番外編 ミラング共和国滅亡物語(27)~序章 アルデルダ領獲得戦(27)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿中。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
『この異世界に救済を』に関しては、第19話を「カクヨム」で2023年1月28日に投稿しました。「小説家になろう」に関しては、今日の夕方に投稿する予定です。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ミラング共和国軍はアルデルダ領を占領し、リース王国の別の領側の領境まで進軍するのだった。
今回で、『水晶』の文字数は200万字を超えます。長かったと思います。これも、『水晶』を読んでくださった皆様のおかげです。評価、ブックマークをしていただいた方のおかげでもあります。番外編を仕上がらせていきます。長くなりそうですが―…。
一方、グルゼンのいる場所。
そこは、アルデルダ領とその他のリース王国の領との境目になっている山が見える場所。
そこで、グルゼンは、一時的に軍隊を停止させていた。
グルゼンは、そこに陣地を敷き、垂れ幕の中でグルゼンは一人になっていた。
いや、一人ではない。
だけど、グルゼン以外は、グルゼンの軍団に属す者はいなかった。
そこには―…。
「アバ、お前に重要な情報を教えておく。これからベルグ様の部下になるのだ。好みとしてな。」
と、グルゼンの近くにいる人物は言う。
アババである。ベルグの部下で、暗殺や偵察などを得意とする。かなりの腕であり、かつて、エルゲルダに仕えたこともあり、エルゲルダにとっての政敵を殺してきた過去がある。
「そうか、教えてもらおう。」
と、グルゼンが言うのだった。
今の状況、どんなことであれ、情報というものは欲しい。真偽の判断は確実に必要であろうが―…。
ベルグの部下であることから、今回の場合は、あまり嘘は言わないだろう。
「じゃあ、教える。私は、昔、ベルグ様の命令で、アルデルダ領の中で、ある実験をおこなうための候補地を探していた。そのために、都合の良い奴との繋ぎを作っておく必要があった。その時、偶々、エルゲルダという人物を見つけて、そいつの願いを叶えてきた。政敵排除をな。あいつは領主の一族であり、領主になりたかった。その願いを叶えるために―…。だけど、俺としては、ミスをしてしまったと思った。そのエルゲルダは領主になるや、領民なんて顧みず、自分の欲望と名誉、権力、地位に拘り恐怖政治さ。」
と、まだアババの言葉は続くであろうが、それでも、グルゼンは言葉を挟む。
「待て、エルゲルダを暴走させたのはお前なのか、ベルグの命令なのか。」
と、グルゼンは確認をしようとする。
グルゼンとしては、ベルグがエルゲルダをそのようにするために命じたのが、アババの独断でやらせたのか。場合によって、敵対する可能性も存在する。
「グルゼン、勘違いしてもらっては困る。俺は、エルゲルダのことは嫌いだし、ベルグ様の命令でエルゲルダに恐怖政治をさせたわけじゃない。俺も、エルゲルダに恐怖政治など望んでいない。だから、お前に、重要な情報を渡しにきたんだ。」
と、アババは言う。
アババとしても、エルゲルダの今のような政治は好きになれるはずないし、そこから利益を得ていることはない。むしろ、困っているぐらいだ。流通が滞るようになれば、こちらへと流れてくる商人が減り、食糧や必要な機材、武器を手に入れられなくなるのだ。それは良くない。
「そうか。」
と、グルゼンは言う。
(まあ、こいつを殺すには骨が折れるだろうし―…。それに、こいつが言っていることに嘘というものは感じられない。これが本物の天成獣の宿っている武器を扱うことに長け、強者と言われるものか。恐ろしいと感じたのは久々だ。それにベルグの命令とか関係なく、ミラング共和国軍を辞める以上、強者に頼るのは大切なことだしな。いかれた存在だが、何か、強者としての強さを持つ、ベルグなら―…。)
と、心の中で思うのだった。
