番外編 ミラング共和国滅亡物語(11)~序章 アルデルダ領獲得戦(11)~
『水晶』以外に、以下の作品を投稿中。
『ウィザーズ コンダクター』(カクヨムのみ):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、アルデルダ領における商品税の増税および通過税の新設により、塩などの物価高騰に悩まされたミラング共和国で穏健派は失脚し、政権を握った対外強硬派はリース王国への戦争に踏み切るのだった。対外強硬派とリース王国のラーンドル一派の双方が望む戦争へと―…。
リース王国。
その中にある城の中。
そこのリーンウルネが執務をする部屋。
そこに、一人の偵察兵が現れる。
「何じゃ。」
リーンウルネが言うと、その人物は報告を始める。
「リーンウルネ様。さっき、ミラング共和国を偵察している者からの報告です。ミラング共和国がリース王国のアルデルダ領に向けて、軍勢を派遣しました。」
「そうか。わかった。ご苦労。」
「はっ!!」
偵察兵は部屋を出て行くのだった。
その後、リーンウルネは考え始めるのだった。
(………う~ん。こうなるじゃろうなぁ~。儂としては、双方で戦争が起こっては欲しくなかったが、互いに煽りあっておるのか。そして、アルデルダ領の領主エルゲルダはまだ領主という地位にしがみついておるか。クルバト町に関しては、儂もセルティーに付き切りで、全然気づくことすらできなかった。不覚であった。だが、今回に関しては、ラーンドル一派の行動はすべてではないが、一部、真面な行動をとるじゃろう。アルデルダ領をミラング共和国側に割譲する。あの領地の領民を思えば、こういうことはしたくはないが、あの馬鹿を潰さないことには、アルデルダ領には未来がない。それに旦那がどうして、あのような馬鹿を尊敬しているのか意味がわからない。あんなのはさっさと殺さなければ、ロクな目に合わない。ふう~、権力というのは手に入れたとしても、簡単に行使はできないものじゃ。儂はラーンドル一派どもよりも実質の権力では下となっているせいで―…。ここは大人しくするしかない。悔しいが―…。)
と。
結論はすでに出ていた。
今回のことに関しては、リーンウルネ個人として介入してはいけないということに―…。リース王国としての今回の動きは、完全にラーンドル一派の動きとなる。
なぜなら、エルゲルダを潰したいが、なぜかレグニエド王がエルゲルダのことを尊敬してしまっており、殺そうものなら、逆にリーンウルネの方が大罪人として処刑されてしまうし、自らの派閥の者たちを危険に晒してしまう。ゆえに、迂闊に動くことができないのだ。アルデルダ領に関しては―…。
それに、ここで動かないことによって、後々に動くべき時に動けるように力と人脈を築いておくことに集中するのだった。無謀に突撃するように行動することが良い結果をもたらすわけではないのだから―…。
そして、ラーンドル一派のしようとしていることぐらいわかっている。今回のミラング共和国軍のアルデルダ領へ向かっての進軍を利用して、少しだけ戦った後に降伏し、その敗戦の責任者を処分しようとしているのだ。特にリース王国の騎士団の方を―…。
ラーンドル一派というものは私欲を最大限に実現することに、行動してくるし、邪魔者は確実に排除してくるのだから―…。
(さて、どうなることやら―…。)
と、リーンウルネは城の外を眺めるのだった。
同時間。
城の中の小会議をおこなう場所。
そこには、ラーンドル一派の重鎮たちが集まっていた。
ここで、ある会議がおこなわれていた。
その内容は、勿論、ミラング共和国軍によるアルデルダ領への侵入だ。
「アールトン、お前の企み通り、ミラング共和国軍の雑魚どもがアルデルダ領に侵入してきたぞ。やることは降伏する…、で良いのだろうな。」
と、メタグニキアが言う。
メタグニキアは、自らの宰相の地位に揺らぎが生じることを嫌がった。だけど、アールトンは、そのようなことにならないと前から言っていたのだ。そこに不信感はまだ存在する。
「ええ、大丈夫です。メタグニキア宰相はあくまでも、偽の命令があまりにも本物そっくりだったし、しっかりと調べた上で、命令を許諾したが、それがリース王国騎士団騎士団長によって偽造されたものだということにしておきます。それに、リース王国騎士団に関しては、すでに、我々の側に買収した者たちも沢山おりますし、厳しい戦地へと派遣する予定です。だから、リース王国騎士団騎士団長は、確実に大規模な敗戦をして、アルデルダ領割譲の責任をすべて取らせ、処分する予定です。」
