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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
374/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(28)~序章 アルデルダ領獲得戦(28)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿中。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んでみてください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、リース王国のラーンドル一派の一人であるアールトンは、騎士団の勢力を弱らせるための作戦を考え、実行に移すのだった。それは―…。一方で、ミラング共和国軍は―…。

 数日が経過した。

 ミラング共和国軍の主流師団は―…。

 「ふう~、やっと到着だ。もうアルデルダ領のクソどもが抵抗してくることはないだろ。大人しく、俺らために、すべてのものを差し出し、生産するという美徳を教えてやったのだからな。」

と、ファルケンシュタイロが言う。

 ファルケンシュタイロは、心の中で言うべきことを、堂々と口に出して言っている。

 なぜなら、ここにアルデルダ領の者たちはいないし、かつ、ここには共犯者たちしかいないし、ファルケンシュタイロによって鍛えられた兵士しかいないのだから―…。

 ファルケンシュタイロは、ミグリアドからアルデルダ領のリース王国の別の領における領境まで、進むのに思っていた以上に時間がかかったのだ。食糧を無理矢理、支配したアルデルダ領から徴発したりするのに―…。勿論、言う事を聞かないような奴らは、男はすぐさまあの世へ送り、女は、老婆以外は無理矢理ここでは言えないことをして、その後、旅立たせってやったのだ。男どもと同じ場所へと―…。

 この光景は、平和な国で暮らし、自らが老いもしくは病気によって生命を終える以外の方法をほとんど見ることがない者たちにとって、残酷に感じさせるものであった。口を覆い、吐き出すのを抑えるか、むしろ吐き出してしまうほどの―…。

 人とは残酷で、優しい、正義のためなら、非道をおこなえる。まさに、そのことを示すかのように―…。

 そして、死んでいった者たちは、ただ、望まぬ終わりを手にしただけだった。

 ミラング共和国軍のことをさぞ、恨んでいるだろう。呪うことが現実に存在するのなら、呪い殺してやるという感じで―…。

 だけど、そのことをなすことができるのは、生きている者であり、死んでいる者ではない。

 この殺されたアルデルダ領の者たちにとって、幸運かどうかは分からぬが存在があったことを完全に消えないようにすることはできた。

 なぜなら、このような残酷な光景を隠れて見て、助かった者がいるからだ。そうしなければ、『ミラング共和国滅亡物語』の一幕として、描かれることはなかったのだから―…。

 残酷に、人の身勝手な欲望を曝け出して―…。

 今、ミラング共和国の実行した軍人たちは、嫌々やった者もいるだろうが、それでも、半分以上は今まで受けた仕打ちを仕返すという自らの正義感という主観的に基づいて判断されたものを美学として望んでおこなった。彼らは時に、リース王国にこの戦争で敗れることになれば、簡単に処罰されるだろう。最悪は、自らの命を代償にして―…。まあ、そのようになるかは可能性の話でしかないが―…。

 その中の一部には、殺人に対する快楽を生まれ始めていた。この快楽にせいで、より残酷なことをやりたいと望むようになっていた。そういう奴をラウナンと彼に率いられたシエルマスが見逃すはずがなく、実力が伸びそうと感じた奴をスカウトしようとすらしていた。

 シエルマスも人手不足ではないが、これから組織を拡大させることはさらに可能なので、そのための人員を確保したり、新たな謀略をおこなうことをも視野に入れ始めていた。

 このように、考えが浮かぶ中で、ミラング共和国とリース王国との戦争は進んでいくことになる。

 ファルケンシュタイロは、残虐な行為の後、生き残ったアルデルダ領の者たちに対して、これから、ミラング共和国の一般市民よりも一つ下の段階の扱いにすることを宣言するのだった。こうして、優越感を作ることによって、ミラング共和国の国民からミラング共和国の現体制への反乱を抑止することができる。勿論、これは、ファルケンシュタイロの案ではなく、ラウナンがファルケンシュタイロに指示した案である。

 ラウナンの意図は前で説明した通りである。それに加えて、身分というものはかなり便利が良いもので、二つの身分同士の対立関係を煽っておくことで、自らの属している身分、政権には何も批判が向けられなくなるのだから―…。これほど、簡単なものはない。希望なんていらない。必要なのは、無垢で、政権の言うことだけを聞く、視野の狭く、狂信的な人間なのだから―…。

 ファルケンシュタイロもラウナンから見れば、そのような人物の一人に過ぎないのだろう。ファルケンシュタイロの言葉を聞けば―…。

 ファルケンシュタイロの周りにいた者たちは、別に、ファルケンシュタイロを批判する気もない。なぜなら、同調できるのだから、恨みによって―…。

 「さて、やっと、領境に到着した。だけど、ここまで辿り着くの疲れた。しばらくの間は、睨みあいだろう。リース王国にしては、なぜ、アルデルダ領の中に入ってこないかが不思議だ。」

