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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
369/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(23)~序章 アルデルダ領獲得戦(23)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿中。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、読んでみてください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミグリアドに入ったファルケンシュタイロは、エルゲルダの館の中を捜査させるのだった。そして、同時刻ぐらいのことだった。シエルマスの統領ラウナンは―…。

 ミグリアドの外。

 その場所からは、ミグリアドを眺めることができる。

 その場所には、ラウナンがいた。

 ラウナンは別に、ミグリアドの中に入る必要はない。

 むしろ、目的としては、消えたグルゼンの行方である。

 (グルゼン―…。あいつは、我々、シエルマスの手の中に一切、踊らず、このような勝手な行動をしてくるとは―…。ふざけるな!!)

と、ラウナンは心の中で怒りを爆発させる。

 ラウナンとしては、シエルマス、いや、自身の手の中でラウナンの思い通りに動いてくれる駒でいてもらわないと困る。

 なぜなら、ラウナンにとって予想外の行動をされると、それに対する対処に困ってしまうのだ。まあ、それでも、できないわけではないが、想定通りに進んでもらう方が楽であったりはする。

 余計なことに対して、対処しているばかりでは、本当に困った時に、一切対処できないと考えているからだ。

 掌で踊ってくれる。それは何て甘美なものであろう。

 だけど、現実というものは、思い通りにならないことが多いし、好事魔が多しとも言われるように、思わぬ落とし穴が存在するかもしれない。人生とは、ままならぬものである。

 その落とし穴の怖さに気づくことが、本当の意味で重要なことであり、駆け引きをしておくことにとっては重要なことである。

 (だけど―…、エルゲルダを奪われてしまったのだ。報告によると、グルゼンは、エルゲルダの身柄をミグリアドの住民に手渡したとか―…。馬鹿だな。こんなのは、さっさと処刑してしまった方が自らの戦果にすることがすぐにできるのに―…。グルゼンも軍事だけの男か、しょうもない。)

と、ラウナンは心の中で思う。

 というか、グルゼンのことを馬鹿にするのだった。

 ミグリアドで先を越されたと聞いた時は、そんな、と驚いてしまったが、それでも、エルゲルダを自らのシエルマスの一員を使うことで、ミグリアドの住民から奪うことができたのだ。ゆえに、さっさとエルゲルダを殺していさえすれば、グルゼンの戦果にすることができただろうに―…。

 その思いを抱いたラウナンは、グルゼンが軍事以外のことができない馬鹿だと思うのだった。ここで、ラウナンは重要な点を見落としているのだった。

 ミグリアドの住民からの信頼というものだ。ラウナンに言わせれば、征服される住民のことなど考える必要のないものであると、思うことだろう。

 征服されるということは、征服する国に従属するものであり、征服された国は征服した国が何をしても文句など言えるはずもない。征服された住民なんてそんなものだろうし、征服される方が悪いのだから―…。

 だけど、そのような単純なことばかりでないのが、実情だ。ケースの中から共通点を探し出すことで、ある物事における性質というものを理解することはできようが、その共通点とは、完全にすべてのものを見たというわけではなく、ある時点までにわかっていることを見た上のことだ。ゆえに、すべての出来事で同じような解答をすることはできない。そのことをラウナンは理解できていないようだ。あんなに謀略や諜報を大好きでしているのに―…。

 一方、グルゼンは、住民からの信頼を得ることが支配をしていくことにとって、重要なことを理解している。支配する上で一番困ることは、支配されている住民が反乱を起こすことだ。これは、意外に費用がかかるし、プラスになることはまずない。そう思えば、支配される住民の信頼をかい、そこから得られる利益の一部だけをもらうのが支配として効率が良いし、最終的に、自らの国と同じように平等に扱いつつも地域における実態に即した方が良い。間接だとか直接だとかの支配の形態関係なく―…。

 これは理想論に過ぎないだろうし、現実をわかっていない考えであろうが、理想なき行動は、何も善きものは生まないだろうし、現実を見ない理想は、最悪をもたらす。要は、現実と考えられる可能性、理想との調和が必要なのだ。バランス感覚を―…。

 そして、信頼を得ることができれば、自分達の思い通りにすべてではないが、やりやすくなることもあり、かつ、支配される側から得られる利益も大きくなりやすい。ただし、変な欲望や過剰な利益を得ようとすることは考えてはならないが―…。

