番外編 ミラング共和国滅亡物語(13)~序章 アルデルダ領獲得戦(13)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿中。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」のみ):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、リース王国ではアルデルダ領に侵攻し始めたミラング共和国に対抗、いや、ミラング共和国にはアルデルダ領を割譲する以外は譲らないというために、兵士と騎士を動員して、対処しようとするのだった。一方で、ラーンドル派のトップであり、ラーンドル商会のトップである人物がリースにある城を訪れたのだった。その理由とは―…。
その頃、リースの城の中では―…。
メタグニキアのいる宰相室。
そこでは、メタグニキアとそれに加えて、ラーンドル一派の重鎮でトップであるラーンドル商会のトップアングリアの父親ブレグリアがいた。
その人物は、その息子のアングリアよりか馬鹿ではないが、それでも、愚か者に分類しても良い人物であり、すでに老人となっており、いつ寿命が尽きてもおかしくはないとされるほどだ。
実際、弱っているわけではなく、このような城に来て、歩くというのはかなり難しくなっており、執事の支えがなければ、上手くここへ来ることはできない。
だけど、自らの欲望のために、生きるということに関しては、未だに執着していると言っても過言ではない。
そして、二人は話し合うのだった。
勿論、執務室には客人を座らせるための豪華なソファーがあり、そこに、ブレグリアは座っているのだった。
「済まないねぇ~。メタグニキア―…。君の活躍ぶりは聞いているよ。あの忌々しき、私よりも賢いように振舞い、リース王国の行政機関のトップに私の息がかかっていない者が就任するのは腹立たしいことじゃ。さらに、ラーンドル一派にもなろうとはしなかった。ベルグは許されまじ存在。まあ、クルバト町の件で責任を押し付けて追い出すことができたから、ざまあみろ。ラーンドル商会がリース王国の中央を握って、王のために政治の後ろ盾になって、我々の意図通りに政治がおこなわれるのがリース王国のためだ。……おっと、過去の話をしすぎた。で、ミラング共和国との戦争は負ける方向に持っていくのか。まあ、それで、あの忌々しいエルゲルダを失脚させることができるなら、良いか。アルデルダ領は金にならないしな。それで、アルデルダ領の件が片付いたら、処分しろよ、奴らを―…。俺以外の者が権力が集中しないようにな!!」
と、ブレグリアは言う。
ブレグリアは言いたいことを、ただ、メタグニキアに言っただけなのだ。
ブレグリアは、メタグニキアが役立たずであることは十分にわかっている。なぜなら、自分と同じ匂いを嗅いでいるからだ。それに、ブレグリアには、後先が短いということがわかっている以上、次代の後継者であるアングリアに、ラーンドル商会のトップ、およびラーンドル一派のトップとしての引継ぎをしていかないといけない。
自らの一族がずっと、リース王国での権力および商業のすべての中心に立ち、利益を得続けるということである。他者が損失を被ろうとも構わずに―…。
そして、聞くべき対象はメタグニキアが呼びに言っており、副宰相のハルギアとかがおり、そいつから情報を貰えればそれで良いのだ。
ブレグリアの言葉に対して、メタグニキアは返答する。
「ブレグリア様―…、勿論、わかっております。私たちは、ブレグリア様およびそのご家族、一族の方々のために、頑張っております。リース王国は、王族だけではなく、ラーンドル商会の繁栄によって栄えるのです。」
「そうじゃな、王族は重要だ。傀儡として―…、な。任せたぞ、メタグニキア。詳しいことはハルギアに聞いておくからの~う。」
と、メタグニキアの返答に対して、ブレグリアは言うのだった。
ブレグリアは、その後、このメタグニキアとブレグリアの部屋に到着したハルギアから、今の現状の話を聞き、いくつか指示を出し、ラーンドル商会へと戻っていくのだった。
この時の指示は、ラーンドル商会にとっての利益が一番になるようなことであるが―…。
リース王国騎士団の門の前。
そこには、リース王国騎士団がたくさん集まっていた。
理由は、ミラング共和国がアルデルダ領に向けて進軍しているから、それに対処するためであった。援軍というわけだ。
そのためか、集まっている多くの騎士たちが、緊張の面持ちを持っている。
騎士それぞれの感情を個別に触れていくことはできないが、二つの面に分類することが可能だ。
一つは、純粋にこれから、ミラング共和国の軍勢と戦い、アルデルダ領を支援することであり、防衛することであると認識していることである。そのような気持ちを抱く者は、今回の遠征というものの本質を理解しているわけではないが、彼らの正義感は善人のそれであるが、同時に、物事の本質を見ることができないということを証明している。