と、ファルケンシュタイロは続けて言う。

 そう、不思議で仕方がないのだ。普通に考えれば、アルデルダ領はリース王国の領土である以上、他国が攻めてくれば、確実に、リース王国の軍隊が動いてくるはずだ。なのに、アルデルダ領に攻めてくることがなかったのだ。

 そういう意味では、ミラング共和国軍はラッキーだったと言うべきでしかない。

 もし、仮にリース王国軍がアルデルダ領を守るために軍隊を送ってきたのであれば、確実に、今以上、苦戦することになり、敗北する可能性も存在していた。

 そして、ファルケンシュタイロは、リース王国軍の意図というものに気づいてはいなかった。軍人としては、それなりに鍛えられているし、経験も持っているが、駆け引きという面や、軍事以外に関してはからっきし素人のそれ以下である。

 要は、役に立たないということだ。

 「ならば、それは、アルデルダ領がいらないということだろうな。ファルケンシュタイロ様。」

と、声が聞こえるのだった。

 そして、ファルケンシュタイロは、声のしている方向に視線を向けると、そこには、ラウナンがいるのだった。シエルマスの統領の―…。

 「何の用だ、ラウナン。」

と、ファルケンシュタイロは、気持ち悪いものでも見るかのように言う。

 (神出鬼没なことは止めて欲しい。こっちの気も知らんで―…。)

と、ファルケンシュタイロは心の中で思う。

 このように、急に登場してくるのは、ファルケンシュタイロの心臓にとって、あまり良いものとは言えない。理由は、今、ミラング共和国はリース王国と戦争しているのであり、その決定権を持っており、かつ、ミラング共和国軍の指揮を任されているのは、ファルケンシュタイロなのであるからだ。責任というものが重いのだ。緊張しないわけがない。

 まあ、自らの名誉、地位、欲望などに分類されるものがあり、その未来をまだ実現していないのに描いていることから、そのような緊張感というものをそこまで抱くことはないが、それでも、ラウナンの一言はそれを思い出させるし、驚かせるなと思ってしまうのだ。戦争である以上、相手側から敵の指揮官は命を良く狙われるのだから―…。

 「敵の暗殺者を恐れるのなら大丈夫だ。我々、シエルマスは、いつでも、ファルケンシュタイロ様をそんな下賤な輩から命を守るようにしております。我々がいれば、ファルケンシュタイロ様が自らの命を狙われることを恐れる必要があろうか。いや、ありもしないものに恐怖する必要はないのです。ファルケンシュタイロ様は、リース王国軍を倒して、戦功を挙げることだけに集中してください。我々、シエルマスは対外強硬派、および、ミラング共和国の繁栄のために、わずかばかりでありますが、影から支えさせていただいているのですから―…。」

と、ラウナンは言う。

 ラウナンとしては、勿論、今、言っている言葉は事実だが、もう一つ裏の意味がある。ファルケンシュタイロがもし、もうこれ以上、生かしておいても得ではないと判断した時は、すぐにでも、始末できるように―…。

 この場合、ファルケンシュタイロを英雄に(まつ)り上げ、軍神のような扱いにして、ミラング共和国の国民の扇動のための道具として利用するだけだ。ファルケンシュタイロが何をして、何を考えているのかなんて、ミラング共和国の国民が知る由もないし、知りもしないだろう。詳しく―…。彼らにとっては、これ自体も娯楽でしかないのだから―…。だけど、これは失敗すれば、自らの命を危機に晒しかねないデスゲームのようなものなのだ。そのことに気づきはしないだろうが―…。

 ラウナンにとって、ミラング共和国の国民を扇動することなんて、簡単なことでしかなく、彼らは何も知ろうとしない愚か者でしかないのだ。可愛がりたい玩具のように―…。

 「そうか、そう思わしてもらうわ。」

 (何を考えているか分からないが、暗殺部隊も兼ねる彼らに四六時中監視されているなんて、生きた心地がしない。)

と、ファルケンシュタイロは、不満に思うのだった。

 その不満を、実際に口にするということはなかったが―…。口にしたところで、ファルケンシュタイロがシエルマスに勝てるはずだとは思えていないからだ。なぜなら、シエルマスは力勝負も正々堂々とした勝負もしてくれるわけではない。だって、シエルマスは暗殺というか、相手の隙を一瞬で突いてくることに長けているのだから―…。

 要は、ファルケンシュタイロが得意な勝負へと持ち込まれることなく、シエルマスどもが得意とする戦いに持ち込まれ、何も抵抗することができない状態で勝敗が決してしまうということだ。敗者の命が消えることをもって―…。

 「わかりました。では、本題に入らせていただきます。リース王国側はアルデルダ領を元々、こちら側に渡すつもりだったために、この領土内へとあえて、軍隊を派遣してこなかったようだ。私も、ファルケンシュタイロ様と同様に、なぜ、アルデルダ領にリース王国軍がいないのかを不審に思い、私の部下たちに調べさせていたのです。その結果、以上のものとなります。どういたしますか。」

 (ここは、ファルケンシュタイロの領分。迂闊に私の意見を出すのは、良く選択肢ではない。)