グルゼンとしては、アババを危険人物であると思うが、同時に、自分よりも強いということを理解させられる。アババとしても、グルゼンに殺されるとは思っていないが、強者であることはわかっている。なぜなら、今まで出会った軍人の中では、一番の強さを誇っていると理解できてしまう。ゆえに、ベルグが自らの部下にしようとしていることを―…。
グルゼンがただの筋肉馬鹿なら、絶対に部下にはしなかったであろう。だけど、グルゼンには自らの頭で考える力があり、頭を使って戦うこともできるがゆえに、敵対するよりも味方にした方が良いと考えたのだろう。
そして、アババは言い始める。
「だから、クルバト町の虐殺事件でベルグと合流し、以後、俺はベルグ様の下にいるようになった。エルゲルダからすれば、俺の逃走は相当、頭にきたようだが、俺の代わりを見つけることなどできやしなかった。できるわけがない。俺ほどの実力者はなかなかいないのだから―…。自画自賛と思われるが、事実だからな。さて、本題だ。グルゼン、お前が逃したエルゲルダ、あいつはシエルマスの統領ラウナン=アルディエーレの所にいる。ラウナンは、エルゲルダをシュバリテが駄目になった時の代わりにするようだ。どうする?」
と。
アババは、ちゃんと、エルゲルダの行方を追っており、せめてもの死に目を見ようとしたが、エルゲルダは死なず、ラウナンの操り人形になってしまっていたのだ。
そのことに対して、怒りのような感情があるが、それでも、自らの手で暗殺することはなかった。今、自らが目立つ気にはなれないし、ベルグの影として動くことが一番に大事なことを考えたからである。
そして、グルゼンはその情報を手に入れて、どのような動きをするのか気になったからだ。
グルゼンは―…。
(ふう~。そういうことか。ラウナンをのさばらせるのは良くないことだが、それでも、俺が対応できる領域ではないな。俺の部下の犠牲が酷いことになる。俺、個人ならシエルマスに対応できるし、アババと協力すれば、シエルマスは全滅するだろう。だが、俺としても、ここは動き時ではない。それに、ラウナンは、勝者、優位者の毒に飲み込まれた。後は、崩壊へと知らずに近づいていくだろう。自らの破滅へと―…。ならば、それを体験してもらうとするか。)
と、心の中で思いながら、結論を出すのだった。
グルゼンとしては、この戦争以後でミラング共和国と関わることはない。これ以上、関われば、自らの命も危うくなるし、別に、ミラング共和国を良くしようという気持ちは存在しない。あくまでも、自分という存在は、トップになるための器ではないのだから―…。
ゆえに、
「俺としては、どうでも良い。俺はミラング共和国軍を辞める人間なのだ。余計なことに労力を割くよりも、この戦争を終わらせて、さっさとベルグと合流することだろ。アババ。」
と、グルゼンは言う。
(こいつは、やっぱり始末すべき人間ではないな。暗殺なら俺の方が有利だが、戦闘では確実に負ける。こいつが天成獣の宿っている武器にまだ選ばれていないのが不思議なぐらいだ。こいつなら、確実に実力者の仲間入りできる。いや、それ以上―…。)
と、アババは心の中で思う。
グルゼンは油断ならない人物でありことを確認させられ、そして、用件も終わった。
だから、
「わかった。」
と、返事をして、消えるのだった。
(ふう、優秀な人材が集まるのは、大将の器だ。ベルグ。)
と、心の中で、思うのだった。
二日ほどの期間が経過する。
ランシュのいる場所は、相変わらず見張りの日々だ。
まだ、ミラング共和国軍が到着していないからだ。
現在、ミラング共和国軍は、アルデルダ領の残りの領土を征服していっている最中で、そこで略奪などを働いているのであった。
そんな中―…、リース王国軍内でも、不審な動きは存在していた。
その動きとは―…。
「最近、騎士数人が昼の時、待機場所からいなくなっているな。」
ラウナウは不審に思いながら言う。
そしての理由をニナエルマから聞いているので知っている。
そして、リーウォルゲ騎士団長から告げられたことは、三日に一回の食糧配給が、一週間に一回というものであった。そのことを言っていたリーウォルゲは苦痛の表情であった。リーウォルゲも上には逆らうことができないのだ。だけど、打開策を探ろうとしているのであろうが―…。
