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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
353/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(7)~序章 アルデルダ領獲得戦(7)~

『水晶』以外に、以下の作品を投稿中。


『ウィザーズ コンダクター』(カクヨムのみ):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138

『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひとも読んで見てください。


宣伝以上。

前回までの『水晶』は、ミラング共和国で政治の実権を握っている穏健派は、リース王国のアルデルダ領の政策やリース王国との対外関係で何も進展させることができない結果、次第に、ミラング共和国の住民から離反されそうになっていくのであった。さらに、追い打ちをかけるように、シエルマスによって穏健派にとってあることないことの悪い噂がラルネの市内に流されていくのだった。

そして、議会ではある法律が議会で、まさに可決されようとしていた。


 それから二週間の時が経過した。

 穏健派の評価は下がる一方であり、議会でも日に日に支持を失っていった。

 七つの領主からも穏健派は見放されかけていた。

 ミラング共和国の首都ラルネの議会。

 その議会をおこなう場所。

 ここは、ミラング共和国の各地から選ばれた議員百二十名が一同に会し、これからのミラング共和国の法律や予算などを決めていく、唯一の立法機関なのだ。

 そこで、今日は、議会が開かれていた。

 ある法案における最終討論がおこなわれていたのだ。

 ミラング共和国では、法律の審議をおこなう時は、まず、その法律を審議に移すべきかを裁決し、その後、法律が何の委員会で審議されるかを議長の名の下に議会局が仕分けして、その指定された委員会で審議し、そこで可決されれば、再度、この今おこなわれている議会で、最終討論をおこなった上で、議決を取り、可決すれば成立するのだ。成立要件は過半数である。一部の法律は例外であるが―…。

 内容は―…。

 「このようなリース王国と戦端を開く、法律には断固として反対します。この法律が可決され、リース王国と戦争となった場合、軍事力から言って、リース王国に侵略されることを許すだけであり、ミラング共和国の滅亡に繋がってしまいます。どうか、議会の皆さま、戦争という国民を危険に晒す選択肢には至らないでください。」

と、最後にフォンル=フェバリアが演説を終える。

 フェバリアにとっても、リース王国と戦争をして、ミラング共和国が勝てる保証はどこにも存在しない。リース王国には、精鋭の騎士がおり、彼らは天成獣の宿っている武器を扱う者もおり、それに対抗できるほどの力をミラング共和国は持っていない。グルゼン将軍は対抗することは可能であるが、それでも数では足りないのだ。天成獣の宿っている武器を扱う者に対抗できるほどの―…。

 そのことをちゃんと理解しているから、無駄な戦いで命を落とせば、さらに、ミラング共和国の復興も時間がかかるのだ。軍事だけではなく、経済など、いろいろな側面で考えているのだ。

 そして、他にも何人かリース王国との戦争に反対する議員が言うが、それでも、時間稼ぎをさせてもらえなかった。

 (議長は買収されたか。)

と、シュバリアは心の中で思うのだった。

 議長として選ばれた人物は、シュバリアにとって好都合の人物であるが、どうしても賄賂を贈ってくる者に簡単に(なび)いてしまうし、本当は選びたくはなかったが、この議長が有力者の一族であり、ミラング共和国の中で古くからの名門であり、シエルマスとも話せるというほどの影響力があるので、どうしようもできなかったのだ。

 どんな地位を得ても現実の力には、どうしようもできないことのある一例だ。そのことをシュバリアは体験させられていたし、いるのである。

 議長の方は、

 (対外強硬派がこんなにも金をくれるとはなぁ~。今のミラング共和国は衰退するだけじゃ。リース王国に締め付けられているんだ。今は金を稼いで、どこか伝手のある場所に逃げないとな。)

と、心の中で考えているのだった。

 この人物は三度の飯も好きだが、金はもっと好きである。私腹を肥やすことに余念がない。というか、名門であることに笠を着て、裏ではやりたい放題だとか―…。それを穏健派もシエルマスと話せるということで抑えることができず、賄賂を贈らないとすぐに裏切られるので、困った存在であるのだ。

 この人物は、別の権力というものは持っておきたいが、トップにいたいわけではなく、裏で自由に権力を動かすフィクサーになりたいのだ。その方が、いざ、という時は表に立てた奴が責任をとってくれて、自分自身は責任を取る必要がなくなるのだ。要は、無責任な人間である。

