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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
352/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(6)~序章 アルデルダ領獲得戦(6)~

『水晶』以外にも以下の作品を投稿中。


『ウィザーズ コンダクター』(カクヨムのみ):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138

『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。

前回までの『水晶』のあらすじは、対外強硬派は穏健派からミラング共和国の実権を奪うために、策謀を開始するのだった。それにより、穏健派は―…。


 それから、一か月の時が経った。

 その中で、着実とではあるが、ある変化が訪れていた。

 ミラング共和国の首都では、住民に不満が溜まっていた。

 「最近、総統シュバリアがリース王国に対して、軟弱な外交をしているみたいよ。」

 「そのせいで、リース王国から足下を見られているって―…。そのせいで、塩の価格が上昇して―…。」

 「生活が成り立たなくなるよ。もう、塩の価格が二倍になってて、なかなか買いにもいけない。」

 「なんか、リース王国がこの国を侵略しようとしているみたいよ。支配して、我々から何もかもを奪う気。」

 「はあ? ふざけんなよ!!」

 「また、値段が上がる―…。私の店、閉めざるをえなくなりますよ。」

 シュバリアの評価が低下していた。

 それは、対外強硬派にいるシエルマスの情報拡散による効果であるし、現に、ミラング共和国の政権を握っている穏健派は、まともな対策ができていないのだ。なぜなら、リース王国は、一切、ミラング共和国からの抗議を受け付けないのだ。

 リース王国のラーンドル一派としては、エルゲルダの政策が失敗することがわかっているし、それまで、エルゲルダの政策で利益を得て、ミラング共和国がリース王国に向かって、戦争を起こさせようとしているのだ。

 簡単に言えば、挑発行為であるのだ。それに、エルゲルダの政策が利用されている。

 エルゲルダの方は、そのラーンドル一派の狙いに気づいてはいない。

 そして、ミラング共和国の首都ラルネでは、このような噂が飛び交い、それに対する策は何も打てていない状況だ。

 その一方で、さっきの話をしている一人が、

 「そうだよな。このままだったら俺らは死ぬしか未来はない。どうせ死ぬ未来しかないのなら、この国を変えてもいいんじゃないかな。」

と、言う。

 その一人の主張が、巡り巡っていく。それにあることを付け加えて―…。

 「シュバリアがミラング共和国をリース王国の一部だと言っていると、議会堂内だと誰に対しても言っていて、議員たちの中じゃ有名だって―…。俺の知り合いの議会堂に勤めている奴が言っていたから、事実だって!!」

 これが、シュバリアがリース王国と繋がって、塩の物価高騰に関連する物価上昇を主導しているということになっていくのだった。

 その一人は話し合いから離れると、裏路地に入る。

 「これで良かったんだよな。」

 「そうだ。これで良い。」

 その一人は、誰もいない場所に向かって声を出す。

 だけど、ここには誰もいないわけではない。

 ゆえに、返事がある。

 そして、その人物がその一人の目の前に姿を現わすのではないか、物語ならそのようになるはずであるが―…。

 「ッ!!…………スゥー……………スゥー…………………………。」

 その一人は、倒れるのだった。

 だけど、地面に接することはなく、また、別の場所から現れて、黒のフードで覆われた二人の人物が持っていた袋の中に、その一人の人物を中に入れるのだった。血の一滴すら落とさずに―…。

 そして、その一人の人物は、その目に見えている景色は消失、この世界における生の終わりを迎えるのだった。

 なぜ、その一人はこのようなことになったのか?

 その一人は、元々、ミラング共和国の首都ラルネで生まれ、貧しい家庭で育ちながらも、賢明に日々の生活を送っていた。しかし、両親をスラム街の荒れくれ者どもに殺されて以後、生活する術がなかったので、スラム街へとたどり着き、荒れくれ者で、両親や殺した者どもとは敵対する勢力のボスに拾われ、彼らの下っ端として生きるようになった。その中でも扱いは酷いものであったが、これ以外に生きる術を見つけることができなかったので、とにかく必死に自らの場所を守るために生きていた。

 ある日、そこに黒フードを来た人物が現われ、彼らにある依頼をされるのだった。報酬の半分がすぐに支払われ、それに目が眩み、依頼を受けることにしたのだ。

 その依頼とは―…。


 ―穏健派でミラング共和国の総統シュバリアがリース王国と繋がって、今回の物価高騰を引き起こしているのだと。議会堂でシュバリアは、ミラング共和国がリース王国の一部だ、議会堂の知り合いの職員が言っていたのだから事実だ。というふうに―…な!!―