と、アールトンは言う。
アールトンとて、自らの失敗によって、命を失いたいとは思わない。だけど、同時に、自らが出世していきたいという気持ちも存在する。だからこそ、他者にマイナスを、自分にプラスを、ということになるよう思考するし、実行しようとする。
その作戦に、非の打ちどころなどないとアールトンは思うのだが、アールトン以外はすでに、この戦争における責任の所在をすでに決めていたのだ。リース王国騎士団騎士団長の首で賄うことのできない責任を―…。
そして―…。
「そうか、アールトン、君の判断で動くことにする。」
と、メタグニキアが言う。
この言葉で、ここにいる誰もがアールトンの方針で、今回のリース王国とミラング共和国との戦争は動くことになる。敗戦を望む戦争を―…。
「はい、感謝いたします。」
と、アールトンが言うと、会議は終わった。
そして、アールトンは作戦をより今の状況に合わせて、詰めていくのだった。
リース王国アルデルダ領首都ミグリアド。
そこにある領主の住む城では、アルデルダ領領主エルゲルダが怒りの表情を見せていた。
「クソッ!! なぜ、ミラング共和国の奴らが攻めてくる!!! あいつらにどれだけ自由に商売をさせてやったのだと思っていやがる!!! 隣国の猿共が!!!」
と、エルゲルダが城の中の執務室で声を荒げる。
その声を聞いた、エルゲルダにミラング共和国が攻めてきたことを報告した伝令の者はビクビクと震えていた。エルゲルダは自らが気に入らないことがあると、何をしだすかわからないのだ。最悪の場合、斬り捨てられることさえあるのだ。
そして、エルゲルダにとって都合の良い報告に関しては、自らの手柄かのように喜ぶ。わかりやすいが、マイナスなことを伝えづらいのもある。ある意味、この伝令を伝える者は一種の不幸なのではないかと思っていてもおかしくはない。
そして、エルゲルダは怒りが治まると、すぐに言い始めるのだ。
「軍勢を集めて、迎え撃て!!! ミラング共和国の猿共に知らせてやれ!!!! さらに、リース王国からの援軍も求めろ!!! 私は、リース王国の国王であるレグニエド王と最も親しく、私の窮地の時には確実に駆けつけ、私を助け、私の行動によって、リース王国は繁栄することがわかっているからだ!!!! さあ、さっさと行動しろ!!!!」
「はい!!!」
エルゲルダがミラング共和国から向かってきている軍勢を迎え撃つという選択をし、かつ、リース王国側に増援を依頼するのだった。
エルゲルダは、自らがリース王国を栄えさせているのだという思い込みを酷くさせ、かつ、自らが絶対的にリース王国にとって必要な存在であることを確信しているのだ。実際は、そこまで、リース王国にとってエルゲルダは必要なかったし、アルデルダ領はあるだけで、現在、リース王国にとってお荷物でしかないことは確かだ。
そのことをエルゲルダは理解できないし、する気もないだろう。彼は自らの得になることしか興味がないのだ。グルゼンの言う、四流にもなれない人物である。
そして、エルゲルダの命令を聞いた伝令の者は、軍勢の手配のために、軍団長の場所へ、さらに、リース王国への救援依頼のための使者を派遣してもらうように言いに行くのだった。
その前に、リース王国側は、ミラング共和国の進軍を把握しており、すでに、そのために、アルデルダ領が救援を求めてくるのはわかっていたので、軍勢の準備はすでに進めており、かつ、ラーンドル一派にとって都合の良い結末になるようにするための作戦はほとんど出来上がっていた。
リース王国。
騎士団宿舎。
そこには騎士団長リーウォルゲがいる。
まあ、騎士団長の部屋というわけだ。
そこに一人の騎士が入ってくる。
「用件は何だ。」
と、リーウォルゲが尋ねる。
その騎士は、表情を引き締めており、さらに息を切らしながらということは切羽詰まった何かがあったということだ。
リーウォルゲは実力によって騎士団のトップになっており、コネとかではないので、叩き上げという感じで実力を備えていた。さらに、叩き上げから出世したゆえになると思われる自らの成功体験による傲慢さというものは一切なかった。ゆえに、トップであったとしても、信頼というものを確保できていた。部下からの―…。