 グルゼンは、そこまでを深く考えているわけではないが、それでも、征服することは支配し続けるよりも難易度が低いということをしっかりと知っている。ゆえに、支配し続けることを考えた上で行動しているのだ。

 まあ、ラウナンには、わからぬことか。支配というものが、支配されている住民をやりたい放題することだと勘違いしているのだから―…。

 (さて、グルゼンの愚か者よりも、私の目の前にいるエルゲルダをどうするかだ。こいつは馬鹿だから、使いようによっては、駒にでもできるか。)

と、ラウナンは心の中で思うのだった。

 ラウナンとしては、エルゲルダは軽蔑の対象でしかなかった。だって、こんな馬鹿なことしかできないのが、領主となっているのだから、アルデルダ領の人材はかなり深刻なのではないのだろうか、と思うぐらいに―…。

 まあ、ラウナンも馬鹿ではないから、アルデルダ領の中で、何が起こったのかは知っている。ゆえに―…、ある結論にいたる。

 (こいつを領主にしようとした勢力でもいたのだろうか。馬鹿の方が担ぐのには、容易いからな。まあ、担いだ奴は人を見る目がなかったようだな。まあ、もうアルデルダ領はないのだから、今更考えても意味はないな。エルゲルダをトップにした後ろ盾の情報は出てきませんね。というか、エルゲルダがトップになって殺したのだろうか。)

と、ラウナンは心の中で続ける。

 実際、エルゲルダをアルデルダ領のトップにしたのは、アババであり、ベルグの部下の一人である。アババとしては、それなり担ぎやすい存在に話しかけて情報を得ようとしたが、偶々、身内を殺して、トップの立ちたいエルゲルダに会ってしまったのだ。ゆえに、彼をアルデルダ領のトップにした上で、こっそりと、アルデルダ領の内部で、ベルグが大規模な実験を密かに進めていくことができる場所を探していたのだ。

 その時から、エルゲルダの命令を受けて、裏の仕事をしていた。

 だけど、エルゲルダの命令というものがかなりのアホであり、さっさと終わらせたいという気持ちであったが、それでも、ベルグからの命令が終わるまでの間は、アルデルダ領内にいるべきだと決まっており、その命令を守るために、エルゲルダに仕え続けたのだ。

 そして、クルバト町の虐殺という事件の後、ベルグによって、アババに出された命令は終わり、エルゲルダの下からこっそりと離れるのだった。クルバト町の虐殺を利用して―…。

 ゆえに、アババはエルゲルダ領にいるとしても、それはミグリアドではなく、ベルグとともになのだ。まあ、その場所へと来た時点で、シエルマスなど相手にならないだろうが―…。

 アババの形跡が見つからないのは、ラウナンにとって幸運でしかない、本人は気づかないだろうが―…。気づかない幸せは、気づいて初めてわかるものなのだ。

 まあ、アババはエルゲルダによって殺されるような人物ではないし、返り討ちになるのが決まっている。それに、アババはアルデルダ領のトップになることは望んでいない。それよりも、自身はベルグの部下なのだから―…。

 この時、エルゲルダが目を覚ますのだった。

 「うっ……、ここは………………。儂をどうするつもりだ!!!」

と、急に、エルゲルダを大声を出すのだった。

 だけど、その声は抑えられるのだった。口を塞がれることによって―…。

 ラウナンは、エルゲルダが目を覚ましたことに気づき、侮蔑な表情を止め、すぐに、頭を下げるのだった。

 「エルゲルダ様、お初にお目にかかります。」

と、ラウナンは言う。

 ラウナンは、別にエルゲルダを敬うことはしない。だって、する必要がないのだから―…。

 こんな馬鹿、いつでも殺すことができる。

 こんな弱い人物ほど、自らを強く見せようとする。

 強く見せなければ、今までずっと感じていて、拒否していた劣等感というものが、すぐに襲ってくるのだから―…。

 ラウナンの態度を見たエルゲルダは、自らの優位を悟り、態度をデカくする。

 「ふむ、苦しゅうないわ。どうして、お前らは―…。」

と、エルゲルダは言う。

 エルゲルダとしては、ラウナンのことをえげつない人物である可能性もあるが、ここまで低い態度で接してくるので、威張るような態度になる。

 「私たちは、ミラング共和国の特殊諜報機関および謀略機関のシエルマスでございます。ミラング共和国に仕えているのですが、私たちとしてもエルゲルダ様ほどの人物をこのような無益な戦争で殺そうとするのはもったいないと思ったからです。ゆえに、私たちとともに、ミラング共和国で有力な地位に就いてみてはどうですか?」