二つは、純粋なものではなく、ラーンドル一派の息がかかっており、この遠征というか戦争がどういうものかを理解しているが、それと同時に、金銭的な欲望というものを強く抱き、金払いが良ければ、簡単に金銭以外のことは考えずについていくことを証明し、ラーンドル一派の者たちの本質を理解しようとしないというか、思考停止に陥っていることを自らの手で示してしまっているのだ。
双方ともに、他者に利用されやすいということに関しては、共通点を持っていると言っても過言ではない。
そして、そんな緊張の面持ちを持っているなか、リース王国の騎士団騎士団長であるリーウォルゲが門の一番先頭になるように向かい、登場する。
(この緊張した面持ち―…。戦争は久々だ。慣れていない者たちもいるだろう。そして、この中には、疑いたくはないが、ラーンドル一派どもに買収された者たちも紛れ込まれているのか。こればかりは、いくら注意したとしても、なくなるというわけではない。より注意しないとな。)
と、リーウォルゲは心の中で思う。
今回の戦争は、リーウォルゲにとって、油断することができないものだ。作戦に関しては、ラーンドル一派が握っている以上、どうすることもできないし、いきなりラーンドル一派に買収された騎士たちがおかしな動きをするかもしれない。
今までの戦争では、そのようなことはほとんどなかったし、大きなことはしてこなかったので、注意を必要以上に割くということはあまりなかったが、今回は違う。
(それに、どうして、アルデルダ領の領内に入って、ミラング共和国との国境前で戦おうとしない。最初から、アルデルダ領を放棄する気か。エルゲルダがそれを望むとは思えない。経済状況から考えて、リース王国側がアルデルダ領に支援する気はないと―…。さらに、アルデルダ領の支配は苛烈であり、多くの領民が生活に困っているとも聞く。今回の敗北で―…。いや、考えすぎだな、世の中の正義や悪などは主観的なものでしかない。今は、自らの任務と、騎士たちの命を守ることだ。)
と、リーウォルゲは心の中で結論付ける。
そして、リーウォルゲは、列の先頭に到着し、そこにリーウォルゲのために用意された壇上に上がって、言い始める。
「今回の遠征は、我らのリース王国の領土に侵入した愚かどもだ。会えば、遠慮せずに戦え、我らの土地に住まう民を守るのだ――――――――――――――――――――!!!!」
大きな声、そして、最後には叫ぶ。
小さい声では、騎士たちの士気を上げることはできない。士気を上げるためには、大きな声と同時に、強く迫力のある声が必要だ。
だけど、ここで勘違いしてはいけないのは、声が大きいから士気が上がるとは限らないことだ。声が大きくて、周囲に迷惑にしかならないことを言うものがいれば、返って、周囲の士気というものを下げてしまうことになる。
要は、大きな声、迫力のある声は、両極端ということになりやすい。
そして、リーウォルゲの言葉を聞いた、騎士たちは、
『オオ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。』
と、今回遠征に向かう騎士たちが叫ぶのだ。
リーウォルゲ騎士団騎士団長の声よりも大きく―…。
数が多いということから、リーウォルゲ以上に大きな声を出すことは可能であろう。
だけども、リーウォルゲ以上に士気を上げられるほどのものを出せる者は、今、この時、この場にはいないであろう。ランシュでも、まだ、そこまでの人生経験と信頼を獲得しているわけではない。
そう、リーウォルゲは、騎士団の騎士たちから絶大な信頼を得ており、それが決して威圧的なものではないこととそうであるという双方があり、彼自身の騎士としての強さ、同時に、戦場での絶対に勝てると思えるぐらいの安心感というものを周囲に思わせてしまうのだから―…。
それでも、誰にでも信頼や人望を持たれるということではない。
叫び声を上げる騎士たちの中には、リーウォルゲを妬む者はいるし、彼らは決して、リーウォルゲの言う事を気はしないだろう。叫ぶのは、あくまでも、リーウォルゲと敵対していないということを示して、どこかで、リーウォルゲを困らせようとしているということだ。
それは、前のレグニエドの演説よりも兵士のやる気を引き出しているのは確実である。
リーウォルゲ騎士団団長の最後の雄叫びに、遠征に向かう騎士全員が団長以上に叫ぶ。
ランシュは、この時、
(レグニエド王が言うよりも、よっぽどやる気が出る。リーウォルゲ騎士団団長は適当な感じな人っぽいが、それでも、人を惹きつける魅力というものがある。雰囲気も俺が先頭が立って進み、敵を倒しつつ、仲間の道を切り開き、付いてこいと背中で言ってように思わせられる。歴戦の猛者と言ってもいい。)
という感じで、心の中で褒めているし、評価している。
ランシュとしては、復讐というものがなく、リース王国の騎士団に入団していたら、心の底から完全にリーウォルゲのことを尊敬することができていた。
だけど、復讐という目的がある以上、敬意は払ったとしても、それでも、尊敬というところまでにはいっていない。
一方で、ラウナウは、
