番外編 ミラング共和国滅亡物語(2)~序章 アルデルダ領獲得戦(2)~
『水晶』以外に、以下の作品を投稿中。
以下、アドレスとなります。
『ウィザーズ コンダクター』(カクヨムのみ):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(「小説家になろう」);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(「カクヨム」);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
『この異世界に救済を』に関しては、2022年12月17日に第13話を投稿する予定です。『この異世界に救済を』の投稿は、一週間に一回というペースが基本になるかもしれません。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、番外編、アルデルダ領の税収が減少し始めており、その対策会議がおこなわれるのだった。財務のトップは自らが生命の危機を感じて、何とかしようとするのだった。その藻掻きがより、大きな危機へと繋がることも知らずに―…。
「それは、他国の商人が持ち込んでくる商品に対する売り上げにかかる税金を引き上げることです。」
これが財務のトップのアイデアだ。
要は、外国から来る商人がエルゲルダ領で物を売った時に得られる売り上げに対する税金を引き上げることだ。
「ほお~、そうすれば、税収は増えるのか?」
エルゲルダは、財務のトップに問う。
エルゲルダは、決して頭が良いわけではなく、むしろ悪いと言われてもおかしくないぐらいだ。
だからこそ、感覚で疑いもするが、それでも、聞いて判断しようとするのだ。頭が悪いなり、考えて―…。
「ええ、それはもう単純なことです。商人たちは、アルデルダ領に商売、特にミグリアドにやってくるのは、エルゲルダ様の得を慕ってでございます。それは商品に対する売り上げにかかる税金を上げようとも、離れることもないほどに―…。」
財務のトップが言う事を纏めると、商品の売り上げに対して、商人たちにかかる税を引き上げるということだ。つまり、商人たちの儲けが減少するということだ。
現在、アルデルダ領にやってくる商人は多い。アルデルダ領から見える大きな山の向こう側からやってくる物資を運ぶ段階で、アルデルダ領を通ることがリースの港へと向かう近道である。食べ物の中における保存の期間が短いものを運ぶのには、最短ルートでないと、売り物にならなくなる。
そして、アルデルダ領から見える大きな山がある以上、アルデルダ領以外からリースまでの道を作るのは困難であり、リースより大きな規模の港湾都市は限られるし、このリース王国の中ではリースしかないのだ。
そういう面では、中継貿易の拠点としてミグリアド、その領土であるアルデルダ領は簡単に儲けることができるのだ。要は立地が良いというほかにない。
財務のトップが言うようなことをすれば、エルゲルダ領を迂回する選択をするものが出現してもおかしくはない。というよりも、保存期間が長い物は迂回ルートを選択し、途中で払う税の額を少なくして、リースへと向かうようになるし、保存期間の短い物はリースへと輸送しない選択をする商人が出現する。
それに、隣のミラング共和国は、内陸国であり、海がないため、塩などの産物をリース王国やそれ以外の周辺国から輸入しており、その中で比率が高いのはリース王国からなのだ。高級塩に関しては、リース王国に流れるサンバリア産の岩塩であることは確かだ。厳密に言うと、サンバリアの周辺で岩塩が生産されているのであるが―…。
そして―…。
「そうだな。私はリース王国の中でレグニエド王に一番信頼され、かつ、レグニエド王に一番の寵愛を受けているのだ。その私の要求を受け入れないという者がいるはずもない。私はアルデルダ領の領主で、領民の誰もが私を慕っているのだ。商人、他国の商人たちもそうだ。だけど、商品の売り上げでは物足りない。ならば、商人がアルデルダ領を通過するのにも税をかけよう。私が富むことが人々の幸せなのだから―…。私は、レグニエド王に手本を見せるために、しっかりとしないとな。トップに立つものは、誰からも慕われるからこそ、彼らが生活できないほどになっても良いほどに税を取っていいのだから―…。王の幸せが領民の、私を慕ってくる者たちの幸せ。すぐに実行せよ。」
