番外編 ミラング共和国滅亡物語(22)~序章 アルデルダ領獲得戦(22)~
『水晶』以外に以下の作品を投稿中。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、グルゼンはエルゲルダを捕らえ、ミグリアドの住民に引き渡すことに成功するが、シエルマスにエルゲルダを奪われるのだった。それから、グルゼンがミグリアドを出た後、ファルケンシュタイロがミグリアド入りをするのだった。
グルゼンがミグリアドを発った日の翌日。
ファルケンシュタイロは、ミグリアドに到着するのだった。
彼らは、前にも記したように、残っていたミグリアドの住民に対して、残虐性の高い虐殺をおこなっていた。
人がいくら自らを文明化という御旗を掲げたとしても、文明化という言葉以前に存在したようなことの全体の一部は、ただ、ただ、残っているのだ。
それは、主観的に良しとされるものであれ、悪いとされるものまで―…。
世界は残酷で、優しい、それをまるで証明するかのように―…。
「エルゲルダが、いません。ほとんどは役人ばかりでした。どういたします。」
と、ファルケンシュタイロの腹心は、自らの上司であるファルケンシュタイロに向かって言う。
このファルケンシュタイロの腹心であったとしても、別に、エルゲルダを隠したというわけではない。というよりも、誰かによって、連れ去られたとのことだ。
「どういたしますも―…。というか、エルゲルダがいない原因は何だ?」
と、疑問に思ったファルケンシュタイロは、自らの腹心に聞く。
一瞬、アルデルダ領のエルゲルダに仕える役人たちの処遇を言おうとしたが、それでも、エルゲルダの場所を知らないうちにそのようなことをしてしまえば、全くエルゲルダの場所を聞き出すことが後で、できなくなってしまうことに気づく。
ゆえに、エルゲルダの居場所を聞き出すのであった。
まだ、ファルケンシュタイロは、頭に完全に血がのぼっていなかった。
そして、ファルケンシュタイロからエルゲルダがミグリアドのエルゲルダの館にいないことを聞かれた、腹心の一人は答える。
それは、役人から聞いたことを―…。
「ええ、私たちがエルゲルダの館の中に入った時、すでに、役人たちばかりで、役人たちから聞きましたところ、昨日、ミラング共和国の軍人、数十人が館の中に侵入し、エルゲルダをミグリアドの住民の下へ連れ出したというのです。その先頭にいたのが、厳つい顔をして、如何にも親方と思わせるような人がいて、周りからはグルゼン様と呼ばれていたそうで―…。」
と、言っているファルケンシュタイロの腹心は、まずそうに言うのだった。
グルゼンのことをファルケンシュタイロは、毛嫌いしているのだ。グルゼンの方が優秀であることは確実であるが、それでも、ファルケンシュタイロは自らが優れていないと気が済まない。筋力もあり、軍事に関しての知識もしっかりとしていると、ファルケンシュタイロは思っているのだから―…。
「何だと!!!」
と、ファルケンシュタイロは叫ぶ。
その叫び声に、ファルケンシュタイロが率いる軍隊の、ファルケンシュタイロの近辺にいる者たちは、一瞬、ビックリして、ファルケンシュタイロの方に視線を向けるのだった。ゆえに、ファルケンシュタイロは注目の的になるのだった。
的になると言っても、ファルケンシュタイロに自らが注目されるのは嫌なので、目立たないようにではあるが―…。だって、ファルケンシュタイロは気に入らないと、暴力行為を加えるという噂があるのだ。
グルゼンの方は、そういう噂もあるが、グルゼンの部隊に属している者たちから現実にそのような噂をする者はいない。グルゼンは暴力で接したところで、本当の意味での信頼というものは手に入れられない。相手からの信頼を得るということはそんな簡単なことではないことを理解しているのだ。
ファルケンシュタイロは、返って、暴力的な面があり、暴力で屈服させることもやむを得ないと思っている。味方においてさえ―…。軍事力が国家の力だと勘違いしているからであろう。
国家の力は軍事力イコールになることはない。外交力、経済力などのいろんなものの総合によって、国家の力は図られるのだから―…。後は、正確性の高い分析力をもった上での想像力と、他への理解する力だ。
さて、話を進めて、ファルケンシュタイロは、驚くしかなかった。自らの予想を超える行動をグルゼンがしてきたのだ。グルゼンが逃げ出したのだと思えば、むしろ、ミグリアドを攻め、エルゲルダを連れ去っていたのだ。普通ではありえないし、ファルケンシュタイロの想像の範囲ではなかったからだ。
人が想定する時は、時間の関係上、無限になすことはできない。有限だ。それは、想定することに対して、時間を消費するからである。だからこそ、以上の結論になり、想像の範囲を超えることが発生するのだ。
(クソッ!! グルゼンの野郎~。部隊からいつの間にかいなくなって、お前だけが手柄を手にいれようとは―…。ふざけるな!! ふざけるな!!! ふざけるな!!!!)
