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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
37/745

第25話-1 造られた竜

第24話に続いて分割となりました。前回の第24話-2の後書きで、文字のミスがあったので修正しました。

前回までは、アンバイドがフードを被った一人の人物にダメージを与えることに成功した。

 一方、クローナとトリグゲラの戦いは、拮抗していた。

 この拮抗は、危ういものであった。片方が、相手に対して隙をつくれば、一瞬でやられてしまうのだから―…。

 そのことは、的中してしまうのだ。

 フードを被った一人の人物が、二度目の闇の放射による攻撃をアンバイドへ向かっておこなったのだ。そして、アンバイドも自らの武器を用いて反撃をおこなったのだ。それらの衝突は、クローナとトリグゲラの視線を向けさせた。

 そして、視線を自らの戦っている敵に向けるようになるのに、双方に時間差が生じた。そう、最初に、視線を敵に戻したのクローナであった。

 クローナは気づく。

 (トリグゲラ(相手)は、今、向こうに夢中になっている。今がチャンス!!)

と。

 ゆえに、クローナは攻撃態勢に移り、自らの武器を構える。それも両手ともに―…。

 そして、両手をぶつけないよう横に振っていく。

 その軌道上において、竜巻が発生した。それも、上から下の竜巻ではなく、クローナのいる場所からトリグゲラへと向かっていくものであった。

 クローナの風の攻撃は、トリグゲラへ向かいながら、音もたてながら―…。

 その音は、トリグゲラにも聞こえることとなった。それが、近づいているように感じられた。なぜなら、音は自らに向かって次第に大きくなっていたからだ。

 (ッ!!! 風!!!!)

と、トリグゲラは驚く。トリグゲラが風の攻撃の方に視線を向けると、すでに目の前までその風の攻撃は迫ってきていたのである。

 ゆえに、回避行動をトリグゲラはとることができず、クローナの風を攻撃をまともに受けてしまう。

 「ガァ…。」

と、トリグゲラの声が漏れる。

 そして、トリグゲラは後ろへ吹っ飛ばされる。そして、目の前にある木に衝突する。

 (ぐっ!! 油断してしまった。隙をつかれてしまうとは―…。)

と、トリグゲラはクローナの攻撃によって受けた、ダメージの大きい腹部に左手をあてる。そして、これから自らがどのように動いて、クローナを倒すかを考える。クローナが攻めてきていないことを確かめながら―…。

 クローナは、

 (これで、気絶してくれるありがたい…。私は、まだ戦えるけど…、向こうの戦いもどうなっているか気になるし……。)

と、心の中で呟いた。

 そして、クローナは気づく。ゆっくりではあるがトリグゲラが立ち始めているのを―…。

 (これで…は、倒せなかった…か。)

と、クローナはトリグゲラを倒せなかったことに、少し動揺もしながらも、そうなると納得もしていた。

 (もう少し時間がかかりそうだ。)

と、クローナは心の中で言う。

 立ち上がったトリグゲラは、徐々に痛みの感覚が消えていくのを感じた。それは、受けたダメージが回復していることを実感できるものであった。痛みが激しくなって、消えていった痛みではなく…。

 「よくもやってくれましたねぇ~。」

と、トリグゲラは怒りを静かに見に纏い、クローナに向かって言う。そう、トリグゲラにとってクローナは、何が何でも勝たなければならない相手であり、血祭りにあげるべき第一の対象となったのだ。この場にいる誰もよりも、である。


 【第25話 造られた竜】


 再度、均衡が訪れる。

 それは、クローナとトリグゲラの戦いにおいて、である。

 両者は、風を纏っての攻撃をするが、両者とも互角であるがために、互いにダメージを与えられなかった。そう、わずかな隙をついたクローナの風の攻撃によってトリグゲラが吹っ飛ばされて、ダメージを受けたときから―…。

 互いの武器を使っての風の攻撃は、何度も何度も相殺されるだけだった。

 そして、数分が経過すると、お互いに動きを止める。次、どうやって相手に攻撃しようか、隙をつこうかと考えながら―…。

 「いい、反応で攻撃を防いできますね~。はあ…しかし、今度こそは―…。」

と、トリグゲラは言う。それは、クローナにダメージや一撃を与えることができていなかったからだ。

 そして、互角の攻撃を繰り返してきたので、いつになれば、クローナに一撃を喰らわし、倒すことができるんだ、という焦りが表情にもでてきていた。

 トリグゲラの焦りは、クローナを倒すための判断に集中されているために、もし、別の人間が攻撃してきたのならば、対処することなどはできやしない。

 さらに、同様に焦りは、トリグゲラの判断を狭いものにし、誤ったものへと導き始めていた。そう、冷静に考え、判断することができなくなってしまっていたのだ。

 (もう、これで、決めるしかない。長期の均衡状態は、俺にとって不利でしかない。)

と、トリグゲラは心の中で呟いて、クローナに向かって素早く移動していった。この一撃でクローナを倒すために―…。

 トリグゲラがクローナに向かってきていたのは、クローナも気づいていた。

 (この動き…、ここで勝負を決めようとしている。完全に冷静さを失っている!! これなら、うまく…!!!!)

