番外編 ミラング共和国滅亡物語(12)~序章 アルデルダ領獲得戦(12)~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿中。
アドレスを表示しておきます。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」のみ):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(「小説家になろう」);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(「カクヨム」);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
2023年1月11日、『ウィザーズ コンダクター』の第8部が開始となります。開始時刻はいつも通りの18時30分に投稿します。すでに、予約済み。投稿感覚は、第7部と一緒です。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、ついにミラング共和国はリース王国へと戦争を仕掛けてくるのだった。そして、リース王国の方でも―…。
数日後。
すでに、リース王国騎士団の側はすでに準備を完了していた。
そして、アルデルダ領へと向かう日になっていた。
そのため、リース王国の騎士団の騎士、全員が、城の中の中庭の方へと集められていた。
そこには、王が現れ、下にいるリース王国の騎士団の騎士たちに向かって言うことができる場所が存在する。
その場に集められた騎士は、今、リース王国の王であるレグニエドがやってくるのを待っていた。
そして―…、レグニエドが上から騎士たちを見下ろせる場所までやってくる。
「レグニエド王より、重要な話があります。」
と、リース王国騎士団騎士団長リーウォルゲは緊張しながら言う。
リーウォルゲとしても、ここでミスを犯せば、自らが危険なことになることはわかっているし、自分の部下たちを守る使命があるのだ。
今回の戦場、明らかに指揮権をリース王国の中央で実権を掌握しているラーンドル一派の息のかかった指揮官が指揮をすることは分かり切っている。
今回は、それぐらいで良いとされている。
なぜか? 今回の作戦は、リース王国の側が敗北することが前提条件となっており、その敗北でリーウォルゲに責任を取らせること、騎士たちの多くの戦死により、空いた分をラーンドル一派の息のかかった者たちを騎士として採用させることにしていた。
そうすれば、ラーンドル一派のリース王国における基盤というものを、さらに強くすることができる。ラーンドル一派が永久にリース王国を支配し、ラーンドル一派の利益になる政策しかおこなわないということにしていた。
己の利益を最大化にすることが、自らにとっての幸せであり、その幸せという名の快楽に浸かっていたいのだ。権力というのはそういう作用があり、欲望に渇かないというものがないことから、より最大化を追求するのだった。本当の意味で、自分の欲求の最大値というものを無限に人は上昇させられてしまうのだから―…。
次に、この場にやってきたレグニエドは、王という雰囲気を何も漂っていないような感じを持っていた。特に、この場の騎士の一人としていたランシュはそのように強く感じた。レグニエドを復讐すべき対象であることを認識しているから、余計、そのように感じてしまうのだ。
そして、ランシュはあることを理解していた。
(王という雰囲気はないだろうが、王を敬うような態度をとらないと、リース王国の中央で権力を握っている奴らに睨まれ、最悪の場合は暗殺されるかもしれないからであろう。まあ、噂話程度のことしか知らないが、リース王国は騎士団以外に何か私設な暗殺部隊を持っているらしい。そいつらの実力は、普通の騎士よりも強いらしい。騎士団の騎士の中にも選ばれて、そっちの方へと所属先を変えていった人もいるからだ。本当、騎士団への監視も怠らないわけか。まあ、騎士団に反乱を起こされるのが嫌だからというのもあるのだろう。互いに睨みを利かせるのは、相互の牽制をもたらし、余計なことをさせない上では重要だ。だけど、一番働かせないといけない中央の権力者たちには、一切ないという矛盾をかかえているが―…。本当、自分は自由だけど、他人はダメだという考えが多すぎだろ。まあ、そんなことをしても意味はない。)
と、心の中で思う。
ここで重要になってくるのは、リース王国にも暗躍する部隊というものが存在する。この部隊は、表向きリースの行政システムおよび軍事機構の中には存在しないことになっている。そして、この部隊は私設のものであり、もちろん、牛耳っているのはラーンドル一派である。
だけど、一部は、完全にリーンウルネの方に掌握されているとか―…。リーンウルネは、偶然、この部隊の中で優秀な者と出会い、味方にすることができており、そこから少しずつ影でリーンウルネ側の味方を増やしていっていた。
また、この私設部隊には、リース王国の騎士団の騎士の中にも選ばれる者がいて、配属されることもあり、そこで、私設部隊の側になるように脅迫したり、時と場合によっては、洗脳したりする。裏であり、影である以上、世間から非難されるような非人道的なやり方も仕方ないという考えもその組織内にはあり、トップがそのことを信奉しており、その行動規範のせいで、洗脳することに罪悪感を持っていると務められないということになっていた。