と、ファルケンシュタイロは心の中で怒り狂う。
だけど、このような怒りを部下どもに知られるわけにはいかない。冷静でなければ、将としての任を全うすることができないのだから―…。軍事のことに関しては、しっかりとした知識と経験をもっているファルケンシュタイロなので、そのことに関連したことで大きな間違いを犯すことは少ない。まあ、兵糧とか工兵が必要とする土木に関する知識には疎いのだが―…。ファルケンシュタイロにとって、そんなものは知らなくても、戦いで勝利することは可能だと思っているからだ。
そのファルケンシュタイロの思いとは異なり、怒り狂っている表情は、近くにいる兵士たちには丸わかりであった。なぜなら、表情に漏れちゃっているのだから―…。駆け引きとかは得意ではないということが理解できてしまうぐらいだ。外交の場では出すべき存在ではない。
そして、ファルケンシュタイロは、表立っては冷静に振舞うように言い始める。
「そうか、わかった。グルゼンの方に関しては、合流した時に私の方から話を聞くことにする。そして、ここでのミグリアドの戦果は、グルゼンではなく、私の成果にするように―…。わかっているな。」
と、グルゼンの成果を自らの成果にしようとするのだった。
ファルケンシュタイロの部下は、
「はい、わかりました。」
と、返事をする。
そりゃそうだろう。軍隊において、上官の命令は絶対なのだから―…。さらに、上官は元々、軍事行動に対して、責任を負う立場であり、軍事行動を円滑に進めていく必要があるために、指揮命令系統は合理的でなければならない以上、権限も大きくなる。それは、上官の能力に依存しやすい傾向を生み出すことにもなるのであるが―…。優秀な部下がおり、交渉上手なのであれば、その依存しやすい傾向をいくらか和らげることはできるが―…。
そして、このファルケンシュタイロの腹心の一人であり、部下の一人である話を聞いた者は、交渉上手でも頭の中でより良い選択は何なのかということを考えることができるほどの能力を持ち合わせていない。
なぜなら、ファルケンシュタイロ自体が軍事以外では優れた能力を発揮できないからだ。さらに、グルゼンという比類なき存在がいるので、優秀な人材はグルゼンの方に向かっていってしまうのだ。まあ、ファルケンシュタイロにとっては、心の中で不幸だと思っていることだろう。悔しい思いも同時に―…。
さて、ファルケンシュタイロにとっては、ミグリアド攻略をグルゼンの成果にしようとは思っていなかった。グルゼンは戦いにおいて優秀な指揮官であり、かつ、個人としても天成獣の宿っている武器を扱う者に対抗できる以上、成果を手に入れることは簡単であり、ファルケンシュタイロ以上の戦果を常に得ているわけだ。
そうなってしまうと、こういう戦争の場合、グルゼンの活躍に目がいくようになり、対外強硬派の地盤が揺るぎかねないのだ。より、簡単に言えば、戦いで勝利をもたらすというのは、誰にとっても分かりやすく、広まりやすいものである。
だけど、ここにはプロパガンダの入れようがいくらでもあるという余地が存在する。だって、従軍した人であっても、勝利の瞬間というものを見ることはないのだから―…。戦争における勝利とは、勝利と知らされることによって、勝利したのだと、逆に負けた時も同様に、確信するのだ。それが事実であるかどうかを調べる者なんて、ほとんどいないのだから―…。勝利は、時に思考停止へと導くことがあり、敗北は、現実逃避を生み出す時がある。
結局、その原因という根本を知ろうという好奇心を失うことの危険性を常にはらんでいるとも言えるのか。疑うことが時に必要なこともあろうに―…。
そのプロパガンダを挟むことによって、ファルケンシュタイロは、対外強硬派が権威をミラング共和国にとって、あわよくば、ミラング共和国以外にとって、強いものへとしようとするのだった。それは、対外強硬派がこれからのミラング共和国の政治で好き勝手やり放題すること、自らの利益だけを追求するためのものであろう。
まあ、ファルケンシュタイロのグルゼンによって先を越されたという気持ちがあったことを否定することはできないし、その気持ちが大きいのであるが―…。
どんな自分達の行動に崇高性があろうとも、自らの感情というものなしに、行動することはできやしないのだから―…。
そして、ファルケンシュタイロの腹心の一人は、伝令役にファルケンシュタイロの命令を伝えに行くのだった。
その後、ファルケンシュタイロは、エルゲルダの館の方へと、数人の護衛をつけながら、向かうのだった。
エルゲルダの館。
そこの中にあるエルゲルダの執務室。
そこに、ファルケンシュタイロがやってくる。
ファルケンシュタイロがやってくる前に、兵士の何人かが、すでに書類などを押収していた。まあ、金銭をちょろまかそうとする者もいたが―…。