と、クローナは、トリグゲラが焦っている様子であると気いており、ゆえに、うまく回避することができれば、確実にクローナ自身が勝つことができると理解していたが、ある意味で驚かずにはいられなかった。

 それは、トリグゲラがクローナの予想を超えるものであったわけではなく、第三者がクローナに向かっているトリグゲラに攻撃を加えたのである。

 それも、()()で―…。


 黒い意識の中。

 それは、スクリーンに映し出される映画を見るように―…。

 自分自身から何もすることはできない。

 ただ、声が流れる。

 「やっと、天成獣の力が宿った武器を使うことを決めたか。」

と、アンバイドは言う。そのとき、映像にはアンバイドの全身が写っていた。素顔も…。

 「……………。」

と、スクリーンに映ることはない人物は、無言になる。天成獣の力が宿った武器を使いたいとは思わない。スクリーンに映ることはない人物は、今までずっと蹴りを中心として鍛えてきたからだ。それに、刀というような飛び道具に頼れば、もしそれがないときには弱くなって守ることができないからだ。自らにとって大切だと思っている人を―…。

 アンバイドは、スクリーンに映ることない人物のこの無言の意思に、少し頭にきていた。

 「そこは、はいっ、と言っておけよ。こういうときは―…。そうすれば、うまく誤魔化せる可能性もあったのに…さ。お前は本当に不器用だな~。これじゃあ、先が思いやられるぜ。」

と、アンバイドは呆れながら言う。

 嘘を付くことはどの世界でも決していいことではない。しかし、嘘を付くことによってうまくいくこともある。善が決してすべてにおいて、人の関係を円滑にすることがなく、その逆の結果を招くように―…。アンバイドは経験からそのことをよく理解しており、決して大人が子どもに教えるルールは、すべての場面では役に立つことがない、ということを―…。

 アンバイドはある程度スクリーンに映ることのない人物の気持ちを少しでも組んでうえで、

 「そんなお前自身の努力の過程なんてどうだっていいんだよ。努力をした分だけ成果がでる、とか、努力は裏切らないとか。ある意味では本当だが…、嘘でしかない。どんな努力したとしても、その努力分の成果が返ってくることもないし、その逆として、それ以上が返ってくることもあるだろう。それに―…、今、お前自身に必要なことは、環境が変われば、今まで自分が経験したことも無駄になるということがあることだ。だから、受け入れろ、天成獣の力の宿った己の武器で戦うことを―…。」

と、アンバイドは言葉を続けていく。その言葉を、スクリーンに映ることのない人物は、ただ聞いていた。聞き流そうとしても聞き流すことができずに―…。

 「そして、それはお前にとっての恥じゃない。守りたい大切な人を失うことが一番の恥だ。俺はそれを知っているからな。だから、もう一つ付け加えて言っておく。」

と、アンバイドは少しを間をあけて呼吸し、口調をさらに声を低くして、気持ちを強くして、

 「人は決して、一人だけで守っているわけじゃない。お前が守ろうとしている人も同時に、お前を守ろうとしているんだ。それだけは決して忘れるなよ、李章。」

と、アンバイドは、スクリーンに映ることのない人物である李章に向かって言う。そう、これは李章が自らの目で見た、聞いたものの過去であるから。

 そして、それは過去という名の夢の終わりとともに、意識は黒くなり、目覚めという現実(けしき)へと変わる。


 トリグゲラは蹴られていた。

 それも一発分であるが―…。

 そう、蹴っているのは李章だ。李章は、礼奈の青の水晶の能力によって、フードを被った一人の人物から受けたダメージを回復することができた。

 そして、李章は二つの戦いの状況を見て判断した。どっちが危機になるのかを緑の水晶の能力を使って―…。

 (たぶん、トリグゲラ(この人)を倒すことが、瑠璃さんや山梨さん、アンバイドという人の危機はより少なくなる。)

と、李章は緑の水晶の結果を信じて、選択した結果であった。

 その乱入に、クローナは驚くことしかできなかった。そして、すぐに我にかえり、

 (ふう~、戦いに乱入してくれた李章()のおかげで、余計な浪費をせずに済んで、助かったぁ~…。それに李章(あの人)は、天成獣の力の宿っている武器を使えば、強いのに…。やっぱり、頑固な人かな。)

と、クローナは安心し、李章の強さをはかっていた。

 (油断した。ここには、あと、三人がいたことを完全に忘れていた。それに、フードの奴に倒された雑魚に倒されるなんて…。)

と、トリグゲラは悔しさを滲み出すが、すでに、戦えるほどの体力は残されておらず、地面に衝突して気絶することとなった。

 こうして、トリグゲラが敗れるという結果になった。


 しかし、これで戦いは終わることはなかった。

 それは、負けたくないという意思のために―…。


第25話-2 造られた竜に続く。

次回の更新で竜がでてくると思います…。

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