まあ、世間が非難していることをやらなければならない時がないように、いろんな懐柔策を考えるのだろうが、私設部隊のトップがラーンドル一派をなぜか敬意を持っていて、かつ、人は支配する者でなければ意味ないという感じの面も持っているために、本人自体も組織内からあまり評判が良くない。より、力による強硬的な支配をせざるをえないというループに嵌ってしまっているのであるが―…。
そして、私設部隊は、こうやって、脅迫および洗脳によって味方にした騎士を、再度、リース王国の騎士団に送り返し、騎士団を監視しているというわけだ。ラーンドル一派に逆らっている騎士を粛清するために―…。
だけど、彼らはランシュの指摘しているように、圧力をかけたところで、リース王国に住む人々に利益を与え続けなければ、決して、彼らの思い通りにならず、裏の部隊の行動が意味のないものになってしまうことに変わりはないのだが―…。住民の一揆や反乱によって―…。
レグニエドは、騎士を見下ろしながら言い始める。
「此度は、リース王国のアルデルダ領に隣国のミラング共和国が侵攻してきた。これは許されざることだ。我と親しき友であり、一、優秀な領主のエルゲルダ殿が苦戦されている。リース王国の防衛のために、騎士団と兵士の遠征が決まった。お前たちには存分に活躍してもらい、リース王国の強さを示すのだ。我の領土を侵した愚か者たちに対して!!!」
レグニエドは怒りの感情というものを発露させて、ミラング共和国のアルデルダ領に向かっている状況を打開して欲しいと、強く騎士たちに訴えかける。
エルゲルダは、レグニエドにとって尊敬できる人物なのだから―…。
そして、レグニエドのさっきの言葉に、リース王国の騎士たちは拍手をするのだった。こういうことをしておかないと、リース王国に、いや、ラーンドル一派に敵対関係があるのではないかと疑われるからだ。そんなことは望まないが、ラーンドル一派のことは嫌いな者も多い。犯罪の若干の増加は、ラーンドル一派の政策によるものであるから―…。
その後、レグニエド王が去ると、宰相のメタグニキアが現れて、説明を開始するのだった。
「宰相メタグニキアだ。私は、今回の遠征に関しては同行しないが、重要な作戦の大まかなものを伝えておく。今回は、アルデルダ領の防衛であるが、アルデルダ領に侵入しているミラング共和国軍との戦闘はなるべく回避しておくことにする。アルデルダ領の領主エルゲルダ様が領内を荒らされるのを嫌ってだそうだ。住民の命と土地を守りたいという気持ちで―…。その意見を我々は汲むことにした。ゆえに、リース王国の騎士団は、アルデルダ領の領境に配置することにした。以上だ。日数は戦局の変化があるために、定めないものとする。では、各自で遠征の準備を開始してくれ。」
ここに大きな嘘が存在している。
そう、エルゲルダは、アルデルダ領にリース王国軍がやってくることは領内に入るということだと思っているし、ミラング共和国の国境まで進軍して、ミラング共和国軍を撃退してくれると確信している。
だけど、リース王国の意図というものをエルゲルダは理解しておらず、何の価値もないどころか、リース王国の領内にあるだけで、リース王国の財政にマイナスしかもたらさないし、ラーンドル一派が得られる益というものを減らすので、いらないと判断していた。
ゆえに、ここでミラング共和国軍に負けるのは嫌だが、それでも、将来的なことを考えるのなら、アルデルダ領を割譲するところで終わらせることが重要であると、判断するのだった。そうすれば、アルデルダ領に使っていた予算を、ラーンドル一派のために自由に使えるのだから―…。
ランシュは、このことに気づいていなかった。
その後、ある程度はすでに軍備を整えていたので、準備して、確認するのに、人員する人数に関しても数日で、十分に用意できるのであった。
遠征当日。
リース王国騎士団の宿舎の中。
そこでは、騎士たちが自らの家族と会いながら、会話をするのだった。
この騎士たちは、リース王国とミラング共和国との今回の戦争で駆り出される者たちが多かった。
そして、騎士たちは、この戦争が最後の家族となることも十分にあり得るので、しばらくの別れを惜しまないように、後悔しないようにするのだった。
それでも、生きて帰ってくるということを忘れたわけではなく、強く、そのように思っているのであるが―…。
その中には、一つのグループがあった。
「ラウナウ先輩、ランシュさん、ヒルバスさん、無事な姿で戻ってきてください。」
と、メルフェルドは心配しながら言う。
メルフェルドは、今回の遠征では戦地になる場所に向かうことはなかった。なぜかと言えば、メルフェルドは女性であるが、騎士としての才能が高いということ、さらに、ラーンドル一派の息がかかっていないことによって、嫉妬の対象と見られており、確実に出世する可能性が普通にしていればあるので、その出世のための実績を作らせないように、実績をあげさせないようにしたのだ。そうすれば、騎士としての経験を積めず、出世するための武勲もなく、メルフェルドの存在感を際立たせることはなくなるというわけである。さらに、メルフェルドは、リーウォルゲらやハミルニアのようなラーンドル一派とは一線を画している者から救われている以上、中々、ラーンドル一派が簡単に潰すことはできない状態になっていた。
ランシュに関しては、潰せるかもしれないが、天成獣の宿っている武器を持っている以上、貴重な戦力だという扱いであり、まあ、適度の育ってくれればよいとラーンドル一派としては思っているが―…。
メルフェルドは、ここにいる親しい人たちがちゃんと無事に帰ってくることを望んでいた。