 この人物が権力を握っていることも、ミラング共和国が発展していくことができない原因の一つである。

 「では、討論も終わりましたので、議決の方に移っていきましょう。」

と、議長が言うと、リース王国と戦争するかしないかで、議決をしていくのだった。


 結果は―…。

 「議会を解散する!!」

と、シュバリアは宣言する。

 この言葉が表すかのように、リース王国へと戦端を開くことが可決された。

 シュバリアの味方と思われていた者たちの中から、造反する者たちが発生してしまったのだ。

 シュバリアとしては、少しは出る者だと思われていたが、可決される数まで出るとは―…。

 そして、ここで、一つだけ説明を加えておかないといけないことがある。

 ミラング共和国の議員選挙に関してである。

 ミラング共和国の議会は、任期が七年となっており、解散ありの一院制である。

 人数は、さっきも述べたように議員定数は百二十名だ。

 そして、解散の要件を述べると、審議されている法律が可決され、それがミラング共和国の総統によって認めがたい時、後は任期満了による解散である。

 今回は、前者の条件によって解散権が行使されることになった。その前者の解散の要件に関して、議会による承認を必要としないということが、ミラング共和国の司法における判例となっている。その理由に関しては、ミラング共和国の総統の中にも自らの思い通りにしようとした者たちがおり、それまでは議会の承認を必要とするものであったが、勝手に解散をおこない、選挙をおこない、自陣営が勝利するという事態が発生した。その時、反対陣営は司法に違法だとして訴えたが、認められず、以後、この司法における決定がずっと続いてきているのである。続いている理由は、総統の権威を強化して、自らにとってやりやすいようにするためだった。

 今回の行使は、シュバリアにとって苦肉の策ではあるが、国民への選挙なら、勝つ可能性が低いとしても、ちゃんと訴えれば、勝つことは可能だろう。対外強硬派は、決して、選挙が上手というわけではないのだから―…。現に、シュバリテは、これまで傲慢な態度で演説していたせいか、都市部ではあまり受けが良くなく、票数を穏健派に向かっている一つの要因であった。

 だが、今回は、穏健派の不満があるので、シュバリアの思っている通りいく可能性は低い。そう、シュバリアは行き詰まり、そのことで追い詰められ、視野が狭くなってしまっているのだ。ゆえに、このような賭けに出てしまっているのだ。

 そして、解散後、一か月以内に選挙がおこなわれる。

 その選挙は、七つの領土とラルネに選挙区が分けられ、この八つの選挙区で合計が百二十名になるようにしている。現実世界における比例代表制は存在せず、候補者の中から一人の名前を書いて、投票するという感じである。投票後、選挙区ごとの定数まで票の多い順から当選していくという仕組みになっている。大選挙区制と言った方が近いのかもしれない。

 選挙後、一か月以内にこの議会をおこなう場所に集まり、新たに、総統を指名するということになる。総統の選出は、議会の議員によって選ばれるということがわかる。

 そして、シュバリアはその発言をしながらも、希望に縋ることしかできないのであった。

 (シュバリアの奴も焼きが回ったな。まあ、リース王国には感謝しかないが―…。俺らとしては、戦争がしたい。だって、ミラング共和国の繁栄は軍隊の力によってなされないといけない。その軍隊を強力にするには、軍事費を増大させて、他国を征服して、領土を増やさないといけない。リース王国だってそうだろ。ならば、ミラング共和国もそうしないといけない。いずれは、この地域で最強の国家にしてやる。我の手で―…。)

と、シュバリテは心の中で、自らの野望に一歩、近づいたと思うのだった。

 シュバリテは、ミラング共和国をこの地域における最強の国家にすることだった。そうすることで、自らは将来における偉人、偉大な支配者として歴史に名を残し、ミラング共和国の中興の祖と言われることだった。そのためには、軍事力が重要なのはすぐにわかることだった。それに、国民の生活は軍事力を強化していって、他国を支配して略奪していけば、そのお恵みによって向上すると考えているのだ。

 だけど、ここには重要な欠点が存在することがあるのはわかるだろう。勝利をしなければ、何も良い結果を招くことはないのだ。

 それでも、シュバリテは国民を黙らせる軍事力と、対外関係を煽ることによって、国民が不遇な目にあっているのは周辺諸国が悪いと思わせ、対外強硬派にとって都合の悪いことから目を逸らせることができると、それも簡単に―…、思っているのだ。そんな都合の良い展開はほとんど起きないのが世の中というものではあるが―…。

 その中で、最悪の想像をする者がいた。

 (これはすでに、対外強硬派が有利な状況になってしまった。彼らは確実に、選挙妨害やら選挙操作をしてくる可能性が高い。シエルマスなら確実にそのことが可能だ。我々の国の体制は民主主義だから優れていると言われるが、これほどまでに脆いとは―…。いろんな考えを受け入れるからであろうか。だけど、私もこれからの身の振りを考えないといけないな。)

と、フィーマル=ファウンデーションは心の中で思う。

 フィーマルは、裏の情報を完全に集められるほどの手段を持ち合わせてはいない。

 だけど、ディマンドが最近、得意気にフィーマルに自慢してくるのだ。我々がミラング共和国のために、歴史に名を刻むための偉業をなすのだ。

 だからこそ、ろくでもないことをやろうとしていることがわかるが、具体的なことまではわかっていない。さらに、フィーマルは穏健派のシュバリアの後継者と見なされているが、今の心境は、シュバリアに半分ほど絶望しているのだ。

