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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
367/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(21)~序章 アルデルダ領獲得戦(21)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿中。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んでみてください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、ミグリアドを包囲したグルゼンの軍は、グルゼンとその部下、ミグリアドの代表とともに、エルゲルダの館の中へと進み、エルゲルダを発見、その後、エルゲルダを捕まえるのだった。

 エルゲルダの館の外。

 そこに、グルゼンとその部下が姿を現わす。

 そして―…。

 「グルゼン様。エルゲルダ様の方は―…。」

と、ハウナーが代表して尋ねる。

 ハウナーは、今回の代表として、グルゼンと共に、エルゲルダの館の中に入ったわけではない。理由を挙げれば、ハウナーがグルゼンに言われて集めていたので、グルゼンとグルの可能性もあり、信用ならないと住民の一部から判断されたためだ。そして、その住民の一部の中の一人が代表して、グルゼンとともに館の中へと入っていったということだ。

 ゆえに、ハウナーは、グルゼンがエルゲルダをこの場に連れ出すということの約束は実行されたのか、不安で仕方なかった。だって、ミラング共和国の軍人であるグルゼンが、ハウナーとミグリアドのここに集まっている住民の約束を守らずに、エルゲルダを殺したうえで、さらに、勝手に遺体を焼却などしようものなら、反感を買ってしまうだろう。

 「ああ、気絶して連れてきた。お前らがエルゲルダを煮るなり、焼くなり好きにするが良い。」

と、グルゼンは言う。

 そして、部下たちによって運ばれてきたエルゲルダを見て、誰もが知っているエルゲルダの姿だと認識する。それと同時に、エルゲルダによって受けられた数々の酷い仕打ちを思い出し、怒りを燃やす。

 例えば、娘がエルゲルダに気に入られて、無理矢理、エルゲルダの部下たちによって連れ去られて、手籠めにされてしまったが、飽きたのか娘は捨てられ、処分という感じで娘は殺された娘の両親。

 二つ目に、エルゲルダの側近であったが、エルゲルダに対して意見を具申し、それがエルゲルダの逆鱗に触れるものであり、かつ、エルゲルダのおこなっていることに反対するものであったものだから、エルゲルダが裏の者たちによって殺されたという側近の息子と娘たち。

 最後に、エルゲルダの政策によって、勤めていた商会がなくなり、クビを切られ、アウトローとなったもの―…。

 このような例は、例であり、他にも大量にこのように、エルゲルダの政策によって苦しめられた者たちがいる。

 そういう者たちが、エルゲルダの館に集まっているのであった。

 そして、エルゲルダの身柄は、ハウナーからミグリアドのエルゲルダの館に集まった者たちに、渡されるのだった。

 「ありがとうございます、グルゼン様。」

と、ハウナーは代表するかのように言う。

 だけど―…。

 「残念だが、俺はお前らの味方ではない。だけど、一つだけ言っておく。ミラング共和国軍を信用するな。俺の部下は、ミグリアドおよび、エルゲルダ領の領民に危害を加える気はないが、エルゲルダの政策のせいで、ミラング共和国はリース王国を恨んでいる。恨んでいるからこそ、その腹いせに何をするかわからない。だから、お前らは、切りの良いところでエルゲルダを痛めつけたら、ミグリアドを出て、より、リース王国の中へと避難した方が良い。これは忠告であり、警告だ。俺としても、無駄に人を殺したくはないからな。統治というものを知っている者なら、そうする。」

と、グルゼンは言う。

 グルゼンとしては、これはミグリアドの住民たちに対する、せめてもの身勝手な誠意だ。ミラング共和国の軍人である以上、このようにミラング共和国を貶めるような言葉を言うべきではない。だが、そうであったとしても、おかしなことをおかしいと言えないと、何も言わないことを良いことに、悪い方向により進んでしまうことがある。良い方向であれば、逆に良いのだが―…。人は、自らの未来というものを完全にわかることがない以上、いろんな可能性というものを知っておく必要があるということだ。

 「そんなぁ~。」

と、ハウナーは残念な表情をする。

 そして、ミグリアドのエルゲルダの館の前に集まっていた者たちの中で、今のグルゼンの言っていることが聞こえ、理解したものはショックを受ける。

 と、同時に―…。

 「すぐに、全員に知らせないと!!」

 「そうだ、そうだ!!!」

 そして、多くの者に知らされることになり、ミグリアドはその後、ミラング共和国軍のファルケンシュタイロの本隊が来る頃には、ほとんどの者が逃げ出しており、寒村と見間違うぐらいの静けさになっていたとさ。

