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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
349/748

番外編 ミラング共和国滅亡物語(3)~序章 アルデルダ領獲得戦(3)~

『水晶』以外にも、以下の作品を投稿中。

アドレスは以下のようになります。


『ウィザーズ コンダクター』(カクヨムのみ):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138

『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、エルゲルダは、通過税の新設と商品税の増税を決めるのであった。そして、リース王国では―…。

 リース王国の首都リース。

 その中の城の中。

 ここの小会議室では、今、まさに会議が開かれていた。

 ここに王はいない。

 王などいたところで、まともな意見が聞けるわけもないし、王なんて存在は、我々の言っていることを「うん」と頷いてくれれば良いのだから―…。

 ラーンドル一派にとっては、王はお飾りというのがちょうど良いのだ。

 リース王国の現国王レグニエドはそういうものなのだから―…。

 そして、この小会議室にいるのは、ラーンドル一派のみで構成されている。

 トップは、リース王国現宰相メタグニキアだ。

 さらには、ハルギアやラーンドル商会の重鎮たちがいるのだった。

 彼らは進行役のハルギア以外は椅子に座り、机に大事な書類を置いている。

 ハルギアは言い始める。

 「皆様に集まっていただいたのは、アルデルダ領に関する新たな税および増税に関しての話し合いです。」

 そう、今回の議題は、エルゲルダが商人に対しての通過税の適用と、ミグリアドでの売上のある商人に対する税の増税に関して、である。

 そのハルギアの言葉を聞いていた者たちは、驚くということはなかった。

 事前に、情報は出回っており、ここに居る者たちはどういう内容かということも理解していた。

 一応、情報は重要なものであるという認識があり、かつ、自らにとって、どのように得にしようかと事前に考えていたのだ。

 (で、エルゲルダの政策をか―…。あいつのお気に入りの商人になるのは嫌だが、そういうふうになっておけば、いろいろとやりたい放題できるからな。気に食わないだけで、敵対するのは馬鹿のすることだ。それに、ああいう政策というのは長期的には続かないものだ。エルゲルダがピンチの時は見捨てれば良いだけ。ラーンドル一派にとっては、エルゲルダなど目の上のたん瘤にすぎないのだから―…。)

と、ラーンドル商会の一人は心の中で思う。

 この人物は、ラーンドル商会における対外商売を担当しており、名をアールトンという。

 アールトンは、特に対外商売における内陸交易を中心としており、外洋に関しては別の人物、腹心に任せている。

 アールトンは、エルゲルダの増税政策と税の新設に関して賛成であり、この政策は長く持たないという予測できているからこそ、さっさと儲けて、エルゲルダがピンチになった時は見捨てるという算段を立てる。

 このような考えを持っているアールトンは、手を挙げる。

 「アールトンさん、意見をどうぞ。」

と、ハルギアは言う。

 ハルギアによって、意見を述べられるようになったアールトンは言う。

 「皆様ももうわかっておりますが、ここにはレグニエド王はいません。なので、我々の本音を語るべきでしょう。それに、内陸における貿易を担当している私はすでに、アルデルダ領の商品税および通過税に関する意見があり、そのことによって、皆さまも得することになるでしょう。」

 アールトンは言いながら、すでに、このアルデルダ領に対する対応は決まっている。

 「今回、アルデルダ領における商品税および通過税のことに関しては賛成し、むしろ、それを支持することをアルデルダ領の領主エルゲルダに伝えておきましょう。そして、このアルデルダ領におけるこのような税政策は長い期間もつものではありません。ラーンドル商会にとっても、リース王国にとっても、利になる判断は、エルゲルダがピンチになった時、我々は堂々と彼を見捨てることにすることです。」

 そのアールトンの言葉に、皆が疑問に思うことがあるのだった。

 それを代表するように、メタグニキアが言い始める。

 「それはいつのことだ。エルゲルダの政策に賛成しておいて、ピンチになったら見捨てる。一体、何がピンチなんだ?」

 メタグニキアは、アールトンの言葉のほとんど理解できなかった。理解できたのは、自身にも金が賄賂という形で入ってくることと、エルゲルダを見捨てるピンチがどんなものなのかが具体的にわからないということだ。

