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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
356/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(10)~序章 アルデルダ領獲得戦(10)~

『水晶』以外にも、以下の作品を投稿中。


『ウィザーズ コンダクター』(カクヨムのみ):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138

『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。

『水晶』の前回までのあらすじは、ミラング共和国の政治の実権を対外強硬派が握り、リース王国との戦争へと向かうのだった。これは、アルデルダ領における商品税の増税と通過税の新設によって、塩などの食料品の値段が高騰して、生活を圧迫されてしまっており、ミラング共和国に住んでいる人々の怒りがあったからだ。

 二カ月後。

 ミラング共和国首都ラルネ。

 そこには、多くのミラング共和国の国民たちがいた。

 場所は、城門の近くであった。

 一つの道が開けられており、その横にいっぱいの国民が待ち望んでいた。

 ついに、この日が来たのだと―…。

 それが、自ら国民が手の平の上で踊らされていることを、ほとんどのミラング共和国の国民が気づかずに―…。

 そして、待ち望んでいることが始まろうとしている。

 「いよいよ、俺らの生活を奪っていったリース王国へと―…。」

 「そうだ、そうだ。ミラング共和国、シュバリテ様に敬意を!!!」

 (戦争なんて―…。だけど、こういう雰囲気では私の意見なんて言えるわけがない。)

 (狂わされてしまったな。リース王国もリース王国だが、ミラング共和国もミラング共和国だ。結局、国というものは、一部の利益者のためにしかないのか。)

 口に出されている言葉は、これからおこなわれることになるであろう、ミラング共和国とリース王国における戦争に賛成し、ミラング共和国の国民がそのようになることを煽っている。

 勿論、シエルマスの息の根がある者たちだが、その後、シエルマスに殺されることはない。なぜなら、ミラング共和国とリース王国が戦争している間は、彼らの存在が重要であり、変に変死や行方不明にさせてしまえば、返って、疑ってくる可能性があり、その可能性をそもそもになくし、戦争を煽っている彼らに責任を負わそうとしているのだ。

 だって、目の前にいる者ばかりに多くの者たちは注目し、その背後を詳しく自らの力で知ろうとはしないものだ。一部、その例外は存在するが、少数である。

 さらに、少数という面に関して、注目すべきは、物事の動向というものは多数派によって動いているわけではない。少数派であったとしても、力を持っているのであれば、影響力という面の力で、多数派のように振舞うことができ、自分達の自由にある程度、動かすことができる。だけど、完全ではない以上、すべての面で、そのような行動ができるかどうかは、他の要因を排除できないので、そこに影響される場合が存在する。

 一方で、実は、自分が少数派だと思っている者は、力がない場合、他者の意見は自分と意見が違うという認識となり、勝手にそのように思い込んでしまう。多数派かもしれないし、自分だけかもしれない、少数派かもしれない、その三つの可能性のうち現実はどうなっているのかを探ることなく―…。

 だけど、戦争というものの悲惨さというものを理解していないわけではないし、人の殺し合いや建物の破壊し合いということを想像することができれば、戦争なんて望みやしなくなる。被害を受けると理解すればなおさらだ。

 それでも、戦争を望むという者たちは、自らの正義という名の妄想を抱き、かつ、戦争によって利益を得るために起こすのだ。自らが巻き込まれることがない、ここでは自らの死や自らの利益が脅かされるということがないという勝手な妄想で思っていること、そのような理由で好戦的になったりすることがあるのだ。まあ、ただの戦争好きという者もいれば、捌け口としての戦争を望む者もいるだろう。後者に関しては、ミラング共和国における生活を追い詰められている者の中には確実に、そのように思っている者たちがいることは確かだ。

 だけど、言っておく。結局、自らの思い通りに確実になるということはなく、予想外も起こりうるのだ。人は、この世界を完全に把握することができず、ただ滅び去ることになる存在なのだから―…。

 まあ、これ以上、述べても意味ないことだし、必要のないことだが―…。

 そして、声の大きい者で、威圧的な者を怖れるという気持ちがある以上、今のようなミラング共和国とリース王国が戦争することに賛成する者たちの声は日に日に大きくなり、反論すら許されなくなるのだ。彼らは、自らに自制するためのブレーキである意見をまるで不必要と判断し、取り外そうとするのだ。滅びの始まりである。滅びのためには他の要因が必要となり、それが重なると滅びは目の前へと出現してくる。