 逃げられなかった者たちは、ファルケンシュタイロの本隊によって殺されるか、もしくは酷い目にあうことになった。言葉で和らげて言っているが、その内容は(おぞ)ましいものであり、ここではとても述べることができないことだ。人とは、いくら文明化したとか言おうが、残虐性というものを完全に取り払うことはできない。正義のためなら復讐をも美化できるのだ。根源を知り、断ち切ることをも拒否し―…。

 本当の意味で、復讐を生まない行動というのは無理だが、その根源というものを理解することはできるし、そこからより普遍性の高い要素を抜き出し、すべてではないにしろ、形を変えながら適応させておく必要がある。そうすることで、問題を解決することを容易にする可能性が存在する。

 まあ、これ以上言えば、物語から逸れることになる。なので、話を戻す。

 グルゼンは、

 「フォルマート、明日辺りには、本隊にこっそり合流する感じで進軍することにする。ルートははっきりとわかっているのだろうな。」

と、言う。

 グルゼンとしては、ミグリアドですべきことはやったつもりだ。ミグリアドにいるエルゲルダを捕まえ、ミグリアドの住民にエルゲルダの身柄を渡すということだ。そうすれば、アルデルダ領というものが機能しなくなるのは確かだ。

 ゆえに、アルデルダ領の機能を奪えば、アルデルダ領の軍隊は混乱し、ミラング共和国は少ない兵の損傷でアルデルダ領を支配することができる。

 一方で―…、

 (アルデルダ領は簡単に陥れることはできる。エルゲルダという馬鹿にも及ばない者が完全に実権を握って支配している限り―…。次は、少しだけ、頭が使える者の相手だ。ファルケンシュタイロには少しだけ荷が重いだろうが、ラウナン、シエルマスの統領が裏でコソコソと操るだろう。ラウナン(あいつ)は、征服欲のある奴だ。それも自分の気持ちを満たすための―…。その気持ちをミラング共和国に住む人々のために少しだけでも向けられるのであれば、裏だけでなく、表舞台でも良い役者としての役割が手に入れられただろうに―…。それには、一生気づくことはないか。己の欲望に一生懸命に生きているのだから―…。ふう~、今度は、エルゲルダ領の領境での、リース王国軍の戦闘になるな。ファルケンシュタイロが俺の活躍を喜ぶはずがない。あいつは、筋肉馬鹿であり、軍事以外のことなど、何も考えるはずのない男だ。シュバリテも馬鹿を抱えたものだ。まあ、シュバリテごときの従順な犬に完全になる気はないがな。さて、準備が完了次第、ここを発ち、俺らは、地味にリース王国軍と戦うのがベストだろう。睨まれないように、適度に―…。)

と、心の中で思うのだった。

 グルゼンは、アルデルダ領を征服することは簡単だが、それ以上の侵攻は無理だと判断できる。なぜなら、アルデルダ領は必要のない迷惑な領土なので、ミラング共和国にでもやれば良いと認識している。一方で、エルゲルダ領を越えての侵入は、リース王国軍が許してくれるはずがない。なぜなら、これ以上は、リース王国にとっても利益になり、かつ、これ以上の失態はラーンドル一派にとっても容認できないものであり、ラーンドル一派のトップの首が飛ぶ可能性があるからだ。物理的に―…。

 そうなることを、メタグニキアが許すわけがないし、そのような結果を確実に嫌うはずだ。メタグニキアもエルゲルダとどんぐりの大きさほどしか能力の差がないのだから―…。

 そう思うと、リース王国側のラーンドル一派も含め、総力を用いて、ミラング共和国の侵入を抑えようとするはずだ。結果として、アルデルダ領を奪った以後の前進は期待できなくなる。

 それに、リース王国には、騎士団も存在し、その騎士たちはかなり強い。ラーンドル一派から恨まれているようだが、それでも、リース王国の軍事力の根幹は、騎士と優秀な一部の指揮官によって成り立っている。兵士が全員優秀とは限らず、ラーンドル一派の指揮官は、一応仕事ができる以外は、能力が低い。まあ、それを何とか周りが補うことで、強さを保っているのであるが―…。