 「メタグニキア様。詳しくお話させていただきますが―…。」

 アールトンが言いかけると、

 「簡単に言え!! 難しいことを話す奴は嫌いだ!!! 元宰相のベルグの馬鹿野郎のようにな!!!」

と、メタグニキアが文句を言い始めるのだった。

 メタグニキアは、ラーンドル一派に媚びることによって出世した人間であり、本人自体の能力は何でリース王国における宰相になることができたのかわからないと思われても仕方がないほどだ。

 要は、無能が何でこの場にいるんだよ、ってことだ。

 理由は、メタグニキアは家として有名なところであり、無能であり、何か自分にしかできないこと、もしくは自分を極めようとしなかったし、そのようにしても優れることができるはずもないし、家柄的に媚びを売ることで地位を簡単に手に入れられることから、そっちの方へと行動を向けていくのだった。

 まあ、そのように向けて、頑張ったことに関しては、一応、やったのかなと思うが、それが、周囲にとってあまり良い影響をもたらしていないのは事実である以上、迷惑としか言いようがないし、メタグニキアが不利になっても、見捨てられるのがオチだろう。アールトンが考えているエルゲルダのピンチの時の対応と同じになるのは確かだということだ。

 (はあ~、こんなのに発言権を与えないで欲しい。)

と、アールトンは心の中で思うのだった。

 そして、仕方ないかと思ったのか、アールトンはいつものように、メタグニキアを分からせるように決まった文句を言い始めるのだった。

 「すべての行動は、メタグニキア様が宰相であることを維持するために、メタグニキア様にとって得をしていただくためのことです。」

と。

 このようなことを言っておけば、メタグニキアは、

 「わかった。私の得になるのなら、それで十分だ。」

と、言って、メタグニキアは興味をなくすのであった。

 (ふう~。詳しい説明ができますか。馬鹿をコントロールすることは簡単なのですが、文句を何も言わないレグニエド王ならトップに置いても何も問題ないが、メタグニキアのように俺様のために動け、俺の政策を支持しろという馬鹿は本当にトップに立たせないで欲しい。どこかの貴族の放蕩息子をこちらに渡さないで欲しい。)

と、アールトンは、心の中で悪態をつき、再度、説明を開始するのだった。

 「皆様、エルゲルダの今回の政策に関しては、商人に対する税の新設と増税であり、外国の商人も含まれていることから、外国からの抗議も出てきましょう。それに、ミラング共和国が必死に抗議してくるのは確かです。ミラング共和国との戦争になった時、我々、リース王国にとってもラッキーです。」

と、アールトンは一端、間をおく。

 そして、アールトンが間をおいている間、アールトンへと視線を向ける。メタグニキア以外は―…。

 それだけ、これからアールトンが言おうとしていることが気になって仕方がないのだ。

 「王国の領土というものは、拡大していくことも重要となりますが、それでも、国を維持していくにはそれなり出費というものがありますし、出て行くお金も馬鹿になりません。これはリース王国を運営していく過程でわかっていただけると思います。」

 そこで、ここに集まっている者の多くが頷く。

 理解できることである。

 ラーンドル一派の重鎮でも理解できることである。アングリアやメタグニキアのような奴らには理解できないことであろうが、国を運営していくにも金というものがかかるのだ。運営、維持というのはそういうものだ。

 「そして、アルデルダ領のために費やしている費用は、リース王国の財政にとって重しにしかなっておりません。私どもが計算したところでは、アルデルダ領を放棄した時と、放棄しなかった時を考えると、放棄した時の方がリースの財政を十分に改善し、我々が自由に使える額が増えることになります。」

と、アールトンは言う。

 アールトンは、エルゲルダの商品税と通過税の話を聞いた時に、ミラング共和国がこの政策に抗議してくる可能性があることにすぐに気づくことができた。

 そして、アルデルダ領の財政がかなり悪化しており、リース王国からの支援がないと立ち行かないこともリース王国の財政資料を手に入れられるので、そこから手に入れた財政資料を基礎に、リース王国の密偵を使ってのアルデルダ領の情報を合わせて、リース王国にとって、いや、ラーンドル一派にとってどの選択が都合が良いのかを計算したのである。

