番外編 ミラング共和国滅亡物語(19)~序章 アルデルダ領獲得戦(19)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿中。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
以上の作品にも、興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、グルゼンがアルデルダ領の首都ミグリアドを包囲し、エルゲルダがいると思われる屋敷の中へと歩を進めるのだった。一方、ラウナンは、グルゼンのおかしな行動を完全に掴むことができなかったが、シエルマスの知らせからグルゼンがミグリアドにいることを知るのだった。
その頃、グルゼンは―…。
エルゲルダの屋敷。
その中を、数名の者たちが進んで行く。
その服は、軍服であり、軍人であることがわかる。
これから軍事関係の会議なのだと思ってしまうかもしれないが、それは違う。
クーデターか。それも違う。
彼らの目的は、このアルデルダ領の領主であるエルゲルダをミグリアドの住民の下へと連れ出すことである。だって、ミグリアドの住民の代表もいるのだから、全員が軍人ないことはわかるだろう。
すでに、エルゲルダは詰んでいる。
この歩いている軍人たちとミグリアドの住民の代表の先頭にいるグルゼンというミラング共和国軍の将軍の一人によって―…。
グルゼンは、最初から情報を集めて理解していた。
エルゲルダに本当の意味で味方はおらず、恐怖政治をなしていたことを―…。
そして、進みながら領主で働いている者たちがいるにも関わらず、まるで、彼らが存在しないかのように進んで行く。
すでに、アルデルダ領の領兵は、ほとんどがミラング共和国との戦いで、ミグリアドの外に出ており、ミグリアドを守っている軍も、グルゼンにほとんどが降伏しているし、反抗している者たちは捕まえている。
ゆえに、エルゲルダは詰みであり、もうどうすることもできない。
「あのすみませんが―…。」
という、エルゲルダの部下に対して―…。
「ここから先に進めせてもらう。抵抗するなら、お前はここで俺が斬り捨てる。」
と、グルゼンは剣に手をかける。
グルゼンとしても余計な殺生というのは好まない。これからの統治にとって、面倒くさいことになるからだ。
それに、グルゼンは、このように止めようとするエルゲルダの部下を気絶させることは、あまりにも簡単なことでしかなく、わざわざ殺す必要はないのだ。向こうが殺そうとしてくるのなら、正当防衛として殺させてもらうが―…。まあ、これを正当防衛というのかは、定義の問題があるかもしれないので、使い方が正しいと思う気はない。
「邪魔だ。」
と、グルゼンは言いながら、止めて来たエルゲルダの部下を気絶させ、横に放り投げるのだった。
あくまでも、気絶したエルゲルダの部下を死なせないようにするぐらいの配慮はしている。
別に、死人を増やすためにここにいるのではない。
それに―…。
「お前は残念だが、俺の部下に斬られるだけだ。」
と、グルゼンが言うと、グルゼンの部下の一人が剣を抜き、一人の文官の格好をした人物を突き刺すのだった。
「貴様…、て…。」
と、刺された人物が言おうとした時、グルゼンがその人物の首を二度と繋げることができないようにする。
「グルゼン親方。」
「親方じゃねぇ、将軍と言えと言っただろ。だけど、こいつは確実に裏の者だ。エルゲルダのな。こいつは見せしめだ。所作でバレバレなんだよ。俺は、シエルマスとか言うもっと上手い奴を倒してる。この程度で、俺を殺せると思うな。」
と、グルゼンは、さっき、斬ったばかりの人物に向けて、声を荒げる。
でも、その人物が、グルゼンの言葉を聞くことはできない。わかることだろう。
グルゼンとしてもそのことは十分にわかっているし、敢えて、このような罵声のような声を出しているのだ。
それは、周囲の者に、グルゼンやその部下を殺そうとすれば、それに成功しないどころか、最悪の場合、この裏の者のような結末になるぞ、ということを示すためだ。裏の者をも含めて―…。
さらに、この人物が本当の文官の人間であったなら、殺すことはなく、放り投げた者と同じ扱いをするつもりだ。
裏の者は、生きて逃がせば、かなり最悪のことになるのは、わかっている。情報が広がり、奇襲の場合は、相手側に対応されてしまう可能性が高まるのだ。本当に、情報というものは価値の高いものである。ガゼの場合は、価値のないどころか、最悪の結果を情報を手に入れた側にもたらすだろうが―…。
おまけだが、グルゼンは親方と呼ばれることを好まないが、部下からよく呼ばれている。なぜなら、グルゼンの見た目が、厳つい表情で、難しいことを考えていそうに見えるので、それが職人の中のトップ、親方のように見えることから、愛称として呼ばれている。いくら注意しても、改めることはない。
ゆえに、グルゼンは将軍という名前よりも、グルゼン親方の方で知られている。そして、同時にかなり有能であり、統率力のある将軍として周辺諸国に恐れられている。まあ、脳が筋肉で出来ているなどという変な噂も広がっているのだが―…。実際は、脳筋ではなく、勉強できるし、読書もする文武両道の人なのである。
