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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
355/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(9)~序章 アルデルダ領獲得戦(9)~

『水晶』以外に、以下の作品を投稿中。


『ウィザーズ コンダクター』(カクヨムのみ):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138

『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。

前回までの『水晶』は、アルデルダ領の政策により、ミラング共和国は追い詰められ、対外強硬派が選挙で勝利し、穏健派は失脚する。そして、対外強硬派は、穏健派の主要だった者たちを暗殺していくのだった。逃げられた者はわずかばかりだったという。ミラング共和国は、アルデルダ領があるリース王国に対して、戦争を仕掛けようとするのだった。

 ミラング共和国の森の中。

 走りながら逃げる者がいる。

 (はあ……はあ………はあ…………はあ………………はあ。)

と、息を荒くしながら―…。

 その者は、兎に角走り続けないといけないほどに追い詰められていた。

 追っている者と追われている者の体力の差は歴然としていた。

 家族も一緒であり、子どものペースに合わせる時間がかかってしまう。

 (対外強硬派は、ここまでのことをしてくるとは―…。ふざけるな!! 他国に逃げ切って、いつか政権を奪還してやる!!)

と、心の中で思う。

 そう、逃げる者は穏健派の中で主要な力を持っていた人物の一人である。

 だけど、この世は無情としか言いようがない。

 もし、あなたがこの世の何らかの神を信仰しているのなら、ここで、神によってこの逃げる者は救われるかもしれないと思うかもしれない。ただし、神への信仰の度合いを基準として、それに満たないと考えた場合はそうではないだろうが―…。

 そんな神なんていなかったかのように、逃げる者には不幸という名の自らの生の終わりが訪れるのだった。家族とともに―…。

 「キャアアアアアアアアアアアアアアア」なんて声は聞こえることはなく、静かに殺されるのだった。家族諸共!!

 本人たちも気づくことなく、その視界を白にして―…。

 そこに、二人ほどの男が、逃げる者を確認する。

 「こいつが、フォンル=フェバリア外務大臣で間違いないな。」

 「ああ、人相は確認している。それに、子どもも妻も殺して大丈夫なのか?」

 「わずかな生き残りから情報は洩れるものだ。だけど、死んで間もない。妻の方はここでの俺らの楽しみにし、子どもの方は、バラバラに刻んでやろう。いろいろと実験できるものだ―…。」

 「相変わらず、えげつないな。」

 そして、殺されたフェバリアの家族をどのようにしたのかを、口から語るのも恐ろしいことだ。二人ほどの男のうち、フェバリアの子どもとフェバリアの妻を殺すことを可哀想と思わなかった人物の方には、残虐性というものがあり、この存在は証拠隠滅する前に、口には言えないことをするのだった。この男の残虐性は、世間の人々からすれば、理解できるものではなく、そのことが世間に知られれば、確実に、危険な存在であり、抹殺されていてもおかしくはない。

 時代と状況が間違えば、英雄という存在に扱われるほどに、危険な存在であろう。こういう危険思想な奴を崇める存在がでてくることがあるのだ。それが危険な状態を生み出すことがある。

 そして、すべての証拠隠滅を終えた時、フェバリアの子どもとフェバリアの妻を殺すことが可哀想ではないと思っていた人物の表情は清々しいものをしていた。

 (こいつは危ないな。)

と、それとは別の人物は心の中で言う。

 この人物は、仕事だからこそ、このような残虐なことができるのであり、それ以外の場合は、よっぽどのことがなければしないだろう。そのよっぽどの判断基準は、この人物の主観になるのは確かであるが―…。

 「さて、他のもいかないとなぁ~。」

 そして、この人物以外の奴が言うと、二人はこの場から消えるのであった。

 ここは、あまり人通りがないため、死体が見つかるということはないだろうし、その時には腐敗が進行して、骨しか残っていないのは確かだ。死体が誰かはわからないということだ。

 まあ、この異世界における解剖学の技術の程度には差があり、リース王国とその周辺諸国の解剖学に対する理解は、あまり発達していない。人体の構造を知るという目的以外のこと、死体に関しては、目を向けられる余裕など存在していないのだから―…。

 その後、ミラング共和国における穏健派は、フェバリアのように何十人もの人々が殺されていくのだった。いや、それすら、少ないと思えるぐらいに―…。

 その中で、逃げ切った者たちもいる。

 シュバリアの息子ミールザともう一人だけだった。ミールザは隣国に逃れ、ここから遠くへ向かうのだった。もう一人は、リース王国へと逃げるのだった。


 ミラング共和国の首都ラルネ。

 そこには、瓦版と呼ばれてもおかしくない木で作られた板版にミラング共和国におけるニュースが書かれていた。

 そのニュースは―…。

 「ミラング共和国における穏健派、選挙で敗北。穏健派は、リース王国のアルデルダ領における税の創設と増税にまともに対応できず、シュバリアは敗退し、シュバリテが総統となる。」

