第24話-2 闇の放射
これで第24話が終わります。
前回までは、フードを被った一人の人物の闇の放射がアンバイドに迫っていた。どうなる?
ここは、リースにある城。
その中のあるところには、祈りをするための場所がある。
この国の王族は、神に祈りを捧げる。
自らの国の繁栄と一族の安寧のために―…。
そして、王族の一人である少女、容姿からは成人していても不思議とは思えない人物であった。
彼女は、この場で祈っているのだ。
「人は生まれたときから、神に対して罪を犯した―…。我、セルティー=リースは、その罪をわずかにでも減じられるよう、日々、神の御示しになる善行に励み、善政に励まんことを―…。」
と、祈りながらも言葉を少女は、紡ぐ。
そう、このリースという王国は、一つであり、または全とされる神を信仰していた。
ふと、セルティーは後ろから気配を感じた。
「!!」
と。
「セルティーはここにいたのかい?」
と、老婆の声がセルティーに聞こえた。セルティーにとっては、聞いたことのある声だった。
セルティーは気配がする後ろへと向いた。
そこには、一人の老婆が立っていた。
老婆は、魔女を思わせるような帽子をかぶっており、杖を右手に持ちながらセルティーへと近づいていった。それは、ゆっくりと歩きであった。
一方で、セルティーは、老婆が近づいているのに対して、警戒することなく、着ていたドレスの裾を両手でつかみ、一礼をする。それは、最大限の敬意をあらわしていた。それに、
「ようこそ、御出でなさいました。魔術師ロー…。」
と、言いながら。
老婆である魔術師ローは、セルティーの近くで止まり、
「久しぶりじゃのう~、セルティー。すいぶん、大きくなったのう~、大人になって。」
と、ローはセルティーが成長していたことに、喜びを感じるのであった。そう、ここ数年会ったことのない親戚の大人に会ったときに言いそうなセリフを言っていた。
「……、以前会ったのは半年前ですよ。そんなに急には私、成長しませんよ。」
と、苦笑いしながらセルティーは言う。ローの言葉が、あまりにも物覚えの急に最近悪くなった人のようなセリフに感じた。
「まあ、会えたことの感慨よりも大事なことがあったのじゃ。」
と、ローは言う。その表情は、緩さのあったものから真剣な目をキッ!!とした、一歩間違えれば睨みつけるようなものになった。それほど、ローにとってはセルティーにこれから言うことは、重要なことであった。
それを感じたセルティーも、同様に真剣な表情となる。顔つきに笑顔が消えるぐらいの…、決してキッ!!とした目になることなく…。
「ベルグのことじゃが―…。」
と、ローが言いかけると、セルティーが、
「昔、リースに仕えていたとされる人物のことですね。」
と、言う。それは、セルティー自身はベルグに対して直接の面識があるものではなく、セルティーの父が特に面識があったということを、周りからセルティーは、聞かされていたことによって知っていたのである。
「そうじゃ。たぶんじゃが、ベルグが何か変な動きをしているみたいでのう~。」
と、ローは言う。
「ベルグが…ですか。」
と、疑問に思いながらセルティーは、言う。
「そうじゃ。そうなってくると、リース王国のランシュにも不穏な動きはなかったかのう~。」
と、ローはセルティーに尋ねる。
「ランシュに関しては、かなりですね。むしろ、王族からリース王国を事実上奪っていますし、それに最近は何かリースの辺境でランシュの部下が慌ただしく動いているみたいです。三人組を討伐せよとか、何とかで…。」
と、セルティーは言う。三人組が何なのかをセルティーは、理解していなかった。それに、ランシュの動きが変なのは常に、騎士からの報告でセルティー自身も掴んでいた。ゆえに、ローの言葉に対しては、何か重要なことがあるのではないかとセルティーは思っていた。
「そうか…。三人組か―…。なら、お主、セルティーには話さないといけないのう~。」
と、ローは言うのであった。
そして、ローは話した。
「実は―…、三人組は現実世界から来た三人の少年少女じゃ。三人は、石化していく自らの世界からギーランによって異世界へ転移されて来たんじゃ。たぶん、三人がいた世界を石化したのはたぶん―…、ベルグの仕業じゃろう。それに、ベルグはリースでの職を辞して去る時に、ランシュというのを置いていっていることから、ランシュにも何らかのベルグの命か、協力かを取り付けているのではないかという可能性もある。それにランシュがリースを奪ったのは、ベルグとの関係もあるかもしれない。それに加えて、三人組は恐らく、ベルグやランシュらによって命を狙われているかもしれないしのう~。」
と、ローは言って、一息つこうとする。そのとき、
「その三人組とは、一体どのような少年少女なのですか? それに、ランシュがベルグと繋がっているということになると―…、リース王国で何をしようとしているのですか?」
と、セルティーはローに疑問に思ったことを質問する。
「三人組には、それぞれ赤と緑と青の水晶を渡してある。水晶の色について聞くといい。それにアンバイドとともにいるはずじゃし、それに―…今、ここへと向かっているはずじゃ。」
と、ローが言う。
そして、すぐに、
「今、リースへと向かっているのですか。なら、そこで呼び出せるかもしれません。」
と、セルティーは言う。