さらに、ニナエルマの言っていることが事実だと確かめるために、ランシュに命じて、昼に抜けている騎士たちの後をつけさせたのだ。
そこで、ランシュが―…。
―待機場所にいなかった奴らは、昼のこちらから近くの場所で、商人から食事の提供を受けているみたい。ニナエルマさんが言っていることは事実です―
その報告に、ラウナウは、呆れるのだった。
騎士として、どんな状況であろうとも、誘惑に負けて欲しくはなかった。だけど、腹が減ってばかりでは、上手く力を発揮させて戦うことができないこともわかっているので、どうしようもなかった。
そして、ラウナウは返答した。
―そうか。リース王国の中央で権力を握っている奴らは一体何を考えているのかはわからんが、俺らを貶めても、お前らが牛耳っている国を弱らせるだけだというのに―
ラウナウとしては、ランシュに本当の気持ちを隠せないほどに、本音というものが漏れるのだ。
リース王国の騎士団を自分達に都合の良いように動かないからと言って、ラーンドル一派の息のかかった人材を送って、ラーンドル一派のためだけに動く組織にしたいということはわかっている。
そんなことをしても、リース王国の防衛に資するところか、返って、リース王国の弱体化しかせず、それはラーンドル一派に跳ね返ってくるだけなのだ。そう、リース王国の中央で実権を握っているのはラーンドル一派なのだから―…。彼らに対する恨みは周辺諸国が持っていてもおかしくはない。今のミラング共和国のように―…。
まあ、一番なのは、互いに協調しながらなのが、一番良い。
力というものを変更するのは、大きな混乱を時に及ぼすこともあるのだから―…。それが時にリスクのあるものだということを考慮せずに動くことは、良い結果を及ぼすことはない。及ぼせば、それは毒でしかない。いつかのお前の破滅へと導くように―…。
そして、ランシュ、ヒルバスは、そのような昼の時に、商人に食事の提供を受けようとはしなかった。なぜなら、そこに罠があることを理解しているし、その罠が危険であり、関わってはいけないと勘が告げているのだ。
そして、二人は話し合っているのだった。
「まあ、食糧を商人から―…、提供を受けているのだろ。日に日に数が増大している。」
「それだけ、飢えというものは怖いですからね。戦場での楽しみは、食事ぐらいになってしまいますから―…。」
ランシュとヒルバスは、話し合いながら、質素な昼食をとるのであった。
二人は、今のような罠よりも、その罠の先にあるものが、リース王国にとってマイナスでしかないことを理解している。
だって、足の引っ張り合いなど、今の戦争状態で何の役に立つのか。今すべきことは、目の前の敵を倒すことであろう。アルデルダ領に関しては、ランシュにとって、一応は故郷である以上、これ以上の被害が出ないことを祈るしかできないが―…。
そして、騎士たちが昼の時に、待機場所から抜け出す人数は日に日に増大しているのは事実であったし、見た感覚でも理解できてしまう。
そして、こういう場には娯楽というものがない以上、食事ぐらいしか楽しめるものがないのだ。ゆえに、ヒルバスは、騎士が商人から食糧の提供を受けるのが近くにあれば、向かってしまうのだろうと思うのだった。そこに罠があっても、食べなきゃ十分に力を発揮することはできないのだから―…。
そういう意味では、アールトンは、良く考えたと思えるが、その結果に関しては、視野というものがかなり狭いとしか思えなかった。目的はあっても、そのために起こる結果への視野というものを広くしておかないと、そんなはずじゃなかったという結果を導くのだから―…。
「そうだな。本当に、もう少し周りのことを考えて欲しい。」
「そうですね。」
そして、ランシュとヒルバスは一切、気づかなかった。
この時、次第に、事態は、徐々に起ころうとしていたことを―…。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(28)~序章 アルデルダ領獲得戦(28)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。