「相変わらず、団長の覇気は違うぜ。俺らをこうもやる気にさせるものか。フォルクスもこの覇気を身に付けて欲しいものだ。天成獣の宿っている武器が杖というだけで、使用を避けて、剣ばかりしているのも止めて欲しいが―…。」
と、愚痴のようなことを言う。
ラウナウは、リーウォルゲに不満があるわけではない。むしろ、リーウォルゲは、自分達の上司でいてくれることに誇りを感じている。彼しか、今のリース王国の騎士団の騎士たちの士気を上げ、纏める上げることはできないと思っている。
そして、同時に、副団長に関しては、嫌ってはいないが、騎士らしくない杖という武器を避けて、剣ばかりを使用しているという、騎士団のことよりも自分のことしか考えていないのではないかと思えるような行動を批判したい気持ちがある。
杖で戦う騎士として、新たな騎士像でも作り上げれば良いのに、と思ってしまうからだ。ラウナウがもし、副団長と同じ立場なら、すぐに、杖を使って、戦うことを選択しただろう。戦力のアップが、騎士団の騎士たちの戦いにおける生存率をより高めてくれるのだから―…。
人は有限であり、無限ではないのだから―…。
そうである以上、ラウナウの副団長批判は的を得ているということになる。
そして、ランシュ、ヒルバスは、気づく。
ラウナウの後ろには―…。
「ラウナウ、俺がどうしたって―…。」
声がする。
そう、この声はフォルクス副騎士団長の声であり、リーウォルゲの次に偉い騎士団の人間である。
フォルクスは、リーウォルゲの右腕であり、次期、騎士団長と言われている人物である。
そして、リーウォルゲが一番後ろにいて、一番前のリーウォルゲで、何かあっても大丈夫にするために、実力者の二人を前と後ろにわけたということなのだ。
そして、ラウナウは、フォルクスの存在に気づき、
「ガハハハハハハハハハハハハハハ。フォルクス副団長、お前の武器が杖であることを知っているのだ。騎士ではなく、魔法使いとして戦ってみたらどうだ。そうであれば、俺らも後方の心配をせず、思いっきり戦えるのだが―…、なぁ~。」
と、笑いながら言う。
勿論、リーウォルゲもこのラウナウの声に気づいてはいるが、敢えて、注意する気はなかった。リーウォルゲもラウナウが騎士団の秩序を乱すような男ではないことを理解しているし、ラウナウのような陽気な存在は、返って、暗くなるよりも、士気の面ではマイナスになりにくいからだ。だけど、弛緩してはいけないのであるが、ラウナウはそのことを理解しているから、本当の戦闘の場面では、笑いながらということはないだろう。
そして、ラウナウの言葉の言い方には、フォルクスを揶揄う要素はふんだんにある。
そうなってしまうと、折角の緊張した空気が駄目になるような感じもするが、騎士団の騎士たちはいつものことだと思い、呆れることもなく、そこでは何も起こっていないという感じで認識するようにしている。
「ラウナウ、お前は本当に遠慮というものを知らないようだな。まあ、知っているのであれば、騎士団の中でも空気の読める行動ができるはずだからなぁ~。」
と、フォルクスは怒りの感情を表に出さないようにしながら言う。
それでも、近くにいたランシュとヒルバスは、フォルクスがラウナウの言葉に対して、怒りを感じていることはわかっている。そして、面倒なことになると判断して、ランシュとヒルバスは、フォルクスとラウナウから距離を取る。ほんの少しだけど―…。
「俺でも空気の読める行動はできるが、あえて、読まないようにしているだけだ。同期のよしみで寛容になってくれよ。」
と、ラウナウは言う。
ラウナウとしては、フォルクスに気を遣うことはしない。なぜなら、そんなことをやったとしても、フォルクスの本当の意味での話し相手をなくすことになり、大事な時のアドバイスができなくなるとわかっているからだ。
人は、本音で話せて、気が楽になる存在を欲することを、ラウナウはわかっているのだ。
そのようなラウナウの感情というか、思いを理解できる者は少ない。なぜなら、空気を読めていないということの評価が浸透してしまっているというか、そのようにしか感じられないと捉えているからだ。騎士たちが―…。
その例が、ランシュであり、
(先輩は―…、少しぐらいフォルクス副団長のことを揶揄うの遠慮してくれるといいんだが―…。ほ~ら、リーウォルゲ団長が気づいて、視線をこっちに睨みつけてきているじゃないか。)
と、心の中で思うのだった。
その光景から、確実にしばらくの間、フォルクスとラウナウの口論は止まらないと判断した、リーウォルゲは、諦めて、遠征軍に参加させる騎士団の騎士を、騎士団の宿舎から出発させるのだった。
それをすぐにわかったのか、フォルクスとラウナウは口論を止めて、大人しくなり、行進を開始する時には、さっきまでのことは何もなかったかのようになるのだった。
こうして、リース王国の騎士団は、アルデルダ領の境への遠征が始まるのであった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(14)~序章 アルデルダ領獲得戦(14)~
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
では―…。