ランシュはこの時、メルフェルドが過去に言っていた言葉を思い出す。
―命は誰かを守るために使うべきですし、人生が一度である以上、生き残る方が多くの自分にとって大切な人を守る機会が多くなるのです―
メルフェルドの言葉を思い出しながら、心の中でこのように思うのだった。
(命は大事だ。自分の命を大事にしない人は、他人の命を守ることなどできはしない。)
なぜ、そのように思うのかというと、これは復讐に関連していることでもあるし、かつ、リース王国の騎士団に見習いとして入団し、かつ、その後、正式に入団試験を受けて、入団したという経緯があるが、見習いの時から、騎士団の宿舎の中にある図書館もしくは図書室と言った方が良いかもしれない場所で、いろいろとリース王国やその周辺諸国の情勢やら、いろんなことをここにいるヒルバスとともに学んでもいたのだ。
ゆえに、ラーンドル一派よりも知識を持っているし、物事を見るということに関しては、上に立っている。
さて、内容を戻すと、それら二つのことから、復讐を成すために、自らの命を大切にしないといけないし、自分の命を守ることが出来ない人が、他者を守ることはできない。
だって、仮に他人の命を守るために、自分の命を犠牲にした場合、その後、助けられた人の命にピンチが訪れてしまえば、自分が守れるということはならないだろうし、結局、自分という確実に守るというカードが使えなくなるからだ。確実性というものが消失し、一種のギャンブルに近い要素になることを避けられなくなるのだ。
それに、復讐を達成することがランシュの第一の目標であるので、自分の命の重要性は痛いほど理解できるというわけだ。
そう思っている間に、メルフェルドの言葉を聞いたランシュやヒルバス、メルフェルドの先輩であり、騎士団の団員の一人であるラウナウは、
「ガハハハハハハハハハハハハハハ、心配するな。俺はむしろ敵の中で大暴れして、敵の血で俺の服を濡らしておくわ。だが―…、俺も自分の命だけは無駄にしないからな。そして、メルフェルド―…、リースのことは任せた。」
と、豪快に笑いながら言う。
ラウナウとしては、メルフェルドを不安にさせないために、言っている。
その横でランシュが、ラウナウには負の感情というものが存在しないのではないかと思うのだった。
だけど、ラウナウはそういう人間ではないが、暗くなったとしても良い事などないと、自分の心の中で思っているのだ。
この時、ヒルバスは、
(先輩は、メルフェルドに気を遣って、このように言っているのですか。私たちも戦争に駆り出される以上、確実に生きてリースに帰ってくるという保証はどこにもありません。それに、この戦争、かなりいろいろときな臭い匂いがしてきます。)
と、心の中で思う。
ヒルバスの情報量は、世間一般から比較しても、少しだけ多いが、ラーンドル一派がどのように考えているかを理解することはできない。そこまで、情報を収集する能力が高いというわけではないのだ。
ゆえに、きな臭い匂いという表現でしか、今の現状を理解することはできないし、それ以上、情報を集めることは難しい。ラーンドル一派の情報秘匿能力はそこまで高いとは言えないが、よっぽど、そういう情報を集める伝手というものがなければ、手に入れられないというほどには高いと言える。
そして、ラウナウの言葉を聞いたメルフェルドは、
「はい。」
と、返事をするのだった。
メルフェルドは、ラウナウを先輩として尊敬しているし、騎士として素晴らしい一人であると思っているので、留守の間のリースを任されたことにより、自信を持つことができた。それが、返事に現れたのである。
さらに、ヒルバスは、メルフェルドを心配させないように、共に騎士として訓練してきた友人であるがゆえに、
「私も死ぬ気はありません。ランシュ君もそうですよね?」
と、ランシュにも同意を求めるように言ってくるのであった。
そのヒルバスのさっきの言葉を聞いたランシュは、
「ないな。」
と、応える。
なぜなら、ランシュは自らの復讐も果たせずに死にたいとは思ってもおらず、自らがどこでその命を使うべきかを理解しているのだ。復讐、それを果たす時に―…。
ラウナウ、ランシュ、ヒルバスの返事を聞くことができて、少しだけ安心できたのか、
「では、頑張ってきてください。私は帰りを待っています。」
と、メルフェルドは言うのだった。
メルフェルドは、不安で、心配という気持ちを抱いていたが、これ以上、三人をここで足止めさせるべきではないと思い、自らの気持ちを振り払って、三人を送り出すのだった。
(どうか無事に帰ってきてください。)
と、心の中で思いながら―…。
その後、ラウナウ、ランシュ、ヒルバスは集合時間になるので、リース王国の騎士団の門へと向かうのだった。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(13)~序章 アルデルダ領獲得戦(13)~
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
2023年、『水晶』の初投稿です。今年も『水晶』をよろしくお願いいたします。
とにかく、『水晶』での目標は、番外編を完成させて、次の章に突入することです。それ以外に、今のところはないというか、PV数が大量に増えてくれればありがたいです。
今の執筆で溜まったところは、まだ、このミラング共和国とリース王国のアルデルダ領をめぐる戦争は終わっていません。大盛り上がりするところに入っていった感じです。
では―…。