「油断するな、ホーマンダー。こういう裏の者は躊躇っていると、すぐに、その隙を突いてくる。」
と、グルゼンは、続けて言う。
ホーマンダー、正式に言えばホーマンダー=チラードというグルゼンの部下の一人であり、軍人としては、一師団を任せられるほどの実力を持ち、兵士としての力量も高い。グルゼンに見いだされ、グルゼンの部下になっており、グルゼンの部下の中でも三人の強い兵士の称号である三兵士の一人である。
そして、グルゼンとしては、ホーマンダーはまだかなり若いため、まだまだ甘いところがあり、一人前だと見なしていない。だけど、将来においては、有望な人材であることは間違いない。
「はい!!」
と、ホーマンダーもグルゼンの言っていることが理解できたため、返事をし、自らの甘さを悔いる。
そういうことで、悔いれるほどに自分の愚かさというものを認められるホーマンダーは、グルゼンにとって成長できる人間だと思えて、安心するのだった。
そして、グルゼンとその部下は、エルゲルダを探すのであった。
そのなか、ミグリアドの住民は、グルゼンの強さと恐ろしさを理解し、言葉を発することができなかった。後悔の念すらあったかもしれないが、それでも、エルゲルダから解放されるのなら、という思いで、大人しくついて行くのだった。
一方、リース王国軍の拠点では―…。
そこには、アールトンが来ていた。
その垂れ幕の中では、秘密の会議がおこなわれていた。
今回のリース王国軍のトップであるファルアールト=フォンマエルとアールトンは、話し合っていた。
「で、作戦は何だ。一回の商人が私たち、軍人の領分に関わってくるのは、こっちとして困るのだが―…。」
と、ファルアールトは言う。
ファルアールトにとっては、迷惑なことでしかなかった。軍事の素人をいきなり作戦の立案者にされるのは嫌いだ。だって、軍事の専門家である自分達が考えた作戦の方が、絶対に上手くいくことは確かなのだから―…。
まあ、基本、餅は餅屋という感じである。
(まあ、ファルアールト=フォンマエルは、このように私を邪魔者のように感じるでしょう。それは仕方のないこと。軍事のことは、その道の専門家に任せるのが一番だ。だけど、戦いという面ではそういうことにしますが、それ以外の後方や経済という面に関しては、こいつら軍人は専門外であるし、経済のことを軽視すらする。妄想で作戦を組み立てる。そのサポートを一体、誰がやっていると思っているのだ。少しぐらい感謝をして欲しい。それに、ファルアールト=フォンマエルが将軍の地位にいられるのは、我々が支持したからだろう、ラーンドル一派が―…。こういう時ぐらい、素直に従え、ってものだ。)
と、心の中で、アールトンは悪態をつく。
理由は、ファルアールトの今の言葉や、言い方によるものだ。ファルアールトが将軍へと出世することができたのは、ラーンドル一派の後ろ盾があったからこそであり、そうでなければ、どこかの小隊長か最悪の場合は、リース王国を追放されて、路頭に迷っていてもおかしくはないのだ。ゆえに、感謝の一つぐらいして欲しい。
だけど、ファルアールトは、自分が出世するのは当たり前だし、ラーンドル一派に貸しがあるとしても、すでに返したと思っているし、これまでの戦いで十分に恩を与えたとも思っている。相互に食い違いというものが完全に生じてしまっている。
それでも、アールトンは、ファルアールトに自らの気持ちを悟らせないように、表情を繕うのだった。理不尽なことを言われようとも、これで、自らの目的を達成できるのなら―…。強かさというものをしっかりとアールトンは持っているのであった。
「ええ、戦争に関しては、ファルアールト=フォンマエル様の素晴らしい指揮にお任せいたします。だけど、ファルアールト=フォンマエル様がより戦での勝利というか、指令を達成させることを確実とさせるために、私はファルアールト様のサポートしたく思っております。決して、ファルアールト様の邪魔などいたしようもございません。」
と、アールトンは言う。
アールトンとしては、ファルアールトという人間があまり指揮が上手ではなく、短気の性格が災いしているのを知っている。それでも、こういう奴は利用しやすいと思っている。
こういう人物は、自分が優れていることに対して、満足感を得るような人物であり、何かを達成するために、何が必要で、それをなすために他者との対等な協力関係を築くということができない。なぜなら、自分が一番でないと気が済まない。
ファルアールトはそのような人物であるからこそ、アールトンは一時的でも下の立場になっていれば、確実に、裏でコントロールすることができるし、自分の思い通りに動かすことは可能であると踏んでいる。そのことに、ファルアールトは、気づくはずもなかった。
「そうか、言ってみろ。」
と、ファルアールトは言う。
その態度は、傲慢で、アールトンを見下すものである。
だけど、そのような態度に対して、不満など一切ないという感じで、微笑みながら自らの作戦を言い始めるのだった。
その前に、
(ムカつくな!! いつか、絶対に潰してやりたい、こんな馬鹿!!!)