 そして、自らの命を守るために、これからのことを考えないといけない。対外強硬派が政権を握った場合、確実に、穏健派を議会からの排除だけでは終わらないことがわかっていた。シエルマスを使って、暗殺してくる可能性はかなり高いと見られている。

 だからこそ、自分はどこに逃げるべきか。今のフィーマルの考えることはそれだけだった。

 そして、ミラング共和国の政治体制がここまで、繁栄を崩壊させる勢力に脆いと思ってしまうのだ。だけど、国というものは、政体というものが必要である可能性は高いが、その政体をいかに行使しながら、繁栄させるのか。そのことが重要になってくる。

 さらに、繁栄とは、そこに住んでいる人々の暮らしを良くすることで、手に入れられるものである。弱り、窮乏化していった国に繁栄というものは離れて行き、その代わりに滅亡という名の終わりが握手をしてくるだけなのだ。その手には、国を滅ぼすオーラか何かが纏われている。

 そして、ミラング共和国の議会は解散した。


 その議会堂の近くの対外強硬派の部屋。

 そこでは、シュバリテとラウナンの二人がいた。

 「ラウナン、今日、お前だけを呼んだのはわかっているな。」

と、シュバリテは言う。

 そう、ディマンドやクロニードル、ファルケンシュタイロを呼んでいないのだ。

 すでに、彼ら三人には命令を下しているし、特に、追加して言うことはない。

 だけど、ラウナンには追加して言っておかないといけないことがあるのだ。

 「何でしょうか、シュバリテ様。」

と、ラウナンは礼儀正しく、返事する。

 一礼を含めて―…。

 「ああ、ラウナン。今日、議会で、シュバリアの奴が解散権を行使した。穏健派はもう、有効な手立てを打つことができないのは確かだろう。だけど、シュバリアの後継者と目されているフィーマルはなぜか、苛立ちの表情を見せず、何かを悟ったような表情をしていやがった。あいつが何を考えているのか、シエルマスを派遣して、確認して欲しい。最悪の場合、シュバリアよりも先に始末しておかないといけない。危険度が上昇した。」

と、シュバリテは言う。

 シュバリテとて、無能というわけではない。シュバリアが優秀すぎて、目立たなかっただけなのである。シュバリテは常にシュバリアの陰に隠れることを強いられていたからこそ、シュバリアに嫉妬し、いつか越えようとしていた。

 そんななかで、ついに、シュバリアからミラング共和国の総統の地位を奪うことができるのだ。嬉しくないはずがないし、そのための危険な要素をちゃんと排除していおく必要がある。

 その要素となりそうな者が、シュバリアの後継者とされるフィーマル=ファウンデーションである。彼はディマンドの兄であるが、ディマンドよりはるかに優秀であることは過去に直接話した中でもわかっているが、それでも、シュバリアと同様に臆病であり、リスクを冒さないということがわかっていた。だからこそ、権力者になることができないとも―…。

 シュバリテは、自身が時には危険な賭けをするぐらいの勇気を持っていると思っている。現に、危険な存在、組織とも繋がることに恐怖することはあっても、関わらないということはないし、そいつらの要望を聞かないということもしない。国を支配するということは、何もかもを従えてこそであり、強さとは、軍事力であることに間違いないのだから―…。

 「はっ、畏まりました。」

と、ラウナウは返事をすると、すぐに消えるのだった。

 (相変わらず、儂でも恐れてしまうわ。だが、フィーマルを仮に殺したとしても、ディマンドをファウンデーション家のトップにしてしまえば良いから、どっちにしても、こっちにとっては悪手にはならない。困るのは穏健派だけだ。さて、儂も選挙を戦わないといけない。国民なんて、儂の国を支えるための道具にすぎないが、煽てておかないとすぐに文句を言う、困った存在だ。)

と、シュバリテは、心の中で思いながら、選挙活動へと、選挙での勝利のために動くのだった。

 シュバリアには、ミラング共和国の住んでいる人々など、文句をいう道具としか思っていないほどの認識でしかないのだから―…。

 人々は簡単に騙される。外面や人々にとって聞き心地の良い言葉を言い、敵を指し示す単純なことしか言えないものに―…。

 だけど、この世界は完全なる黒と白というように分けられるわけではないのだから―…。曖昧という名のものに向き合うしかないのに―…。

番外編 ミラング共和国滅亡物語(8)~序章 アルデルダ領獲得戦(8)~

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


対外強硬派がどうやってミラング共和国の政権を奪っていくのか、穏健派の末路が次第に次回か、数回の間に明らかになっていくと思います。

対外強硬派やシエルマスがかなり危険な存在であることがわかるのではないだろうか。

特に、これ以上、言うことはないので、また、次回。

では―…。


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