表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
375/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(29)~序章 アルデルダ領獲得戦(29)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿中。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中);https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、リース王国軍とミラング共和国軍が、アルデルダ領とリース王国の他の領の境で対峙するのだった。

 それから、数日の時が過ぎ、ランシュとヒルバス、ラウナウ、ニナエルマとの会話があった日から二週間後のことである。

 時間は、昼食の時―…。

 リース王国の側の食糧がこっそりと配給されている場所。

 ここには、リース王国の騎士の半分近くがいた。

 この場所は、ニナエルマにもリーウォルゲにも知られているが、それを止めさせることはできない。

 なぜなら、食糧配給が著しく悪化しており、騎士の不満を抱いて、反抗されないために黙認せざるを得なかった。

 リーウォルゲにしては、苦痛の決断でしかなかった。

 リーウォルゲ以上の力、リース王国の騎士団のトップとしての王国への忠誠。それが、そのすべてが利用されているのだから―…。

 リーウォルゲは悔しさとストレスで、わずかばかりであるが、白髪が混じるようになっていた。

 そんな、リーウォルゲの気持ちを知らずに、騎士たちはこの場で食糧の配給を受け、食事をとっているのである。背に腹は代えられない。お腹が空いては戦などできやしないのだから―…。

 そして、鱈腹食事を食べていると、いつもより雰囲気が違うのを感じる。

 その中で、一人の人物が声を出すのだった。

 「リース王国の騎士たちへの指令だ。ちなみに、この指令書には、ちゃんと王国側のサインが書かれている。これは、君たち、騎士にしかできないものであり、ここで活躍すれば、騎士団および兵士の中での出世、さらには、王族護衛になるチャンスが与えられる。」

 その人物は、見た目から男性であり、実際の年齢よりも若く見える。ちなみに、この人物が若作りをしているのではなく、普通に過ごしていたら、このようになっていただけなのだ。特徴としては、優しい顔を普段はするだろうが、今のような場合には、しゃっきとした姿勢で、かつ、威厳をもっているのではないかという雰囲気を漂わせている。

 強者のオーラを纏い―…。

 「その指令とは、リース王国の騎士団の騎士リーウォルゲの命令を無視して、今日の夜、ミラング共和国軍へと攻めるのだ。そして、ミラング共和国軍の兵士から物品を強奪し、それを今回の指令の報酬の一部にあてるものとする。今回、我が祖国、お前らの祖国であるリース王国に危害を加え、無辜(むこ)の民たちの命を奪っているのだ。彼らから物を奪うことに何の躊躇いがある。ミラング共和国軍にとって当然の報いだ。さあ、この作戦、我が国リース王国の繁栄のため、危機を解決するための高貴な任務だ。そして、君たちは、そのために選ばれた選民なのだ!!!」

と、はっきりとハキハキと言う。

 その言葉や、言い方に、この場にいる騎士たちは、この人物の虜になるのだった。

 そして―…。

 (ミラング共和国は、今回の遠征で―…。)

 「俺はアルデルダ領出身だ。アルデルダ領には俺の両親や兄弟がいる。両親や兄弟は、この人に教えてもらったのだが、ミラング共和国軍によって無惨な拷問にさらされた挙句、殺された。このお方がいなければ、無惨な姿なままだった。だからこそ、俺は―…、リース王国の騎士として、奴ら、ミラング共和国が許せない!! 復讐してやる!!!」

と、今度はこの人物の近くにいたリース王国の騎士の格好をしている男が、立ち上がり言い始める。

 その言葉には、本当に起こったのではないかと思えるぐらいの迫真あるものだ。その境遇に人々は涙を流し、同情する。悲しい話、残酷な話、そんな境遇に復讐を誓う者に同情できない人間がいるだろうか。ここまで、鬼気迫った感じで言われたのなら―…。