 その黒フードで全身を覆っていた人物の言う通りにさっき、そのような噂を広めたのだ。

 そこで、その一人は用済みになった。

 そして、今の結末にいたるのだ。

 そう、依頼をしてきた黒フードで覆われた人物がその一人の言葉に対して、返事をした後、すぐに、黒フードの中に、いや黒フードの中の黒いズボンに仕込んでいたダガーナイフを取り出し、素早く移動して、その一人に気づかれないうちに、その一人の前側の首にダガーナイフを刺し、すぐに引き抜くのだった。

 そして、話を進めると、近くにいた同じ同士がすぐに、死体の一つに対して、袋の中に入れるのだった。その一人が完全に収まるほどの大きさのある袋に―…。

 結論を言えば、用済みだから殺したのだ。黒フードで全身を覆っている人物の存在を世間に知らしめないために―…。

 そして、黒フードの人物たちは会話をする。

 「こいつはいつも通りの場所で処理しておけ。」

 「わかった。」

 「ミラング共和国のために!!」

 最初に、黒フードで覆っている、その一人を殺した人物が言い、その後に袋の中に入れた人物の二人が言う。

 いつも通りのことだ。

 彼らは、ミラング共和国の諜報活動および謀略機関のシエルマスの一員なのだから―…。

 三人は、袋とともに暗闇の中に消えていく。

 その後を追うなら、かなり実力が必要になるし、一般の兵士では確実に追うことができないのは事実だ。


 ラルネの中にある議事堂。

 そこの会議室では―…。

 何人もの大臣と総統がいた。

 「私が、リース王国と繋がっているだと―…。それに私は、我が国がリース王国の一部だと言っている―…、ふざけるな!! 私は、リース王国に弱腰になっているのは見れば、そのように思われるかもしれないが、それでも、リース王国に粘り強く交渉しているだけなのだ。リース王国からの方だと、多くの者が一気に仕入れられるし、他からだとミラング共和国のすべて国民が必要としている塩のすべて賄うことが―…。」

と、シュバリアは言う。

 シュバリアは、どうにもならない状況に苛立ちを感じるのだった。

 シュバリアの考えは、弱腰ではあるかもしれないが、決して馬鹿というわけではなく、経済やら諸々のことを考えての行動なのだ。

 何でもかんでも強気でいけば良いというわけではないということを知っているし、リース王国がミラング共和国に宣戦布告させようと煽っているのはわかっている。

 だけど、戦争になれば、ミラング共和国の兵士として動員される者に、犠牲が出るのだ。それに、シュバリアは、彼自身が戦争のための責任をなるべく取りたくないと思っていた。それでも、無理な場合は、自らの責任でリース王国との戦端を開く、覚悟ではある。

 そして、ミラング共和国がリース王国の一部だと言ったことは一度と言ってもない。むしろ、リース王国からエルゲルダ領の税を適用しないでくれとの交渉をしているほどだし、最悪の場合は、エルゲルダという領主に賄賂をしっかりと渡せば、エルゲルダの保護で無税になることができるという算段も頭の中にはある。

 賄賂というようなことはしたくはないが、ミラング共和国の命がかかっている以上、仕方ないことだと思うのだった。正当化に近い気持ちを抱いているのは確かであろう。

 「だけど!!」

と、フォンル=フェバリアが声を荒げる。

 フェバリアも頭の中ではわかっているが、今のミラング共和国の実力ではどうしようもできないというのが現実であることをも理解していた。

 だけど、このままでは、対外強硬派に都合が良い展開になって、ろくでもない対外強硬派がミラング共和国の実権を掌握してしまう。

 「それでも、我々は、ルールの中で生きていくしかないのだ。我々が定めたルールを守れないものが、本当の意味で、国民を幸福に導くことはできない。それに、ルールを破れば、そこをついて対外強硬派は攻撃してくるのだ。我々には、裏で動かせる勢力がいないことが誠に残念じゃが―…。」

と、シュバリアは言う。

 こういう時の場合は、裏で仕事をする者たちを使って、このような事態に陥っている状況を打破することを選択するのが最も上手くいくことはわかっているが、シエルマスは対外強硬派側についており、穏健派の味方をしてくれることはない。