 「はあ~、シュバリテが総統かぁ~。まあ、俺らの生活の危機をどうにかしてくれれば、誰だって良い。」

 「そうよ。」

 そのニュースには、多くの者たちが集まりながら、一部ではこのように言っている者がいる。

 人々の気持ちは、何もできないシュバリアよりも、何かをしてくれるかもしれないシュバリテに可能性をかけたのだ。

 アルデルダ領のエルゲルダによる通過税の創設と、商品税の増税によるミラング共和国での塩の価格の上昇による物価の上昇の波及によって、人々の生活はかなり厳しいものになっていた。人々の中で、経済の流れというものを理解できる者はほとんどおらず、とにかく現状というか、目の前で起こっていることからでしか判断することはできない。

 ミラング共和国における教育は、親から子への家を継ぐことによって必要な教育しか施されないし、その中では物の値段と計算とか、人との関わり、文字の読み書きなどぐらいであり、学問的なことはミラング共和国の議会や役人になる者以外は必要とされるものではなく、大商人や学者の一部しかやっていない。

 それらの人々は、全員ではないが、多くが対外強硬派へと味方することになった。シエルマスの恐怖をしっかりと理解しており、自らの命を守るために―…。

 だけど、人々もシュバリテが傲慢な存在であることを知っている。本当は、シュバリテのような存在をミラング共和国の総統にしたいわけではなかった。他に選択肢がないからしたのだ。シュバリテが気づくことはないだろう。

 そして、中には、今の自分達の生活を困難にしている問題を解決してくれれば、悪魔と契約しても良いと思っている者もいるぐらいだ。それぐらいに、追い詰められているということだ。

 「まだ、続きがある。選挙後、穏健派は逃亡し、穏健派のトップ、シュバリアが公邸に火を放ち、自殺した。その原因は、選挙への敗北にけじめをつける者と思われ、さらに、別の関係筋からは総統という地位が無理となり、公邸をシュバリテに自らにとって都合の悪い政策の証拠を渡したくないと思い、公邸に火を放ったとか。さらに、シュバリテはミラング共和国議会の総統に就任し、穏健派から都合の悪い情報が何かを聞き出す方針と、この物価上昇の苦しみは、リース王国がミラング共和国を征服したいがために起こしていることであり、その解決のためにもリース王国との戦争は避けられないと―…。」

 「……俺たちのこの苦しい生活は、リース王国のせいだったのか。やっぱり、シュバリアはリース王国と繋がっていたから、俺らの生活が苦しくても放置したんだ。」

 「許せねぇ~。シュバリアは死んだけど、リース王国がいる限り。」

 そして、リース王国への恨みがミラング共和国の国民の中に広がっていくのは当然の結果となっていた。

 そのニュースについても、対外強硬派の意図が多分に含まれており、リース王国とミラング共和国の戦争へと導こうとするものであった。

 今は、煽れば煽るだけ、戦争へと近づいていくのだから―…。


 ミラング共和国議事堂。

 そこでは、ある審議がおこなわれていた。

 その内容は、軍事費の増額であった。

 「今回、リース王国との戦争となり、軍事費を増額しなければなりません。我々の戦力はアルデルダ領を奪うことは可能ですが、それ以後のリースへと攻め入るためには、装備が心許ないし、槍や剣などの武器の増加および天成獣の宿っている武器の数を増やすためには必要なのです。」

と、ヌマディア=ファルケンシュタイロが言う。

 彼は、対外強硬派がミラング共和国における政権を奪取した時、軍事大臣のポストに就任しており、すでに、軍人を辞めていたので、ミラング共和国における憲法の軍民に当て嵌らなかった。要は、軍民の大臣職への就任は禁じられているということだ。

 その後、穏健派に与した軍人や役人を排除し、自らの子飼いをその排除した穏健派が就いていたポストに就任させた。そのことにより、対外強硬派は、軍部を完全掌握したことになるし、穏健派に近い者も迂闊に行動することができなくなった。だけど、たった一人を除いて―…。

 そして、軍部としておこなうべきは、軍事費の増額である。アルデルダ領を攻めるのに、軍事費の増額はそこまで必要ではない。

 だけど、ミラング共和国軍がリース王国の領土内に侵入した場合、リース王国側は、アルデルダ領を守るために、軍を派遣してくることは確実である。

 ゆえに、その時、今現在の装備だけでは、リース王国軍を完全に倒すことはできない。なぜなら、リース王国は、兵士よりも騎士という存在が強く、一部には天成獣の宿っている武器を扱う者がおり、そういう奴らは、一人で数千人を殺害することができるぐらいの力があるとされている。つまり、その天成獣の宿っている武器を扱う者に対抗する必要があるのだ。

 天成獣の宿っている武器が表立って流通していることは、ほとんどないし、さらに、天成獣の宿っている武器であるかどうかを見破るのは素人には困難であるし、過去の文献やら、代々伝わっているという感じで、誰かが「これは天成獣の宿っている武器です」という証明がないと普通の武器と見分けがつかないのだ。