 まあ、範囲は一年とか数年とかそんなぐらいであり、流れがどうなるかという観点からの判断ではないのであるが―…。

 そこから導き出されたのが、さっきアールトンが言っていることなのである。

 要は、アルデルダ領を放棄した方が、リース王国の財政にとっては良い結果となり、かつ、ラーンドル一派が使えるお金が増えるのだ。私腹を肥やすための―…。アルデルダ領に使うお金が必要ではなくなるのだから―…。

 「それだと、周辺国に対して、リース王国が舐められてしまうではないか!! アールトンともあろうものが舐められれば、我々の立場が―…。」

と、ラーンドル一派における重鎮の一人であり、王国行政官のナンバースリーであるハルマイラ=ファルーセンが言う。

 彼は、ラーンドル一派であるが、このなかでは中ぐらいほどの頭脳を持つ感じで、取り立てて特徴的な能力を持っているというわけではない。それでも、彼がこのような場にいられるのは、どいつが出世するのかというのを感じる才能があり、媚びるのが上手かったからだ。

 そして、出世後、横柄な態度を取るということを部下に対しておこなうようになり、部下からの信頼というものはあまりない。というかよろしくない。ファルーセンは、自らの優越性を示そうとしての行為であると思っていて、正当化しているが、その反省のなさが、返って、部下からの信頼を低下させている原因であることに気づかないフリをしている。

 まあ、ファルーセンは、リース王国の領土をミラング共和国に割譲させてしまえば、他国から舐められて、返って、リース王国に圧力をかけてくるし、国として、ラーンドル一派としての面子というものが保たれないのではないか。体裁を気にしているのだ。

 そのファルーセンの言葉は、アールトンにとってすぐに理解できることである。面子というものは金銭の比較からは馬鹿にならないほどに重要であるということも―…。面子があるからこそ、言う事を聞いてもらえるというのは確かな事実である。

 だけど―…、財政実態というものを悪化させていったばかりに、力が衰えてしまえば、武力という力を見せないといけない場で、弱さを露呈させてしまうことになる。力が衰えるために対策をして、強化しておけば、一時の損というものから回復させることは可能である。

 そう、考えたからこそアールトンは、アルデルダ領を放棄することも考えたのだ。ただし、それには理由がいるということも必要であることを認識しながら―…。

 「別に、私はただで、アルデルダ領を放棄しようとしているわけではありません。他国と戦争がなければ、アルデルダ領を放棄することなどできやしません。その時は、エルゲルダを殺して、我らの中で、扱いやすい者をアルデルダ領に送れば良いのです。だけど、ミラング共和国は、エルゲルダの政策で確実に抗議と同時に、最近、弱くなっている対外強硬派が息を吹き返して、リース王国に対して、宣戦布告をしてくるでしょう。その時、少しだけ戦って、アルデルダ領を割譲することを旨とすることと、通過税の減税および商品に関する関税を期限付きで減税するば良いだけです。その減税に関しては、あくまでも、アルデルダ領の割譲だけで満足しなかった場合に、出せば良いのです。それに―…、私の見立てでは、アルデルダ領の割譲と僅かばかりの犠牲、リース王国の騎士団および兵士の中にいるラーンドル一派に反対する者たちの掃討にも繋がり、我々の権力はより一層にリース王国において、強いものとなります。この作戦で、我々が被る不利益は、わずかの期間で回復どころか、我々が使える金の増加という結果をもたらしてくれるでしょう。私からの意見は以上です。」

と、アールトンは言い終える。

 アールトンの計画は、確かに、ラーンドル一派にとってプラスになることばかりだ。だけど、それが決して、リース王国において、プラスになるとは限らない。

 だけど、ここにいる者たちはラーンドル一派だけなのである。

 つまり―…。

 「異議なしじゃ。」

と、メタグニキアが言うと、全員がアールトンの計画に賛成する。

 こうして、エルゲルダの政策に関するリース王国の対応に関する会議を終えるのだった。

 そう、結果、ラーンドル一派にとって、良い方向に向かうように仕向けるようにするための方法が決まったということになる。


番外編 ミラング共和国滅亡物語(4)~序章 アルデルダ領獲得戦(4)~ に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


では―…。

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