と、心の中で、アールトンは思いながら―…。
「では、まず、今回のリース王国軍の作戦としては、ミラング共和国に負けることです。ただし、割譲する領土はアルデルダ領のみであり、それ以外の領土を割譲させないこと―…。そのためには、アルデルダ領を越えてくる場合は、確実に、ミラング共和国軍に勝利しておかないといけません。それに加え、リース王国の騎士団の兵員を減少させて、ラーンドル一派の息の根がかかっている者たちをリース王国の騎士団に入団させないといけません。それに、リーウォルゲ団長は邪魔なので、失態の責任を押し付けて、排除します。」
と、アールトンは言う。
アールトンとしては、これは前置きみたいなものであるが、その前提となることさえも―…。
「そんなちまちました話は、聞きたくない。簡単に、何がしたいのか、作戦を言え!!」
と、ファルアールトは言う。
ファルアールトも、今回のミラング共和国との戦争は、リース王国側が敗北することなのはわかっている。そして、アルデルダ領のみをミラング共和国側に割譲するということも―…。
ゆえに、そのような前置きを確認するよりも、今、アールトンが考えている作戦について説明しろというのだ。
「これは失礼いたしました。では、言わせていただきます。作戦は、リース王国の騎士団への食料運搬を事故などとして、その回数を減らし、一部の騎士団兵士を食料が裏ルートで運ばれていることを噂でバラし、集まってきた者たちを買収する予定です。さすがのリーウォルゲ騎士団長でも、買収されることと、複数の騎士の不審な行動を止めることはできまい。金に釣られる騎士なんてものは、裏の報酬でも設定して、アルデルダ領の我々の陣地へと来た時に、ミラング共和国の兵士一人の首および今回の対象ファルケンシュタイロなどの将軍らの軍に賞金を出すと言えば、勝手に戦うことになりましょう。それを指揮させる人間に、我々の手先の者を送ってさせるのです。そうすれば、リース王国の騎士団がミラング共和国軍との戦いで、矢面に立たされることになり、数はミラング共和国側が多いので、多くの者をミラング共和国側が排除してくれるというわけだ。有力なこちら側の騎士がミラング共和国軍を多く排除してくれます。どうでしょうか、有能で、優秀、リース王国が誇る第一の将軍にして、将来元帥となり、誰もが尊敬されるファルアールト様。」
と、アールトンは、トドメさすように言う。
最後の言葉は、ファルアールトという人間の自尊心というものを刺激し、このアールトンの作戦を実行すれば、確実に成果を得られるどころか、ファルアールトの行動を無視したリーウォルゲ騎士団長が勝手に戦い始めたということにでき、かつ、リース王国の騎士団の多くをミラング共和国軍側が、ミラング共和国軍側も戦死者を大量を出すので、ラーンドル一派にとって都合が良い結果となる。
そのことを理解したファルアールトは、ある言葉を付け加える。
「アールトン、足りないぞ。リーウォルゲ騎士団長が暴走した時に私が止めて、介入することを―…。それを追加しないとな。ハハハハハハハハハハハハハハハハハ。」
と、ファルアールトは最後の笑い声を出す。
ファルアールトの思考としては、アールトンの作戦には欠点が存在し、騎士団の騎士を買収して、攻めさせたとしても、それをファルアールトが制止させる行動が含まれていないことだ。リーウォルゲも止めるだろうが、そのようなことは上への報告の時に、偽装すれば良い。それに、上の方も偽装に協力的になるはずだ。ラーンドル一派にとって、リーウォルゲは排除に対象でしかないのだから―…。ラーンドル一派にとって邪魔なのだ。優秀で、味方にならないのなら―…。
そして、ファルアールトの付け加えたことに対して、アールトンは、
(成功、やっぱり私の掌の上だ。この馬鹿は―…。)
と、心の中でニヤつくのだった。
そう、さっきのファルアールトの言葉を、アールトンは想定しており、ファルアールトが暴走するリース王国騎士団の騎士を制止する役目をするということを―…。それをファルアールトに言わせる必要があった。ファルアールトに言わせることで、ファルアールトの優越性を満たさせるのだ。
馬鹿ほど、コントロールしやすいものはない。
馬鹿と思った者が、破滅へと向かうという終わりが用意されていても―…。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(20)~序章 アルデルダ領獲得戦(20)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
最近、寒さか分かりませんが、頭の一部分が痛く、パソコンとかしているとそのような感じになります。
それぐらいしか、最近書くことないなと思います。外には出て歩いたりはするのですが、なかなかにそんな感じです。語彙力ないなと思います。
それでも、執筆の方は無理しない程度に、頑張っていきます。
では―…。