だからこそ、リーウォルゲは、その騎士団トップの自身の部屋に入って来た騎士が重要な何かを伝えようとしていることを理解する。
「はあ…はあ…、リース王国の行政機関から報告です。ミラング共和国軍がリース王国のアルデルダ領に向かって進軍しています。行政機関の最高会議が、リース王国の兵士および騎士を率いて、アルデルダ領への救援に軍を出動させる方針だと―…。さっき、行政機関側にアルデルダ領からの使者が到着し、軍の救援要請でした。そして、今回の戦争にリース王国騎士団団長リーウォルゲおよび騎士の半数を投入することを決定し、準備を進め、完了次第、アルデルダ領の境界に向かって、軍を進めよ、とのことです。作戦は、現地で知らせることにする、ということになります。以上です。」
と、一人の騎士が言う。
一人の騎士は、自分が言うべきことを完全に言うことができたということがわかったので、これ以上、何かを言う気はなかった。騎士団長がどれだけ忙しいのかは想像でしかないが、わかってしまうのだ。書類仕事が多くなるのだから―…。
(ミラング共和国がアルデルダ領に向かって侵攻か。たぶん、原因は、アルデルダ領が最近出したという商品税と通過税に関する問題だな。なぜ、あのような周囲を怒らせるような挑発的な政策を王国側は許可したんだ。まさか、リース王国とミラング共和国を戦争させたいがために―…。想像の域を出ないな。だが、リース王国の中央で実権を握っている奴らはロクな事を考えないものだということだ。とにかく、彼らに主導権を握られないように、対処しないといけないということか。)
と、リーウォルゲは心の中で考え、すぐに指示を出すのだった。
「では、命じてくれ。リース王国騎士団の兵士の半数を選定し、アルデルダ領の境界へと進軍することにする。」
と、リーウォルゲは命じる。
その命令を受けた一人の騎士は、騎士団に伝えるのだった。騎士の選定に関しては、すぐにでも事務の方と参謀が決めるだろう。
リーウォルゲに必要なことは、自らの騎士団の損失を少なくして、大きな成果をあげることだ。
(アルデルダ領の境界という言葉も気になる。迂闊なことはできないな。)
と、心の中で警戒する。
そして、リーウォルゲは、急いで、溜まっている職務を片付けるのだった。戦争となると、しばらくの間、このような書類仕事を片付ける暇などなくなってしまうのだから―…。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(12)~序章 アルデルダ領獲得戦(12)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
今年、最後の投稿となります。
ということで、反省を述べていきます。
『水晶』では、去年までに終わらせようとした「リースの章」を一切に終わらず、ランシュと瑠璃の最終決戦の決着をつけるところまでしか進まず、2022年の今年こそは、「リースの章」を執筆し終えること約束していましたが、それが、9月末で何とか完成させました。そして、その後の番外編が予想以上に長くなり、年末に到っています。まあ、予想より長くなることが常のなのか、半分諦めモードに入っています。それでも、納得いく形では仕上げていきたいと思います。
後、この一年の中で、執筆ペースが落ちたり、集中力がなくなってしまったりしたために、十分に休む必要があるのだと理解しました。
『この異世界に救済を』に関しては、元々、100話ぐらいストックをためた上で、2022年11月下旬に投稿を開始する予定でしたが、なかなか進めることができずに、11話ぐらいのストックでの開始となってしまいました。本当に申し訳ございません。予定ではもっと、進む予定でしたが、現状を変えられるわけではないので、自分のペースで進めていくことになります。プロットの方もしっかりと第2部もしくは第2章を仕上げていかないといけないと思っています。
さて、反省はここまでにして、2023年の抱負に関しては、2023年になってから、考えることにします。
2022年、今年も『水晶』、『ウィザーズ コンダクター』、『この異世界に救済を』を、読んでいただきありがとうございます。評価およびブックマークしていただいたことに関して、感謝いたします。
最後に、年末年始、体には気を付けてください。今年はかなり寒い感じがしますので―…。
では―…、良いお年を―…。