 そう、人は容易い。事実ではなく、物語に呑まれるのだから―…。

 そのような表情をせずに、二人の人物は、ただ、自らの課せられた使命を成功させるために、演技をするのだった。

 その後、そのようなことに気づかずに、リース王国からの指令という事実と、一人の騎士の話により、この場にいるリース王国の騎士は全員が指令に賛成するのだった。

 それが、リース王国の騎士団騎士の数を減らすことに繋がることをその時は知らずに―…。


 その後、昼食後。

 「上手く言ったな。」

 「はい、私の迫真の演技で―…。」

 作戦を成功させた二人、リース王国の指令書を持っていた人物とリース王国の騎士団の騎士の格好をしている者が話し合っていたのだった。

 場所は、リース王国側の陣地から離れた場所であり、リース王国のメタグニキアの私設の裏部隊の陣地。

 そう、彼らは、メタグニキアの私設の裏部隊の人間である。

 「お二人ともご苦労さん。私も商人のフリをして、騎士たちの食糧配膳をやるのは疲れるよ。彼ら、一回の食事量が多すぎるんだよ。食糧配給を減らして正解だろ。財政を担当する者たちからしたら、堪ったもんじゃない。まあ、これで、うちらのボスの利益にはなるだろう。」

と、さっき、騎士たちに食糧を配膳していた人物が言う。

 彼もまた、メタグニキアの私設の裏部隊の一員だったのだ。

 そこに―…。

 「ご苦労さん。さすが、宰相閣下の私設部隊だ。優秀すぎて、私は感謝しかない。ありがとう。君たちのおかげで、このミラング共和国との戦争は我々、ラーンドル一派、いや、宰相閣下の権力強化にますます貢献してくれることになるだろう。」

と、一人の人物が現れるのだった。

 「ああ、アールトン様か。」

 そう、リース王国の指令書を持っていた人物が、さっき言った言葉の主である名を言う。宰相閣下とメタグニキアのことを言ったアールトンという名を―…。

 今回の作戦、リース王国の騎士団の騎士をこのミラング共和国との戦争を利用して、数を減らし、リーウォルゲを排除し、ラーンドル一派の息がかかった人物を騎士団のトップに、さらに、騎士団の騎士に送り込み、ラーンドル一派にとって都合の良い騎士団にすることだ。そうすれば、ラーンドル一派に逆らうことができる奴は誰もいなくなり、さらに、やりたい放題にでき、リース王国はラーンドル一派のものになることができる。それが、リース王国の繁栄であり、ラーンドル一派の繁栄に繋がるのだから―…。

 「ええ、君たちの働きに報いをね。報酬の額はこれで良いだろうか。」

と、アールトンは言う。

 言いながら、自らの部下の一人に、三人の人物に向かって、依頼の報酬を支払うのだった。メタグニキアの私設部隊を動かす以上、メタグニキアの許可が必要であるので、その許可をメタグニキアから貰い、彼らを使っているのだ。額にすれば、とんでもない額になる。特に、メタグニキアへの付け届けは彼ら三人支払う額の数百倍にも及ぶ。富、名声、権力を欲しているだけのことはある。メタグニキアは己の欲に貪欲だ。

 (ふう~、これで、ミラング共和国とはどこかで交渉となり、我々はアルデルダ領を差し出すことで、和解ということになるでしょう。後は、相手側が交渉できる相手がでてくるか、ということだ。ミラング共和国には、シエルマスという恐ろしい諜報組織があると聞きますから―…。)

と、アールトンは心の中で不安に思いながらも、上手くいくと思うのだった。

 いや、そのように思っていなければ、精神的に安定することはないのだから―…。このような成功するかどうか確実に断定することができない場合は―…。

 その後、アールトンは、自らのいるべき陣地へと戻っていくのだった。


 一方、ミラング共和国の本陣。

 その中でも次の動きが考えられた。

 理由は、リース王国の領土をアルデルダ領以外からも手に入れようとしているからだ。

 リース王国軍を倒した上で―…。

 この本陣には、ファルケンシュタイロ以下、指揮官クラスがいるのだった。師団長と言ってもおかしくはない。

 「グルゼン、貴様、のこのことこのような場にやってこれたものだな~、おい。」

と、ファルケンシュタイロは、苛立ちながら言う。

 それもそうだろう。アルデルダ領のミグリアドの攻略をなし、かつ、一時的にとはいえ、エルゲルダを捕まえたのだから―…。先を越されて悔しいのだ。グルゼンより優れていると思っているために―…。