と、ラウナンは言う。

 ラウナンとしては、ファルケンシュタイロよりも先に、リース王国軍の不審な動きについては気づいていた。だからこそ、自らの率いるシエルマスを用いて、リース王国の意図というものを調べさせていた。要人であったとしても、シエルマスの実力をもってすれば、探れないものなんて存在しない。現実、存在するのであるが―…。

 そのことを、ラウナンは認めたくなくても、グルゼンという存在のせいで、嫌でもそのことを思い知らされるというわけだ。グルゼンは、シエルマスがいることを察知しているのか、あまり情報を出したがらないし、かつ、出そうとする場合は、すでに、その諜報をおこなっていたシエルマスの一員はこの世に存在しなくなる。グルゼンによって始末をつけられているということだ。

 ラウナンとっては、恐怖でしかないし、自らの実力のなさを痛感させられることだ。

 そして、部下はリース王国の意図というものを理解したようだ。その情報源となった、いや、盗聴されたのはアールトンやファルアールトの会話の一部である。そこからの会話により、リース王国の意図がアルデルダ領をこのミラング共和国との戦争を機会に、手放そうとしているのだ。

 そのことを聞いた時、ラウナンは心の中で、このように思ったのだ。


 ―リース王国というのは売国奴の集まりのようだ。アルデルダ領は財政が圧迫していて、いらない領土だから手放した方が得策とでも思ったのだろうか。まあ、そんなことをすれば、国の威信に関わることがなぜわからない。再建策なら、エルゲルダを裏を使って葬るなりすれば良いだろうに、病死という結果にして―…。それができない臆病者の集まりなのだ、リース王国は―…。ならば、我々はリース王国と戦争しても勝てる可能性は十分にあるというわけだ―


 ラウナンは、見くびっていた。

 リース王国のラーンドル一派を―…。

 確かに、シエルマスの情報を漏らしてしまうような失態に気づかないぐらいの愚策を犯しているから、そのように思ってしまっても仕方ない。

 だけど、彼らラーンドル一派以外にも派閥や勢力というものが存在し、その派閥の中には優秀な人材がいるということだ。

 それに、ラウナンは気づいていない。

 どんな抵抗されても、簡単に倒すことができたのだから、兵士には余力があったとしても、現実は移動するのに疲れているし、略奪によって兵士たちは戦利品を得ていることから、今度も手に入れることができるという感じで、それが暴走にならないとも限らないのだ。

 まあ、そんな些細な事はファルケンシュタイロが考えろとでも、ラウナンは思っているだろう。

 それに、食糧に関しては、そこまで用意していない以上、略奪ができなければ、不満が溜まるのは当然のことであり、食糧入手のために略奪を働くかもしれない。そのことを考慮しなければならない。

 だけど、彼らにそんなこと、ほとんど頭にないだろう。今、食糧の発注をしたのだから―…。

 「何だと!! 自らの国の領土を戦争している国に渡すのか!!! とんだ馬鹿者だな!!! 愚か者だぁ~。リース王国は、我々ミラング共和国のことを恐れているのか!!! わかった!!! ラウナン、良い報告をありがとう!!!」

 「いえ。では、私は―…。」

 ファルケンシュタイロは、ラウナンの言葉を聞いて、リース王国を侮り、ラウナンはその後、どこかへと姿を消すのだった。

 いくら舐めていると言っても、相手が何かとんでもない策を打ってくるかもしれない。

 その可能性を排除するために、ラウナンは策を練るのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(29)~序章 アルデルダ領獲得戦(29)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


書くことに対する疲れも出て来ています。今、執筆しているところが、特に、頭を使って書かないといけない場所であり、セリフとか心の中で思っていることが多く、それらの一回分がどうしても長くなってしまう感じです。一回の投稿における文章量では確実に収まらないほどに―…。どんだけ長引くんだよ~。

次に、次回の『水晶』の投稿は、2023年2月7日頃を予定しています。一週間強ほど、『水晶』の投稿は休ませてください。投稿する気力を回復させるために―…。ストックの方はまだあるのですが―…。無理をしないために―…。

『ウィザーズ コンダクター』と『この異世界に救済を』に関しては、いつも通りという感じです。『水晶』も投稿開始してから長いのかどうかはわかりませんが、それでも、3年近くやっているので、疲れもかなりでるのかな~。

そして、今年の目標の一つを達成することができました。『この異世界に救済を』の文字数は10万字を超えました。2023年1月31日以内に達成しました。これで、一つスッキリできました。

後は、『水晶』の番外編の完成と、『ウィザーズ コンダクター』の第9部と第10部の執筆、『この異世界に救済を』のプロローグの完成の三つです。たぶん、見通しとして先に達成するのは、『この異世界に救済を』のプロローグの完成だと思っています。『水晶』の番外編はどのくらいの量になるか見当もつかない状態であり、『ウィザーズ コンダクター』は、第9部は確実に執筆を完成させることができるでしょうが、第10部は第9部より長くなる可能性があり、第10部のどこまでいけるかは想定できない感じです。

とにかく、無理せずに頑張ります。

では―…。

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