番外編 ミラング共和国滅亡物語(5)~序章 アルデルダ領獲得戦(5)~
『水晶』以外にも、以下の作品を投稿中。
『ウィザーズ コンダクター』(カクヨムのみ):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
PV数が増えますように―…。
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、エルゲルダらによって開始された通過税の新設と商品税の増税によって、その影響はミラング共和国に影響は波及していた。穏健派は、この状況を打開しようと、リース王国との外交交渉で解決しようとするが、一方で、対外強硬派は、この状況を穏健派を追い落とし、自らの政権奪取へと利用しようと画策するのだった。
「ふむ、リース王国のアルデルダ領の領主エルゲルダが商品税の増税および通過税を新設した。」
と、アルディエーレが言う。
彼はすでに、周辺諸国に散らばっているシエルマスを使い、情報を収集していた。
そして、そのシエルマスはエルゲルダの近くにも潜入しており、情報は筒抜けとなっていた。
それに―…。
「リース王国の側も、このエルゲルダの馬鹿の政策を容認した。それも、アルデルダ領がピンチになった時は見捨てるという感じで―…。さらには、その見捨てるピンチを作るのは、ミラング共和国の役割だと考えている。会議でそのように話し合われていた。」
と、続けて―…。
シエルマスは、近隣諸国に潜入をしており、その実力は近隣諸国でもナンバーワンという呼び声もある。
だけど、いくらシエルマスがミラング共和国が他国から抜き出るための工作をしようとも、穏健派は対外協調のために、シエルマスの言う事を聞かない。ゆえに、リース王国から後れを取っているのである。
それでも、穏健派は確実ではあるが、新たなミラング共和国の姿を模索しながら、試行しているのだった。これからのミラング共和国が発展していくために―…。
「エルゲルダは馬鹿だというラウナンの報告を受けていたが、原因は自らの税収を増やして、自らのためにか!! 嫌いではないが、それでも、やり方が馬鹿すぎる。俺なら、緊縮財政にして、社会保障など下らぬことに使っているのを軍事費に回すのが妥当だろうに―…。国というものは、軍事力が強くなければ、他国から舐められ、酷い目に合うのだ。リース王国のように軍事力が強くなければ―…、な。それが分かっていないのだシュバリアの野郎は―…。」
と、シュバリテが言う。
ミラング共和国の軍事力というものがなければ、他国から簡単に攻め込まれ、ミラング共和国はなくなり、支配された国のために奉仕しないといけないのだ。これは屈辱でしかない。
そうならないためには、軍事力を強化して、どの国にも負けない軍事力を手に入れないといけないのだ。そのために、社会保障という名の庶民に対しての福利厚生とかいう、何の金にもならない政策をとっていることは問題でしかないと、シュバリテは思うのだった。公共工事も軍事に関係しなければ、無意味なものだと見なしている。
だが、軍事力をいくら強化しようが、それに対抗しようとして、他の周辺諸国が軍事力を強化し、自国もまた周辺国を引き離そうとして軍事力を強化していく。その繰り返し。結果、軍事力を強化している国々の財政にも大きな負担になり、どこかで破綻して戦争という結末になるだけなのだ。結局、軍事力を強化しようとすることが、戦争から遠ざけるどころか、むしろ近づける結果となってしまっているのだ。そのことを理解して欲しいものだ。
相手国が侵略するという意図は、外交や隠密などの方法を用いて、相手の首脳部の意図を理解しない限り、簡単に侵略する気だ、という判断を下すべきではない。なぜなら、その判断一つで、戦争をぐっと身近にするのだ。庶民が大量に犠牲になり、不幸な目に合う―…。
そのことをミラング共和国の対外強硬派は理解することができない。先のぼんやりとした結末を上手く描けないのである。それが彼らの欠点であろう。どんな力を得ようとも、それを改善しない限り、良い結末を辿ることはない。
そして、社会保障というものは、国の強さを直結しないと対外強硬派は思っているだろうが、そうではない。リース王国でもラーンドル一派のような現在の政策を除外すれば、リース王国の発展は交易であり、さらに王国内における特産品や商人たちが商売しやすいように、そして、リース王国の住民が過ごしやすいようにしてきたことである。このような社会保障政策によって、リース王国は軍事力をも増強することができたのである。まあ、対外的な関係で、これとは逆の結果になることはある。内的な要因によっても―…。