 そして、裏には表以上に流れるが、それでも、数は少なく、偽物がほとんどである。ゆえに、偽物を掴まされることを考慮して、多く軍事費を確保しておく必要があるのだ。さらに、その一部は、対外強硬派の将校たちの横領する金となるのであるが―…。

 まあ、多くを横領してしまえば、必ず足がつくので、そこまではしないが―…。その度胸もない。

 そして、この議会の場で反対の意見を唱える者はいないわけではない。

 「質問をしてよろしいでしょうか。」

と、軍事委員会委員長に向かって、質疑をして良いかと言うのだった。

 「どうぞ。」

 この軍事委員会委員長は、対外強硬派であり、ファルケンシュタイロの部下である男だ。

 ファルケンシュタイロにとっては、こういう反対意見を言われるのは嫌いであるが、それでも、反対派の意見を聞きました、ということをしておかないと、後で、対外強硬派に反対な勢力にとって都合の良い証拠になるのだった。

 「では、質問させていただきます。今回の軍事費の増額に関してですが―…、財源はどこから手に入れるつもりですか?」

と、質問してきた議員は言うのだった。

 (ミラング共和国の人々の生活は、あまり良い方ではないはずだ。リース王国のアルデルダ領の商品税の増税と通過税の新設で―…。そうなると、どこかに借金でもするのか? いや、国民に対して増税?)

と、心の中でそう思うのだった。

 ファルケンシュタイロの答えは、すぐに返ってくるのだった。

 「国民に対する増税です。今、ミラング共和国は緊急事態の様相を呈しています。リース王国が我々が通る通路に税金を増税し、我が国を経済という面から締め上げようとしています。そして、リース王国がミラング共和国を征服しやすくしているのです。だからこそ、我々は自分達の生活を取り戻すために、リース王国に戦争を仕掛けるのです。これは、ミラング共和国存亡のための戦いなのです。」

 この時、ファルケンシュタイロはまるで、自らの演説に酔っているようだった。いや、完全に酔っているのだ。

 国家存亡の危機に、国の中の増税に反対する者がいるものか、と―…。だって、国がなくなってしまえば、治安は悪化するし、リース王国に征服されれば、不遇な扱いを受けるかもしれないのだから―…。そんなことになることをラウナウ率いるシエルマスは確実に広められていると確信できる以上、危機を煽れば良く、自分達の国を守るための増税なんて、簡単に受け入れられるだろう。

 ミラング共和国の国民の多くが、経済に関する教育を受けているわけではないのだから―…。それに、税の仕組みと、税の流れの勉強なんて、さらにされているわけがない。要は、ファルケンシュタイロはミラング共和国の国民をある意味で馬鹿にしているのだ。

 「だけど、国民が増税を受けれたりするものでしょうか?」

と、質問者はさらなる疑問を尋ねる。

 「大丈夫です。我が国民はちゃんとわかっています。国家の危機に、自らの生活を厳しくすることなど大したことではないことを―…。この危機を乗り越えれば、勝利があり、そして、人々の生活の向上があるのだ。だから、ほんの少しの我慢ぐらい受け入れられるものだ。」

と、ファルケンシュタイロは言う。

 ファルケンシュタイロとしては、リース王国と戦って負ける可能性はあるとは言っても、確実に、負けるとは言わない。増額するために危機を煽るが、増額すれば勝てるということを確実であるかのように言う。

 だけど、現実は、完全にミラング共和国が勝てるという保障があるかというと、そうは思っておらず、負けそうになったら、国民に責任を押し付ければ良いと思っている。お前らが金をあまり出さないから負けるのだと―…。

 その後、質問者もいくつか質問するが、軍事委員会で軍事費の増額が可決され、議会でも可決することになり、同時に予算委員会からの増税案が確定され、すぐに施行されるのだった。

 そして、二カ月後、本格的にリース王国へと侵入するのであった。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(10)~序章 アルデルダ領獲得戦(10)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


そろそろ、あの将軍を登場させられますよ。ファルケンシュタイロじゃないよ。あの筋肉ムキムキではなく、親方の方―…。そして、穏健派の結末も終わり、リース王国との戦争です。第128話の後半で描かれた話へとなっていきます。今、執筆している場所もそこであり、かなりの追加内容があります。親方の活躍がすごい…なぜ?

さて、『水晶』の次回の投稿は、2022年12月25日頃を予定しています。理由は、2022年12月24日の午前中は投稿することができないからです。なので、翌日にします。

後、『この異世界に救済を』の「カクヨム」および「小説家になろう」での投稿は、いつも通りにおこなう予定です。「カクヨム」の方は投稿時間の予約を入れました。いつも通りの時間で、7時10分です(午後ではなくて、午前の)。そして、「小説家になろう」の分は、午後の夕方から夜にかけてを予定しています。

ということをしっかりと言っておきます。

雪も厳しいなか、執筆は無理しない程度に頑張っていきます。パソコンのしすぎなので、少し時間を減らしていきたいと思います。

では―…。

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