 心の中でミラング共和国とリース王国の戦争を望まない者の思いを抱けば、前に述べたことは理解できるかもしれない。

 いよいよ、始まる。

 「静まれ――――――――!!!」

 敢えて、言葉の最後を伸ばす。

 大きな声とともに―…。

 そのようにすれば、ここに集まっている群衆とも呼んでも良いミラング共和国の国民が静まるのを理解しているからだ。

 そして、この役目は、声が大きく、威圧を感じさせ、透き通った者の声の持ち主が担当することになる。

 群衆は、次第に静まっていき、声を出した者が続ける。

 「これより、ミラング共和国軍、リース王国の領土へと向かって、出陣!!!」

 そして、その声とともに、城門からミラング共和国軍が次々と出て来て、ラルネの外へと向かって、行進をし始める。大隊長クラスは馬に乗り、指揮官クラスは馬車の中に乗っており、そこから顔や手を出しながら、手を振る。

 これは、あくまでも見世物でしかない。

 これから出陣し、リース王国の領土を支配してくるのだということを、確実に知らしめるための―…。自らの軍がこんな数もいて、軍事力を持っていることをミラング共和国の国民、他国の者たちに示すために―…。

 だけど、そのような手は、多くの者の心の不安を解消するわけでもなく、場合によっては増大させたりすることにもなるし、かつ、わかる者にとっては、ただの見せかけだということを簡単に見破られてしまう結果になるだけだが、多くの者はこれで十分なのだ。

 最初に出てきたのは、ファルケンシュタイロ率いる軍隊であり、ファルケンシュタイロは、軍の行進の中盤ほどになっており、後ろの殿の位置とも言っておかしくないところにグルゼンが率いる軍勢がいた。

 ファルケンシュタイロは、グルゼンがミラング共和国軍を辞めるというので、そのケジメとして、この戦争に動員したのだ。というか、グルゼンをこの戦争の最後辺りでシエルマスを用いて抹殺しようと考えているのだ。

 理由は簡単だ。グルゼンのような優秀な指揮官であり、兵士を外に出せば、ミラング共和国軍は戦力ダウンだけでなく、ミラング共和国と敵対する国の軍隊の軍事力を強化するだけだ。それだけは避けないといけないので、抹殺した方が得であると判断したのだ。ラウナンもこの意見には賛成していた。

 そして、グルゼンはそのことを予想できないわけではない。

 グルゼンは馬車に乗らず、馬に直接跨って、行進し、隣に信頼できる腹心と、周囲を警戒しながら、群衆に向かって、手を振るのだった。

 「グルゼン親方。本当に良かったのですか? ミラング共和国軍を辞めて―…。」

 ここでグルゼンから視線から見て、右側にいた馬に乗っているグルゼンの右腕のフォルマートが心配しながら聞いてくるのであった。

 「フォルマートは心配性だな。だが、それで良い。慎重になる事は生き残るために必要だ。兵士は、戦争で死んでしまったら終わりなのだ。敗北とか勝利とかそんなこと関係なくな。だからこそ、フォルマート、お前は俺の右腕に相応しい。そして、ミラング共和国軍を辞めるのは、これ以上、一流でない者たちについて行く必要はないと感じたからだ。」

と、グルゼンは答え始める。

 「一流でない者たち?」

 なぜ、そのような言葉が出たのか疑問に思い、フォルマートはグルゼンに尋ねる。

 「ああ、俺が仕えたミラング共和国の上官および政府関係者、総統の中に、一流の者たちは一人もいなかった。二流なのはシュバリアと、その後継者の奴ぐらいだ。今の総統はシュバリテは三流だ。そして、その裏にいるシエルマスの統領ラウナンも同様だ。二流は、国およびそこに住んでいる者たちの気持ちを理解しているが、自らが彼らおよびそれらのために損をすることが出来ない奴だ。シュバリア何て、その典型例だ。あいつは、国と住んでいる者たちの生活のために、対外強硬派を潰さなかった。それが最大の失敗だ。自らの命を落とすことになった。対外強硬派を潰しておけば、後はどうにでもできただろうに―…。それに、リース王国が俺らに戦争を起こして欲しいことは何となく想像できた。アルデルダ領のエルゲルダというのは相当の馬鹿だとしか思えない。あいつは、三流…、いや四流にすらなれない、馬鹿だ。そういう奴は周囲がトップにさせないようにするのだが、何の間違いかトップになっちまった。アルデルダ領は自滅か反乱しか方法はなくなってしまったというわけだ。その馬鹿の政策をリース王国は利用して、一部の者、ラーンドル一派とか言った奴らの利益にした上で、ミラング共和国戦争を仕掛けさせて、不毛なアルデルダ領をミラング共和国に背負わせて、リース王国におけるマイナスしかない土地にかける必要をなくそうというわけだ。ホント、これを考えた奴は、かなり頭のキレる存在だが、ラーンドル一派も猛者だが、それは自己利益の猛者でしかなく、三流だ。三流のすることは、自らの命を守るために、このことを考えた者をスケープゴートにすることだろうな、結末は―…。まあ、少しだけ、奴らがどのような思考をしそうなのかを探れば簡単にわかることだ。」