だが、社会保障というものが国の強さに直結しないのは間違いであり、最悪の選択肢でしかない。それに、ミラング共和国は社会保障政策によって、住民の生活と経済というものを上手く回すことができているのだ。それを減らせば、ミラング共和国の国力を低下させることになり、戦争にしか解決の道がないという狭い視野での解答に陥り、かつ、そのような状態での戦争は返って、悲惨な結果を招くだけである。それに、人心が荒べば、法の逸脱も激しくなり、かつ軍紀というものも乱れ、軍事力低下に直結する。引き締めるだけではどうにもできないのだ。
まあ、経済力の強化で汚職があったりするので、過剰に一人に富を集中させすぎないように気をつけないといけないが―…。
そして、対外強硬派の者たちは、戦争を望む。
「軍事力こそ、国の力!! 戦争に勝って奪えば良い。支配した地域から―…。そうすれば、我らも栄え、我らのお零れを授かる下々の下賤な者たちも栄えるのだ。我々の繁栄が、ミラング共和国の繁栄なのだ。」
と、ファルケンシュタイロは言う。
ファルケンシュタイロにとって、軍事力イコール国力である。だけど、このようなことは完全に成り立たないことを理解できない。グルゼンならすぐに理解できることであろう。なぜなら、軍がなぜ存在し、どのような場合に行動し、どのように動けば良いのかを大局的な点から見ることができる。
だけど、ファルケンシュタイロはそのような視野が欠けており、戦争や戦いにおいてもグルゼンがその失敗を後始末しているがゆえに、勝っているのである。猛者になる者たちは、グルゼンの方に教えを乞う。だから、ファルケンシュタイロにやってくるのは、それこそ、人を見る目がない者たちだ。ファルケンシュタイロは自らの能力と来る人間を見抜くことができない。
さらに、過去にどういう作戦が成功し、どういう場面なのかを判断するという勉強を怠っているために、作戦が良い時と悪い時の区別が本当の意味でつかず、負ける方が最近では多くなりつつあるのだ。
それなら、グルゼンを味方に加えれば良いという話になるのは必然であるが、グルゼンがシュバリテ側になることはない。あくまでも自らは国の雇われている兵士だということがわかっており、そのことを忘れてはいない。兵士であり、かつ、上の人間であるのだから、大局的な視点からものを見て、下からの不満に対しても対処しないといけない。そのための胆力、膂力、威圧というもの、言葉の使い方が重要であることを認識し、肉体や戦術の鍛錬とともに鍛えているのだ。日頃から、己を高めることを怠らない。ゆえに、人を見る目も同様である。
シュバリテとシュバリアのどっちが優秀で、よりミラング共和国の発展に貢献できるかを比較すれば、シュバリアの方が良い結果となるのはわかりきっていた。最近は、面白い存在に出会ったのか、義理を果たした上で、ミラング共和国の軍を辞める予定である。
話を戻し、ファルケンシュタイロは、さらに、ここにいる者たちを言葉を聞くのだった。自らの気持ちを高揚させて―…。
「だな、穏健派どもは日和っていやがる。今度こそ、あいつらを―…。」
と、ナンバーツーのクロニードルが言う。
「エルゲルダの馬鹿の失策。そして、ミラング共和国には不満が溜まる。我々の出番だ。ミラング共和国は我らが繁栄させる。穏健派なんぞのビビりどもよりも、我らの方が優秀だ。」
と、ナンバースリーのファウンデーションが言う。
そして、シュバリテは作戦が決まったのか、言い始める。
「ラウナン、良き報告をありがとう。」
「ええ、感謝いたします。シエルマスを最大限に上手く使えるのは、シュバリテ様以外にはいません。」
と、シュバリテの言葉に、ラウナンはありがたるのだった。
だけど、心の中では―…、
(ふむ、シュバリアは嫌いだ。だけど、シュバリテはそのシュバリアよりも劣っているの確かだ。それに、シュバリテよりかはコントロールがしやすい。自尊心の塊だ。こちらが煽ててあげれば、どれだけ楽か。まあ、こういうタイプは調子に乗りやすいから、精神的には大変であるが―…。シュバリアを葬って、対外強硬派が衰退する可能性があれば、始末して、別のをトップにすればよい。)
と、ラウナンは、心の中で思うのだった。
ラウナンとて、シュバリテのことがわかっていないわけではない。
ゆえに、シュバリテの利用法ぐらい簡単にわかってしまう。だてに、ミラング共和国の裏で生きているわけではない。というか、裏で仕掛けている組織の長を務めるには、確かな実力が必要であることは言わなくてもわかることだろう。