 (さらに、集められる情報では、私の言っていない言葉をバラしているのは、シエルマスが絡んでいると思われる。シエルマスは、あの統領が優秀すぎて、私らでも彼らの動向を把握することはできない。だけど、奴らなら関わっている。常に、他国を謀略によって、滅ぼしたがっておったから―…。まるで、あの統領は頭脳を賢くした子どもだ。褒めて欲しくて、自分という存在を示したくて―…。あの統領がもう少し、理想的な全体を見れる大人的な思考を持っておれば―…。あの統領は、満たされなかったから今に至るのだろう。)

と、シュバリアは心の中で思う。

 シエルマスの統領ラウナンが、頭が賢いというのは話したこともあるからわかるが、それでも、まるで、自らの存在をこの世に示そうとしているのか、そのために、他国を滅ぼすための謀略に積極的なのだ。

 せっかくの頭脳を持っているのだから、物事の全体を見通して欲しいと思うのだった。そうすれば、シュバリアのやろうとしていることも理解できただろうに―…。ラウナンのことをシュバリアは、惜しい人材だと思うのだった。

 そして、シエルマスが使えない以上、裏からの行動を穏健派はとることができずに、行き詰まりを感じざるを得なかった。

 八方塞がり―…。いや、無理矢理、ルールを緊急事態ということで犯せば、状況を乗り越えられるのは確かだ。だけど、シュバリアにとって、そのようなことができるほどの勇気はない。自らの汚名になることを避けたがっているのだ。彼自身が周囲から慕われたことと、それに本人も気を良くしていることが原因であろう。

 それでも、フェバリアが考えるように、ルールを無視して、汚名をシュバリアが着ることができていれば、穏健派の未来はあったのかもしれない。

 (シュバリアさんの言っていることはわかる。だけど―…、緊急事態なのだよ。これは穏健派にとっても、ミラング共和国にとっても―…。)

と、シュバリアは心の中で思いながら、そこの横にいた人物はこう思うのだった。

 (シュバリアさんの言っていることは正しい、理想としたい―…。だけど、現実はその理想をずっと許してくれるわけじゃない。理想だけに生きることは我が儘にすぎないが、今のことしか考えられない理想なき者は腐敗と破滅しか生み出さない。だからこそ、私たちは現実を見ながら、理想を抱き、今の状態よりも未来を良くしようとしないといけない。政治家は、それを多くの者たちが分かち合えるように、理想は誰もを避けられない不幸以外の悲しいことから逃れられるようにすることを心の底から真の目標にしないといけない。今のシュバリアさんは、理想だけに生きているだけの空しい人だ。対外強硬派は、今の自分達の名誉しか考えられない腐敗と破滅しか生み出しかねない存在だ。私の弟もそんな馬鹿な連中の側についてしまっている。どこかで、私は弟を切り捨てないといけないな。いや、切り捨てられるのは私の方かもしれない。)

と、心の中で、シュバリアの横にいる人物は思うのだった。

 その人物は、対外強硬派のナンバースリー、ディマンド=ファウンデーションの兄、フィーマル=ファウンデーションだ。ファウンデーション家ということになるので、弟の方はディマンドと記しておくことにしよう。

 フィーマルは、シュバリアという存在には憧れもあり、シュバリアの後継者であるという自覚を持っているが、それでも、今のシュバリアの態度には絶望している。自ら汚名を着てもミラング共和国を守ろうとしないことに対して―…。

 その汚名を着ることがどれだけの勇気のあることかはわからないフィーマルではないが、それでも、シュバリアならちゃんと汚名を着て、ミラング共和国のために一国のトップとしてそのように行動することができるはずだと思っていた。政策についても素晴らしいことを言うので―…。

 だけど、シュバリアも一人の人間である以上、そのような勇気を出した行動をとることはなかなかできないし、さらに、シュバリアも家族がいるのだから―…。家族を不幸にしたいとは思えない。

 結局、この場では何も決められなかった。

 時に、自らを汚す勇気も必要なのだ。自らの終わりと引き替えに―…。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(7)~序章 アルデルダ領獲得戦(7)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


今回からは、かなり重い展開と同時に、残酷な面も描かれると思います。番外編なんで、こういう場面もあります。こうやって、人々は戦争へと向かっていくのだろうか。悲惨だよ。最も愚かなのは、自分は死なないところにいながら、周囲に勇ましいことを言いながら、周囲の者たちの生命を危険に晒すことなのかもしれません。その愚かの始まりは、視野が狭くなっていくことからであろう。我々、生物は世界というものを知ることを深め、対応することで生き延びて、進化ということをしてきたのだから―…。

まあ、哲学的になってしまいましたが、今日は、ここまで。

では―…。

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