 「そうか、俺としては、ミラング共和国に仕える最後の大仕事として、最大限、国に貢献するためにおこなったことだ。結果として、ミグリアドをあっさりと陥落させることができた。ミラング共和国軍の損失を少なくして、だ。そういう結果があるから、兵の消耗少なく、リース王国軍と数の上では互角に対峙することができるのだ。そんな苛立ちさんな、ファルケンシュタイロ。大将というものは、冷静に、態度が大きいぐらいが部下も安心できるというものだ。敗北の可能性をあげるようなことはしない方が良い。」

と、グルゼンは言う。

 グルゼンは、感情というものを露わにさせずに、ファルケンシュタイロを窘めるように言う。舐めているような感情だ。ファルケンシュタイロの軍事的な能力に関しては、それなりに評価はしているが、戦い以外に関して、甘いというか、軍事以外のことへの目配りが足りないのだ。そこに目を向けられるようになれば、兵の損耗を減少させられる上での、勝利を手繰り寄せることが可能になるだろう。

 まあ、グルゼンもわかりきっている。

 (ファルケンシュタイロは、一切、俺の言っていることには気づかないのだろう。己より優秀な者を素直に認められない。これが、ファルケンシュタイロ(やつ)の最大の欠点だな。気づき、改めよ。……聞かないか。)

と、心の中で思うぐらいだ。

 グルゼンは、苛立つファルケンシュタイロを見ながら、ろくなことを言わないだろうな~、というこの後の展開を読むのだった。

 「俺が言っているのはそういうことじゃない。俺がこのリース王国への戦争の最高指揮官なのに、その俺の命令に違反して、勝手な行動をして、ミグリアドを陥落させたは良いものの、肝心のアルデルダ領の領主エルゲルダをどこの誰かに連れ去らわれたそうだな。この失態、どう責任取ってくれるんだ!!」

と、ファルケンシュタイロは嬉々とグルゼンの下へと向かい、デカい態度をとる。

 これは、グルゼンをここで、ファルケンシュタイロの言うことを聞かなかったことに対して、責任を認めさせ、服従させて、追い詰めようと、いや、ファルケンシュタイロの優秀さを見せつけようとしているのだ。

 グルゼンもファルケンシュタイロのやりたいことを理解していた。

 (ふん、しょうもない男だ。全体の利益よりも己の利益。いや、己の利益なき全体の利益の考えなんてしないだろう。どんな人物も、な。だけど、己の利益だけで行動しようとは考えないものだがな…。周りに嫌な奴と思われることは嫌だしな。ファルケンシュタイロ(こいつ)は例外か。そんな奴がたいてい出世するんだろうな。まあ、シュバリアのような奴もいるから、一概にはそうだと結論づけるべきではないな。)

と、グルゼンは心の中で思う。

 だけど、しばらくの間、グルゼンが話さないので、

 「おいおい、無視かよ。俺は、今回のリース王国との戦争での総大将を任されたファルケンシュタイロ様だぁ~。要は、グルゼン、お前なんかよりも上官というわけだ。軍の命令は、上への絶対服従。わかってるよなぁ~。こんな教科書にも出てきそうな常識を―…。もしくは忘れたのか。俺はグルゼン、お前にとってその辺にいる虫か。だから、無視しても構わないと―…。ふざけるなよ。」