「で、どうだ。」
と、ファルケンシュタイロが言う。
この執務室を調べるよう命令された責任者の一人が、ファルケンシュタイロの下へとやってきて、報告する。
「ファルケンシュタイロ様。ご報告させていただきます。ここには、エルゲルダが執務をしていたものと思われる書類があり、それを我々の軍隊に従軍させて軍政官に分析させています。それと、エルゲルダの執務室には、ミラング共和国の軍人グルゼンが入っていき、エルゲルダを連れ去ったのですが、誰かによって、連れ去られてしまった模様です。」
と、正直に、責任者は言う。
ファルケンシュタイロがどういう人であるか、知らないわけではない。だが、軍人である以上、職務に上司の命令に忠実でなければならない。そのことを骨の髄まで染み込ませている。
ゆえに、嘘、偽りなしに報告する。
ファルケンシュタイロは、この報告を聞いて、少しだけ、心の中でニヤつくのだった。
(グルゼンの野郎―…。敵のボスを取り逃がすとは―…。ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、傑作、傑作。俺を出し抜こうとしたけど、最後は失敗してやがってんの!! これなら、俺が描く嘘もシュバリテが採用してくれるだろう。俺は、名誉が欲しいのだ、軍人としての―…。グルゼンを超えるほどの―…。)
ファルケンシュタイロとしては、グルゼンが最後にエルゲルダの身柄を何者かによって連れ去られたことに関して、その何者かには感謝しかない。それをなした人物に―…。
ファルケンシュタイロは冷静な表情になり―…。
「そうか、報告感謝する。エルゲルダの身柄を確保するための―…。」
と、ファルケンシュタイロが言いかけると―…。
「ファルケンシュタイロ様。お耳に入れておいて欲しいことがあります。」
と、急に声をかける人物が現れるのだった。
黒い衣装に身を包んでおり、その人物がシエルマスの関係者であることを理解する。それは、この執務室の責任者なら理解できることである。だけど、彼らに関わろうとは思わない。
(シエルマス。噂に聞いた程度だったが、本当に存在するとは―…。関わるべきではない。見なかったにすべきだな。)
と、その責任者はファルケンシュタイロから数歩ほど引き、シエルマスとファルケンシュタイロの会話を聞かないようにするのだった。
それが、自らの身を守るためには必要なことであるから―…。
「何だ。」
と、ファルケンシュタイロが言うと、シエルマスの一人であろう人物が言い始める。
ヒソヒソ声で―…。
「アルデルダ領の領主エルゲルダは、シエルマスがグルゼンから奪還することに成功した。エルゲルダの処分に関しては、シエルマスがおこなうこととし、それ以外のアルデルダ領の役人たちおよび住民の処遇は、ファルケンシュタイロ様に任せると―…。そして、ミグリアドの戦果に関しては、ファルケンシュタイロ様のものにしても構わないと―…。シエルマスの部下をラルネに派遣し、シュバリテ様から許可を貰うと―…。確実に、今回のミグリアドの戦果はファルケンシュタイロ様のものになります。」
この言葉に、感情というものはないが、実際に、エルゲルダを確保したのは、シエルマスであり、すでに、ラウナンのところへとミグリアドの住民から奪ったエルゲルダの身柄を移動させている。
そして、ラウナンは、考えられることを考え、今回のミグリアドの戦果をファルケンシュタイロの手柄とした。対外強硬派の基盤を固めるために―…。より強固にするために―…。
「わかった、と、ラウナンに伝えろ。」
と、ファルケンシュタイロが言うと、
「わかりました。」
と、シエルマスの一人は、そのように返事をするのだった。
その後、すぐに、黒い衣装に身を包まれたシエルマスの一員は、消えるのだった。
向かう場所は決まっている。
ラウナンのいる場所だ。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(23)~序章 アルデルダ領獲得戦(23)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
頭の痛みとかゆみはありますが、日常生活には影響あまりしていません。
というか、ちゃんと病院いかないと―…。深刻ではないと思いますが―…。
そして、『水晶』に関しては、ユニークがもう少しで1万人を超えると思います。早ければ明日にも―…。長かったなぁ~、と思っています。それ以外に出る言葉があるにはありますが、第一ですね。『水晶』を読んでくださり、評価およびブックマークしていただいた方には感謝しかありません。ありがとうございます。
今後とも、『水晶』の方をよろしくお願いいたします。
さて、次回の投稿は、2023年1月24日頃を予定しています。
では―…。