 グルゼンは悠長に答えながらも、警戒を怠ることはない。

 グルゼンのように、ここまで、相手のことを読める者はいない。簡単なことだと、グルゼンは言うが―…。

 グルゼンが言っていることは、今のミラング共和国とリース王国のことをある程度の面で正確にとらえているし、今までの中で最も、ためになる意見であることは理解できるだろう。結局、自らを犠牲にして、自らが就いて職の本当の意味で必要としていることを守ろうとしていないのだ。たとえ、自らが世間から最悪の評価を受けることになる結末を迎えるとしても―…。

 まあ、世間というか、多くの人々は、本当の意味で英断というものを理解することはできないだろう。それは、人の意図というものを理解するのに等しいことなのだから―…。

 結局は、一流というものは、自らの評価が世間からマイナスになろうとも、その世間というか自らが属している国だけではなく、そこに住まう人々をも守ろうとして、行動していて、実際にできている人のことを言うのだ。だからこそ、世間などからの評価で測ることなどできやしない、ということだ。

 さらに、グルゼンの言葉からは、リース王国のラーンドル一派が何をしようとしているのかが、予想されている。

 そう、ラーンドル商会で対外交渉を担当しているアールトンを今回のリース王国とミラング共和国との戦争の結果如何によっては、スケープゴートにしようとしているのだ。つまり、今回の戦争のリース王国側の責任者として処分して、矛先がラーンドル一派に向かわないようにしているのだ。こういう時に限って、責任逃れの最たる行動をとって、成功させてくるのだ。

 話を進めていく。

 「はあ~、では、グルゼン様が思っている一流とは―…。」

と、フォルマートはさらに聞いてくるのだった。

 グルゼンが思っている一流とは何者かと―…。

 「一流とはなぁ~、世間から評価されることはある。それは善きも悪しきのどちらかになるだろう。だけどな~。一流の者ならば、世間からの評価からではなく、自らの属している場所およびその周囲のすべてを見た上で、自らの立場で何をしなければならないかをしっかりと理解し、自らの属している場所およびその周囲、いや、世界にとって良い方向へと真に向かうように行動するものだ。だからこそ、その者の行動はスケールの大きさに誰も理解することができなくなるのだ。そういう奴は、一つの時代に一人ぐらいいれば良い方だと俺自身は思っている。その数に関してはわからない。だけど、ミラング共和国にそういう奴がいて、総統の地位にあるのならば、自らが世間の批判を怖れずに、ミラング共和国に住んでいる者たちのために行動していただろう。それを理解できる人々はほとんどいないだろうが、その真実を伝える者がしっかりといれば、その一流は世間からちゃんと賞賛されるだろう。世間とは、そういうものだ。それに、もう、ミラング共和国に未来はないだろ。俺は、この国の兵士での重役の地位を捨て、ある男のもとにいく。そいつは一流ではないが、それとは違う何かを感じるからな。言い過ぎた。最後のことは忘れてくれ、フォルマート。」

と、グルゼンは話し終えるのだった。

 グルゼンの一流に関する認識がわかるものだ。

 彼にとっての一流とは、世間の評価ではなく、全体を見た上で、自らの立場で何をする必要があり、それを実行できるものである。その世間の評価というものは、ちゃんと意図を含めた真実を伝える者の役割であり、そのことによって、一流は称賛されるというものだ。

 そして、グルゼンは、ミラング共和国に未来はないと感じ、これからベルグのもとへと向かおうとしているのだった。すでに、ミラング共和国軍を辞めることは決まっているし、ベルグのもとへ向かうことはベルグには話しているのだ。

 この後、ミラング共和国軍は、アルデルダ領に軍勢を向けていくのだった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(11)~序章 アルデルダ領獲得戦(11)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


次回の投稿で、2022年における投稿を最後とします。そろそろ、年末年始の休暇に入ります。今年は、体のダメージとかあったり、疲れたりもしたので、無理しないためです。普通には過ごせていますが、最近、無理させすぎなのではと気づいたからです。

そして、『水晶』の番外編の内容は、次第に、第128話後半の内容がどんどん登場してくると思います。その裏側とか―…。

『水晶』の明日の投稿分が、完全に今年最後になります。『この異世界に救済を』は、2022年12月24日の投稿分で、今年分は終え、次の投稿が2023年1月7日頃の予定になっていますし、『ウィザーズ コンダクター』は、第7部が2022年12月中旬に完結し、第8部は2023年1月中旬に投稿再開を予定しているからです。

ということで、寒い日が続きますが、私は体を十分に休めますので、良い年末をお過ごしください。

では―…。

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