「ふう~。」
と、シュバリテが息を吐くと、リラックスしたのか、立ち上がり、作戦の指示を出すのだった。
「さて、そろそろ穏健派どもには、我々が欲している神聖な政治の場から消えていただこう。プロパガンダも仕掛けて、穏健派を失墜させる。いや、穏健派の暴走を私という人間の得によって、防いでしまえば良い。シエルマスを使って、我々に都合が良く、穏健派にとって都合の悪い情報を大量に流せ、ラウナン。」
「はっ、畏まりました。」
シュバリテは、穏健派を追い落とそうとする作戦を実行するための支持をする。
それは、最初は、シエルマスを使って、穏健派にとって都合の悪い情報をミラング共和国の国民に流し、国民に穏健派に対する不信感を植え付けるのだ。
国民など、いくら主権というものを持っていたとしても、情報を流す権限を握って、それだけを流せば、人々は簡単に対外強硬派の情報しか受け取れなくなり、対外強硬派の情報を正しいと思うのだ。決して、多数派になるような感じで情報を流す必要はない。重要なのは、ここではこう言われていることと、嘘に根拠を持たせることだ。シエルマスにとっては、得意技でしかない。穏健派は、シエルマスに対して、権力を持ち得ることができていないし、シエルマスほどの諜報機関を持っていないのだ。
ラウナンは、そのことを理解しているし、シュバリテもわかっている。ゆえに、情報戦は簡単に、対外強硬派が勝利することはほぼ確定している。
そして、さらに、シュバリテは続けて言う。
「ファルケンシュタイロは、軍部の動員の準備と同時に、グルゼンに付き従っている者たちをそちら側に寝返らせるように―…。グルゼンというのは、個人という存在だけでも、天成獣の宿っている武器を扱う者たちに対抗するほどの実力を持ち合わせ、指揮官としての力も優秀すぎる。だけど、あいつはいずれこのミラング共和国軍から離れる。それまでに、グルゼンに付いていくような奴を一人でも多く減らせ。そして、軍部の他の将校は表からでも裏からでも構わないから、ファルケンシュタイロに従わないのなら排除しろ。」
「はっ。」
「そして、ディマンド=ファウンデーション。お主は、穏健派が失墜した時、選挙が実施される可能性が高い。お前の属している宗教組織から我々の派閥への票の動員および、議員候補生どもの中から、都合の良い者たちが立候補できるように準備させておけ。選挙は近い。」
「はい、わかりました。」
そして、ファルケンシュタイロには、軍人をシュバリテの味方にすることと、その敵の排除、ファウンデーションは自らが関わっている宗教組織への票の依頼と、同時に、その組織から対外強硬派のために貢献してくれる立候補者を出して欲しい、以上のことを命じる。
これから、対外強硬派は、穏健派から権力を奪取するのだ。自らの野望のために―…。
そこに、ミラング共和国の国民というか、住んでいる人々の顔など一切、想像されるということはなく―…。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(6)~序章 アルデルダ領獲得戦(6)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
『水晶』の番外編、予想以上に長くなりそうな感じは、前から伝えていたと思いますが、確実に長くんなります。どうしてこうなったぐらいに―…。だけど、自分のできることができているので、長くなりますが、お許しいただけると幸いです。
この番外編が終われば、確実に、瑠璃、李章、礼奈の旅が続くことになり、サンバリアに関してはすでにネームは仕上がっており、ここにかなりの量の加えていくかもしれません。この番外編でも後々の話に関係する伏線もはっています。あの一族とか―…。
そして、PV数も3万5000を今日、超えました(2022年12月19日)。読んでいただいた方、本当に感謝します。ありがとうございます。
『水晶』はまだまだ、先が長いし、ネームの方も進めていかないといけないので、大変ですが、できる限り頑張っていきます。無理しない程度にですが―…。
『この異世界に救済を』に関しては、まだ、プロローグの方が続いていますが、プロットの段階では、すでに第2部とか第2章の内容になり、異世界らしいところを書けるのではないかと思っています。そして、この物語の重要なところは、まだまだ登場させられていないし、プロローグのタイトルの理由も回収できていないのですが、頑張って仕上げていきたいと思います。
長々となってしまいましたが、次回の『水晶』の投稿まで…。
では―…。