「じゃが―…。」
と、ローはトーンを下げて、
「リースで何をしようしているのかまでは、儂にもわからない。」
と、言う。実際、ランシュが何をしようとしているのか、ベルグがどのような意図で動いているのかを完全にはロー自身も把握できていない。ゆえに、ロー自身も後手にならざるをえない。
「そうですか―…。」
と、セルティーは納得せざるをえなかった。その表情は、少し思いつめたようなものを感じさせた。
「儂は、他にもたくさんの用事があるので、これで失礼するとするかのう~。」
と、ローは言った。
「では、何かあればお教えください。」
と、セルティーは言った。
そして、ローは祈りの場から歩きながら去っていった。
祈りの場に残っているセルティーは、
(ランシュ…、あなたはなぜリース王国を奪おうとするのですか。もし、ランシュがそうするのであれば―…、私はこの力で―…。)
と、セルティーは近くに置いていた大剣を握りしめながら決意する。ランシュがもし完全にリースを奪うのであれば、セルティー自身がランシュを討ち取るということを―…。
場面は、リース近郊の森の中。
フードを被った一人の人物の放った闇の攻撃で、アンバイドのいると思われる周囲は煙のようなもので満ちていた。
その状態を見ていたフードを被った一人の人物は、
(これなら…アンバイドの奴を倒すことができたか…。あれが効かないとなると、こっちとしてもアンバイドに勝つのも困難だ。)
と、思う。実際に、アンバイドとフードを被った一人の人物の実力差は明らかだ。フードを被った一人の人物にとっては、勝ち目は薄いと言ってもいい。もし、闇の放射でアンバイドを倒すことができなければ、フードを被った一人の人物は勝つための方法がなくなってしまうことを意味した。この仮定が実現しなければいいとフードを被った一人の人物は思っていた。
しかし、その仮定は成り立ってしまうのである。つまり、アンバイドは自らの同じ形である武器を三つ使って守ったのである。フードを被った一人の人物の闇の放射を吸収することによって…。
そして、アンバイドの武器が見えるようになったとき、アンバイドを倒せていないことにフードの被った一人の人物は気づく。
「くっ!! 防がれたか…、しかし、この最大限の力で―…。」
と、フードを被った一人の人物は言う。
言いながらであったが、両手の手のひら同士を近づけ、そこから、闇を玉のようなものを展開し、大きくしていっていった。それは、さっき、フードを被った一人の人物が自ら放った闇の攻撃と同じものであった。
(!!! また同じ攻撃…!!!!)
と、アンバイドは推測していた。ゆえに、自らの武器を自身の前に陣取らせたままにした。
(いくら、防御するとしても、強度には限度があるはずだ。とにかく、そこをつけば…。)
と、フードを被った一人の人物は推察する。アンバイドの武器が防げるのにも、限度があるのではないかと…。それは、ある意味で正解であった。そう、アンバイドの武器にも吸収するのに限界が存在していた。
(ならば…、やることは―…これか。)
と、アンバイドは思うと、自らの武器から、一撃を放つ。フードを被った一人の人物の放った闇の放射に目掛けて―…。
闇の放射とアンバイドの武器の放った攻撃が、アンバイドとフードを被った一人の人物の間に距離の中間で衝突する。
バーンという大きな衝撃音をともない、瑠璃や礼奈、クローナやトリグゲラさえもその方向へと視線を向けさせるほどであった。
その衝突は、煙のような者を衝突から、数十秒で爆発のようなものが起こり、その後、煙のようなものを周囲にもたらした。
その煙のようなものは、アンバイドとフードを被った一人の人物の双方の間にあり、互いに相手を目で見ることはできなくなっていた。
その煙のようなものも、数分の時間が経つと、晴れていくこととなった。
そう、互いが目に相手が写るようになった。
双方ともにダメージを受けていない姿を見せたのである。
お互いが相手を確認しようとしている間に、フードを被った一人の人物は物理的攻撃を受ける。
「ぐっ!!」
と、フードを被った一人の人物の声が漏れる。
(一体!! どこから攻撃された…、あれは―…)
と、フードを被った一人の人物は気づく。アンバイドの周囲にある武器が3つから2つに減っていたのである。
そう、アンバイドの武器の一つによる物理的な回転攻撃で、フードを被った一人の人物は腹部を切られたのである。
アンバイドの攻撃を受けたフードを被った一人の人物は、後ろへ―…、倒れていったのである。そのとき、フードを被った一人の人物が感じた時間は、まるで、スローカメラの映像を見ている感じで、ゆっくりとしたものであった。その視界は、徐々に、アンバイドから徐々にはずれ、夜の空へと変わっていったのであった。
(俺は…負ける………の………………か……。)
と、フードを被った一人の人物は、そう心の中で呟いて後ろに倒れたのである。
バサッという音をたてて……。
【第24話 Fin】
次回、フードを被った一人の人物をアンバイドは倒せたのか?
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
ローとセルティーの会話の内容は、かなり長くなってしまいました。それに、二人の会話は、書くのが特に今回は難しかった。