と、ファルケンシュタイロは調子にのって言うし、苛立ちもしていた。

 ファルケンシュタイロは、グルゼンよりも自らが優れていることを示したいのだ。その欲求を満たしたいのだ。だけど―…。

 「確かに、エルゲルダを逃したなぁ~。だけど、俺はその前に、ミグリアドの住民にエルゲルダの身柄を渡した。その事実を言わないのは、印象操作をして、部下の名誉を落としたいとしか思えないのだが―…。仮に、上官の命令に絶対服従であったとしても、軍の作戦そのものが失敗してしまえば、国そのものの存亡の危機になる。ファルケンシュタイロ総大将がそのようなことを理解できないほどの軍人では……ありませんよねぇ~。それに、今回、エルゲルダの身柄を連れ去ったのは、ミラング共和国のシエルマスの連中ですから、私の失敗ではないでしょう。つまり、エルゲルダはちゃんとミラング共和国側に身柄があるということだ。まあ、それをシエルマス側は誤魔化してくるだろうが、俺とシエルマスが戦えばどうなるかわかるよなぁ~。俺は、俺が最近知り合った人間と協力して、シエルマスを壊滅させることになる。それは、ミラング共和国にとって、かなりの不利益にしかならない。ちなみに、冗談で言っているわけではない、ファルケンシュタイロ総大将。」

と、グルゼンは悠然として、見下すように言う。

 ファルケンシュタイロはその表情にさらに苛立ちをもたせるのだ。そして、グルゼンがなぜ、エルゲルダの身柄がシエルマス側にあるのを知っているのかに驚くのだった。

 実際、グルゼンは、エルゲルダを連れ去った者のスピードと同時に、さらに、アババから得た情報があるので、このことを堂々と言える。それに、エルゲルダの身柄をアババと組んで、いつでも奪還することはできる。アババがシエルマスより、優秀なのはわかっているのだから―…。

 それに、このことなら、アババは協力してくれるだろう。ベルグは、グルゼンをかなり評価しており、部下に加えようとしているのだから―…。

 そして―…、

 (動揺しすぎだろ、ファルケンシュタイロ。アババの言っていることを事実だと認めているようなものだ。それに、アババならシエルマスぐらい楽勝だろ。ミラング共和国に不利益と言っておけば、迂闊に、俺との闘争には手を出してこないだろう。それに、俺は支配者になる気はないのだからなぁ~。ファルケンシュタイロは、ラウナンにも、シュバリテにも反抗できないのだからなぁ~。)

と、グルゼンは心の中で思うのだった。

 グルゼンは、対外強硬派における力関係というものを表だけではなく、実際の関係を理解している。たぶん、表のトップはシュバリテだが、実際のトップはラウナンだということを―…。要は、ラウナンに不利益なことをすれば、ファルケンシュタイロの存在なんて、簡単に葬り去ることができるということだ。

 そのことを理解できないはずがない。ファルケンシュタイロは―…。

 「チッ、今回は命拾いをしたな。今日は大事な日なのだからなぁ~。」

と、ファルケンシュタイロは苛立ちながら、負けを認められずに悔しく思いながら、自分の座っていた椅子へと戻るのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(30)~序章 アルデルダ領獲得戦(30)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


無事、再開しました。『水晶』を―…。

2週間ぐらいは頑張って、投稿していこうと思います。もうそろそろ、三周年なんで―…。

ここまで、いろいろと長かったのか短かったのかはよくわかりませんが、想定よりPV数が伸びていないのだけはわかります。はい、評価も正直なところ、欲しいと思っています。

読んでくださった方、評価およびブックマークをしていただいた方には感謝しかありません。

ちなみに、投稿を休んでいる間も、執筆は続けていました。

『水晶』、『ウィザーズ コンダクター』、『この異世界に救済を』の執筆は―…。

この三作品を書くのは、かなり大変で、体力のいることだなぁ~、と理解させられます。

そして、自分自身の執筆能力が低いということを、実感させられます。まあ、その分、成長できる幅が大きいというのも実感できていますが―…。

『水晶』の現在の執筆している場所は、まだ、番外編の序章であり、序章の中でも、そろそろ、ミラング共和国とリース王国の戦争が終わりになりかけているところです。ある人物とある人物の交渉は文章としても長くならざるをえず、第128話でも書いたグルゼンとランシュのバトル以後もそんな感じです。

……………あと、近況と言ってもほとんどないなぁ~、という感じですが―…。

最後に、PV数が増えることを祈りながら―…、次回という感じですね。

では―…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