを聞いてもらえないことを理解しており、諦めている。
だけど、リーンウルネの仕事ぶりには、尊敬の念すらある。なぜなら、リーンウルネの行動は、リース王国における信頼を回復させることに一役買っているのだから―…。まあ、その分、ラーンドル一派の評価は落ちていっているのであるが―…。その対比として―…。
ラウナンは、リーンウルネの人望を集めるための行動が厄介なものであることを理解している。信頼は安易に築き上げることができるものは、スキャンダルなどの方法で潰すことはできるが、じっくりと築き上げられた信頼であり、かつ、相手のためになって感謝されていることに関しては、なかなかにプロパガンダを仕込むのは難しい。できないわけではないが、何度も何度もじっくりと時間をかけないといけなくなる。
それに、リーンウルネの周囲におけるおよび本人に関して、悪い噂があまりにも事実性がなく、流して広めたところで、あまり効果がない。ミラング共和国がリース王国よりも力や影響力があるのであれば、このような強引な方法もかなり効果を持っていたであろうが―…。
現実はそうでない以上、ラウナンにとっては、ラーンドル一派にリース王国の実権を持ってもらっていた方が良い。むしろ、リース王国に優秀な、脅威となる人材がいるのは困ったことでしかないのだから―…。
馬鹿で愚かで、自らが目立つために才あり、社会のために使おうとする者、多くの人々のために使おうとする者、それら後者の二つの少なくとも一つを満たしている者を排除する人物の方が、支配する上で御しやすいのだ。
彼らは、人を見る目がさらになかったりすることが多いし、自分の欲望にのみ忠実なのだから―…。そうやって、奪っていると思わせて、実は、奪われる側であったことを最後に気づかせて、絶望のうちに葬ってあげれば良いのだ。これほど、都合の良いことがあろうか。
ラウナンは、第四師団と第二師団が今頃、渡り合っており、その二つの師団、特に第二師団がリース王国の騎士と戦闘になって数を大量に減らしている頃であると思いながら―…。それでも、グルゼンのことだから、何かをしているのではないかという不安は存在したが―…。
今は、ラウナンとしては、リース王国軍に攻撃を仕掛けることに集中するのだった。
そして、第四師団の兵がちゃんと任務を実行できているか、見張ることもシエルマスは怠ることはないだろう。
第四師団本陣。
その中では―…。
「リース王国の騎士が!!」
と、一人の人物が驚いていた。
驚かないわけがないだろう。
なぜなら、今日は、リース王国の騎士団に対して、第二師団がメインで攻めるのであり、第四師団は後方からのサポートであり、かつ、第二師団は優秀だから、第四師団が巻き込まれることがないと思っていたからだ。
(クソォ~。)
と、心の中で悔しそうにしながらも、冷静に状況の整理に努めるのだった。
「で、第二師団はどうしたんだ!! あいつらの方が俺らの師団よりリース王国の騎士団の陣地に近かっただろう!! もしかして、簡単に潰されたのか!!!」
と、一人の人物は言う。
その言葉を聞いた、報告をしてきたであろう人物は、申し訳なさそうにしながら―…。それでも、答えないわけにはいかない。この人は―…。
「将軍!! 第二師団に関しては、偵察に出していますが、どうなっているのか詳細不明!!!」
と、報告してきた者は言う。
報告してきた者としては、すでに、第二師団がどうなっているのか、壊滅しているのかと思い、偵察を仕事となしている者を派遣していた。まだ、帰ってきていない。
(第二師団のトップはグルゼンだ。あいつが、リース王国の騎士団を抑えられないはずがない。あそこは認めたくないけど、優秀な兵が揃っている。ファルケンシュタイロに服従してしまっている俺だが、それでも、グルゼンがミラング共和国の軍人の中でトップの実力者であり、指揮官であることは分かっている。つまり、今回のグルゼンは、ファルケンシュタイロがどういう指示を出してくるかが予測できないわけじゃない。ということは、分かっていて―…。でも、ミグリアドの陥落に貢献している以上、リース王国側へ裏切る可能性は低い。つまり―…、今回の正面衝突および回避に加わる気はないということか!! 見事に嵌められたということか!!!)
と、一人の人物、もとい、第四師団のトップであるナッド=ナックルオーバー将軍が心の中で悪態をつく。
だけど、自らがグルゼンに叶わないということもわかっている。
ゆえに、別のことで仕返しをしてやりたいと思う。
それでも、グルゼンがこのまま、ミラング共和国とリース王国の衝突に対して、何もしないとは思えない。あくまでも、師団の犠牲者数を減らすための判断なのではないかと思う。
そうなら、裏切り者扱いをされないために、本人が個人的に参戦している可能性は存在する。
兵の損失は、必要以上に大きくしてはいけない。次のことを想定しつつも、どこが勝負の重要どこかを判断して、そこに兵を注ぎ込んでくるはずだ。それを上手くできるのが、上手い指揮であり、有能だ。
その見極めが指揮官としての素質の一つになってくる。
そして、シエルマスの一員がナッド=ナックルオーバー将軍の目の前に姿を現わすのだった。
(シエルマスか!! 一体、何の用事だ。)
と、ナッド=ナックルオーバー将軍は心の中で訝しそうに思うのだった。
ナッド=ナックルオーバー将軍にとっても、このシエルマスという一員はあまり好みではなかったし、危険な存在であることはわかる。だけど、軍事で倒すことは簡単だが、こいつらがそのような場に出てくることはないし、暗殺や諜報でこちらが反旗を翻した場合に貶めるために使ってくるはずだ。自分の得意フィールドで戦うのが定石なのだから―…。
「ナッド=ナックルオーバー将軍。ラウナン様より命です。今いるリース王国の騎士を全滅させた後、第四師団を率いて、リース王国の騎士団の本陣へと攻めてください。」
と、シエルマスの一員が言う。
この人物は、さっき、ラウナンにリース王国の騎士が第四師団に攻めてきたことを報告した者である。
「わかった。攻められたままでいるほど、兵士は心の分別がつけられるわけじゃない。奴ら―…、リース王国の騎士に目にものを見せてやる。」
と、ナッド=ナックルオーバー将軍は言うのだった。
その目には、よくもやってくれたな、という感じで、今度はこっちが攻める番だという雰囲気を漂わせていた。この軍人は、感情的なものが一般の兵士に近いものがあり、全体の対局を見る視点を欠いているのだ。それでも、どういう作戦かを理解できるの頭はあるが―…。
報告をし終えると、シエルマスの一員である一人の人物は、ナッド=ナックルオーバー将軍の下から姿を消すのである。
そして、自らの本来の任務へと戻っていくのだった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(32)~序章 アルデルダ領獲得戦(32)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。