 ファルケンシュタイロとリース王国の指揮官では、軍の指揮力ではどっこいどっこいなので、決着が着く可能性はかなり低いだろう。膠着するあたりで休戦条約もしくは終戦条約を結ぶのが妥当な選択となってくる。

 まあ、それをミラング共和国に住んでいる人々が納得するかどうかは、未来のことなので、確定させることはできないが、アルデルダ領を奪ったので、一応の納得は得られるだろう。シエルマスが、それを勝利の喜びという感じで、過剰に宣伝するだろう。なぜなら、そのように宣伝することで、対外強硬派の支持を集めようとするはずだ。

 シエルマスの統領であるラウナンは、頭の回転が速いが、自らの欲望を優先したり、謀略を誇らしげに親しい人に語ったりするがゆえに、情報が漏れる可能性も存在し、謀略にとって邪魔な者は考慮に入れたりしようとしない。

 だからこそ、グルゼンは、ラウナンにもう少しミラング共和国に住んでいる人の利益を客観的に考えて欲しいし、そうすれば、自らがミラング共和国のトップの地位に就ける可能性があっただろうに、と思ってしまうのだ。

 でも、ラウナンは、ミラング共和国におけるトップの地位は求めていない。なぜなら、裏でミラング共和国のトップたちを操り、自らの思い通りに動きたいのだ。フィクサーとしての役割を全うしたいのだ。表舞台に興味はない。

 なぜなら、そっちの方が、もしも問題が起こったとしても、ラウナン自身が責任を取らなくてもよいし、次の操り人形を仕立て上げ、ずっと、裏から自分の思い通りに支配することができるのだから―…。その方がずっと、長く、自分のしたいことができるのだ。

 そのようなラウナンの気持ちをグルゼンは知っていないし、知る気もないだろう。もう、グルゼンは、ミラング共和国軍に士官することは今回のミラング共和国とリース王国との戦争で、終わるのだから―…。

 だが―…、ここでグルゼンにとって予想外な事態が起こる。

 「何者だ!!!」

 「エルゲルダを連れ去るな!!」

 叫び声と言ってもおかしくない声が聞こえた。

 その声がする方向を向くと―…。

 そこには―…。

 (シエルマスか!! お面までつけて、正体を隠そうとしているが、服装でバレバレなんだよ!!)

と、グルゼンは舌打ちしながら心の中で言う。

 グルゼンとしては、今すぐにでも、エルゲルダを連れ去っている黒服で身を包んでいる奴を追いかけて、仕留めた後に、再度、エルゲルダをミグリアドの住民へと引き渡そうと考えた。

 だが―…。

 エルゲルダを連れ去っている者の跳躍力は、一般の人ができるようなものではないほどに高く、遠くへと飛んでいるのであった。

 それを見て―…、

 (あいつは、天成獣の宿っている武器を持っている奴か!! 俺の部下の中にもいるが、明らかに属性が生のタイプだ。それに初動で遅れてしまっている。追いつくのは不可能か!!)

と、グルゼンは諦めるのだった。

 エルゲルダの奪回を―…。

 ミグリアドの住民は悔しそうにするのだった。

 だけど、グルゼンはこの悔しさの相手をできるほどの暇というものはなかった。

 「あれは、裏の者だ!! 俺ら軍人でも、あいつらの逃げ足に追いつくことは不可能だ。諦めて欲しいとは言えないが、それでも、今の状況を考えると、さっさとミグリアドを去り、遠くへ行った方が良い。俺からの忠告だ。」

と、グルゼンは叫ぶように言う。

 グルゼンとしても、ここで、無視するのは罪悪感があるし、まだ、完全に信頼を得ていない以上、このような発言をしておく必要がある。善意ではない、必要だからしているだけのことだ。

 そのグルゼンの言葉を聞いたミグリアドの住民は、今からミラング共和国軍が攻めてくることを理解し、すぐに避難の準備を始めるのであった。決して、全員ではないし、一部はグルゼンの言葉を無視して、エルゲルダを追いかけるのだった。追いかけた者がどうなったかをここで記す必要はないし、覚えておく必要はない。要は、追いかけた者の多くがミラング共和国軍と遭遇し、自らの生を終えるという結末を辿ったのだ。無惨に、残酷に―…。

 その後、グルゼンらも翌日に、ミグリアドを出発するのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(22)~序章 アルデルダ領獲得戦(22)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


では―…。

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