と、エルゲルダは言う。
エルゲルダとしては、自分が誰からも慕われていると思っている。本当に慕っているのは、リース王国の王レグニエドのみである。
だが、そのことにエルゲルダは気づくはずもない。気づいていたとしても、ないものと思っている。
なぜなら、エルゲルダは自らに反論したり、反抗的な意見を言ってきたり、諫言をしてきた者たちをアババに命じて殺しており、アババはクルバト町の虐殺で行方不明になった後は、自らが雇った裏の者を使って―…。
裏の者に払う毎月の経費も馬鹿にならないが、それでも、自分の命を守るためには本能的に必要であると感じているのか、しっかりと期日に払っている。
そして、エルゲルダは、財務のトップが言った増税の項目に一つ追加するのだった。アルデルダ領を通過する商人に対して、通過税を課すのだった。
この税は、元々、アルデルダ領には存在しない税だ。アルデルダ領は、商品の売り上げに対して課される税は元々存在していたし、それがアルデルダ領の大事な収入源であり、売り上げに対して、何パーセントかという感じだ。エルゲルダ以前は、そこまで高くなく、売り上げの一割前後であり、ある一定額を下回る売り上げに関しては、段階に応じて、売り上げに対する税額が減免され、食料に関しては、売り上げに対して税金を取らないという方針を出していた。
それをなすために、税調査官という専門の職業の者たちがおり、ミグリアドのすべての市場でどれだけ物を売るのかというのをしっかりとチェックしており、彼らはミグリアドの名物となっていた。商人たちにはあまり好かれていなかったが、それでも、公平に売る商品をチェックし、公平に税金を課していた。もし、税調査官が不正をすれば、すぐにミグリアドの税調査官監視委員という機関に訴えることができ、彼らは常時、市場を見回っており、税調査官が不正をしないように見張っている。
このように、税金に関しては公正に徴収できるようにしていた。優遇をするのは、それなりの理由が存在し、かつ、公正さが保てるように配慮した上である。
つまり、嫌われてはいても、税の公平さに関しては、見る者から見れば、公正さの高さが高いものであることはすぐにわかるものであった。
それを誰の目でも確かめることができるようになったのが、エルゲルダの代になってからである。それは、決して良い意味ではなく、悪い意味であることは簡単に想像がつく。
それは、エルゲルダが、税調査官の給料を減少させることと、エルゲルダのお気に入りの商人に対しては、税を課さないようにするよう、こっそりと当時の税調査官のトップに言ったのだ。だけど、その当時の税調査官のトップおよび税調査官監視委員のトップも拒絶の態度を示し、全員公正であるべきだと主張した。だが、その翌日に、二人の遺体がそれぞれの機関の庁舎で発見された。
その後、エルゲルダは、自分の子飼いの部下を送り、税調査官および税調査官監視委員の双方に圧力をかけ、給料の減給およびエルゲルダのお気に入りには税金をかけないという約束を守らせたのだ。それは、すぐに商人たちにも理解されるが、税調査官たちがこっそりとエルゲルダは裏の者を使って、気に入らない者を殺害して葬っているということを言い、それが広まって、ミグリアドに来る商人が少しだけ減少するようになり、かつ、エルゲルダの経済政策により、領民に対する支払う税が増税されたりなどして、生活を圧迫してしまったため、売り上げも減少していくようになり、アルデルダ領の税収にも波及するようになった。
その原因に、本当の意味で気づかないのがエルゲルダであるのだが―…。
その後、税調査官がしっかりと取らないから、税収が減少しているのだと言い、税調査官や税調査官監視委員の人数を減らしていった。税調査官監視委員は必要ないものとされ、この一年で廃止された。そこで働いていた者たちは失職し、さらに職を探そうにも、どこも高額の税のため雇う余裕がなく、失職者で溢れ、結果としてスラム街が拡大することになり、彼らの多くは、エルゲルダと繋がりのあるアウトロー組織へと雇われ、安く、扱き使われるようになった。そこで、何人かが悲惨な思いをし、ある者たちは自らの命を絶ち、別の者たちは生活できるほどの収入が得られず餓死したなんて話もあるほどだ。現実に、起こってもいる。