と、ラウナンは言う。

 そして、ラウナンは心の中で―…、

 (やっぱり、こいつは馬鹿だ。こいつなら、シュバリテが駄目になった時の駒として使えるか。)

と、思うのだ。

 見定めると言っても良いかもしれない。

 ラウナンにとって、エルゲルダなんて存在は駒の一つでしかないし、シュバリテと同じくらいにしか見なしていない。自らが支配するということは、責任をもたないといけなくなるから、その責任のために死ぬなんてもってのほかだ。ゆえに、こういう操り人形を用意して、自分にとって都合が良いように操るのだ。

 簡単だ。こいつの望みをある程度、叶えてあげれば良いのだから―…。操り人形は裏切られることなんて考えるはずもないのだから―…。

 ラウナンは、こうやって支配したいのだ。自分が真のミラング共和国の支配者として―…。

 「何を言っているんだ。お前らは儂の敵ではないか。儂をスカウトするなら―…。」

と、エルゲルダが言いかけた時、一筋の光のようなものを感じる。

 そして―…。

 「エルゲルダ様、あなたにできる選択肢は一つしか存在しないのです。ご安心ください。あなたにとって、都合が良いことになるのは確かなのですから―…。私たちが保証しましょう。あなたの栄華を―…。素晴らしいでしょ。」

と、ラウナンは言う。

 だけど、エルゲルダは言葉を発することができない。

 わずかでも動けば、ラウナンによって突きつけられたナイフが、エルゲルダの首を斬り裂くことになるだろう。

 恐怖。

 それ以外の言葉がいるのだろうか。

 だけど、その恐怖は、もし別シーンで似たようなものがあったとしても、同じものではない。違いが確実に存在するのだ。

 それでも、共通で言えることがある。それは、今、ラウナンに逆らうという選択肢は存在しない。この場で生き残りたいのであれば―…。

 ゆえに―…。

 (クッ!! ミグリアドの住民どもから助かったと思ったら、今度は危険な集団に捕まるとは―…。動けば、死。だけど、こいつらの操り人形になれば、俺が栄えることができるのならば―…。)

と、エルゲルダは心の中で考える。

 エルゲルダとしては、他者の命よりも自らの命の方が大切であることはわかりきっていることであるし、当然の常識である。常識である以上、この原理というものを疑うということは有り得ないことになる。

 エルゲルダは、自らの命を優先して、利益を最優先して、自らが見える利益を優先して―…。答えは決まっている。

 「お前らの話に乗ってやる。儂を十分に栄えさせろよ。」

と、エルゲルダは言う。

 それ以外に、答えはないのだから―…。

 そして、エルゲルダは、ラウナンによって保護され、操り人形になるのだった。甘美と栄華と、自堕落の日々の―…。

 (これで、予備を確保できた。)

と、ラウナンは、心の中で思うのだった。

 エルゲルダは、自らが予備であることも、都合が悪くなれば、捨てられる人形でしかないことに気づきはしない。まあ、そのような選択肢以外、エルゲルダが生き残る選択肢など存在はしないのだから、仕方のないことであろう。

 ラウナンは、ミラング共和国を裏で支配することで、他国を征服し、シエルマス、いや、自らの存在を闇深くから知らしめようとするのだった。

 決して、自らの隙というものや、欲望から考えられる、最悪の結末から目を逸らして―…。

 その後、エルゲルダは、シエルマスの護衛によって、ミラング共和国のシエルマスのアジトへと運ばれるのだった。

 これが、後に、シュバリテにとって破滅の危機をもたらし、ラウナンをも破滅させることになるとは、この時、二人とも思うはずもなかった。こんなに良いことがあるのに、どうして、最悪のことを思おうか? いや、ないか。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(24)~序章 アルデルダ領獲得戦(24)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


病院には行けたので、気持ち的には大丈夫です。ご迷惑をおかけいたしました。

そして、完全に元気というわけではないが、それでも、小説の制作作業のやる気はかなりあります。今年に入ってから、それなり、文章を書けているので、確かだと、自分自身は思っています。後は、PV数が増えることだと思っています。評価とかブックマークとかしていただけると助かります。してくれた人には感謝しかありません。

『水晶』を、今後ともよろしくお願いいたします。

では―…。

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