一方で、商人たちは税調査官たちに過剰に税がかけられるようになったり、税調査官たちが自らの給料の減少分を補うために、税額以上に過剰に取るようになった。そのため、ミグリアドでの商売はしないようになっていった。物資の欠乏も深刻なことになり、商人たちはミグリアドを通る時は護衛を何人も何十人もつけるようなことができなければ、ミグリアドに向かわないようになっていた。
そのせいで、ミグリアドの住民たちは、食糧不足などの物資不足で、ものを買うことがなかなかできないようになった。それでも、生活に必要な物は購入しないといけないので、借金をするか、盗みをするかということになるほどに、ミグリアドの治安は悪化していく。それ以外にも盗みという面では、周辺の農村を襲ったりもするようになっていた。
ゆえに、アルデルダ領で暮らせなくなった者たちが、アルデルダ領の外に出るようになった。エルゲルダの投資も自分の子飼いたちのみにしか投資しないようになっていたことが、それに拍車をかけるのだった。
また、商人が商品を売り上げた税に関する税額も一割から二割、現行では三割ほどになっている。それを今回は、五割、場合によって六割にしようとするのだった。それに売り上げというか利益に対して税をかけるという元々の欠陥は存在しているが、そのようなことは誰も指摘するわけでもなく、そこに対象を変えようとしないのであった。
まあ、税金を集めることに集中しているのだから―…。
そして、食料に対する無税を止めて、他の商品と同じようにしたので、余計に悪い影響を強めることになった。そう、食料品の値段の高騰と商人の売上額の減少という結果をともなって―…。食料の流通の悪化も招くことになる。
商品の売り上げが一定以下の商人たちに対する税の減免も廃止された。
結果、小規模の商人がミグリアドで商売すると利益を得るどころか、赤字になるので、撤退していき、食料など生活必要物資を手に入れる方法が減少することになる。大規模な商人たちがそれをほとんど担うようになったし、エルゲルダのお気に入りから購入しないといけないだ。彼らの言い値で―…。
さて、話を戻し、通過税に関しては、細かい話し合いで、アルデルダ領の税収が増えるような額にした。その額は、小規模の商人には、払えないほどの額であった。
そして、エルゲルダの言ったことに対して、この場にいる全員が頷くのだった。
『畏まりました。』
と。
エルゲルダに反対の意見を言えるものなどいるわけがない。
そして、商人が売った商品に対する売り上げに関する税と通過税がすぐに導入されたのだった。
勿論、エルゲルダのお気に入りの商人たちは無課税という条項を添えて―…。
結果はわかりきっているだろう。
他国に対する不満を抱かせる結果となった。
それが大きな戦争へと繋がっていくことと、アルデルダ領の崩壊を意味するのだった。エルゲルダ体制の一時的な崩壊という結果をともなって―…。
番外編 ミラング共和国滅亡物語(3)~序章 アルデルダ領獲得戦(3)~ に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。
少しだけ体力というか、気力が回復したのか、執筆がかなりの程度進んだと思います。4000字以上を午後から3時30分までの間に書くことができました(休みを含めて)。
『水晶』の番外編は、重い内容になっていますが、私の中で考えているものを、私なりの解釈では、上手く表現できているのではないかと思っています。
そして、前書きでも書きましたが、明日、『この異世界に救済を』の第13話を投稿する予定です。文章自体は一応書き上げています。5000文字を超えていますが―…。まだ、いろいろと説明回が続いていますし、まだ、『この異世界に救済を』の世界観を完全に見せられていないし、大事なものの簡単な説明もできていないし、登場させていませんから―…。それが登場し、勢力がいろいろと策謀してこそ、『この異世界に救済を』の本当の意味での世界観であり、そこの中で示されるかもしれないことがフォングラという世界が滅びようとしているものなのだから―…。頑張って、どういう結末にするか想像していきたいです。
最後に、『水晶』は、2022年12月のクリスマスの頃まで投稿をして、そこから、一旦休んで、2023年1月中旬に投稿を再開する予定で行こうと思います。年末と年始はゆっくりと体を休めたいし、ブックマークした本も、『水晶』やそれ以外のネームやらを進めていきたいです。
では―…。